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#337 地域限定ショップ

生活リズムを直したい( ˘ω˘ )

 目立ってるな。いやそれはそうだろう。男が俺一人で、綺麗どころをぞろぞろと六人も引き連れて歩いているのだ。目立たないはずがない。しかもメイはメイド服だし、クギは例の巫女っぽい衣装だし。

 まぁ、ただドーントレスの内部には男しか居ないのか? というとそんなことは全然ない。やはり軍服を着ている人は多いが、男女比率は若干男性が多いかな? くらいの印象だ。だからといって俺達が目立たないということではないのだが。七割以上は制服というか、揃いの地味で丈夫そうなシャツとズボンとかそんな感じの出で立ちだし。


「なんだか見られていますね」

「私達の服装は浮いていますから。ですが気にする必要はないかと」


 俺達の中でも抜群に服装が浮いているクギとメイが小声で話し合っている。最初にメイにクギの面倒を見るように頼んだからか、クギは意外とメイに心を開いているようなのだ。ガチガチの精神文明人と機械知性ということで実のところ若干心配していたのだが、クギ的にはメイの存在が不快だとかそういった感覚は皆無であるらしい。


「あー、なんかこの船の雰囲気落ち着くわぁ」

「天井の高さとかがドワーフ系のコロニーと似た感じで低いね。あと、適度に年季が入ってる感じがブラドプライムコロニーを思い出すかも」


 ティーナとウィスカはキョロキョロと辺りを見回しながら楽しそうにしている。確かに二人の言う通り、この辺りの区画は天井が然程高くない。一般的なコロニーの場合、メインの居住区画などに関しては結構天井が高く作られていることが多い。その方が住人の感じるストレスが格段に小さくなるからだ。一応この船は軍艦だから、その辺の事情よりも省スペースの方に力を入れているのだろう。


「船なのに滞在者用の観光情報があるのってなんだか面白いですよね」

「今回みたいにエッジワールドの前線基地として活動することも多いんでしょうね。そうなると商人や傭兵、冒険家が集まるから、必要なんじゃないかしら」


 観光情報と言っても普通のコロニーに比べれば慎ましいものだ。どこに食堂があるとか、物資の取引をするならこの区画だとか、手続き関連はこの区画だとかそういったことが簡素に書かれているものであるらしい。


「船の中に歓楽街があるのは驚いたけどな」

「そりゃ兵士かて人やからな。ストレスを解消できる場所は必要やろ」

「最早一つのコロニーみたいな感じですよね。寧ろ普通のコロニーよりも治安も良さそうです」

「それは確かに」


 多くのコロニーでは所謂スラムのような場所だとか、場合によってはもっとヤバい場所があったりする。しかし、この船――ドーントレスにはそういった区画はないようだ。それだけ規律が隅々まで行き届いているということなのだろう。この船の指揮官は相当なカリスマ性を持っているのだろうな。


「まずはお買い物にでも行ってみますか?」

「何か掘り出し物があるかもしれないし、そうするか。その後はメシだな」


 そう方針を決めてまずはブラックロータスやアントリオンを停泊しているドッキングエリアにほど近い場所にある商業区画へと足を伸ばす。この辺りは民間の店舗が多数軒を連ねていて、かなり活気のあるエリアであるようだ。人の数も多い。俺達と同じような傭兵らしき格好の人々もかなりいるので、俺達と同時にこの船に到着した連中もこの辺りに繰り出してきているようだ。


「憲兵が目を光らせているわね」

「余所者が大挙して押し寄せてきたんだから、そういう対処をするのも当然だろうな」


 特に一般的には血の気が多く、荒んだ生活をしていると思われている傭兵達が多く来訪したとなると、こういった人が集まりやすい区画でトラブルが起きる確率は高くなる。妥当な采配と言えるだろう。


「あ、お兄さん。あそこのお店を見てみませんか?」


 ウィスカがそう言ってクイクイと俺のジャケットの裾を軽く引っ張ってきたので、彼女の指し示す方を見てみた。あれは……なんだろう? 何を売っている店なんだ? 見た感じ、用途不明のガラクタしか並んでいないように見えるんだが。


「行ってみるのは良いけど、何の店だあれ?」

「冒険家が持ち帰ってきたアーティファクトのお店みたいです」

「アーティファクトねぇ?」


 冒険画が持ち帰ってくるアーティファクトというのは、つまり未知の異星文明の痕跡のようなものを指すものである。実際、SOLで冒険家プレイをしていた連中というのは未探査惑星のスキャン情報やそういったアーティファクトを見つけては売り払うという感じで金を稼いでいたようだが、俺は実際にそういったものを手にしたことも無ければ探したこともないので実際にどういったものなのかというのは通り一遍の情報しか知らない。


「見るだけなら良いけど、買うのはやめときなさいよ。たまに検疫が甘くて厄介な病気をもらったなんて話も聞くんだから」

「えぇ……怖いですねそれ」


 エルマがジト目でウィスカを注意し、それを聞いたミミがドン引きしている。いやそれは初耳だわ。怖いなアーティファクト。


「病気というよりは精神に干渉してくるタイプの厄介なものもあったりするらしいから。ほら、歌う水晶の歌声とかもなんか耳と言うより脳に響いてくるじゃない。あんな感じで」

「なんかいくのこわくなってきたんですけど」


 行こうと言っていたウィスカ自身がエルマの脅かし話に怯えてしまった。でもまぁこんな店はエッジワールド近辺でしか見られないものだし、なにか面白いものもあるかもしれないということで中を覗いてみることにする。


「いらっしゃい」


 こじんまりとした店の奥にあるカウンターには小柄な男性が座っていた。目をサイバネティクス化しているようで、両目の代わりに緑色のレンズが淡く光っている。うーん、胡散臭さが雰囲気出してるなぁ。


「なんか面白いフォルムしてんなぁ。これなんやろ?」

「うーん、全く想像がつかないね。置き物にしか見えないけど」


 ティーナをウィスカは早速透明なショーケースに入れられているアーティファクトらしき謎の物体を鑑賞し始めている。俺もそれに倣って彼女達と同じショーケースの中身を覗いてみるが、なるほど確かにこれは何なのかよくわからないものだ。光沢のある白い材質で形作られた薬研のような見た目の器のような何かである。見た目で材質の推測がつかないのはこの世界ではよくあることだが、これはなんだか無機物と言うよりも有機物っぽい雰囲気が感じられる。見た目だけなら白い陶器のように思えるのだが、何故だか無機物という感じがしないのだ。確かにこれは不思議なものだな。


「わぁ、これはなんで光ってるんでしょう?」

「謎ね。内部で緑色の炎が揺らめいているように見えるけど……危険物だったりしないのかしら?」

「エネルギー反応は然程強くはないですね。エネルギーパック一個分相当です」

「なんだか綺麗ですね」


 ミミ達は金色の台座の上に載った深緑色の宝玉のようなものを眺めているようだ。エネルギーパック一個分相当ねぇ? それはそれっぽく作られた贋作なんじゃないのか?


「クギは何か気になるものは無いか?」

「はい、我が君。特には。ポテンシャルが異常に高い品や精神波を放出しているような品などは見当たらないようです」

「なるほど」


 そうなると、少なくとも俺のように異世界だかなんだかから迷い込んできたような物体だの、精神に干渉してなんか良くないことを起こすような品だのはここには無いということなのだろう。


「何か気に入ったものがあったら買っていくのも良いかもな。神秘的な置き物って俺も割と嫌いじゃないんだ」

「そう言えば結晶生命体の不活性コアの一部とか飾ってあるわよね」

「キラキラしてて俺は好き」


 暗闇の中でも淡く七色にきらきらと光って結構綺麗なんだよ、アレ。万が一のことがあったら怖いから、頑丈なシールドケースの中に封印してるけど。不活性だってのがわかっていても素手で触りたくはないな。


「うーん、ちょっと欲しいけど……これなんてどう?」

「どこに置くねんそんなもん。せめてもうちょっと小さいのにしいな」


 ウィスカが自分と同じくらいの大きさの捻じれた三角錐というか若干ドリルっぽい何かを指差し、ティーナが速攻でNGを出している。なんだろう、あれは。黒い金属っぽい材質でできていて、なんだか所々に発光する赤い筋が走っていて、そこはかとなく冒涜的というか禍々しい雰囲気が感じられるんだが。なんか魔王城とかにオブジェとして置いてありそう。

 その後も散々店を冷やかし、結局何も買わないままアーティファクトショップを後にした。正直申し訳ない気持ちもあったが、流石に然程心惹かれもしない用途不明のガラクタを買っていってもな……まぁ他にも同じような店はあるようだし、サクサクと覗いていくことにしようか。

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― 新着の感想 ―
[一言] ( 圭)<マグロ、ご期待ください。
[一言] デッドスペースネタかな?
[一言] デッドスペースで見た
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