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#376 養父

みじけぇ!

天気が悪くて捗らなかったからゆるしてゆるして_(:3」∠)_

「……どうしてもかね?」

「どうしてもだねぇ」

「どうしてもか……」


 アポイントメントを取ったより少し早くにイナガワテクノロジーに到着した俺達であったが、向こうも早めに容易をしていたようですぐさま面会を行うことになった。

 面会場所は応接室――というよりは、会社の重役の執務室のような部屋である。入って正面にホロディスプレイを内蔵していると思われる執務机があり、その前に座り心地の良さそうなソファが一対、ソファの高さに合わせたガラステーブルのようなものが一つ。実際に材質がガラスかどうかはわからんが。

 そのテーブルを挟んで俺達は一人の男性と対峙していた。謹厳そうな顔つきの初老の男性である。どことなくだが、クリスの祖父であるダレインワルド伯爵に通ずる雰囲気を感じるようにも思える。事前にショーコ先生から聞いたところによると、彼はショーコ先生の上司にして養父のようなものに当たる存在だという。

 その彼が、俺に視線を向けてきた。ジロリ、と。


「よくも誑かしてくれたものだね」

「あまりそういう自覚はないんだが、結果的にそうなったな。だが俺は謝らないぞ」


 その視線を正面から受けて立ち、じっとその瞳を見返す。


「君の立場や身分は理解しているとも。だが、そこは謙虚に謝るのが円滑な人間関係を構築するとは思わないかね?」

「そうかもしれないが、俺はショーコ先生の意思と決断を最大限に尊重する立場だからな。ここで俺が謝ったらその意思と決断に泥を引っ被せることになるだろう。だから俺は謝らない。ただ、こうなった以上は俺は全ての力を振り絞ってショーコ先生を守るし、後悔させないように、失望させないように振る舞うつもりだ。それはこの場で約束する」


 俺がそう言い切ると、彼――ディクソンと名乗った初老の男性は暫く俺の顔をジッと見た後に諦めたかのように俯いて溜息を吐いた。


「……いつかショーコくんを嫁として誰かの許へと送り出さなければならない時が来るかもしれないとは思っていたがね。よりによって傭兵が掻っ攫っていくとは思わなかったよ」

「嫁って……あのね、養父さん。ヒロくんとはそういう……そういうのなのかな?」

「俺としてはもう受け入れる気満々というか、責任は取るつもりだぞ」


 首を傾げながら聞いてくるショーコ先生に頷いて見せる。

 それくらいの甲斐性はあるつもりだ。男の船に女が乗ったら云々とかいう妙な慣習の件もあるわけだし、それを知った上でショーコ先生を受け入れる気だったのだから、今更ショーコ先生は貰っていきます。でも責任は取りませんなんてのは通らないだろう。


「そうか……そうか。うん、そうか。そうだね。なんだか恥ずかしいな」


 照れくさそうに顔を赤くするショーコ先生が可愛い。ショーコ先生の中では同じ船で供に銀河を駆ける仲間、程度の認識だったのだろうか? そうなんだろうな。あまり深く考えていなかったんだろう。


「だからっていきなり亭主面をするつもりはないからな。何事もまずは一歩一歩確実にだ」

「あはは、航宙艦で星から星へとひとっ飛びな傭兵にしてはヒロくんは慎重というか堅実な性質だよねぇ」


 そんな俺とショーコ先生のやり取りを見てか、ディクソン氏は今まで引き締めていた表情を少しだけ緩めた。


「ショーコくんにそんな表情をさせる男が現れるとはね……当人の意思も固いようだし、私が何を言っても無駄なのだろう。書類も完璧だから、止めようもないしね」

「ありがとう、養父さん。ところでヒロくん、これで私は第何夫人ということになるのかな?」

「「うん?」」


 俺とディクソン氏の疑問の言葉が重なった。


「ミミくんが正妻だろう? いや、身分的にはエルマくんかな? どちらにしてもそこの二人ナンバーワンとナンバーツーで、その後はメイくんだよね。ヒロくんは機械知性の彼女も一人の個として扱うだろう?」

「あの、ショーコ先生?」


 ショーコ先生の言葉が続けば続くほど表情が抜け落ちていくディクソン氏の顔色を横目に見ながら、ショーコ先生を制ししようとする。


「その後はティーナくんとウィスカくんだよね。そしてクギくんが一番の新参だったと言う話だものね」

「はい、ショーコ様。此の身が一番の新参でした」


 俺の横でクギがコクリと頷く。


「ということは私で七人目か。第七夫人ってことになるのかな。お貴族様でも七人もの妻を持つ人はそう多くないだろうにね」


 そう言ってショーコ先生があっけらかんと笑う。ディクソン氏もにんまりと笑う。


「義理とは言え娘を嫁に、それも第七夫人として嫁にやる父としては君を一発ぶん殴りでもしたほうが良いのかな。いや、なんだかそうしなければならない気がしてきたね。きっとそうに違いない」

「それはなんとか勘弁して頂きたく」


 拳を握りしめてブルブルと震えるディクソン氏に両手を挙げて降参する。確かに成り行き上そうなるのは事実かもしれないけど、俺としては第何夫人とか順位をつけるつもりはないから。皆平等に愛を注ぐから。そういう意味でちゃんと責任を取るから。どうか許して欲しい。

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― 新着の感想 ―
容易をして  用意
残念ながら第八夫人です!w
[気になる点] 誤字? 向こうも早めに『容易』をしていたよ 『用意』だと思います。 脱字? どちらにしてもそこの二人『』ナンバーワンとナンバーツーで、 『が』か『で』が要ると思います。 [一…
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