#304 スペース・ドウェルグ社ウィンダス星系支社
キリのいいとこまで書こうとしたら遅れました( ˘ω˘ )(ゆるして
「お疲れ様です、連絡していたウィスカです」
「ティーナや。これ、IDな」
「お疲れ様です」
例の微妙にダサい看板が掲げられているスペース・ドウェルグ社のウィンダス星系支社を訪れた俺達は、とりあえず受付に声をかけるティーナとウィスカの二人を見守ることにした。見た目少女の二人と、いかついけど小さいおっさんが礼儀正しくやり取りしている様はなんだかちょっとおままごとっぽい雰囲気を感じないでもない。実際には両方ともいい年をした大人なのだが。
「あちらの方々はオーナーの?」
「せや、あの兄さんがオーナーのキャプテン・ヒロ様やで。プラチナランカーで、ゴールドスターっちゅう凄い勲章を陛下直々に頂いた新進気鋭の凄腕傭兵にして栄えある帝国の新たな英雄やな」
「名誉子爵様でもありますから、ご無礼の無いようにお願いします」
「それは勿論。本日は商談ということでしたね」
そう言って受付の男性ドワーフはちらりとこちらに視線を向けてきた。本日の訪問内容に関しては既にティーナとウィスカからスペース・ドウェルグ社に連絡を入れてあるので、向こうも事情は全て把握している。
「お待たせしました、こちらへどうぞ」
程なくして所謂ビジネススーツに似たデザインの服を着た女性ドワーフが現れ、俺達の先に立って案内を始めた。何度見ても思うんだが、ひげもじゃで顔もそれなりにいかつい男性ドワーフはともかく、どんなに頑張って上に見てもせいぜい中学校低学年くらいの年齢にしか見えないドワーフの女性がああいう服を着ているとどうにも違和感というか、コスプレ感が……でもドワーフの女性って身体が小さいだけで、よく見れば出るとこは出てたりするし妙な色気もあるんだよな。改めて不思議な種族だ。生命の神秘を感じる。
「兄さん、ああいう服が好みなん?」
「今度着てみましょうか?」
「やめなさい」
小声だけど聞こえるかもしれないでしょうが。
「ふぅん?」
「うーん、ああいう服はあまり着たことがないんですよね」
なんか後ろでも小声で話し合ってるな。これから真面目な話だから。後ろ姿を見る分には気づかれないだろうと思って前を歩く彼女に不躾な視線を送ったのは謝るから。この話はここでやめよう。
そうして歩き、エレベーターのようなものに乗ったりしながら移動すること数分。俺達はなかなかに豪華な内装の応接室――というより会議室のような場所に案内されていた。
「失礼します。ヒロ様と同行者の皆様をご案内して参りました」
「ご苦労。人数分の飲み物を頼む」
「承知致しました」
「どうぞ、こちらの席へ」
先に会議室で待っていたスペース・ドウェルグ社の社員らしき人々に席を勧められたので、素直にその勧めに従って席に着く。テーブルの反対側に座るスペース・ドウェルグ社の面々に向かってど真ん中に俺。左手にエルマとミミ。右手にティーナとウィスカ。そして俺の背後に控えるようにメイが立つ。
「私は従者なので、こちらに控えさせていただきます」
「それは……よろしいので?」
あちら側の進行役らしき男性ドワーフの社員が聞いてきたので、頷いて肯定しておく。メイ自身がそう判断したのなら俺から言うことは特に無い。程なくして先程飲み物を持ってくるように指示されていた女性社員が水差しのようなものとグラスを持ってきて全員に飲み物を用意してくれた。
ふむ? 氷水に何か果物の輪切りのようなものが沈めてあったように見えたな。果汁水とかレモネードみたいなものだろうか? 本物の果物を使っているとしたら、なかなかの高級品だな。
「さて、それじゃあ話を始めようか。こういうのは単刀直入に行きたいな」
「はい、まずは自己紹介させていただきます。私は今回の交渉において社の代表を務めさせて頂くアーガットと申します。そしてこちらは技術部門のテレサです」
アーガット氏に紹介されたテレサさんが無言で頭を下げる。アーガット氏は……ドワーフの男性は年齢の区別がつかんな。声からすると三十代か四十代に思えるが、これもアテにはならないしな。テレサさんは女性ドワーフだが、女性のドワーフも俺からすると年齢がわかりにくいんだよな。ただ、落ち着きのある雰囲気から察するにティーナとウィスカよりは年上のように思える。
「どうも。傭兵のヒロだ。名誉子爵うんたらに関しては振り回すつもりはないから、普通の傭兵として扱ってくれ」
最新型の母艦を値切りに値切って買って、運用データを提供しつつ一度取材を受けただけだと、スペース・ドウェルグ社からしたら大した客でもないだろう。何十隻も船を買ったとか、スペース・ドウェルグ社の依頼を沢山こなしたとかなら話は別だろうけど。
「いえいえ、ヒロ様は我が社にとっては大変な上顧客様ですよ。ヒロ様の活躍によって我が社の母艦の売上は上昇傾向でして、最新ブロックのデータも蓄積されて発注もかなりの数が入っております。砲母艦としての運用は実に斬新なアイデアです。火力はそのままに貨物の積載量を向上させた攻撃型輸送艦の開発計画も――」
「ゴホン」
何やら俺達に聞かせてはまずい情報を口走りかけたようで。テレサさんが咳払いをしてアーガット氏の言葉を止める。
「は、ははは……いや、単刀直入にでしたな。ウィスカ君とティーナ君のレポートは既に技術部門で分析をしております」
「大変に興味深い内容です。レストアした実機や、余剰の残骸なども一緒にお売り頂けるという話でしたね?」
「そのつもりだ。お互いの利益になるだろうと考えているよ」
俺達は出処が怪しい船を売り払ってニッコリ、スペース・ドウェルグ社は自社にない技術がてんこもりで、かつ製造元の会社に入手経路を探られても向こうが泣き寝入りするしかないような実機を手に入れられる。しかも、制御系のソフトウェアも完全な状態で。
無論、本来は簡単に解析されないように十重二十重のセキュリティがかけられている筈のものだが、元々が赤い旗宙賊団に横流しされていたようなモノなのでその辺りは既に解除済み。解析に関しても機械知性のアドバイザーなどに依頼すれば比較的早期に終わるのが見込まれるし、そうなればスペース・ドウェルグ社は今まで苦手としていた小型高速艦に関する研究が一気に進むことになる。互いにとって損のない取引だ。
「額面はどうする?」
「そちらからの提示額などがあればお聞きしたいところですが」
「俺としてはそっちがどれだけの値をつけるのか聞いてみたいところなんだがね。こういうのは先に言ったほうが有利なのかな?」
「一概には言えませんな。では同時に提示するというのはどうでしょうか? こちらの提示額のほうが高ければ即決で決まりますし、ヒロ様の提示額のほうが高ければそこから交渉するということで」
「良いのか? 買い叩けるチャンスだろ?」
「は、ははは、ヒロ様から買い叩くなんてとてもとても……」
そう言ってアーガット氏が額に汗を滲ませる。なんだろう。その俺を怒らせると超危ないからそういうのは全力で避けたいんですみたいな態度やめてもらえるかな? 俺、そんなハードクレーマーとか厄介客じゃないと思うんだけど。ブラド星系でのウィスカデッドボール騒動とか帝都でのマスゴミの件は悪いけどどう考えてもスペース・ドウェルグ社側が悪いからな?
「じゃあ同時に提示しようか」
「はい、では……」
アーガット氏が指を三本立てて見せ、徐々に二本、一本と減らしていく。
「750万」
「1200万」
俺が提示したのが750万エネルで、向こうが提示したのが1200万エネルである。おや、思ったよりかなり高いな。
「少しびっくりだな。だがそちらがそう言うならそれで」
「はい、ではこれで。ああ、ウィスカ君とティーナ君には数日こちらで情報の引き継ぎなどをして頂きたいのですが、それでもよろしいでしょうか?」
「構わないが、一日あたりの拘束時間はきっかり八時間までとしてくれ。前に帝都で同じようにスペース・ドウェルグ社に預けた時には随分と長時間労働を強いられたようでな。こちら側の仕事に影響が出過ぎた」
あの時は顔を合わせるたびに顔色が悪くなってやつれていったからな……二人がまたあんな風になるのは絶対にNOだ。
「あと、二人の所属はスペース・ドウェルグ社かもしれないが、間違いなく俺の身内だ。何かあれば……わかるな?」
「は、ははは……それはもう」
「過剰に特別扱いしろってわけじゃない。ただ、彼女達は俺の船に乗ってる。それだけは肝に銘じて欲しいな」
ここで軽く例の慣習を匂わせておく。まぁ、実際もうそういう関係になっているのだから、何の嘘も偽りもない事実だ。ああ、もう一つ言っておくか。
「それじゃああの船は1200万で売れたわけだから、二人の取り分は360万な。一人180万ずつってことでよろしく」
「「「えっ」」」
戸惑いの声が三人から上がった。そのうち二人はティーナとウィスカだか、もうひとりはテレサさんである。
「え、あの、ひゃくはちじゅうまん?」
「回収した船の売却益のうち三割を二人の報酬として渡す契約にしてるんでね」
テレサさんの問いかけに答えて肩を竦める。アーガット氏も顎が外れんばかりに口をあんぐりと開けているな。よほど度肝を抜かれたらしい。ティーナとウィスカは……ああ、なんか遠い目をしているな。
「兄さん、それ今言う必要あったか?」
「マネーイズパワーだよ。何かあったらそれだけのエネルでぶん殴ってくるぞってこった。あと、俺がどれくらい本気で二人を重用しているのかはっきりと分かるだろう?」
「それは……そうですね」
ウィスカが溜息を吐く。まぁ、スペース・ドウェルグ社のウィンダス星系支社に関わるのはほんの数日だ。多少居心地は悪くなったかもしれないが、それ以上に下手に何かするのは危ないと強く印象づけることはできただろう。
「それじゃあ、そういうことで。後は船の移送手続きや二人の勤務シフトについて話そうか」
「はい……」
魂を抜かれたような状態になってしまっているアーガット氏と細かい話を詰めていく。とりあえずはスペース・ドウェルグ社方面はこれで良いだろう。妙に高い値がついたことには多少疑問がないでもないが、うちが得する分には構わんしな。ありがたくエルマの船の購入代金として使わせてもらおう。
近々原稿作業でまた暫く更新を停止する予定です。月末くらいからかな? ユルシテネ!_(:3」∠)_




