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#554 「ん? ふふふ、乙女の秘密ってやつだよ」

「彼女の主治医、というか帝国の身体強化技術者としてはさもありなん、といったところだよねぇ」


 翌日。御髪を整えられ、衣装合わせのために薄着で順番を待っているショーコ先生がネーヴェの件についてそうコメントをした。


「いくら連邦の連中がしらを切って帝国のでっちあげだって言ってもさ、専門家が見ればネーヴェくんに施されていた身体改造技術が連邦製のものだってことは一目瞭然なんだよ。私達ならもっと上手くやる(・・・・・・・・)からね。艦隊戦、ないし管制に特化した人員を作ったとして、わざわざあんな缶詰をこさえて押し込めるなんてあんな無様な真似はしないよ」


 ショーコ先生がそう言って肩を竦める。それと同時に揺れ動く大山脈に視線を奪われないようにするのは一種の試練だと思うんだ。薄着だとは思ってたけど、まさかブラをしていないのでは?


「そもそもの話をしてしまうと、ネーヴェさんのようなコンセプトで艦船を強化するというのであれば、帝国の場合は我々(・・)を動員すれば良い話です」


 俺のすぐ側に立ったまま待機しているメイからもそのようなコメントが為される。ああうん、そうね。戦闘艦の管制をやらせるって言うならわざわざ人間を電脳化・強化して接続するよりも機械知性を船に乗せて全部やってもらう方が早いし強いわ。


「「「……」」」


 そんなメイの発言を聞いたエルマとかセレナとかその他セレナの家族か親戚の皆さんだと思われる貴族の皆様が苦虫を噛み潰したような顔をしている。それがどういう感情のものなのか俺には未だによくわからないんだよな。グラッカン帝国の貴族は機械知性を嫌っている――というわけでもないようなんだが、とにかく機械知性が関わる話題を耳にするとああいう表情をする。


「前から思ってたんだけど、機械知性と帝国貴族ってなんかこう、確執的な何かがあったりするのか?」


 側に立つメイにこっそりとそう聞いてみる。俺も本格的に帝国貴族の一員になるわけだから、そろそろちゃんとこのあたりの事情を聞いておいたほうが良い気がするんだよな。


「はい。いいえ、ご主人様。我々と帝国貴族の皆様方との関係は極めて良好です」


 メイがいつも通りの無表情で何の気負いもなくそう断言する。その一方で貴族の皆様方の表情は苦虫を噛み潰したような顔を通り越して真顔である。いや、目に力を感じられないからどちらかと言うと虚無顔だろうか。やっぱり何かあるんだな、これは。今度メイと二人きりの時にじっくり聞いてみるとしよう。


「しかしお貴族様だよねぇ。複数のドレスメーカーを呼びつけちゃうんだからさぁ。私みたいな庶民にはわからないけど、きっとどこも知る人ぞ知る老舗のドレスメーカーなんだろうねぇ」

「わざわざ呼びつけるのもどうかと思うがね……ホロスクリーンでもなんでも使ってパパっと終わらせられそうなもんだが」

「わかっとらんなー、兄さんは。実際にモノ見て……この場合は顔合わせないとわからん空気感っちゅうもんがあんねん、こういうんは」


 そう言いながらドレスを着たティーナがこちらへと歩いてくる。なんというか、凄いドレスだな。可愛らしさを感じさせるのに、胸元が出ていたりヒップラインがしっかりと出ていたりしていてセクシーでもある。なんだろう、ちょっと大人っぽい魔法少女服……? ギリギリR-15くらい?


「凄いドレスだな。似合ってるよ」

「そう? 兄さんにそう言ってもらえるならええ感じやな。何か視線が気になるけど」

「いやぁ……色っぽいなぁと」

「本番で着るんやから、駄目よ?」


 ティーナがそう言って一歩引き、両手をクロスさせて構える。いや、今すぐ襲いかかったりしないし、もし本番の式が終わったとしてもそのドレスの値段を考えたら流石の俺も躊躇するわ。流石に航宙艦を買えるほどの金額だとは思わないけど、絶対それ数万エネルするだろ。下手すると桁が一つ上がってボロの航宙艦くらい買える金額になりそうだ。


「いくらお兄さんでもそこまではしないよ、お姉ちゃん」


 苦笑いしながら姉を諌めるウィスカもティーナと同じようなプリティ&セクシー系のドレスだ。なんだろうね、こう、やっぱりどう見ても魔法少女系の服に見えるのは。この世界、俺の常識からすると若干トンチキなファッションデザインが持て囃されてることがあるからなぁ。


「ウィスカも似合ってるよ。いくらお兄さんでもってのは余計だが」

「あはは……ちょっと恥ずかしいけど、似合ってるって言ってもらえて良かったです」

「ちゃんと運動してて良かったなぁ、ウィー?」

「それはお姉ちゃんも一緒でしょ」


 ニヤニヤするティーナにウィスカがジト目を返している。確かに皆ちゃんと運動してるから、身体が適度に引き締まってるものな。というか、大して運動もしていないのにショーコ先生の抜群のプロポーションはどうやって保たれているんだ?


「ん? ふふふ、乙女の秘密ってやつだよ」

「何も言ってないんだが……」


 乙女の秘密ねぇ……人体に関する知識については文字通り専門家のショーコ先生のことだから、何か裏技というかイカサマめいた方法でプロポーションを維持しているのかもしれない。

 まぁ、あまり聞き穿るのはやめておこう。女性の美容に関するあれこれに男が口を出しても何も良いことは無いだろうから。

 そうしているうちにショーコ先生がお呼ばれして行き、入れ替わりでミミとクギ、それとネーヴェがやってきた。

 三人ともドレスがよく似合っていた。クギは素材が良いからか、帝国風のドレスを着てもよく似合うな。ミミはもう胸のボリュームが……転び出そうというかはち切れそうというか。それでいて均衡が取れているというか、バランスに違和感は一切無いのが不思議だ。

 そして……。


「いやー、化けたというかなんというか……妖精みたいだな」

「それは褒めているのかい? キャプテン」

「褒めてるさ。儚げで現実離れしてるって意味だよ」


 実際に透明な羽がついているとかそういうわけではないが、薄青い生地とリボンで装飾されたドレスがネーヴェに似合うこと。正に彼女のために作られた衣装なのだから、それも当然と言えば当然なのだが。


「なら良いけどね。綺麗な服を着られるのは良いんだけど、これで見せ物になるのかと思うと少し気が重いよ」

「それでベレべレム連邦の連中を煽り倒せるんだから我慢するしかないな」

「はぁ……仕方ないね。そう言われると我慢しようって気になってきたよ」


 そう言ってネーヴェが俺の隣に座る。ドレスを着たままソファなんかに座って大丈夫なのかと思ったが、見た目の儚さに反して相当強靭な生地であるらしく、全く問題ないそうだ。


「エルマとセレナは?」

「脇役の私達と違って、お二人は式のメインですから。調整にも時間がかかるみたいです」

「なるほどなぁ。脇役って言うけど、俺は皆を蔑ろにする気は全く無いからな」

「はい。わかってますよ、ヒロ様」


 そう言ってにこりと眩しい笑顔を浮かべながら、ミミが俺を挟んでネーヴェの反対側に座って抱きついてくる。


「とはいえ、今後の活動に関しては色々と変わってきそうではありますよね」

「うーん、そうだなぁ……俺としては今まで通りでいきたいところだが、完全に今まで通りってわけにもいかないのかもな」


 セレナの今後の身の振り方に関しても不透明だし、どうしてもダレインワルド伯爵領に縛られてしまうクリスのことも考えなければならない。

 今後の活動拠点をダレインワルド伯爵領に移すとして、どうやって傭兵稼業を続けていくかという問題もある。

 また、ダレインワルド伯爵領を活動拠点とするとして、そもそもどのように活動拠点とするのかという話もある。どこかのコロニーにドックを借りるなり作るなりするのか、惑星上居住地に拠点となるドックつき建造物を造るのか。

 そもそも結婚した後に今まで通り、とまでは行かなくとも自由にあちらこちらをフラフラすることが許されるのかどうか。クリスは俺達というか俺のことをよく解ってくれているから大丈夫だと思うんだが、クリスが良くても他の人――つまりダレインワルド伯爵や彼の家臣達、そしてホールズ侯爵閣下がどう思うかだな。

 その辺りのことも含めてしっかりと話し合いたいが、そうするにはクリスも交えて話さないといけないしなぁ。何にせよ今は状況に流されるしかないか。

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― 新着の感想 ―
クリシュナにお願い!コーラくれ!運命操作力でなんとかならん?
ファイブスター物語の初期にあった設定の「無重力ブラ」を思い出したり。 この世界にも、もっと洗練された形でありそうだなとかちょっと思った。
あまりにもヒロの名は 大きく成り過ぎました。 平凡は非凡、もう戻れませんね。
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