#541 「おお、色々あるなぁ」
デート回も大事だよね( ˘ω˘ )(近日中にまた原稿期間に入ります。許してね! というか予定がキチキチに詰まっててくたばりそう
ミミの特殊性に関する話を聞き終えた俺とミミはその足で街へと繰り出してデートをすることにした。このところミミと二人きりで過ごす機会があまりなかったからな。そりゃ夜には二人きりで一緒に寝たり、イチャイチャしたりすることもあるが、それだけというのもな。やっぱり弾にはこうして二人で遊びに行ったりもしたいものである。
「うーん、面白いな」
「建築様式が少しエルフと似てますよね」
「そうだな、少し似てるかもな」
俺的にはエルフと似ているというより、日本の建築様式にかなり似ているって感想なんだが。それも俺が知っている現代的な建築様式ではなく、もっと古い感じの。言ってしまえば江戸時代、それも中期から後期くらいの。部分的に明治とか大正っぽいモダンな感じもある。
ただ、勿論それそのものというわけではなく、そこかしこに未来チックというかサイバーパンク風味があったり、明らかに科学ではなくサイオニックテクノロジー寄りと思われる要素もあったりしてかなり異国情緒が激しい感じなのだが。
エルフの文化様式というか建築様式はまたちょっと方向性が違ったんだよな。女性の正装はチャイナドレスっぽい感じだったし。ヴェルザルス神聖帝国で見かける所謂一般人の人々というのは和服とか和洋折衷っぽい感じの格好の人が多い。
「ミミもああいう服、着てみないか?」
「えー、似合いますかね……?」
「わからん。でも俺は見たい」
基本的に胸の大きい女性は和服があまり似合わないだとか聞くが、そんなものはどうだっていい。俺が着物を着たミミの姿を見たいのである。着物の柄が隠れる? 着物にシワが寄る? 知らんな。可愛いミミが綺麗な着物を着ればそんなデメリットを覆すほどの加点があるのは確定的に明らかだ。
「むー……ヒロ様も一緒に着てくれるなら良いですよ」
「オーケー。それじゃあまずは服屋を探そう。呉服店とかになるのかね?」
「どうでしょう? 道行く人に聞いてみます?」
「お上品なマダムか、ファッションセンスの良さそうな人に聞いてみるのが良さそうだな」
道行く人にいきなり声をかけて「良い服ですね! そういうのってどこで買えますか?」と聞くのはあまりに不躾というか、ある種かなりぶっ飛んだ行為のようにも思えるが、何せここは旅先である。
というか、俺達のようにあちこちを移動して回っていると、馴染みの店だの地元の名店だのといったものを探すのはネット頼りになる。いつもはそういうものに関してはミミにリサーチをお願いしているのだが、今日は急なデートだったし、明確に服を目当てとしているなら着ている人に聞くのが一番早い。
意外かもしれないが、ちゃんと礼儀正しく聞けば気前よく教えてくれる人も結構いるものである。自分が着ている服やその服を選んだセンスを他国の人間から褒められて嫌な気持ちになる人というのはあまりいないものだからな。俺とミミが男女のペアだというのも、そこに案内してくれと言ったりしなかったのも良かったかもしれないな。男女のペアだと警戒されにくいし、場所を教えるだけならトラブルにも巻き込まれにくい。
もっとも、ヴェルザルス神聖帝国の人々は例外なく何らかのサイオニック能力者でもあるので、多少のトラブルが起ころうが何とでもできると思っているのかもしれないし、そもそもヴェルザルス神聖帝国に他国の人間が闊歩していること自体が滅多にないことだから、珍しがられてはいても警戒されたりはしていないだけなのかもしれないが。
というわけで何人かの地元住民に着物店について色々と聞いた俺とミミはオススメされた着物店へと辿り着いた。この着物店は最新の服飾生産機械を導入している比較的若手の着物店で、選んだ着物をすぐに出力して着られるというのが売りの店だった。何せ俺達は生地から仕立てて数週間、数ヶ月なんて待っていられないからな。こういう店の方が嗜好に合うわけだ。
「おお、色々あるなぁ」
「ここは帝国の服屋さんと似た感じですね」
多数のホロディスプレイを使って多数のモデルが色々な服を着て歩いたり、ポーズを取ったりしている。まるで店内で常にファッションショーでも開かれているかのような有り様だが、実際に色々な角度から服を見られるので利便性は高い。
「ここはヒロ様に選んで貰いたいんですけど」
「俺が選んで良いのか?」
「ヒロ様が着せたいと思った服を着せてもらいたいです」
そう言ってミミがはにかんだ笑顔を浮かべてみせる。よし、その誘い乗った。俺から見てミミに似合いそうな服をチョイスしようじゃないか。とは言っても、あまり動きにくそうなのは良くないな。本格的な振り袖というわけにはいかないだろう。
なら浴衣か? いや、浴衣はちょっとなぁ……ミミが着ると色っぽくなりすぎそうな気がする。船の中とかなら良いかもしれんが。となるとコノハやモエギが着ているような小振袖が良いか。他の着物に比べれば動きやすそうだし。
それはそれとして浴衣も買おう。部屋着として。うん、部屋着としてね? 他意はないよ。本当だよ。
小振袖のデザインは俺が決めて、柄や色合いに関しては二人で相談して決める。女性の店員さんにも手伝ってもらい、ミミのモデルデータも簡単にスキャン――ミミのプロポーションの良さに店員さんが愕然としていた――して、実際に着た時のサンプルなんかも見せてもらいつつ、服のデザインを詰めていく。
ついでに俺の着物も発注した。こっちは逆にミミにすべてをコーディネートしてもらった。俺のモデルデータをスキャンした時に店員さんが少し顔を赤くしていたのが少しおもしろかったな。結構鍛えてるからな、俺は。脱いだら結構凄いんですよ。そこまでムキムキのマッチョマンってわけでもないけど。
とはいえ、図らずも白兵戦で戦う機会が多いからなぁ。鍛えていないといざという時に無理が効かないし、そもそもクリシュナを使った航宙戦でも殺しきれないGに耐えるために身体を鍛えておく必要がある。あった。今は機動光翼の効果で「G? なにそれおいしいの?」みたいなでたらめな状態になってしまったけども。
そうやって着物のコーディネートと発注、そして支払いを終えた俺達は、その場で出力してもらった着物に着替えて引き続きデートを続行するのだった。
なお、俺とミミが二人きりでデートしたことはうちのクルー全員に筒抜け――というか俺達がそう周知していた――であったため、クリシュナが停泊してある大社附属研究所に戻るなり、うちのクルー達全員と一日を使ってデートすることを約束させられるのであった。




