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#522 「凄いんだろうけど、あんまり嬉しくねぇなぁ……」

「これほどのものが自動で……?」

「見た目はともかく、味はすこぶる良いですね……」

「巫女の育成計画に修正が必要になるレベルでは?」

「一台欲しい……調達予算余ってなかったかな?」


 研究者の皆さんにテツジンの料理を提供したところ、その反応は概ね良好というか、見た目以外に関しては絶賛であった。見た目というか、色だけはまじで如何ともし難いからなぁ……指定しないと大体緑色系か茶褐色系になるんだよ。一応『彩りモード』にすればある程度マシになるんだけどな。無味無臭完全無害の着色料で多少マシな見た目にしてくれるんだ。

 ただ、モノによっては調理時間が三倍くらいになるから、まず使わないんだよ……ミミがよく朝食に食べてる甘いお粥みたいな料理ならそんなに調理時間がかからないんだけど、俺がよく食べるご飯とおかずの組み合わせ、って感じのプレート料理だとすげぇ時間かかるんだ。


「クリシュナの調査の進み具合はどうだ?」


 テツジンで作ったスコーンめいた焼き菓子を頬張っているティーナ達に追加の飲み物――紅茶っぽい何か――を渡しながら聞いてみると、ティーナは口の中のものをしっかりと呑み込んでから口を開いた。


「んー、今のところまだなぁんもわかっとらんのと変わらんけど……クリシュナが本来持っているエネルギーの総量とか考えると、現状では一割か、ええとこ二割くらいしか性能を発揮してないんやないかって話やね」

「マジで?」

「マジや。とはいえ、現状ではエネルギーの出力先が重レーザー砲四門と各部のスラスター、シールドジェネレーターくらいやろ? その辺の性能というか、最大出力はちゃんと出しとるから、出力先を増やすか、あるいはその辺の出力先を進化させるかやないかって言っとったで」

「増やすのはともかく、進化させるってなんだよ」


 クリシュナはポ◯モンじゃねーんだぞ。おめでとう! クリシュナはヴィシュヌにしんかした! とかやれとでも言うのか?


「ブーボ氏が言うには、聖遺物というものは所有者の意を汲んである程度形を変えたり、より強力な力を発揮したりするものなんだそうです。つまり、クリシュナにはお兄さんの意思に応じて変形するメカニズムが備わっているに等しい……ということらしいです」

「信じ難いなぁ……」


 変形ってなんだよ。クリシュナがト◯ンスフォーマーよろしく人型兵器になるとでもいうのか? それはそれで面白そうだけど、居住区画とか滅茶苦茶になりそうだから勘弁して欲しい。


「でも、既に一度機能の拡張は起こっているんだろう? レーザー兵器を偏向するシールドかバリアか何かを展開したって聞いたよ」


 俺が持ってきたお茶を一口飲んだショーコ先生がそう言って俺に視線を向けてくる。確かにそういった事実は存在するが、あれが俺の膨大なサイオニックエネルギーによるものなのか、あの時積んでいた特級呪物めいた何か――奇怪な樹木の種だ――の影響なのかはいまいちよくわからんのだよな。クリシュナが俺の意思に応じてレーザー砲撃を捻じ曲げていたのかもしれんが……。


「再現性が無いんだけどなぁ、それ」

「その再現性を上げる! というか固定するというのが今回の第一目標となるね!」

「うおぁ!?」


 誰か近づいてきているのはわかっていたが、まさか大声で話しかけてくるとは思わなかった。振り返ると、声の主であるブーボ氏が「失敬失敬」などと言って笑っている。


「しかしあのクリシュナに秘められた力とヒロ殿のポテンシャルを考えれば、その潜在能力は『小型艦としては群を抜いた性能』程度では収まらないはずなのですよ! 我が国の最新鋭の艦隊すら圧倒するほどの力を発揮してもおかしくはないはずです!」

「それは流石に吹き過ぎじゃないか……?」

「いいえ、いいえ! そんなことはありませんとも! 計測したところ、あの船は本来の出力の一割ほどしかエネルギーを利用していないようですよ!」


 ティーナとウィスカに視線を向けてみるが、二人は同時に首を振った。


「いくらブラックボックスになってるって言うても、流石に一〇%しか稼働してなかったらうちらでもわかるわ。ただなぁ……」

「クリシュナのジェネレーターが特殊な作りをしていて、パーツの一部の用途が全く不明だったり、稼働しているように見えない部分があるのは確かなんですよね……その部分を指してブラックボックスと言っていたわけで」

「私は門外漢だけど、よくあの小さなジェネレーターであれだけの出力が出るなとは思っていたよ」


 うちのエンジニア陣は半信半疑といった感じらしい。


「実際にジェネレーターを稼働させてみて頂けると研究が捗るのですがね! どうですか?」

「そりゃまぁ構わんけども」


 俺の返事にブーボ氏はにっこりと笑顔を浮かべた。よほど嬉しいようだが……妙な実験を始めたりしないだろうな? こんなところでジェネレーター関連の大事故なんて起こった日にはとんでもないことになるだろうから、危ないことはしないで欲しいんだが。


 ☆★☆


『素晴らしい! コックピットにヒロ殿が座っているか座っていないかで顕著に出力の違いが見られるよ! やはりこの船は聖遺物で間違いないようだね!』


 メインスクリーンの向こうからブーボ氏の興奮した声が聞こえてくる。クリシュナのメインスクリーンに表示されている出力は安定しているし、いつも通りで特に変化はないんだが……ブーボ氏の方では顕著なエネルギー出力の変化とやらを観測しているらしい。


「本当にエネルギー出力が変化しているのか?」

『少なくとも、こっちのモニターに表示されてる出力は格段に上がったね』

『『……』』


 整備士姉妹が揃って「納得できねぇ」とでも言いたげに眉根を寄せているのが見える。正直俺も同じ心境なんだが、ヴェルザルス神聖帝国のテクノロジーで観測する分には明確に違いがあるらしい。


『つまりだね、クリシュナの聖遺物ジェネレーター……レリック・ジェネレーターはサイオニックジェネレーターと通常のジェネレーターが複合したハイブリッドジェネレーターなんだね! 現状使っているエネルギー出力というのは、サイオニックジェネレーターが稼働した際に出る搾り滓というか、余剰エネルギーみたいなものなんだよ!』

「搾り滓という表現は流石にどうかと思うんだが……それで巡洋艦並みの出力が出てるってことは、本来の出力は戦艦並みどころか、下手すると超大型艦クラスってことなのか」


 戦艦のジェネレーター出力は概ね巡洋艦の三倍ほどだ。クリシュナがブーボ氏の主張するエネルギー出力を発揮したとすると、その出力は戦艦三隻分以上ということになる。所謂キャピタルシップだとか戦略艦とか言われるレベルの出力だ。この大きさの船にそんな出力ぶちこんだら、それだけで爆発四散しそうで怖いんだが。


『ヒロ殿がコックピットに座るとそれ以上に出力が伸びたから、それじゃ済まないかもしれないね! 聖遺物は落ち人の法力を増幅する効果があるから、相乗効果で更に伸びてるよ!』

「凄いんだろうけど、あんまり嬉しくねぇなぁ……」


 俺がクリシュナごと爆発四散したら本当に星系がまとめて吹き飛びそうなエネルギーが放出されそうだ。急に現実味を帯びてくるの本当にやめんか?


「で、その強大な出力をどうやって利用すれば良いんだ?」

『それが今後の課題だね! とりあえず今までの研究だと、使用者の危機に応じて新たな力を発揮する傾向が強いんだけど、単純に危険だからね! 他のアプローチを考えてみよう!』

「是非そうしてくれ」


 生命の危機を感じるためにヴェルザルス神聖帝国の戦闘艦とガチバトルしよう! とか光子生命体と戦ってみよう! とか言われるんじゃないかとヒヤヒヤしたが、流石にそうはならなかったな。とりあえずは一安心といったところか。

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― 新着の感想 ―
[一言] サイオニック関連のエネルギーはもうそれ別のゲームなんじゃないかとおもえてきたぜ……
[一言] +アントリオン広域(星系)ジヤマー +ロータスMキャノン ローザ用に遠距離ホーミング+バリア 10倍だぞ10倍!でハイパー化てサイオニックボディーで巨大化!変形!
[一言] シンクロン原理ばりに巨大戦艦をイメージすればイケる。 ヒロには古すぎて無理かな。
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