#412 支援
DLCが2つほど来ていたのでメックウォリアー5の再プレイを開始しました( ˘ω˘ )(エバースペース2はクリアした
特に問題もなく――流石に襲撃を仕掛けてくるような命知らずはいなかった――施設へと辿り着いた俺達は、荷ほどきをして早速治療を開始していた。
もっとも、治療をしているのはショーコ先生とメイで、助手を務めているのはメイにコントロールされた戦闘ボット達である。俺自身は万が一の襲撃に備えていることくらいしかできないので、こうして壁に身を預けて様子を見ているだけなのだが。
そうしていると、一度重症化しているということで真っ先に診てもらっていたアイリアが近づいてきた。
「本当に、ありがとうございます」
「どういたしまして。ただまぁ、きっかけはティーナだから」
「はい……」
ティーナの名前を聞いたアイリアが微笑みを浮かべ、暫く視線を彷徨わせる。何かを言い淀んでいるような雰囲気だが……?
「あの……あの子は、元気にしているんです……よね?」
「ティーナか? 勿論元気にしてるぞ。ああいや、偶然にもこのコロニーに来ることになって、最近は少しメンタルが不安定になってたけど。その点を除けば元気一杯に日々機械いじりをしてるよ。妹と一緒にな」
「そうですか……」
俺の話を聞いたアイリアは心底ホッとしたような表情を浮かべた。ティーナとアイリアがどういう関係で、このコロニーを去る際にどんなことがあったのかはわからない。ティーナにも詳しくは聞いてないからな。ただ、ティーナとアイリアが互いに互いを思いやる関係だということはよくわかった。俺がアイリア達を助けるために動く理由はそれがわかっただけで十分だな。
「そういやぶっ倒れていた大人の男二人は何者なんだ? ここの職員か?」
「いえ、そういうわけでは……なんと言えば良いのか。いつも助けてくれる人達なんです」
「煮え切らない言い方だな……?」
と、首を傾げていると話題の男の内、一人がズンズンとこちらに向かってきた。
「おい、お前。アイリアさんと何を――イデェ!?」
「やめろ馬鹿。兄貴、施設の子やアイリアさんだけでなく俺達まで助けてくれてありございます。恩に着ます」
最初に突っかかってきた紫プリン頭――染めたと思われる紫の部分と地毛の金髪の対比がそう見える――の背中をかなり強めにどついた金髪角刈りが頭を下げてくる。
「別にお前の兄貴になった覚えはないが……感謝は受け取っておく。そっちのは不満そうだけどな」
「すいません、こいつは見込みはあるんですがまだ世の中ってのをわかってないんで。見逃してやって下さい」
「別にいくら俺が傭兵でもこれくらいでそいつを真っ二つにしたりはしないぞ。うちのクルーに手を出したらその限りじゃないが」
見たところ、二人とも何か特別に身体強化を受けていたり、サイバネティクスで強化をしているようには見えないな。なら、こいつらがレーザーガンで武装していたとしても五秒もあれば十分だ。
「――!」
俺の視線に何か感じるものがあったのか、紫プリンと金髪角刈りが息を呑んで身を固くする。怖がらせてしまったのだろうか。別にぶっ殺す気はないから安心していいぞ。
「それで、お前らはどういう立場の誰なんだ?」
「俺はハインツ、こいつはジーク。俺達は……押しかけの用心棒みたいなもんです」
やはり煮え切らないというかなんというか。今ひとつ理解が及ばないな。なんとなくカタギじゃないのはわかるんだが。少なくとも、こいつら二人は一般人じゃないな。二人からは血の匂いとまでは言わないが、暴力の匂いがするし。実際に匂ってるわけじゃなく、感覚的なものだけど。
「カタギじゃないのは見りゃわかる。ここがどういう場所から支援を受けて運営されていたのかも知ってる。お前らは支援者関係の人間ってことで良いのか?」
「そういうことです。ただ、今回の騒動で俺とこいつが所属している組織はもう……だから、俺達は宙ぶらりんなんですよ。だけど、ここを守らないといけませんから」
「わかったようなわからんような……でもまぁ、上が滅茶苦茶になっても仁義を貫いて殉じようとするその心意気は見上げたものだな」
俺みたいに金で動く傭兵には理解し難い。ああいや、俺が今やっていることもある意味では同じことか? あんなになったティーナにお願いされると流石に断れない。そういう意味ではこいつらも同じようなものなのかね? 多分だけど、こいつらはアイリアのために動いているんだろうから。
「一応暫くの間は戦闘ボットを配備する予定だが、俺達だっていつまでもこのコロニーにいるつもりはないからな。後を任せられる奴がいるのは嬉しい誤算だよ」
仮にこの施設がハルトムートの預かりとなったとしても、場所自体が動かないなら結局のところある程度の暴力が必要だ。基本的に暴力というものは暴力でしか抑止できないものだからな。戦えない女子供しかいない場所にまともなメシと寝床、それにその他の物資があるとなれば悪心を抱くやつが出るものだし、事実そうなって今のこの施設の状況があるわけだから。
「ところでお前ら、得物は揃ってるのか?」
俺が自分のレーザーガンが収まったホルスターを軽く叩きながらそう聞くと、金髪角刈りのハインツはろくにメンテもされていなそうなボロいレーザーガンを取り出し、紫プリンのジークに至っては鉄パイプか何かを加工したと思しき警棒というか棍棒めいた何かを取り出した。うーん、粗雑!
「……あー、どうすっかな。船に積んでる予備を渡しても良いが、そうするとメンテがな」
「兄貴?」
「思い入れのある品なのかもしれんが、有り体に言ってゴミ寸前のボロ武器にしか見えん。良い仕事をするには相応の得物が必要ってのが俺の信条だ。で、聞きたいんだがまともな得物の調達先はあるのか? 今でも使えるところが」
「ありますが、この情勢下だと高く付きますよ」
「価格なんざどうでもいい。そこでエネルは使えるか?」
「使えますが……」
「端末出せ」
有無を言わさずそう言うと、ハインツは困惑しながらも自分の小型情報端末を取り出した。俺も同じく小型情報端末を取り出し、手早く操作してハインツに5万エネルを送金する。
「んなっ!? あ、兄貴?」
「それで必要なものを取り揃えてこい。武器だけじゃなくアーマーもな。いくらボラれてもそれだけありゃ二人分くらい賄えるだろ」
「二人分どころか軽く十人分くらい賄えそうですが……」
「この状況だと色々と入用だろ。余った分は好きに使え。ほら、俺達と戦闘ボットがここを守っている間にとっとと動け」
そう言って俺が部屋の出入り口を指差すと、ハインツは少し考えた後に俺に黙って頭を下げ、ジークを連れて部屋から出ていった。示威目的にしても普段から俺みたいなコンバットアーマーフル装備というわけにはいかないだろうからな……まぁコロニーでのそういうアレコレに関してはあいつらの方がプロだ。上手くやるだろう。
「話はついたみたいだね。アイリアくんがそわそわしてたよ?」
「俺は生身では無茶をしない主義なんだけどな。処置は終わったのか?」
「勿論。完治には少し時間がかかるけどね。言っただろう? 然るべき治療を受ければ助かる病気だと。問題は再感染だけど、まぁ感染対策を心がけてこの部屋で過ごすようにすれば大丈夫さ」
そう言いながら、ショーコ先生が部屋の中央に鎮座している機械に視線を向ける。あれは小型の空間清浄化装置で、設置した空間内の空気を清浄化する機能がある……らしい。簡単に言えば密閉した空間をクリーンルームに変えてしまうトンデモマシンだ。かがくのちからってすげー。
「この構造体はちょっと古いみたいだけど、部屋ごとの気密は問題ないみたいだからね。全員を治療して、空気をクリーンにすればひとまずは大丈夫。問題はいつまでも、というわけにはいかないってことだね」
「それに関してもショーコ先生が頼りだな」
「サンプルは採れたからね。ヒトに感染していない元の株も欲しいところだけど、まぁ贅沢は言わないさ」
ショーコ先生が厳重に封印された一抱えほどの大きさの箱に視線を向ける。あの中には空気中に浮遊していた感染源のサンプルや、ここで苦しんでいた大人や子供達から採取したサンプルが入っているというわけだ。
「それじゃあ俺達はとっとと戻る――」
か、と思いメイに視線を向けると、彼女は囲まれていた。床に座ったメイの周りには子供達が集まっていたのだ。
「きれいなふく」
「はい。メイド服はこの宇宙で最も美しい服です」
「きれいなかみのけ」
「はい。私の髪はご主人様が作ってくださった宇宙で一番美しい黒髪です」
「かっこいい」
「はい、メイドロイドは――……」
淡々と、しかし妙に嬉しそうにメイが子供達の相手をしている。耳のあたりにあるメカっぽいパーツが格好良く見えるのか、女の子だけじゃなく男の子まで目をキラキラさせているな。男の子ならコンバットアーマーフル装備の俺のほうがかっこよく思えないものか? 何故だ?
「剣を差してるから」
「なるほど」
剣を持っている人=貴族という概念は施設の子供達にも浸透しているのか。流石に子供相手に無体を働く貴族はそうそういないと思うが、絶対に居ないということもないだろうから、子供の身の安全を考えれば真っ先に教えてもおかしくはないのかね。貴族相手に厄介事を起こすと大変なことになるだろうからな。
「……少しだけ待つか」
「……少しだけだよ?」
そう言って笑い合いながら俺とショーコ先生は子供に囲まれるメイを暫く眺めているのであった。




