#343 乱戦
天気が悪いとなかなか捗りませんね( ˘ω˘ )
「こちら傭兵ギルド所属艦、クリシュナだ。今から援護する。持ち堪えろ」
『助かる! くそっ! しつこい奴等だ!』
ハンガーから飛び出すと同時に転舵し、戦闘が発生しているエリアへと向かう。ザッと見た感じ、襲われている側は中型艦二隻と、小型艦が……うーん、三、四隻か? 乱戦になっててわかりにくいな。
「ヒロ様、敵味方識別信号を受信。反映します」
「了解」
メインスクリーンに映る船のうち、探索者船団に所属する船が緑色のフレームで友軍としてハイライトされる。それ以外の船は敵艦として赤いフレームでハイライトされた。
「とりあえず数を減らして敵を引き付けよう。エルマは援護に回ってくれ。グラヴィティ・ジャマーの展開タイミングは任せる……ああ、でも食えそうなのはどんどん食っていって良いからな。採算は取れるだろうし補給の心配もいらないだろうから派手に行け」
『アイアイサー。久々に暴れさせてもらうわよ』
そう返事しつつ、エルマの操艦するアントリオンがクリシュナから離れていく。こっちは真っ直ぐ突っ込むつもりだが、エルマは戦場を回り込むつもりらしい。恐らくクリシュナの攻撃で戦場から距離を取って様子見をしようとする宙賊艦を食うつもりだろう。激しい攻撃に動揺して一旦安全地帯に逃げようとしたところを叩くわけだ。
「小物が多いな。ブラックロータスも攻撃に参加してくれ。魚雷持ちには注意しろよ」
『はい、ご主人様』
ブラックロータスの総火力はクリシュナを大きく上回っている。当然ながら同格の純粋な戦闘艦と殴り合いをするのは分が悪いが、格下の小型艦を相手にした場合の制圧力は圧倒的だ。こういう場面ではブラックロータスにも前に出てもらって殲滅速度を上げたほうが良い。
「我が君、接敵します」
とは言え、アントリオンの参戦にもブラックロータスの参戦にもまだ今少しの時間がかかる。まずは俺達が乗るクリシュナの出番だ。
「よし、突っ込むぞ!」
探索者船団の小型戦闘艦と宙賊艦が入り乱れて戦っている戦場へと突入する。おっと、早速探索者の小型艦が一隻ピンチだ。三隻の宙賊艦から集中砲火を受けて今にも落ちそうな船の援護に入ることにする。
「そぉいっ!」
『うおぉああぁぁぁぁぁっ!?』
『なッ――……』
「ひゃーっ!?」
「わーっ!?」
探索者艦のケツにチクチクとレーザー砲を浴びせている三隻の小型宙賊艦のうち一隻に戦場に突入した速度そのままの体当たりを仕掛け、ついでにもう一隻には重レーザー砲と散弾砲の一斉射撃をお見舞いしてやった――のだが、体当たりを食らった艦と射撃を食らった艦だけでなくクギとミミまで叫んでいる。ああ、そういやここまで荒っぽい手を使ってみせるのは初めてだったか?
「クギ、シールドセル起動。ミミは集中しろ」
「は、はひっ!」
「わ、わかりました!」
あたふたしながらも二人が指示通りに動き始める。クリシュナの体当たりを食らった宙賊艦はシールドが完全に飽和した上に半壊して行動不能に陥り、近距離で全力射撃を食らった宙賊艦は一撃で爆発四散したようだ。残された一隻が逃げようとしているので、そのケツを追いかけて重レーザー砲を連続で浴びせてやる。
衝突によってかなり減衰していたクリシュナのシールドは急速に回復を始めているし、狙われていた探索者艦はなんとか危機を脱してシールドを再起動できたようだ。それじゃあ目の前の宙賊艦にトドメを――と思ったところで横合いから何かが飛んできて宙賊艦の横っ腹に突き刺さり、宙賊艦が爆散した。
『ごめん、逃げるだろうと思って撃ってたのよ』
「気にすんな。その調子だ」
どうやらエルマのアントリオンが先にシーカーミサイルを撃っていたらしい。流石のエルマもまさか体当たりで一隻航行不能にするってのは予想外だったのかね。ミミに見せてないってことはエルマにも見せてないもんな。その可能性はあるか。
「選り取り見取りだ。片っ端から食うぞ」
探索者艦への攻撃に夢中になっている宙賊どもの船を片っ端から食い散らかしていく。エッジワールドの宙賊艦の性能が他の中域の宙賊艦より多少マシとはいえ、殆どの船が残骸から無理矢理でっち上げたキメラ艦であるということに変わりはない。シールドさえ破ってしまえばいとも容易く船体が崩壊していく。
『畜生が! 他の奴等はまだか!?』
「増援が来るよりお前達が全滅する方が早そうだな?」
『スカしてんじゃねぇぞてめぇぇぇ!』
宙賊艦の攻撃がクリシュナに集中し始める。ああ、いけませんお客様。ああ、お客様お客様お客様。あー、いけませんお客様。
俺だけに集中すると大変なことになるぞ?
『アラート!? うわぁぁぁぁぁっ!?』
『げぇっ!? いつの間にデカブツが!?』
『うわっ! やめ、やめぇ――!?』
大量のシーカーミサイルとレーザー弾幕がクリシュナを避けて飛来し、宙賊艦に突き刺さって大爆発を起こす。
『制圧完了です』
俺が宙賊艦を引き付けて暴れている間に戦闘エリアへと接近したブラックロータスの一斉射撃によって宙賊艦が文字通り一網打尽にされた。うん、やっぱりデカい機体は手数が多いな。
「ヒロ様、所属不明艦が接近中です。間もなく戦域にワープアウトしてきます」
「了解。敵増援の可能性も高いから各自臨戦態勢で」
「はい、我が君」
「はい!」
『アイアイサー』
ドォン! という轟音を立てて多数の艦船がワープアウトしてくる。その艦影には一つとして同じものはなく、意味があるのかどうかわからない攻撃的な装飾がふんだんに取り付けられ、ドクロマークのペイントやらなにやらがゴテゴテと塗りたくられ……まぁ、つまりワープアウトしてきた艦はどう見ても宙賊艦であった。
その数、僅か五隻。
「エルマ、逃がすな」
『当然。グラヴィティ・ジャマー起動』
腹の底に響くような重低音のようなものが鳴り響いた。それ以外に何か変わったことが起きた様子は無かったが、超光速ドライブの起動は確かに阻害されているようだ。超光速ドライブの起動スイッチが一瞬で暗くなって使用不能になった。セーフティロックがかかったようだ。
『な、なんだ!? 超光速ドライブが起動できねぇ!?』
『セーフティロックが外れねぇ! おいやめろ、こっちに来るな!』
「ははは、どこへ行こうと言うのかね?」
転舵して蜘蛛の子を散らすように逃げようとし始める宙賊艦のケツに食らいついて一隻ずつ撃破していく。俺達で四隻、残りの一隻は探索者艦が仕留めたようだ。
『はっはぁ! やってやったぜ! クソどもが!』
『い、生き残った……今回ばかりは駄目かと』
探索者達は興奮したり安堵したりと大変なようだ。こっちはそれどころじゃないというか、ここからがお仕事の本番なんだが。
「よーし、ブラックロータスは回収作業に入ってくれ。クリシュナとアントリオンは警戒を続けよう」
『承知致しました』
『アイアイサー』
テキパキと仕事をしていこう、テキパキと。こうして回収している間に他の宙賊が遅れて到着してくれたらラッキーなんだがな。おっと、探索者艦を放置しておくわけにもいかんか。
「改めて挨拶しとこう。俺はキャプテン・ヒロ。傭兵ギルド所属の傭兵だ。そっちはえーと……スクリーチ・オウルズだったか?」
『ああ、そうだ。救援感謝する。私は代表者のキャプテン・ソウルズだ。謝礼に関してはすまんがドーントレスに戻ってからの手続きになる』
探索者の中型艦二隻のうち一隻から応答があった。男の声だな。歳はそこそこいってそうだ。
「構わんよ。まぁ賞金もあるし、俺達は軍に雇われて宙賊を狩ってるんでな。お安く済むんじゃないか? ラッキーだったな」
『クソどもに襲われてラッキーなものか。まぁ不幸中の幸いではあるかもな』
キャプテン・ソウルズが嘆息混じりに返事をする。確かに集中攻撃を受けていた小型艦は今にも落ちそうなくらいにダメージを負っていたし、修理費を考えると頭が痛くなるのも無理はないか? 完全に他人事だからご愁傷さまという感想しか湧いて出てこないけど。
「なら少しでも元を取っていけ。そっちが撃破した分はそっちの取り分なわけだしな。こっから先に出てくる分はサービスしてやるよ」
『嬉しくて涙が出そうだ。何にせよそうさせてもらおう。おい、回収ドローンを出せ。ヘクトルの船はトラブる前に着艦させろ』
向こうは向こうで戦後処理にかかったようなので、こちらも作業に入ってもらうとしよう。俺達とエルマは警戒を続けるけどな。




