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#407 リーメイプライムコロニー

三度寝しちゃった☆


ゆるして_(:3」∠)_

「うーん、いいねいいねー。素晴らしい。モールトベネ」


 環境防護スーツ――いかにもSFチックな身体のラインがはっきりと出るピチピチスーツ――を身に着けたエルマを前に俺は思わず拍手をする。素晴らしい。これは素晴らしいものだ素晴らしい。


「い・い・か・ら! 早くマントを寄越しなさい!」

「えぇ……別に環境防護スーツだから恥ずかしくないって言ってたじゃん」

「あんたのスケベな視線に晒されてたら恥ずかしくなってきたの!」


 エルマが長い耳を赤くしてプンプンと怒りながら俺の手からカメレオンサーマルマントを分捕る。ああ、マントの下に隠れてしまった。


「ヒロ様、ああいうのが好きなんですか?」

「なんて言えば良いんだろう。一種のロマンだよね」


 ミミの質問に誠心誠意真面目な表情で回答する。この世界、確かに服装が全体的にSFチック……というと漠然としすぎているが、そう言う風味を感じるファッションがやはり多いのだが、ここまでコッテコテのSF風ピチピチスーツってあんまり見た覚えが無かったからな。やっぱり感動するよね。この調子でビキニアーマーとかも出てこないかな。


「ええと……後で私も着てみましょうか?」

「いいね」


 ミミが素晴らしい提案をしてくれたので、右手の親指を立てて全力で賛同しておく。ミミやミミに匹敵するモノをお持ちのショーコ先生がこの環境防護スーツを着たら、それはもう大迫力だろう。俺としては全力で賛同する以外の選択肢が存在しない。


「ご主人様」

「なんだ?」

「メイド服も負けてはいないと思うのです」


 ズイッと身を乗り出してくるメイの圧力が強い。


「落ち着こう、メイ。何か論理が飛躍していると思う」

「はい、私は落ち着いております」


 目にも留まらぬ速度で身を引いたメイがすました顔でそう言いながら頷く。

 メイはメイでメイド服に並々ならぬ拘りを持っているからな……頼めばメイド服以外も着てくれるけど、メイド服が至高のコスチュームと信じて疑っていないところがある。


「ほら、行くわよ。とっとと行くわよほら!」

「痛っ、痛い。わかったわかった、俺が悪かった」


 エルマに夢中だったところをミミやメイに気を取られたのは俺が悪かった。だから蹴るのはやめて欲しい。鞭のようにしなるエルマの蹴りはコンバットアーマーの上からでも痛いので。


「コマンドリンクは常時接続にしておくからな」

「わかりました! お気をつけて」

「行ってらっしゃいませ、ご主人様」


 ミミとメイの見送りの言葉を聞きながらコンバットヘルメットを被る。その俺を見ながら、既に環境防護スーツのヘルメットを装備し終えていたエルマが呟いた。


「……私もコンバットアーマー買っておこうかしら。経費で」

「経費で落ちますねぇ……俺が許可すればな」

「許可するわよね?」

「もちろんですとも」


 だからその構えた両手を下ろして欲しい。コンバットアーマーを装備していれば蹴りの打撃はある程度防げるが、関節技には無力なのだ。寧ろアーマーのせいでテコの原理が強く働いて逆に危ないまである。エルマに密着されるのは良いが、それで俺の腕とか指が曲がっちゃいけない方向に曲がるのは勘弁して欲しい。


「ティーナは大丈夫かしらね」


 ブラックロータスのエアロックで滅菌処理を受けながらエルマが少し心配そうな声で呟く。


「大丈夫だろう」


 メンタルが落ち込み気味のティーナはショーコ先生とクギによるメンタルヘルスケアと心を落ち着ける瞑想の処置を受けてもらっている。二人とも張り切っていたが、逆にティーナのメンタルにダメージが入ったりしないか少し心配なんだよな。まぁ、ウィスカも一緒にいるし滅多なことにはならんと思うが。


「それよりも俺達の方が気をつけなきゃな」

「これ見よがしに剣をぶら下げて、その上でコンバットアーマーまで着込んでいるあんたを見て喧嘩を吹っかけてくるようなのは流石に居ないと思うけどね」

「そう願うよ」


 コンバットヘルメットのバイザーを非透過モードにしておけば俺の人相もわからないから、威圧感はバッチリだしな。どうにも俺の顔つきはプラチナランカーの傭兵に相応しい威圧感とか迫力が足りないようだから。剣の威圧感は別として。


 ☆★☆


「しみったれたコロニーだなぁ……」

「パンデミックの最中だからでしょ」


 港湾区画を出る際に念入りに滅菌処理を施されてコロニーの中へと足を踏み入れたわけだが、リーメイプライムコロニーに対する俺の感想は言葉のとおりである。

 まず、人通りが少ない。少ないと言っても比較的というか、他所の同規模のコロニーを比較しての話だが。あと、俺達みたいに完全に全身を防護している人よりも、マスクだけをしている人が多い。恐らく、マスクだけをしているのがこのコロニーの住人達なのだろう。俺達と同じような格好をしているのは多分このコロニーに寄港している船のクルーなんだろうな。

 何故そう思うかって? そりゃ全身を防護するタイプのスーツはそれなりのお値段がするからさ。使い捨てタイプにしろそうでないものにしろ、経費が嵩むし運用するのに滅菌設備が必要だったりするし。そんなものをこのコロニーの『下層民』が運用できるとは思えないからな。


「マスクだけで感染を防げるのかね?」

「胞子を多量に吸引しなければ大丈夫って話だし、ノーガードよりはましなんじゃない?」


 そんな会話をしながら下層区画――下層と言っても物理的な意味でなく、立場的な意味――を抜けて、領主がいるという上層区画へと向かう。


「領主は準男爵だっけ」

「レイディアス準男爵ね。領主というよりは代官と言った方が正確だけど」

「領主と代官の違いは?」

「領主っていうのは本来その土地――というか星系を領有している貴族のこと。代官っていうのはその領主から星系の統治を任されている貴族ね。つまりこれから会うレイディアス準男爵の上に本来の領主が別にいるってこと。マグネリ子爵ね」

「なるほどなぁ……そういや言葉遣いとかどうするべ。あんまり丁寧な言葉遣いなんてできんぞ」

「丁寧さを心がける程度で十分よ。名誉爵位とはいえ、爵位はヒロの方が上だしね」

「そういうものか」


 と、話をしながら移動をしているうちに下層区画と上層区画を隔てるゲートに到着した。環境防護機能もありそうなコンバットスーツに身を包み、レーザーライフルを装備した兵士がゲートを守っている。その他にも据付型のレーザータレットとかも置かれてるな。随分と厳重な警備体制だ。

 まぁそれもそうか。この状況じゃな。


「これは酷い」

「まぁ、こうなるわよねぇ……」


 ゲート付近には怒れるコロニー住民達が押し寄せていた。いや、押し寄せるとは言ってもゲートの直近まで近づいたり、出入りを妨害するようなことはなく、遠巻きに集っているという感じか。


「えー、なになに? 食料と水、そして仕事を寄越せ?」

「空気税を免除しろ、我々にも手厚い医療支援を、ね」

「統治機構は感染爆発の責任を取って遺族に弔慰金を、か。うーん、まぁ。妥当?」

「初期対策を誤ったのかどうかは知らないけど、現実問題として感染爆発が起こるのを止められなかった以上、統治機構が批判されても仕方はないわよね」

「それはそう。結果が全てだものな」


 初期段階で封じ込めに失敗したのか、それとも気付いたときにはもう手遅れだったのかは知らないが、代官はご愁傷さまだな。俺達には関係ないが。


「この状況で近づくのは気が進まんが、致し方ないか」

「徒歩だと目立ちそうねぇ……どこかでレンタルの車両でも調達するべきだったかしら」

「というか、カーゴスペースには余裕があるんだし偵察車両を調達すべきかもな」

「それはそうね」


 話しながら二人でゲートへと歩いていく。警備をしている兵士達が俺達の姿を認めて警戒するが、警戒はすぐに解けた。俺の腰に差してある大小一対の剣を目にしたからだろう。グラッカン帝国内では剣を腰に挿して歩いている人=貴族だからな。


「どうも、ゲートを通りたいんだが良いかな? レイディアス準男爵にはアポを取ってる」

「イエス、サー。IDを照合させていただいても?」

「勿論だ」


 マントを翻し、コンバットスーツのポケットを兵士達によく見えるようにしてから小型情報端末を取り出してIDを照合してもらう。


「あー、君達は帝国航宙軍の海兵ではないよな。星系軍所属なのか?」

「イエス、サー。我々はマグネリ卿の配下で、星系軍に所属しております」

「なるほど。事態が収束することを祈ってるよ」


 照合している間に兵士と世間話をする。なるほど、マグネリ子爵のね。レイディアス準男爵ではなくマグネリ子爵の配下と名乗るということは、領主も兵を派遣して事態の収束に動いてるってことかな? 直属の兵を遣わしているということは多分そうなんだろうな。


「照合が完了致しました。お通り下さい、ヒロ卿」

「ありがとう」


 兵士に礼を言って物々しい警備体制のゲートを通り、上層区画へと抜ける――前に全身に滅菌処理を受ける。上層区画に入る際の感染対策は完璧といったところか。


「上層区画はクリーンです。環境防護ヘルメット無しでも問題ない状態となっています」

「なるほど、情報感謝する。行こう、エルマ」

「ええ」


 今度こそ下層区画と上層区画を隔てるゲートを通過し、俺達は上層区画へと足を踏み入れた。


「へぇ、こっちは下層にくらべるとだいぶマシだな」

「格差社会よね」


 上層区画ではマスクをしている人も殆どおらず、俺達のように全身に防護対策を行っているような人も殆ど見当たらない。例外はゲートを守っている兵士くらいか。恐らくだが、この状況下で下層と上層を行き来するような人間は殆ど居ないんだろう。そしてゲートの此方側はクリーンだからマスクをする必要もないというわけだ。


「とにかくレイディアス準男爵に会いに行くか。挨拶は大事だからな」

「そうね、向かいましょう」


 小型情報端末を取り出し、目的地へのルートを表示する。さて、移動手段は徒歩にするか、それとも他の手段を模索するか。さほど遠くないから徒歩でも良いんだけどな。

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― 新着の感想 ―
この物語の世界観から見て、ビキニアーマーを来た女性が出て来てもおかしくありませんね。 例えば……近年になってグラッカン帝国に加わった星。 コロニーも一つしか無い。 陸地の大半がアマゾン流域のような熱…
[気になる点] 「この調子でビキニアーマーとかも出てこないかな」?  ビキニアーマーを着た女性なら、「#036 傭兵ギルドと紹介状」の回で出ていましたよね?
[一言] 移動手段を用意できるならば用いるべきでしょうね。 舐められないように、という点と名誉爵位とはいえ貴族のマナーとして。
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