#331 進路相談
ソフィー2終わったのでソフィー1のDX版始めました( ˘ω˘ )(なお59時間かかった
「気にしすぎよ」
ここはエルマ用の新造艦、アントリオンのコックピットだ。彼女はそのメインパイロットシートに座ったままそう言って苦笑いを浮かべた。
「ヒロがオーナーで船長で私達のリーダーなんだから、好きにすれば良いのよ」
「適当過ぎんか?」
サブパイロットシートに座ったまま思わず顔をしかめる。ワンマン経営のブラックカンパニーじゃねぇんだぞウチは。
「意外とこういうとこナイーブよね、あんた。普段は宙賊の群れとか結晶生命体の群れとかに平気で突っ込むくせに」
「それとこれとは話が別じゃん。勝てる戦いに尻込みする理由はないし」
「そんなんだから二つ名が『クレイジー』なんて物騒なのになるのよ……まぁ実際のところ、戦闘機動がまともにできないんじゃパイロットは難しいからね。誰よりも本人がそれを一番理解してると思うわよ?」
「訓練で克服できるかもしれないだろう。銃だって撃てるようになったんだし」
「それだってまともに撃てるようになっただけで、人に向けて撃てるかどうかは別の話でしょ?」
「それはそうだけども」
とにかく、ミミは本当に根っから争いごとに向かないらしい。育ちが良すぎるのだろうな。ある意味では貴族のお嬢様や皇族のお姫様よりも箱入り娘なのかもしれん。彼女は元々コロニーの中産階級の家庭の娘さんで、争い事というものから完全に隔離された環境で育ったらしいし。
「あの子は格闘術も苦手だしね」
「争い事自体が苦手って感じだよな。身体を鍛えること自体はあまり苦に思わないみたいだけど」
「サブパイロットじゃなくてエンジニアとかナビゲーター方面に進んだほうがあの子向きかもね」
エンジニアというのはティーナやウィスカのようなメカニックとは別で、機関制御やシールド制御、サブシステムの統制を行うプロフェッショナルだ。SOLではプレイヤーの技能では代替できないNPCクルー専用の職能で、艦の基本性能やシールド性能に若干のボーナスを提供し、シールドセルやチャフといったサブシステムを自動で使用してくれるようになるという性能を有していた。所謂機関士というやつだな。
ナビゲーターは超光速航行時の最高速度や運動性、超光速ドライブやハイパードライブの起動時間を多少改善し、ハイパーレーン移動中に経過する時間も同じく多少改善するNPCクルーだったな。こちらは航海士といったところだ。
「うーん。いずれはミミにも輸送船なんかを預かってもらって、補給や交易なんかを任せたいと思ってたんだけどな」
「将来的にはそれもいいかもね。ただ、今はエンジニアやナビゲーターとしての経験と訓練を積み重ねていくっていうのも良いと思うわよ。後に船長として輸送船を指揮するなら、どっちの経験も有効に働くしね」
「なるほど。それもそうかもしれないな」
最終的にミミのキャリアとして有効に働くのであれば良いか。操縦技術を持つパイロットは雇うなり何なりして、ミミは艦全体の指揮を執るってスタイルでも良いわけだし。寧ろ、ミミの気性的にはそちらの方が合うのかもすれない。
「いずれミミに輸送艦、ないし補給艦を任せたいって思っていた件も含めてミミにしっかりと伝えることね。ああ、いえ、やっぱり私も一緒に行くわ」
「それは助かる。エルマは本当に頼りになるな」
「当たり前でしょ? あんたより私のほうが先達なんだからね」
そう言ってエルマが自身に満ち溢れた表情をしてみせる。うん、完璧にドヤ顔だ。だが本当にその通りでこうして頼りになるから頭が上がらんな。
「ま、私としては頼られて悪い気はしないしね。メイよりも先に私に相談しに来てくれたのはなんだか誇らしいわ」
「対抗意識があったのか?」
「対抗意識ってほどのものじゃないわよ。単に頼られて嬉しいって話。さ、行きましょ。善は急げって言うしね」
エルマがメインパイロットシートから腰を上げ、手を差し伸べてきた。俺もその手を取ってサブパイロットシートから腰を上げる。
そうだな、こういうのはさっさと片付けるに限る。早速ミミと話をしに行くとしよう。
☆★☆
「というわけなんだよ」
「なるほど……」
ブラックロータスの食堂に移動してクギと一緒にお茶を飲んでいたミミに先程エルマと話していた件を伝えると、ミミはそう呟いて目を閉じ、俯いた。
「ヒロ様は、私とずっと一緒にいてくれますよね?」
すぐに顔を上げたミミが真剣な眼差しを俺に向けながらなかなかにヘビーな問いを放り投げてきた。これは重い。だが俺の心はとっくに決まっているので、答えに窮することもない。
「勿論そのつもりだ。ミミに愛想を尽かされない限りはずっと一緒にいたいと思ってるよ」
「それなら良いです。私はヒロ様にとって最も都合が良いように力を尽くしたいですね」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、ミミも自分の将来を考えてだな……」
「私の将来はヒロ様とずっと一緒にいることです。だからヒロ様にとって都合の良い技術を身に着けていきたいです」
Oh……ヘヴィ。実にヘヴィ。
「OK、それじゃあ今後はナビゲーターとエンジニア、どちらか肌に合う方の学習を進めていってくれ。オペレーターからとなるとナビゲーターへの転身の方が親和性が高そうだが、そこはミミの判断で良い」
「わかりました。じゃあクギちゃんはサブパイロットとしての訓練を積んでいくことになるんですね?」
そう言ってミミは少し離れた場所からこちらの様子を窺っているクギに視線を向けた。別に内緒話をしていたわけではないので、俺達の会話内容はクギにも聞こえているだろう。というか実際に聞こえているようで、ミミに名前を呼ばれて視線を向けられたからか、クギもこちらに視線を向けて頭の上の耳をピクピクと動かしている。可愛い。
「そうしてもらうことになるな。そういう意味ではミミとクギで役割の住み分けがはっきりする形になるか」
「わかりました。これからも頑張っていきます」
そう言ってミミはにっこりと良い笑顔を見せてくれた。
俺達も一端の傭兵団としてやっていくのであれば、長期的な視点というのを考えて日々過ごしていく必要が出てくるだろうからな。まぁ、あまり人を増やしすぎても俺のキャパを超えかねないし、人員を増やす予定は正直あまりないんだけども。仲間として迎え入れるとなると信用できるかどうかって問題もあるしな。
「うん、無理しない程度に――」
と、言いかけたところで食堂に脳天気な声が響き渡った。
「ういっすー! あー、つっかれたわぁー。みんなもお疲れちゃーん」
「お姉ちゃん、はっちゃけすぎ」
会社を辞めてなんか色々と吹っ切れたのか、先日からテンションが高いままのティーナとウィスカの登場であった。いや、テンションが高くてはっちゃけてるのは姉のティーナの方だけなんだけども。あやつ、まさか仕事中にも酒を飲んでるんじゃないだろうな?
「あれ? なんか真面目な話しとった?」
「しとった」
「堪忍して?」
「まぁええわ。許したる」
「やったー、兄さん太っ腹ー」
ティーナが諸手を挙げて喜びの意を示す。いやほんとテンションたけぇな。やっぱ酒キメてない? あーゆーどりんきんぐ? ちょっと息ハーッってしてみ?
「素面です……なんかすみません、お姉ちゃんここのところずっとこんな感じで」
「仕事でミスって大怪我とかしないようにだけ気をつけておいてくれ」
「はい」
妹のウィスカは姉の行動を見て恐縮しきりのようである。苦労するなぁ、この子も。




