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#428 三年後の約束

本当は昨日投稿しようと思っていたんだけど身体が闘争を求めたので許して( ˘ω˘ )(明日も投稿するから

 ショーコ先生が用意した浄化ナノマシンの効果は覿面だった。試験散布された区画では空気中から検出される病原菌の胞子量が激減したのである。ハルトムートは段階的に浄化ナノマシンの散布範囲を広げ、ショーコ先生が用意した特効薬も併用して急速にパンデミックを収束させつつあった。

 そして、俺がショーコ先生から預かったコンテナをハルトムートに届けてから一週間ほどが経った。

 その間、俺達は復興しつつあるコロニーでアイリア達の孤児院の様子を見に行ったり、浄化ナノマシンの件についてショーコ先生を連れてハルトムートに会いに行ったり、浄化ナノマシンの設計データに関する報酬の件について交渉をしたりとそれなりに忙しくしていた。


「それにしてもナノマシンのちからってすげー。たった一人の科学者の活躍でこんなに状況が変わるものなんだな」


 休憩スペースでショーコ先生に膝枕をしながら呟く。休憩スペースに設置されたホロディスプレイにはパンデミックが収束しつつあるというニュースが流れていた。


「今回の件がたまたま私の専門分野に関連する事態だっただけだよ」


 俺の膝に頭を載せたショーコ先生は謙遜してそう言っているが、その横顔はかなり誇らしげであった。迫真のドヤ顔である。実際にドヤるだけの成果を出しているので、思うところもないけれども。


「それにしたって凄いと思うよ。素直に感心した。でも、ナノマシン技術って兵器利用とかしたら大変なことにならないか?」

「あー、それはねぇ。結構聞かれるんだけど、確かにできなくはないんだよねぇ。作れるよ? 所謂殺人ナノマシンってやつはね。ただ、兵器として利用するとなると生物兵器や化学兵器に比べると無効化が容易だし、色々と割に合わないんだよね」

「そうなのか?」

「そうなのさ。何せ精密機器だから、EMPパルスの類に弱いんだよ。当然、シールドにもね。それに、人一人を死に至らしめるにはそれなりの量が必要になるから、例えばコロニー一つを殺人ナノマシンで殺しつくそうって話になるとクリシュナ一隻分くらいの質量のナノマシンを効率よく散布する必要があるんだ。正直コストが見合わないと思うね」

「それなら反応弾頭を一発打ち込んだほうが手間もコストもかからないな」

「そういうこと。まぁ個人レベルの暗殺とかには使えなくもないだろうけど、兵器として使うのは難しいんじゃないかな」

「なるほどなぁ」


 つまり簡単にグレイ・グー――ナノマシンの暴走による滅亡――は起こらないってわけか。安心したような、ちょっと夢を壊されたような、なんとも言えない気分だ。


「うーん、なんだか少し眠くなってきたよ」

「俺の膝なんか枕にして寝て首を痛くしても知らんぞ」

「程よい硬さだと思うけどねぇ。でもそうだね、ちゃんとベッドで寝ようかな」

「あいよ……その手は何かな?」

「ヒロくんに運んで欲しいな」


 そう言ってショーコ先生はニンマリと笑みを浮かべた。なるほど? 良いでしょう、お運びしますよ。ええ。意外と甘え上手だよな、先生は。


 ☆★☆


 リーメイプライムコロニーでやるべきことは概ね片付けたが、一つだけやり残したことがある。


「さて……今日お前達三人を呼び出した理由はわかってるな?」


 食堂の隅のテーブルで三人並んで座っている少女達――本物の少女は一人だけだが――は俺の言葉にそれぞればつが悪そうな顔をしてみせた。


「まぁ、半ば俺達の都合で一時的とはいえリンダを船に乗せたわけだから、その判断をした俺にだって責任はある。リンダが切っ掛けとなってこのコロニーのパンデミックに有効な特効薬ができたということもあるし、俺達はそれでハルトムートから少なくない金額の報酬もせしめている。その一部は当然リンダにも配分するつもりだ」


 そこまで言って俺は言葉を一度切り、彼女達――ティーナとウィスカ、そしてリンダの三人の様子を窺う。うーむ、三人とも気の毒なくらいにしょげかえってるな。なんだか悪いことをしている気分だ。


「率直に言うが、リンダを連れて行く気は無い。今のところ人手は足りてるしな。それに、ここには俺達の他にも頼れる相手がいる。そうだろ?」

「まぁ……うん、それはそうやな」


 元々リンダが所属している孤児院にはアイリアがいるし、ハインツとジークもいる。アイリアが請えばハルトムートだって力を貸してくれるだろう。俺、というか俺達がリンダに渡す金額は自由移動権を買うには足りないが、リンダが自分のしたいことをするために様々な学習をするのには十分な額だ。正気に言えば、リンダの身の丈に合わない金額になる。

 年端も行かない女の子にそんな大金を渡した結果、身を持ち崩すことになる――というような結末は俺も望んでいないので、管理はハインツ辺りに任せることになると思うが。多分あいつなら大丈夫だろう。もしリンダの金を使い込むような真似をした日にはわかってるよな? とでも言っておけば滅多なことはあるまい。まぁ、面倒事を押し付けるわけだから、何かしらの便宜は図ってやる必要があるだろうが。


「でも、オレは……あんた達についていきたい」


 リンダがそう言って俺の目を真正面から見据えてくる。うーん、まぁそうだよな。リンダとしては俺達について来たいのだろう。それはわかる。俺がリンダの立場でも同じように思うだろう。今までリンダが育ってきた環境を思えばそれは当然のことだ。

 親の顔も知らない、バックにマフィアやギャングがついている下層区画の孤児院出身の娘が就ける職業なんてのはたかが知れている。教養もなければ金もない子供が身一つでのし上がっていくのにはこのコロニーの下層区画というのは絶望的な環境だ。

 それなら命の危険や貞操の危険があろうとも――誓って手を出す気はないが――見習いとして傭兵の船に乗り、傭兵や船員としてのスキルを身につけたほうが将来の展望も拓ける。少し頭を回せばそれくらいのことは誰にだって……リンダのような子供にだってわかるだろう。


「実際のところ、リンダを連れて行くこと自体は可能だろうさ。容易いと言っても良い。リンダ一人分の食費や生命維持費なんてのは微々たるもんだ。俺達の収入から考えればな。だが、厳しいことを言えばリンダを連れて行くメリットが全く無い。皆無だ。むしろリスクの方が高いと俺は思う」


 これは単純にリンダがまだ子供だからだ。これから思春期を迎えるリンダは感情の制御が難しい年頃でもあるし、単純に身体が出来上がっていないから身体能力面でも心配がある。今回パンデミックを起こした病原菌への耐性に関しては稀有な才能であるのだろうが、他の疾病にも有効なのかどうかについては未知数だ。そもそもの話、疾病への対策という意味では大概のものに対応しているワクチンが存在しており、俺達は全員接種済みである。つまり、相対的に彼女の特異体質の価値は下がるということだ。


「オレは我慢強いよ。すばしっこいし、手先だって器用なつもりだ。自分で言うのもなんだけど、度胸だってあると思う。頭は良くないけど、ティーナ姉とウィスカ姉には飲み込みは早いって言われてる。すぐには無理だけど、きっとすぐに役に立つようになってみせる」

「なかなか口も上手いじゃないか。だが、駄目だ。俺の船に血気盛んなニュービーは要らん」


 最初は普通の女の子だったミミも、今は一端のオペレーターだからな。寧ろ、今回の件を考えるとティーナの方がメンタルを大きく揺らしてしまっている。普段は明るいムードメーカーなんだけどな。彼女は。

 だが、リンダは若い。俺だってまだ他人を若いとか言えるような年じゃないが、流石にリンダは若すぎる。幼いと言っても良い年頃だ。ただでさえトラブルが寄って来やすい身の上なのに、この上でトラブルメーカーになりそうなクルーを抱えるのは御免である。


「ただまぁ、これで納得しろってのも無理があるよな? 密航なんてされちゃたまらんから、一つ俺からも譲歩しよう」


 俺の言葉に三人が固唾を呑んで身構える。


「確かリンダは今十二歳だったな? なら成人する十五歳までこのコロニーで頑張れ。その時までに船員として役立つスキルを身に着けていればベストだが、とりあえず健やかに、年齢相応に心と身体を成熟させておくだけでも十分だ。三年経って、まだ船に乗りたいって気持ちがあるならその時は迎えに来てやるよ」

「ほ、本当か?」

「嘘は言わん。ただ、忘れるなよ? 俺の船に自分の意志で乗り込んでくるってのは『そういうこと』だぞ? 覚悟しておけよ? わかってて自分から来る相手には遠慮しないからな?」

「んなっ……!?」


 リンダが顔を赤くし、身体をビクリと震わせて身を引く。


「せいぜい良い女になっておけよ、ハッハッハ」

「このエロ野郎……」

「まぁそんなにシリアスに考えるな。お前ができるだけ好きなことをできるように環境を整えられるようにはしてやるよ。その環境を利用してなりたい自分になれるように全力で頑張れ。別にリンダが別の道を選んだって裏切り者とか言わないから。選択肢の一つとしてうちの船に乗るのもアリってだけの話だ。言っておくが、傭兵稼業は稼げるが命の危険だらけだぞ? エンジニアをやってるティーナとウィスカだって命の危険を感じたことは一度や二度じゃないだろ?」


 顔を赤くしてこちらを睨みつけてくるリンダに肩を竦めてそう言ってから姉妹に話を振る。


「それはそうやな」

「宙賊相手に戦闘なんてしょっちゅうですし、負けたら良くても死にますもんね」

「良くても死ぬ? 悪いとどうなるんだ?」

「捕らえられて死ぬまでオモチャにされるか、最悪『商品』という名の死ぬこともできないオブジェに加工されてそういうのが好きな変態に引き渡されるかだな」

「うげぇ……」


 リンダがドン引きしている。コロニー内のマフィアだのギャングだのって連中もそういった残虐系エピソードには事欠かないだろうが、宙賊連中のやることはそういうのを軽く飛び越えるからな。生首にした上で生命維持装置に繋いで歌う愉快なオブジェの完成! とか平気でやる連中だし。


「まぁ宙賊なんぞに遅れを取る気はないが、そういう悲惨な結末を迎えるかもしれないのが傭兵ってもんだ。その辺もよく考えながら三年頑張れ」

「うん……わかった」


 そう言って神妙に頷くリンダに俺も頷き返す。これでリンダの件はなんとかケリが付いたな。あとはハインツ達に丁寧に頼み込んで、ハルトムートにも気にかけてもらうよう言付けて、アイリアにも話を通して……面倒は面倒だけど、ティーナのためだ。もうひと頑張りだな。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 以前にティニアの身の振り方について話している時に、 「うちのクルーとして迎え入れるには若干力不足」という理由で断っていましたよね。 それに倣えばリンダも「断る」の一択だと思ったのですが…
[良い点] またハーレム要員増えた!ヤッタ! ハーレムに関してはまぁ人によって好き嫌いが分かれるが、俺は間違いなく好きだな。 暦に関してはまぁグラッカン帝国通用のものがあるだろう。ないとおかしい。 地…
[気になる点] 流石にハーレム要員増え過ぎとちゃう? せっかくここまで読んだけど章毎に増えていくのちょっとキツいわ
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