#413 話半分に。
うたた寝したけど間に合ったよ!( ˘ω˘ )
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「それじゃあ、まずは船の中を案内しますね!」
アイツ――傭兵のヒロがメイドと医者を連れて出ていくのを見送るなり、おっぱいのでかいミミがそう言ってオレの手を引いた。別に手を引かれなくったって歩けるんだけど……無碍にするのも感じが悪いと思うので、黙って手を引かれておく。
「ミミめっちゃ張り切ってんなぁ」
「先を越された……」
後ろからはドワーフの二人もついてくる。髪の毛の色が違うだけで、顔が殆ど同じ。オレ、双子って初めて見たな。うちの施設にもいなかったし。その後ろにもう一人、今までに見たことがない種族の女もついてくる。クギって言ったっけ。一応全員の名前だけは聞いたけど、ミミとオレが一番歳が近いっていうのと、ティーナとウィスカがドワーフってことしかわからないんだよな。クギのあの頭の上の耳とお尻の尻尾みたいなのは本物なのか?
「まずはここ、休憩スペースですね!」
「……広いな。あと、金がかかってそう」
「実際カネはかかっとるんよな」
「お兄さん、妥協しなかったって言ってたもんね」
だだっ広くて開放感のある広い空間に、明るい照明。通路を挟んで食堂とソファやなんかが置かれているホールが隣接していて、通路と各スペースの間も壁ではなくパーティションのようなもので区切られているだけで見晴らしが良い。ホールの方の壁に緑色の植物みたいなものが見えるけど、あれは本物なのか? 本物の植物って滅茶苦茶高いらしいけど。
「……貴族のボンボンの道楽か」
「違いますよ? ヒロ様は元々貴族じゃないですし」
「せやな。うちらと会った時はまだ貴族じゃなかったわ」
「この船を買ったのもその時だしね」
「でも剣を持ってたじゃんか。貴族なんだろ?」
「元々貴族だったんじゃなくて、傭兵として活躍して貴族位を賜ったんですよ。世襲できない名誉爵位ですけど」
そんなことがあるのか? 貴族って元々貴族じゃないのか?
「その話は後でゆっくりするとして、今は案内を続けたほうが良いのではないでしょうか?」
「そうですね! ええと……ここは皆の共有スペースなんです。掃除はメイさんとクリーナーボットがしてくれますけど、あまり散らかさいように……くらいですかね? 注意事項って」
「せやなぁ。まぁ、わからんことあったら都度聞いてくれればええんちゃう? いきなり全部詰め込んでも把握しきれんやろし」
「そうだね。あと、あっちの食堂ではいつでも飲食できるよ。自動調理器も良いのが入ってて、ご飯が美味しいんだよね」
「ごはん……」
そういえば、ここ数日ろくに飲み食いをしていない。なんだか急にお腹が空いてきた。
「皆さん、良い時間ですし、お茶でも飲みながらお話をしませんか?」
そう考えていると、クギがそんな事を言いだした。別にオレの様子を見てそう言ったってわけじゃなさそうだけど……随分とタイミングが良いな。文句はないけど。
「せやな。テツジンにお菓子でも作ってもらおか」
「そうですね!」
ミミがオレの手を引いてズンズンと食堂へと引っ張っていく。そしてオレを席に座らせると、奥の機械――多分自動調理器ってヤツだ――から見たことのない食べ物のようなものやら何やらを持ってきた。
「はい、どうぞ」
クギがそう言ってオレに微笑みかけながらプレートに盛られたお菓子……お菓子かこれ? なんか普通のパンみたいに見えるんだけど。
「まま、気にせず食うたらええんや」
「飲み物もおかわり自由だからね」
「……いただきます」
あんまり大きくないパンだけど、なんだかずっしりとしている。進められるままに食べてみると、もっちりというかずっしりとしていて甘い。お腹にたまりそうだな、これ。
「……なんだよ?」
オレがお菓子――というかパンを食べるのをジッと見ているミミにそう言う。そんな微笑ましいものを見るような視線を向けられるのはなんとなく気になる。
「なんでもないです。ええと、何から話しましょうか?」
「そうですね。我が君についてお話するのが良いのではないでしょうか? 自分の身柄を預かるのがどういう人なのか、ということは気になるでしょうし」
「うん、それが良いかもね。誰から話そうか?」
「うちが話そうか。ミミとクギに話させたら兄さんがどこかの王子様か何かになってしまいそうやし」
「「えー」」
ミミとクギが不満そうな声を上げる。うん、オレでもわかるぞ。二人があのヒロとかいう傭兵の男が大好きだっていうのが。でも、その点はティーナとウィスカも変わらないんじゃないか? と思ったが、言うのはやめておいた。とりあえず、話半分に聞くことにしよう。
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施設で治療と物資の搬入を終え、守備のために戦闘ボット達をその場に残した俺達はブラックロータスへと戻ってきたわけだが……各種防疫措置を終えてコンバットアーマーを脱ぎ、シャワーでも浴びようかと休憩スペースを通りかかったところでリンダに珍妙なものを見るような視線を向けられた。
「なんだよ?」
「……別に、なんでもねぇよ。汗臭いからとっととどっかいけ」
「辛辣ゥ……!」
何か言いたいことがあるのかと思って聞いてみたらこれである。まぁ、汗臭いまま話しかけた俺が悪いか? 悪いな。うん、そういうことにしておく。べ、別に気にしてなんかないんだからね!
心の中で涙を流しながらシャワーを浴び、再び休憩スペースに戻ると既にリンダはいなくなっていた。ぬぅ、ちょっと話をしておきたいと思ったんだが、もうショーコ先生のとこに行ったのか? わざわざ追いかけてまですることでもないし、機会を待つか。
とりあえず、ショーコ先生がリンダの免疫能力について調べるまでは特段やることもない。残りの医療物資の目録をハルトムートに送る件に関してはメイに任せておいたから俺がやることはないしな。
「お疲れ様。はい」
「あんがとよ」
休憩スペースのソファにどっかりと腰を掛けて考え事をしていると、エルマが水のボトルを持ってきてくれた。ありがたくボトルを受け取り、蓋を開けてグビグビと飲む。うむ、よく冷えていて美味い。やっぱり水はキンキンに冷えているのが一番美味く感じるな。健康のことを考えると常温の方が身体に良いみたいだが。
「で、どうだ? リンダは。馴染めそうか?」
「大丈夫じゃない? 私、あんた達が出てった後は武器の整備とチェックをしてたからあの子とあまり話してないのよね。でも、ミミ達とは結構仲良くやってたみたいよ?」
「そうなのか。ならまぁ、大丈夫かな。あいつの寝床についてどうなったか聞いておかないとな」
「ティーナとウィスカのところで預かるみたいよ。ベッド作るでー、とか張り切ってたし」
「空き部屋に備え付けのベッドも何もかも揃ってるのに……まぁいいけど」
ティーナがそうしているということは、きっとそれが必要だと判断したからなのだろう。あの施設での暮らしがどんなものなのかは知らないが、建物の構造を見た限りでは一人ひとりに個室が割り当てられているという感じではなかったように思う。一人だと帰って眠れないかもしれないとか、そういう感じの配慮なのかもしれない。
ティーナとウィスカが揃っていれば部屋の模様替えも家具作りも思いのままだろうし、リンダに不満がないのであればそれで良いか。一応後で聞いておくかな。
「施設の方は大丈夫だったの?」
「ああ、治療はちゃんとできたし、再感染しないように対策もしてきた。先生が言うにはとりあえず、当面の措置としてはあれで大丈夫だとさ」
「ならひとまずは安心だけど、ずっと戦闘ボットを貼り付けておくの?」
「いや、あそこで倒れてた大人のうち二人が男だったろ? どうも支援をしていた組織の人間らしくてな。荒事もいけそうな感じだったから、カネを握らせて警備員として雇った」
「大丈夫なの?」
「もし期待に応えずカネだけ持ってとんずらしたら宇宙空間にぶっとばしてやるさ」
比喩表現じゃなく本当にやってやるぞ。なに、船まで連れてきて宇宙空間に出た時にうっかり放出するだけだ。この混乱したコロニーの状況下で二人くらい消えても誰も気にもしないさ。員数外の人間を乗せたまま船を出す方法なんていくらでもあるしな。
コロニー居住者が正式な手続きをせずに他のコロニーに移住したり、船員として船に乗るのは違法だが、荷に潜り込んで密航すること自体は簡単にできる。潜り込むことさえできれば。
ただ、密航者が到着先のコロニーで不法滞在者だとバレると大変なことになる。一発で臣民権剥奪の上に監獄コロニー送りだ。宙賊とさして変わらない扱いをされるらしいので、実質死刑みたいなもんである。
まぁ、船主が拉致してきたコロニー民が逃げ出して憲兵に助けを求めるみたいなパターンもあるんだが……それを利用してライバルの商船に密航者を潜り込ませて、攫われましたと証言させて失脚を狙う悪徳商人とかもいるらしい。まぁ、あまりに埒が明かない場合はまとめて頭の中身を覗かれるから、大体不正がバレるそうだが。何にせよ密航者には関わり合いになりたくはないものだな。
おっと、思考が逸れた。
「何にせよ、あとはショーコ先生の研究結果次第……ああ、念のためにリンダの一時乗船の手続きだけ進めておくか。痛くもない腹を探られるのも面倒だしな」
「それがいいかもね。メイに任せるのが一番だけど……たまには自分でやってみる?」
「嫌どす」
メイには悪いが、俺はそういう手続き関連で良い思い出が無いんだ。存分に頼らせてもらうとしよう。




