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#524 「これはアカンやろ……」

「なにこれぇ……」


 一通り新たなクリシュナを動かしてみた俺の感想は実にシンプルなものだった。なんだこれ。

 まず機動性に関してだが、急加速、急減速が可能な上に身体になかる負荷が無い。無いのである。ゼロである、映像ではあんな慣性を無視したような動きをして中身大丈夫なんか? と思っていたのだが、まさかこんなにビュンビュン動いて負荷がゼロとは恐れ入った。物理法則に喧嘩売るのやめよ?

 で、次に火力強化なんだが。


「これはアカンでしょ」


 四門の重パルスレーザー砲に関しては殆ど変わらなかった。いや、緑色だったレーザーが青い

レーザーになって、しかも発射時には砲門に何か魔法陣めいたものが展開されるようになっていたが。正確な計測はまだだが、小惑星に向かって撃ってみた印象は『貫通力』が大幅に強化されれているという印象だ。

 いや、原理的におかしいんだけどね? レーザー砲というのは高エネルギーのレーザーを照射して対象の表面要素を瞬時に蒸発、爆散させて破壊を引き起こす兵器だ。戦艦クラスの大口径大出力レーザー砲ならそういった現象を起こす前に全てを蒸発させるなんてこともあるが。

 何にせよ貫通するのはおかしい。この青いレーザーには荷電粒子砲弾みたいな質量があるとでもいうのか? それともサイオニックパワー的な方面で何らかの強化がされているのか? わからん。調査が必要だ。

 あと、俺的にもっとアカンのが散弾砲。二門の大型散弾砲。俺の趣味と実益を兼ねて積んでた愛しき大型散弾砲。散弾砲がね、無いなった。代わりに搭載されているのが念動衝撃砲。なんだよ念動衝撃砲って。

 とりあえず撃ってみたよ、念堂衝撃砲。そしたらね、クリシュナよりデカいサイズの小惑星が木っ端微塵に消し飛んだよ。今までの散弾砲じゃ豆鉄砲になるような、レーザー砲の間合いで撃ったのに。俺の直感が言ってる。この念堂衝撃法は通常のシールドを貫通する。

 あとね、なんか新しい武器が生えてる。いや、俺があったほうが良いなぁと思ったものだからクリシュナを責めるのは筋違いなんだけどね。後部スラスターの辺りに謎の装置が生えてて、起動するとそこから光輪がクリシュナの後部に投影される。六枚の機動光翼に加えてド派手で巨大な光輪だよ、光輪。なんだこれはたまげたなぁ。

 で、対象をロックオンして射撃トリガーを押すと、その巨大な光輪から小型艦くらいなら余裕で両断できるサイズの光輪が連続で射出されて、一瞬で対象に到達。対象をバラバラに引き裂く。文字通りに。わぁ、綺麗な断面だなぁ。ところでお前目で追えないんだけど、ショートリープしてない?

 この光輪はウェポンシステム上は『念動光輪スダルシャナ・チャクラ』と表記されていた。ちなみに念堂衝撃砲は正確には『念動衝撃砲カウモダキ』と表記されている。重パルスレーザー砲は表記に変更はない。無いのだが、問題は最後の一つの武装だ。


「転移発射管って書いてあるんだよなぁ……」


 通常は魚雷発射管と表示されていて、そこに装填している弾頭の種類が追加で表示される。そこは変わらず対艦反応弾頭魚雷と表示されているんだが、問題は魚雷発射管が転移発射管と表記されていることだ。こればかりは撃ってみないとわからんのだが。


『撃っちゃいなよ! 何があっても大丈夫なように星系外縁の空白宙域を選んだんだんだから、大丈夫さ!』


 ブーボ氏が気楽にそんなことを宣う。知らんぞ、どうなっても。


「目標、前方一〇〇〇キロメートルの小惑星。対艦反応魚雷発射する」


 トリガーを引いたその瞬間、遥か一〇〇〇キロメートル先の小惑星が消し飛んだ。


「これはアカンやろ……」

『凄いね!? 発射した瞬間に目標に命中したんじゃないかい!? 弾頭を転移させたのか! 射程はどれくらいなんだろうか?』


 残り三発の対艦反応弾頭魚雷を使用して調べた結果、転移発射管の射程は凡そ一五〇〇kmほどだということがわかった。発射軌道の一五〇〇キロメートル以内に何かしらの物体が存在する場合は即着弾。発射軌道の一五〇〇キロメートル以内に何の物体も存在しない場合は魚雷はクリシュナから一五〇〇キロメートルの座標に出現。そこから通常の魚雷発射管から発射された時と同じように推進を開始する。通常の魚雷発射管から発射した時と同じく、機体の慣性は乗る。


「アカンて……これはアカンて……」


 防御性能に関しては流石にヴェルザルス神聖帝国の船に撃ってもらうわけにはいかないので、専用の環境を整えて計測するということになったが、もう現時点でだいぶアカン。なんか急に性能がインフレーションを起こしてきた。まだ試してないが、機動光翼が六枚あるから短距離転移も星系間航行クラスの長距離転移もできると思う。

 どうすんだこれ。こんな性能は宙賊を相手にするには明らかにオーバースペックも良いところだぞ。もうアレじゃん。リアル系の皮被ったスーパー系だよこんなの。もう全部あいつ一人で良いんじゃないかな? みたいな性能だよ。


『フーム、内包ポテンシャルを考えるとまだ物足りないと思うが……まぁ第一段階としてはこんなところでまずは満足しておこうか! いやぁ、眼の前で聖遺物の進化を見られるとは! 早く帰って各種計測や実験を行うとしようじゃないか!』

「この聖遺物マッドがよぉ……」


 どうしよう。このクリシュナ、元に戻るかな? というか、散弾砲の砲弾はどうなったんだ。念動衝撃砲に進化した段階で吸収でもされたのか? 早くクリシュナを持ち帰ってティーナ達に調べてもらおう。


 ☆★☆


「「……? ……???」」


 クリシュナの変わり果てた姿を見たティーナとウィスカが宇宙の真理を悟った猫みたいな顔になっている。気持ちはわかる。俺もその気持は凄くよく分かる。機動光翼を利用した機動とか、各種武器の試射する度に多分同じような顔になってたと思う。だが現実、これが現実なんだ。受け入れて欲しい。


「あはははははっ! なんだいこれ! 何がどうなったらこうなるんだい? あはははははっ!」


 なお、ショーコ先生は変わり果てたクリシュナの姿を見て腹を抱えて爆笑していた。この人はこの人で大物だよな……うちのメンバーの中で大爆笑してるのこの人だけだぞ。

 クリシュナの全体的なフォルムはよりシャープに、凶悪な「かえし」がいくつもついた矢じりのような形になっていた。全体的に刺々しくなったというか、若干生物らしい感じも出たというか……正直に言うと、ダークヒーローっぽい感じだ。なんか悪そう。ラスボスが乗ってそうな感じ。


「おい、戻ってこい。これから調べてもらわなきゃならないんだから」

「はっ!? いや、えぇ……? これどうなってんねん……」

「お姉ちゃん……これ、多分メンテナンスマニュアル……」

「あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ーーーッ!!!」


 顔を青くしたウィスカの言葉を聞いたティーナがビーバー……いやマーモットめいた悲鳴を上げる。実際にはピーッて感じの可愛い鳴き声らしいな、あれ。まぁそれはどうでもいいんだが。


「ああそうか。内部構造とか諸々激変してる可能性が高いから、整備ボットでほぼ自動化してたメンテナンスマニュアルが使い物にならなくなる可能性が高いのか」

「ん゙ん゙ん゙ン゙ン゙……!」


 俺の言葉に頷いているのか、それとも単にショックで身体が震えているのか、がっくりと失意体前屈をキメているティーナが咽び泣きながら小刻みに震えている。すまんな、謝ることしかできねぇ。

 一方、技術者三人以外の面子は新生クリシュナのでたらめな機動や武装の威力を見て絶句したり閉口したりしていた。


「……」

「ミミ、お口が開いてるわよ。それにしても何よこれ……デタラメ過ぎない? 何と戦うつもりなのよ、あんたとクリシュナは」

「しらんがな……こうなっちゃったんだよ」

「キャプテン、こうなっちゃったで済むのかなぁこれは……ちょっとこれは弾幕で迎撃するのも難しいし、この動きはいくらレーザー砲でも捉えられないんじゃないかな……」


 ベレベレム連邦の戦艦で火器管制を始めとした生体統括ユニットとして働いていたネーヴェが難しい顔をしている。いくらレーザー砲が光速で着弾するとは言っても、結局は砲塔を動かし対象を正確に捉える必要がある。クリシュナのあの慣性を無視した機動は、砲撃に使用される照準補正プログラムを翻弄するのではないか、ということらしい。


「不可解な現象ですが、結果的にご主人様のクリシュナが強化されたことは良いことかと」

「メイは大物だなぁ……」


 結局一番落ち着いているのはメイであった。

 なんか凄い疲れたよ、俺は。もう今日は寝て過ごしてぇ……。

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― 新着の感想 ―
なに?何と戦うん?www デス〇ィニーとゴ○ドを足したような見た目に八つ裂き光輪が飛んでいくの?w 魚雷は跳躍砲(ボソ○砲?)じゃん!!w 「分身はこうやるだぁぁぁぁーーっ!」みたいな事も出来そう…
これはあれだな 赤い宙賊団のヤバいおばさんとか最恐婆さんに対抗するためだな ベレベレムも厄介だろうし
八つ裂き光輪でワロタ。発想元そこの思い出やろw このレベルでパワーアップだといよいよ完結かな?結婚もするしな、無限に続けられるし区切りとしてはね
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