#073 ◯◯◯だコレ!(´゜ω゜`)
「あ、あの……なんでヒロ様の目が死んでるんですか……?」
「私もよくわからないわ。ミロに発注した飲み物が届くなり嬉々として一口飲んだ後『アンニンドーフのような味……僅かな湿布臭……ド◯ペだコレ!』って叫んでからはずっとこんな感じよ」
ヒロです。コーラだと思って喜び勇んで飲んだものがドク◯だったとです。
いや、待ち望んでいた炭酸飲料には違わないけどね? なんというかこう、期待してただけにガッカリ感がね?
ちなみに俺はコーラはコ◯派だ。ペ◯シも悪くないと思うが◯カの方が好きだ。
「あまり見たことのない飲み物ですね……」
クリスが炭酸飲料の入った箱を眺めて呟く。そんなにマイナーなのか……いやマイナーだろうけれども。それはわかっていたけれども。ミロに聞くまで誰も知らなかったし。
「飲んでみるか……? ちょっと好みの分かれる風味だが」
「良いのですか?」
「良いぞ。新しいのを開けようか」
「あ、いえ、飲みきれないかもしれないですし……」
そう言ってクリスは俺の持っているボトルにチラリと視線を向けてきた。えぇ……俺は別に良いけどさぁ。
「貴族の子女としては良いのかね、それは」
「細かいことを気にしてはいけませんよ」
そう言ってクリスがニコリと微笑むので、俺は炭酸飲料のボトルをそのままクリスに渡した。
「良いか? シュワッとして刺激が強いから少しずつ飲めよ。場合によっては咽たりするするから」
「わかりました……んんっ!?」
ドク◯――この世界での商品名はミスターペパロニだからミスペか。ミスペを口に含んだクリスが驚いて目をまん丸くさせている。炭酸は初体験だったか。
「甘くて……口の中がパチパチします。でもこの香りはどこか薬品を彷彿とさせるような……?」
「俺の知る限りでは、この手の飲料の歴史は古い。元々は各種の薬草を調合したハーブ飲料だったとかって話だな。でも、薬草を調合しただけだと飲みにくいから甘いシロップなんかを加えて、そのうちにこのシュワシュワっとなる炭酸を添加してこれみたいな清涼飲料になったらしい」
この世界ではどうか知らんが、地球では概ねこういう流れでできた飲料だったはずだ。
「ミロ」
「はい。いかが致しましたか?」
「これと同じような……いや、同じでなくていいから、在庫のある炭酸飲料を一本ずつ注文する。ノンアルコールのものでな」
「承知致しました。そちらの条件ですと、他に四種類用意してございます」
「じゃあそれを各種一本ずつ。気に入ったら追加で注文する」
「承りました」
ふとクリスの方を見ると、ミミにミスペのボトルを渡していた。ミミもまた同じくミスペを飲んで目をまん丸くしている。可愛いなぁ、こいつら。でも君たち、回し飲みはちょいとばかりお行儀が悪くないかね?
「不思議な飲み物ですね」
「なんでパチパチするんですか?」
ミミが興味津々といった様子で俺に視線を向けてくる。そんなミミに俺は記憶を掘り起こしながら解説をした。
「二酸化炭素が添加されて炭酸飽和を起こすとそうなるんだ。どうにも宇宙空間とは相性が悪いようで、惑星上でしか取り扱われていないらしい」
「じゃあ、このしゅわしゅわしているのは二酸化炭素なんですか?」
「そうだな」
「なるほど……それは確かに軌道上コロニーとは相性が悪そうですね。これ、容器の中は高圧ですよね?」
「そうだな、高圧だな。蓋をした状態で振ったりしてから開封すると中身が噴き出したりもするぞ」
俺の返答にクリスが納得したように頷く。やっぱ炭酸飲料は軌道上コロニーや宇宙船でも飲むのが難しいのか……重力と気圧がちゃんとしていればなんとかなりそうなものだが。
いや、宇宙進出初期時代は人工重力発生装置とかが無かったのかもしれん。やはり開発されるまでに廃れて埋もれていったのか……惑星上居住地では流通し続けたんじゃないかと思うんだが。それとも何か炭酸飲料が一気に廃れる事件でもあったのだろうか? 不自然なくらい流通してないし、知ってる人が少ないんだよな……謎だ。
「その奇妙な飲み物についてはもう良いわよ。それより昼食の後はどうする? 私としてはブティックとやらに行ってみたいんだけど」
「お? いつも傭兵スタイルのエルマがおめかししてくれるのか?」
炭酸飲料を奇妙な飲み物呼ばわりするのは引っかかるが、いつも同じような傭兵スタイルで過ごしているエルマが普通の服を着るというのには興味が沸く。ミミは俺が買い与えたおとなしめのクラシカルロリータを着たり、自分で買ってきた普段着を着たりすることはあるんだけど、エルマはいっつも同じような格好なんだよな。別に金がないわけじゃないはずだし、恐らく趣味の問題なんだろうと思っていたが。
「おめかしってあのね……私だってTPOを弁えた格好くらいするわよ」
「もっとTPO弁えて。船の中でのんびりする時くらいもっとラフというか傭兵っぽくない格好して。どうぞ」
「いやあのね……あんたがそう言うなら考えておくけれど」
ちょっと不機嫌そうに眉根を寄せながらも顔が赤い辺り、まんざらでもないようだな。良いぞ、是非もっといろいろな格好をしてくれ。
「ついでと言ったらなんだが、クリスの着る服やその他必要なものなんかも見繕ってくると良い。俺の口座から払っていいぞ」
「そ、そんなことをしていただくわけには」
「いや、必要だろう」
「必要ね」
「必要ですよね」
俺達全員に口々に必要だと言われてしまったクリスが黙り込む。
「大丈夫だ、その分クリスのお祖父さんからたんまりと頂くからな」
「そ、それはそれでちょっと……」
「気にするな。色々とストレスも溜まってるだろう? 難しいかもしれないけど羽目を外すと良い」
意外と普通に見えるが、クリスは両親を失った直後なのだ。船で過ごした二日間の間はまだ気が張っていたかもしれないが、ここで二週間過ごすうちに絶対にどこかで張り詰めた緊張の糸が切れる瞬間が来る。
溜まったストレスを今のうちに少しでも解消しておけばクリスの負担が少なくなる……といいなと俺は思っている。ぶっちゃけ、俺にできることなんてこれくらいしかないのだよな。俺とクリスとでは立場も生い立ちも何もかも違いすぎるから、寄り添ってやるのは無理だ。両親を失って酷い目に遭った、という意味ではミミの方がまだ彼女に寄り添える存在だろう。
「ミロ」
「はい。キャプテン・ヒロ」
「海で泳ぐことはできるのか?」
「はい。当惑星の海水は海水浴に適した成分に調整されています。海中には救難ボットも待機しており、不足の事故が起こった際にも迅速な救助を行うことが可能です。また、当施設には高度な医療施設も併設されているため、危険は最小限と考えて頂いてよろしいでしょう」
「なるほど。俺も流石に水着は無いから、ブティックで買わなきゃならんな。フィッシングなんかも楽しめるのか?」
「はい。当惑星の海洋にはフィッシングに適した生命体が多数放流されており、この惑星独自の生態系を形成しています。当施設にもフィッシングに適したポイントが多数ありますので、ご用命とあらばご案内させていただきます」
「それは何よりだ。色々とレジャーを楽しめそうだな」
ふと視線を感じてミミ達に視線を向けると、何故かポカンとした様子で俺を見ていた。何だよ?
「あんた……やっぱりいいとこのボンボンなんじゃないの?」
「な、なんだか慣れた様子でしたね?」
エルマは何故かジト目で、ミミは何故か憧れの視線を向けてくる。何故にWhy? クリスに視線を向けると、何故かクリスも感心したような様子だ。
「ヒロ様は海水浴やフィッシングに自然に慣れ親しんでいるんですね」
「そりゃそう……」
ここで気がついた。普通、コロニー住みの人間は海で泳いだり、魚を釣ったりというような発想は出てこないのだろうと。軌道上コロニーにおいて、水というのは貴重なものだ。生命体の生存に必要不可欠な物質である水というものは厳重に管理されており、大量の水の中を泳ぐといったことは普通はできない。少なくとも、俺は今まで軌道上コロニーで水泳ができるプールなど見たことがない。
そして、海に魚がいて、それを釣るなんていうのも海に関わることがないコロニー育ちの人間には縁のない趣味であろう。惑星上居住地に住んでいる人であれば或いはフィッシングを趣味にしている人もいるのかもしれないが、そうでなければその存在すら知らないかもしれない。
「色々あるんだよ、色々。うん。惑星上居住地には宇宙ではできない遊びがたくさんあるぞ」
「色々、ですか」
クリスに俺が異世界から来たことを話すわけにはいかないので、誤魔化しておく。誤魔化し方が雑でクリスのいいように解釈されてしまう可能性はあるが、異世界から来たなんていう頭の中身を疑われるような真実を告げるよりはマシだろう。
「お食事の用意が整いました。ダイニングにお越しください」
「おおっとメシだメシだ。さぁ食おう。どんな食事が出てくるか楽しみダナー」
「露骨過ぎるわよ」
エルマの突っ込みを無視してダイニングへと向かい、テーブルに着く。しかし、食事の用意ができたとは言っていたが、一体どういうことだろうか? 少なくともテーブルの上には何もない。ミスペのように配達されるのだろうか?
ああ、ミスペはどうやって配達されてきたかというと、一抱えほどの大きさのドローンのようなものがロッジの前まで来て箱を置いていった。
どういうシステムなのかミロに聞いてみたのだが、この惑星の赤道直下に物資の集積基地があり、そこからマスドライバーによって物資を積載したコンテナが大気圏外に射出され、弾道飛行で配達地点の上空に到達、上空でコンテナがドローンに変形して降下してくるらしい。
なんという力任せな……と思ったのだが、地表面の殆どが海洋であるこの惑星にレールやトンネルを用いた物資輸送システムを構築するのはコストが掛かりすぎるし、海上や海中を輸送するのは時間がかかりすぎる。
当初はドローンによる空輸を考えたのだが、そうするのならば速度や航行距離の関係で物資の集積所を複数作る必要がある。それだけ提供できるリゾート地が減るわけだ。
そういうわけで考え出されたのがマスドライバー方式。発注された物資を積み込んだドローンコンテナを赤道直下に設置されたマスドライバーで撃ち出し、弾道飛行で素早く目的地に商品をお届けする。帰りはコンテナドローンが恒星光をエネルギー源として自力でゆっくりとマスドライバー基地に帰還するらしい。
俺の感覚だと荒唐無稽なトンデモアイデアにしか思えないのだが、少なくともこの惑星ではそれで上手く回っているのだそうだ。科学の力ってすげー。
そんな事を考えていると、ロッジの扉が開いて何者かがロッジへと入ってきた。
メイドさんである。耳のあたりに機械的なパーツの付いたメイドさんである。メイドロボである。まさか、実用化されているのか……!? それも一人ではない。合計五名ものメイドさんがワゴンを押してロッジに入ってきた。全員寸分違わず同じ顔に見える。
「本日のランチをお持ち致しました」
メイドロボ達がお辞儀をしてテキパキと料理の配膳を始める。その手際は見事で、動きに機械的な『硬さ』などは見当たらない。すげぇなメイドロボ。俺も一台欲しい。
「あれは俺も一台欲しいって顔よ」
「ヒロ様! メイドロイドなんて買わなくても私がお世話しますよ!」
エルマが俺の思考を的確に当て、何故かミミが椅子を鳴らして立ち上がり、鼻息を荒くしている。メイドロボじゃなくてメイドロイドって言うのか。
「メイドロボは男のロマンだぞ?」
「申し訳ありませんが、ユニットS‐048は非売品です。あと、本機はロボットではなくアンドロイドです」
メイドロボ改めメイドロイドに振られた。なんということだ。
「しかしながら同型のモデルはオリエント・コーポレーションより購入頂くことが可能です。よろしければお客様の小型情報端末にカタログをお送りいたしますが」
「是非頼む」
「ヒロ様っ!」
ははは、見るくらいは良いじゃないか。流石に買おうとまでは思わないよ、多分。ぷんすこと怒るミミはメイドロイドに何か嫌な思い出でもあるのだろうか? あとで聞いてみるとしよう。
さぁ、今はメイドロイドのことは横に置いておいて、食事の時間だ。
>>▼一言
>>コーラのつもりが20本のドクペが来たりして....
(゜д゜ )
(゜д゜)
(´゜ω゜`)<おめぇエスパーかよォ!?(予想できる結末だったね!




