#577 「お前は新婚夫婦を相手に何を言っているんだ……?」
今回の更新はここまで!
また地獄めいたスケジュールで原稿だよ!!!_(:3」∠)_
デクサーⅢで行われた結婚披露宴は特にこれといったトラブルもなく無事行われた。
いや、トラブルが本当に全く無かったのかと言われると少し首を傾げるところだが……少なくとも殺人レーザーが飛び交ったり、白刃が煌めくような事態は起こらなかった。
宴会料理としてコーマット星系の特産料理――小型犬くらいの大きさがある芋虫の姿焼き――が出てきてクリスの顔が真っ青になったり、うちの酒カス達が浴びるように酒を飲んで俺がちょっと恥ずかしく思ったり、ミミの妹として結婚披露宴に出席したルシアも酒をかっ喰らってへべれけになったり、護衛の近衛騎士達も酔っ払ってへべれけになったり、もうこいつらさぁ!
身分を隠しての外遊というか旅行は初めてなんだろうから、多少羽目を外すのもわからんでも無いんだが……まぁ、それだけ甘えてきていると思えば可愛いものか? こんなに大きな隙を晒してくる辺り、少なくとも信用というか信頼というか、心を許しては貰えてるんだろうな。俺としてはそんなに心を許されても困るのだが。一体どうしろと言うんだ。
「おかしいですね。ホロ小説とかホロコミックだと無防備に隙を晒せば『隙を見せるお前が悪いんだぞ?』とか言って襲いかかってくる筈なんですが」
「お前は新婚夫婦を相手に何を言っているんだ……?」
朝っぱらから様子のおかしいことを言っているルシアに思わず突っ込む。お前は一体何を読んでいるんだ、何を。この状況下で俺がお前を襲いに行くのは真っ当な小説とかコミックの展開じゃなくて、どちらかといえばRが18とかの厚かったり薄かったりするブックの展開だろ。
いや、あんまり知見は無いんだが、ガールというより所謂ちょっと大人なレディ向けのコミックとか結構えげつないとか聞いた覚えがあるな。そういう類か?
「ヒロ様、流石にこれは妻としてあの人を張っ倒して良いと思いませんか……?」
「おお! ドロドロの愛憎劇ですか!? それもまたよしですねっ!」
ワクワクしてんじゃねぇよこの愉快犯がよぉ。本当にお前はファッキンエンペラーの孫だな。
「クリス、行って良いぞ」
「はいっ」
「ふふ、負けませんよー!」
ついにキレたクリスがルシアと取っ組み合いを始めた。割と本気でかかっていっているクリスに対し、ルシアは余裕の構えである。あれはちょっと分が悪そうだな。
「貴方達は私が相手をしましょう」
「私も加勢するわよ」
「いや、私達は別にですね?」
「ワンチャン狙ってるわよね?」
「ひゅ~ふひゅ~♪」
「口笛、吹けてませんよ」
「やめましょう。倍の数の近衛に勝てるわけないですよ」
「よし、その喧嘩買ったわ!」
そしてあっちではセレナ&エルマのタッグがイゾルデ達女性近衛騎士四名とプロレスめいた乱闘を始めた。流石に二対四ではイゾルデの言う通り分が悪いのでは? と思ったのだが、なかなか良い勝負をしている。あー、エルマはサイオニックパワーを使った身体強化も併用してるな。エルマがサブミッションで一人ずつ畳んで、畳み終わるまでセレナが他の三人を相手する形か。
「あの、ヒロ様。止めなくて良いんですか……?」
「あれだよ、キャプテン。今こそ『私のために争わないで!』ってやるところじゃないかい?」
「いやぁ、ルシア達はいっぺん痛い目に遭ったほうが良いんじゃねぇかな……?」
「朝から元気やねぇ……」
「じゃれてる……のかなぁ?」
「ふふ……いざとなったら此の身どもも加勢致しましょう」
「朝っぱらから余計な仕事は増やさないで欲しいんだけどねぇ」
ミミだけは心配そうにしているが他の面子は面白がってたり呆れたりしてるだけだな、これは。クギだけ滅茶苦茶乗り気なのがちょっと面白い。尻尾をフリフリしている。クギってたまに好戦的なところを見せるというか、はっちゃけようとするんだよな。
☆★☆
「わたしのだもん。わたさないもん」
「はいはい、クリスのだよ。ああはい、エルマとセレナもな。みんなもな」
負けたクリスが俺の膝に頭を載せてグズっているのを頭を撫でて慰めながら、勝利を収めたセレナとエルマと皆にもそう言っておく。
クリスに勝ったルシアであったが、次に名乗りを上げたクギに完膚なきまでに叩きのめされていた。いや、叩きのめされたというか、なんか合気道めいた謎武術で自爆させられたというか。クギの身体能力がエルマ並みだということは元から知っていたが、まさかあんな隠し玉を持っているとは。
「油断しました……」
クギを舐めてかかってビターンと凄い音を立てて床に叩きつけられ、一撃で悶絶したルシアが塩をかけられた菜っ葉のようなしおしお加減でまたもや正座をさせられていた。今回は首にかけるボードが無いので、代わりにそこらで捕獲した円盤めいた清掃用ボットを三段重ねにして重しとして膝の上に抱かせている。
近衛騎士達はエルマに物理的に折り畳まれたり、セレナのゴリラパワーめいた膂力によるラリアットで縦に回転したりしたので、ダレインワルド本家の医務室送りになった。
あれだけの勢いで床に叩きつけられたのにピンピンしてるルシアは頑丈過ぎんか? どういう身体強化を施されているんだよ、あのお姫様は。
「朝からなんか疲れたなぁ……あー、次はシエラ星系か。ミロは元気にしてるかね?」
「赤道付近に設置されている中央管理センターの守りは盤石です。健在かと」
「今もメイドロイドの販売ノルマに追われてんのかな。今後、母艦をより大きなものに買い替えることを考えるとメイドロイドを増やすことも考えたほうが良いかね? あちこちフラフラするついでに貨客船としてもやっていくのとか面白そうだよな」
商売の手を広げるのも面白いんじゃないかと思うんだよな。ブラックロータスよりもデカい船にするなら普通に武装貨物船としてやっていくだけでもそこそこ儲かりそうだけど。
「ほぼ確実に戦闘に巻き込まれる貨客船とか絶対需要ないやろ……?」
「負けることはまず無いから逆に安全かもしれないよ?」
「絶対に戦闘に巻き込まれるけど負けないから事故率0%とか、事実だとしても嫌がられるんじゃないかい……?」
「でも、ブラックロータス並みの内装にして、設備も更に充実させるなら貨客船としてはある意味最高レベルのサービスって事になりそうだよねぇ……? 私という船医もいるわけだし、商業ギルドには貨客船としての登録が通りそうに思えるねぇ」
「ラグジュアリーな傭兵生活をプチ体験、みたいな形で売り出せばもしかしたら……?」
各方面から「ラグジュアリーな傭兵生活ってなんだよ」ってツッコミが入りそうだな。ツッコミどころが強すぎて逆に興味を引くかもしれないけど。
「ホールズ侯爵家の領地内に母艦を調達できそうな星系って無いか? できればスペース・ドウェルグ社のシップヤードがあると良いんだが」
「うちの領地では船を作っている星系がいくつかありますから、後で調べておきます」
「あ、セレナさん。私もお手伝いします!」
「はい、ミミさん。お願いしますね」
セレナとミミが互いに微笑みあう。ミミの血統が判明してから暫くギクシャクしていた二人だが、最近はもう慣れてきたのか自然に接することができるようになってきたみたいだな。ミミは良い子だからな。割とグイグイ行くし。セレナもそれで慣れたんだろう。
「さて、そろそろ動くかぁ……やることが盛り沢山だし」
まずシエラ星系のリゾートで羽根を伸ばして、クリスのサポート用の機械知性を見繕って、場合によってはメイドロイドを増員し、その後はホールズ侯爵領でなにやらきな臭い感じの仕事をやらされる予定で、ついでに新しい母艦も見繕って……本当にやることが多いな。
まぁ、行動の指針があるのは良いことだ。一つ一つ確実にこなしていくとしよう。




