#544 「え? なんですかその反応は」
こっちも再開!
遅れたのはゆるせ!( ˘ω˘ )
なんかよくわからない儀式の後に半分神様というか、上位存在になりかけている駄狐と縁を結んだり、なんやかやあってその駄狐がクギに取り憑いたり、ミミの途轍もない豪運は俺の運命操作能力と相関関係にあることが発覚したり、みんなとデートをしたり、エルマがゴリラウーマンを超えたスーパーゴリラうーマンになったり……エルフ? ちょっとわかんないですね。
まぁとにかく小さいことから大きいことまで色々あったヴェルザルス神聖帝国への滞在だったが、その滞在期間も終わりを迎えようと――。
「あと五年! いや三年でいいから!」
――していたのだが、ブーボ氏をはじめとした聖遺物研究者や落ち人研究者らに盛大に引き留められていた。彼ら曰く、研究期間が短すぎてデータを取り切れていないらしい。
「そんなに滞在していられるか。下手すると帝国の侯爵家と伯爵家が俺に追手が放たれかねんわ」
グラッカン帝国に戻ったらダレインワルド伯爵家に婿入りした上でホールズ侯爵家とウィルローズ子爵家の御息女を娶るという、グラッカン帝国史上でも稀に見る貴族家が三家も絡む結婚式が待ち構えているんだぞ。それをぶっちぎったらウィルローズ子爵家以外の二家からマジで追手が送り込まれかねん。というか、クリスとセレナが揃って突撃してきてもおかしくないぞ。
「大丈夫、うちのセキュリティは銀河一だから!」
「そうかもしれんが、追手をかけられるような事態そのものが大問題なんだっつーの!」
確かにそこら中にサイオニック能力者がうようよしている上、実質鎖国状態に近いヴェルザルス神聖帝国内のセキュリティは万全なのかもしれないけど、そういう話じゃねぇから!
「わかった、わかったよ……あと半年ってことで妥協するよ!」
「連れていけ」
「アァァーーーーーッ!?」
俺の指示で屈強な護衛官――全員獣耳だったり鬼みたいな角が生えていたりする――が容赦なくブーボ氏達を引きずっていく。
今の俺がどこで何をしているのか? というと、ヴェルザルス神聖手国の中枢とも言える主星ヴェールの大社で出立前の儀式を受けていた。何の儀式なのかというと、所謂出発式というかなんというか……ヴェルザルス神聖帝国では国の外に出て行く時に受けなければならない儀式やら何やらが本当に色々あるらしい。クギ以外のうちのクルー達にはその重要性がまったくわからんのだが、外に出る時には必須なのだと言われてしまうと納得する以外の選択肢がない。
まぁ、出国前の手続きみたいなものだと考えればそういうものかと納得もできたし、帰りはゲートウェイを使ってグラッカン帝国領までひとっ飛びなので、儀式やら手続きやらに三日かけるくらいなんということもない。ゲートウェイを使わずにハイパードライブを使ってハイパーレーン経由でヴェルザルス神聖帝国からグラッカン帝国領に帰ろうとすると、それだけで下手すりゃ一年以上かかりそうな距離だからな。
「あの人達も凝りませんね」
そう言って俺の隣でむっつりとした表情を浮かべているのは狸耳サムライガールのコノハである。一応俺の護衛という立場でこの場に控えている。尤も、面会者が俺に掴みかかってでも来ない限り、彼女の活躍の出番は無いだろうが。
「どんな時代でもどんな場所でもどんな国でもああいう連中は変わらんな」
「落ち人の貴方が言うと説得力がありますね」
「そうかもな」
国や星どころか宇宙というか世界というか、次元が違っても同じような感じなのだから、知的探究心に突き動かされる連中というのは本当にどこでも変わらないのだろう。
「しかし儀式だなんだと七面倒臭いよな」
「私は武官なのでさほど詳しくはありませんが、要はよくないものを外に出さないための措置だと聞いています。うっかり外に法力以外での対処がほぼ出来ない存在を連れ出したりしてしまうと大変でしょう? 私達のところでは無害な存在でも、外に出て異常に増えてしまうと大変なことになるものもいますから」
「例えば?」
「祈り桜ですね。外にうっかり根付いて繁殖したりすると、多次元から怪物を喚びかねないので」
「なにそれこわ……」
あんなに綺麗な桜なのに、そんな危険な副作用があるのかよ。全て切り倒したほうが良いんじゃないのか?
「私達にとっては大事なものなんですよ。一種のインフラみたいなものです。詳しく話すのは面倒なので話しませんけど」
「そっかぁ……」
そう言われると逆に知的好奇心が出てきてしまうんだが……まぁ良いか。知ったところで祈り桜を外に持ち出せるわけでもなし。うん? 祈り桜をうっかり持ち出さないようにするために何故儀式が必要なんだ? 種だの苗だのを持ち出さないようにすれば良いだけでは? もしやあの桜、他の要因で増えるのか? なんだか考え始めると怖くなってきたぞ。
「終わりましたぁー」
「全く動かないってのも逆に疲れるわよね」
「うち、うっかり寝そうになったわ」
「みっともないからやめてよお姉ちゃん……」
「あ、足が……床に座るのは慣れないよ」
「ドクターは運動不足なんじゃないかな」
俺が祈り桜について「理解すると怖い話」みたいな状態に陥っていると、ミミ達が帰ってきた。皆儀式用の薄手の白襦袢のような物を着ているのだが……うむ、ミミとショーコ先生の胸元の迫力よ。基本、ああいう着物は締め付けられるというか、押さえつけられることによってボリュームが控えめになるところなのだが、流石だ。素晴らしい。
だが、だからといってエルマ、ティーナとウィスカ、それにネーヴェが素晴らしくないというわけではない。エルマのスリムで均整の取れた身体は単純に美しいし、ミニマムながらもしっかりと肉付きの良い整備士姉妹も素晴らしい。ネーヴェは単純に可憐で可愛らしいな。
「……」
「何か?」
「視線が露骨過ぎます」
「全然興味ないフリしてチラチラ見るよりも健全だろ。皆素晴らしい。最高」
しかしクギだけ見当たらんな。立場的に儀式を執り行う側だというのはわかるんだが、何かトラブルか? 考えてみればクギの中にはこの国でもアンタッチャブルな存在だったタマモが入っているわけだからな。出発を三日後に控えたこのタイミングで「彼女を連れて行くのは許可できません」みたいな話が出てきてもおかしくはないな。俺の悪運体質から考えると。
「……いざとなったら大暴れした上でこの星系を人質にして脅すか」
「ちょっと今聞き捨てならない不穏な言動が突然出てきたんですが」
「いや、クギが来ないから。もしかしてタマモが入ってるから連れ出しちゃ駄目。新しい子あてがうから我慢してね? とか言われたらそうするしかないかなって考えてたところだ」
「それは……高度な政治的判断とかで……ありえなくは……ないですけど……」
俺の返答を聞いたコノハが瞳からハイライトを消しながら絞り出すようにして声を出す。あり得るのかぁ。まぁそういう考えを持つ奴がいてもおかしくはないよな。
「ただ、私を含めて貴方のことを知っている武官は猛反対すると思いますよ」
「そのこころは?」
「貴方と戦うくらいならそんなアホなことを言い出す間抜けの首を獲ることを選びます」
「そうしてくれると嬉しいな。そんな状況になったら俺は立ち塞がる連中は誰だろうがぶっ殺してクギを取り返しに行くから」
流石の俺も知り合いを殺したくはない。それでも必要なら殺すが。
「物騒な話はやめなさい。剣呑な気配がダダ漏れよ」
「ちゃんと口に出して言っておくことは大事だろ? そういうわけだから、頼むぞ? 今はデリケートな状況だから、余計なことはしてくれるなよ?」
「……伝えておきます」
コノハはそう言って深く溜息を吐いた。儀式が始まってから、俺はずっと全力で精神防壁を展開している。第二法力――テレパシーの類――での攻撃を警戒しているからだ。一番怖いのは第二法力で精神的に支配されてしまうことだからな。
「一応言っておきますが、落ち人と敵対した場合の被害については私達が一番知っていますから。まずそういう事態にはならないと思いますよ?」
「あー……」
「「「……」」」
「え? なんですかその反応は」
コノハの言葉を聞くなり天井を仰いだり、盛大に溜息を吐いたりし始めた俺達を見てコノハが動揺する。コノハくん、その言い方はアカンよ。その言い方は。




