#067 エルマ先生のリゾート惑星講座
ちょっとリアルの方で来客があって集中力が……短いけどゆるしてネ!_(:3」∠)_
リゾート惑星へと向かう準備は着々と進んだ。というか、俺はエルマとミミに任せっぱなしで主にクリスと話をしたり、一緒に動画を見たり、カーゴルームでグレネードの投擲練習をしたり、一緒にトレーニングルームで身体を動かしたりしていただけなのだが。
「とりあえず、予約は取れたわ。明後日からの滞在予定で、期間は二週間ね。合計で200万エネル内に収まったわよ」
「数万エネルの決済を自分の手でやるのって、本当に手が震えました……」
しれっとして特に堪えた様子の無いエルマに対して、ミミはかなり疲れ切った感じだ。ミミは俺と同じで庶民派の感覚を持っているからそうだろうな。エルマは元々がどっかのお嬢様っぽい上に傭兵としての金銭感覚もあるせいか全く堪えた様子がない。実に頼もしいな。
「これから先もこういう金額の大きい買い物をミミにまかせることもあるだろうから、慣れてもらうしかないな」
「……がんばります」
新しい船の購入とか、カスタマイズをするとなると簡単に数百万エネルとか吹っ飛ぶからね。
「明後日までどうやって時間を潰すかね?」
「そうねぇ。敵に私達が出港準備をしているってことが伝わるようにするのがいいわよね。追ってきたところを一網打尽にするなら、こっそりと出ていくよりも堂々と出港準備をして、堂々と出ていったほうが良いわ」
「とは言っても、具体的にはどうする? 出港準備として物資の補給とかするのは怖いだろ?」
「それはそうね。クリスから話を聞いた私達が自分達を警戒しているっていうのを相手もわかっているはずだし、チャンスが有れば容赦なく手を打ってくるでしょう。ちょっと窮屈だけど、船の中に引き篭もっているのが正解でしょうね」
「明後日ということは、今日と明日の二日間だけですか。二日くらいならどうということはないですよね」
「そうだな。ハイパードライブで航行してるとそれくらい缶詰になるのは日常茶飯事だし」
まぁ、クリスが居るわけだからそうそう爛れた生活はできないわけだが。流石にね、クリスがいるのに自重しないほど俺も我慢がきかないわけじゃないからね。
「そういやどんなところに滞在するんだ? 俺もぱぱっとパンフレットには目を通したが、あまり高いところのはパンフレットを見もしなかったから想像もつかないぞ」
「あ、そうでしたね。ええと……」
「行く前に何もかも知っていると楽しみが半減するわよ?」
「何もわからないで右往左往するのも問題だろ。特に俺はほら、自慢じゃないけど世間知らずだし」
「そうなのですか?」
「あー……まぁ、ちょっと複雑な事情があるのよ」
首を傾げるクリスに対しエルマが言葉を濁す。異世界から来ましたとか記憶喪失なんですとか言うのも面倒だしな。別にクリスを仲間外れにするわけじゃないが、理由を話す必要も無いと言えば無い。
「今回私達が行くのは海洋惑星のシエラⅢですね。惑星表面の八割以上が海面となっていて、惑星上には大陸と言えるようなものは一切ありません。あまり大きくない島が各地に点在しているような形ですね」
「なるほど……どうやって管理してるんだ、それ」
そんなに大きくない島となると、常にリゾート会社の職員が駐在しているというわけでもないだろう。
「あまりリゾートに適さない大きめの島に管理AIを置いて、その管理AIが統括するアンドロイドやロボットに滞在者の世話をさせるようになっているようです。セキュリティに関しては無人兵器やガードロボットを配備しているとか」
「それって管理AIがクラッキングされたりしたら滅茶苦茶危なそうだよな」
「そう簡単には行かないわよ。惑星を統括管理している陽電子AIのセキュリティレベルはとても高いらしいし。もし統括管理AIをクラックするなら、少なくとも同じレベルの陽電子AIを二つは用意しないと無理じゃないかしら」
「そういうものか」
「そういうものよ。さっきも言ったけど、リゾート惑星には帝国貴族や有力者、他国の要人も利用することがあるのよ? そんなにヤワなセキュリティじゃないわ」
なるほどなー。そんな場所なら確かに安全そうではあるな。
「海洋惑星ってことは、今回の滞在場所では海のレジャーを楽しめるってことだな」
「そうですね。私達が滞在するのは中規模くらいの島を一つ貸し切るプランで、クリシュナが発着できるスペースもあるみたいですよ。私達以外の人が島に近づくと、警告後実力行使されるそうです」
「なにそれこわい」
「岩に擬装したレーザー砲台とか、地下や海底に配備されたガードボットとかいろいろ配置されてるらしいわよ。正直、襲撃をかけるのは自殺行為ね」
「頼もしいですけれど、ヒロ様の仰ったように何かの間違いでそれらに襲われると為す術もありませんね」
「そうならないことを祈ろう……それにしても島を一つ貸し切りとは、なかなか思い切ったプランだな」
「高いなりのプランではあるわよね。海辺で日光浴を楽しんだり、海水浴を楽しんだり、自然の中を散歩したり、可愛らしい異星生物と戯れたり、色々できるみたいよ」
「ほー。そりゃ楽しみだな」
可愛らしい異星生物には興味があるな。フェ◯スハガーとか凶悪化したグ◯ムリンみたいなやつだったら怒るぞ、俺は。見た目可愛らしいのに頭が四つに割れて凶悪な顎がクパァするやつとかな。
「食事は新鮮な海産物や、近隣星系で採れる様々な珍味が饗されるそうです」
「ミミ的にも満足できそうな感じだな」
「はいっ」
今からまだ見ぬ宇宙グルメに思いを馳せているのか、ミミの目がキラキラしている。しかし、新鮮な海産物ね……見た目的に俺が受け容れられるものなら良いんだけどな。まぁ、日本人のメンタルを有する俺にかかれば海産物なんて何でも美味しくいただけそうな気がするが。
そんな感じで訪れる予定のリゾート地の話で盛り上がったりしつつ、クリスを船に迎えた初日は穏やかに過ぎ去って行くのであった。




