#536 「やり過ぎたかぁ……」
あまりに面白いゲームを見つけてしまって時間を忘れて朝方まで遊んでしまった結果がこのざまだよ!( ˘ω˘ )(ゆるして
最後の宇宙怪獣出現から二十四時間が経過しいぇ安全性が確保されたという判断が下されたので、俺達が乗ったブラックロータスを含め、全艦隊に帰投指示が出された。
損害を受けた船――主に甲種護衛艦――は一足先に後方へと撤退しており、陣容は少々寂しくなったが、一応は凱旋である。結晶生命体の残骸やエネルギー生命体の残滓などは後でヴェルザルス神聖帝国艦隊が集めて処理するらしいのだが、そのうちいくらかを俺達の取り分として貰えることになった。結晶生命体の残骸はグラッカン帝国でも売れるが、エネルギー生命体の残滓は売れるのかね……? まぁ、とりあえず持って帰ってみるか。意外と帝国航宙軍とか軍事企業とかに売れるかもしれん。
でまぁ、帰ってきたわけだが。
「なんか警備多くない? というかこれ警備? 本当に警備?」
「あれだけ大暴れしたらそりゃこうもなるわよ……」
研究施設に戻ったら腰にカタナめいたものを差している人達が大幅に増えていたでござる。あと、神主さんっぽい人とか巫女さんっぽい人とかも滅茶苦茶増えていたでござる。そして俺の一挙手一投足が見られている気がしてならないでござる。
「やり過ぎたかぁ……」
「そりゃねぇ……だって、十一波辺りの結晶生命体の群れもやろうと思えばクリシュナ単艦でどうにかできたでしょ?」
「できたね。というか、単純に火力が足り無そうなバカでかいやつ以外はなんとかなるんじゃないかな」
機動光翼による高速戦闘機動とショートリープで逃げ回りながら念動光輪と重力子砲で引き撃ちすれば、時間はかかるけど殲滅できたと思う。あのクソでかい恒星クラゲ――確か星喰いとか呼ばれていた――はしんどいと思うけど。
「ヴェルザルス神聖帝国艦隊相手はどう?」
「流石に無理だろう。戦うつもりもないし」
ヴェルザルス神聖帝国の戦闘艦の性能は底が見えないにも程がある。どんなビックリドッキリ機能があるのかわかったもんじゃない。あの存在の位相をずらして攻撃をスルーする技術とか相当頭おかしいと思うぞ。どうなってんだよアレ。
あとあの『生きているものはなにはともあれ絶対殺すビーム』ことソウルクラッシュな。アレを撃たれたら問答無用で死ぬっぽいから、絶対に戦いたくない。クリシュナの偏向シールドで防御できるかどうかもわからないし。
「というわけで怖がらなくて大丈夫だから、そんなに緊張した目で見ないでくれ」
そう言って武官の皆さんや神主さん巫女さんに声をかけたのだが、目を逸らされたり苦笑いされたり曖昧な笑みを浮かべられたりされてしまった。俺のガラスの心にヒビが入りそうだぜ。
「ヒロ殿の扱いはさしずめ温厚な猛獣といったところのようだね! はっはっは!」
何故かブーボが愉快そうに笑っている。この野郎、頭の羽を毟ってクッションにしてやろうか。まぁ、こっち系の話はどうやっても俺の分が悪いというか、愉快な感じにはならなそうだから話を逸らそう。
「そういやヴェルザルス神聖帝国も帝国ってことは皇帝陛下とか帝王陛下と呼ばれる方がいらっしゃるんだよな? そういう方の話を全く聞かないんだが、実際のところはどうなっているんだ?」
俺がブーボにそう聞くと、何故だかわからないが気まずい沈黙が場に広がった。俺だけでなく、エルマも何がなんだかわからず互いに顔を見合わせてしまう。もしかしたらこの話題はタブーだったのだろうか。
「えー、あー……その件はだね。なんというかこう、高度にそう、センシティブというかだね」
「あんたがそこまで言葉をつまらせるってことは相当なんだな」
「ヒロ殿の私に対する評価は一体どうなっているのかね!? まぁ、その、そうなのだよ。ちょっと色々こう、深い事情というか、やんごとなき事情というか……だからその疑問は胸の内にしまっておいてくれると助かるね。私だけでなく、多くの同胞が助かるね。本当に」
「そこまで言われると逆に気になってくるんだが……」
そう言うと、ブーボは本当に勘弁してくれという表情をした。一体何なんだよ本当に。




