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#368 理知的な異星人

昨夜から暑くて暑くて溶けそう……_(:3」∠)_(短いのはユルシテ


ところで明日8/10は宇宙船8巻の発売日! 是非買ってね!!( ˘ω˘ )

 彼との交渉――というかコミュニケーションは難航していた。


【グラッカン帝国とは何か】

「グラッカン帝国はこの恒星系と一番近い位置に存在する銀河帝国で、無数の恒星系を支配する星間国家だな」

【銀河帝国とは何か。恒星系とは何か。星間国家とは何か】

「あぁー……」


 彼は昏睡していた帝国兵達からある程度の基本的な会話シーケンスというか、コミュニケーションに必要な最低限の情報は抜き取れたようだったが、知識面での情報収集は不完全であったらしい。言葉の一つ一つについて懇切丁寧に説明していかなければならないので、コミュニケーションは遅々として進まなかった。

 幸い、三角錐氏の頭脳――脳味噌があるかは知らんが――は優秀なようで、一度説明したことに関してはしっかりと記憶してくれているようだ。それが唯一の救いだ。


「これ、俺一人でやるの? 心が折れそうなんだが」

『貴方以外だと近づいただけで昏倒してしまうので』

「まずそこをどうにかするべきじゃねぇかなぁ?」


 俺が居ないとこの三角錐氏とのコミュニケーションが成立しないということでは先が思いやられる。俺は謎の三角錐専属の翻訳者になるつもりはねぇぞ。

 と、まぁセレナ大佐に通信越しに愚痴を吐きつつ、彼女の率いる対宙賊独立艦隊のバックアップ――知識的な意味で――を受けながら、三角錐氏とのコミュニケーションを重ねていく。

 何にせよ相互理解をするところからだろう、ということで俺達の立場を説明し、彼の来歴を聞き取る。


「つまり、自分でも自分がどこから来たのかわからないと?」

【肯定する。我々がどうやってこの場所に来たのか、我々は答えを有していない】

「我々ということは、あんた以外にもこの惑星に同胞がいるのか?」

【否定する。我々は我々だけである。即ち、貴殿らが『三角錐』や『タマ』と呼んでいる個体群である】

「つまり、お前さんもあのタマも同じ存在の別部位……言うなれば、俺達にとっての手足のようなものだと?」

【肯定する】

「なるほどぉ……」


 そのタマ、我々いくつもこの星から持ち出した上に売買したり破壊したり実験動物扱いしてしまっているのだが。


「知らなかったこととはいえ、なぁ」

【個体群の減少は把握している。早急な解放を要請する】

「だそうですよ、大佐殿」

『状況は把握しました。しかし運び出す際に暴れられるのもこちらとしては困るので、外に運び出すまでタマの状態に戻ってじっとしてくれると助かるのですが』

「どうやって降ろすんだ? レスタリアスは惑星上に降下できるのか?」


 重力で艦隊が断裂、崩壊するようなことはないだろうが、一度惑星上に降下したら重力圏から離脱できるのだろうか?


『できないこともありませんが、リスクが高いですね。降下艇で降ろすことになるかと』


 なのでタマの皆さんには大人しくして頂く必要があるんですね、ということらしい。

 その後、研究室に展開されていた思念波妨害シールドが解除され、三角錐氏が軌道上のレスタリアスにいる研究室のタマを掌握してタマ達が沈静化。沈静化したタマをセレナ大佐麾下の海兵達が降下艇ドロップポッドへと積み込み、惑星降下。


「シュール」


 黒いタマが一糸乱れぬ動きでゴロゴロと転がってくる様はそう評さざるを得ない。というか、足を展開してカサカサ歩いてくるんじゃないんだな。あれが彼らの省エネモードな移動方法なのだろうか。


「これで全部か?」

【否定する。残存個体数はピーク時の二割程度】

「そんなに持ち出されてんのか……」


 全部が全部持ち出されたわけでなく、何らかの事故で行動不能になったりした個体もあるのかもしれんが、それでも二割ね。


【質問】

「はいなんでござんしょ」

【個体群が研究室で発見した物質について問いたい】


 タマ達が研究室で劇的な反応を見せた物質となると、精霊銀だろうなぁ。というか、当然のようにタマが見聞きした情報を一瞬で共有するのね。


「アレは精霊銀っていう特殊な金属でな。ここからずっと遠くに離れたとある惑星で珍重されているものだ。なんて言ったかな……そう、精神増幅素材とか呼ばれていたかな。サイオニックパワーに反応して、増幅する効果があるそうだ」

【それぞ我々が探し求めていたもの!】


 三角錐から新たミニ三角錐が分離して叫ぶかの如き強烈な思念波を放つ。急に元気になるじゃん。


「どうどう、落ち着いてくれ。俺は大丈夫だが、また他の連中が昏倒しかねん」

【謝罪する。なれど、その物質は我々が長年探し求めていたものである】

「なるほどねぇ……この星では見つからなかったのか」

【この惑星で目覚めた我々はそれを探し求め、幾星霜もの年月を費やしてきた。資源の獲得は我々の悲願である】

「何に使うんだ? 食べるとか?」

【部分的に肯定する。我々はその素材を取り込む事によって我々を増やすことが出来る】


 つまり、繁殖――というか自己増殖? に必要な物質ってことか。増えてどうする気なのだろうか?


【我々にも自己保存の本能は存在する。生存のためにも特定物質の確保は必須である】

「それもそうか。様々な要因で自分達が損耗することは避けられないだろうし、増えることができなければそのうち先細りになるものな」

【肯定する】

「実際にどのような条件になるかはわからないけど、帝国はまぁ、自分達に利する存在たればそれなりに公正な取引をしてくれるんじゃないかね。目下の問題としては、俺以外にはお前さんの念話に耐えられないことだろうな。相手を昏倒させない適度な強度での念話ができるように訓練するしかないと思うぞ」

【肯定する。しかし、その実現には実験と検証が不可欠である】

「そりゃご尤も。実践するしか道はないわな」


 というわけで、不屈の海兵達の出番である。この後、数十人の昏倒者を出しつつもなんとか三角錐氏は適切な念話強度の調整に成功し、晴れて俺も交渉役をお役御免となったのであった。

 いや、ニンジャアーマーが活躍する出番がなくて本当に良かったわ。いつもこんな風に平和に終わってくれると助かるんだけどな。

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― 新着の感想 ―
未知の生命体と交渉で決着する展開はよいですね
[一言] 思い返してみるとこいつ等 『母星が崩壊した時に生存して宇宙を漂流し現所在地に着弾した』 そういうエクストリーム経歴なんだろうな。
[気になる点] >理知的な異星人 後これは異星人なのか? 異宙人ってレベルにみえるが。
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