#293 ショッピングの裏で
遅れた上に短いのユルシテ_(:3」∠)_(急な仕事でMPを使う羽目になった
「それではこういう条件で?」
「ああ、そうだ。資金は十分足りるだろう?」
ウィルローズ家で一晩を過ごしたその翌日。俺達はローゼ氏族領の都市部にショッピングに来ていた。無論、目的は昨日話していたエルマにフリフリのお姫様ドレスを着せることである。ウィルローズ本家のお姉様達やお嬢様達をカネの力で懐柔し、嫌がるエルマを半ば無理矢理な形で連れ出してきたのである。
まぁ、今は女性陣のショッピングタイムなので、俺は独り待合スペースで傭兵ギルドと連絡を取っているわけだが。
「それは問題無いですね。でも、相場より少し高いですよ?」
「それは構わない。プラチナランカーがシブチンじゃ格好がつかないだろうからな」
「それは確かに……わかりました、では提示された通りの条件で募集しますね」
「頼んだ」
そう言って通信を切る。これで仕込みはよし。
「ヒロ様ヒロ様! どうですか!」
「おー、似合う似合う。可愛い」
ちょっと俺の想像していたのとは違うが、可愛いドレスを着たミミを褒めておく。俺が想像していたのはフリルとかをふんだんに使ったかわいい系のドレスだったのだが、ミミが着ているのはどちらかと言えば制服っぽいデザインのドレスだ。あー、なんだろう。軍服っぽいドレス?
しかし割とかっちりとした衣装だから、逆にミミの胸元が逆に強調されて凄い。でかい。ぱっつんぱっつんやぞ。
「もう、どこ見てるんですか」
「いやそれは見る。見るよ」
「んもー……ヒロ様のえっち」
「仕方ないね。男はおっぱいに引き寄せられるものだからね」
てしてしと胸元を叩いてくるミミの拳を甘んじて受けておく。えっちとか言って俺のことを叩きながらも本当に怒っている感じじゃないな。
「なんでミミがアレなのに私はこんなのなわけ?」
「姐さん似合ってる似合ってる」
「お姫様みたいですよ」
エルマが顔を赤くし、大変に不服そうな表情をしながらも整備士姉妹を伴って店の奥――試着室のある方向から歩いてくる。
「Oh……」
「何よ」
「言葉を失うくらい似合ってる。綺麗だ」
「……褒めても何も出ないわよ」
絞り出すような声でそう言って顔を赤くしたままエルマが俺から視線を逸らす。
エルマが来ているのは若葉色を基調としたドレスだ。肩も出てるし胸元も結構際どいんだけど、透ける生地のケープのようなもので薄っすらと隠されていて……なんというか神秘的な雰囲気だ。
「兄さん、うちは? うちは?」
「お姉ちゃん……」
ティーナとウィスカも方向性はエルマと似たような感じだな。ゆったりとした光沢のある生地で作られたドレスで、こちらも剥き出しの肩を透ける生地のケープのようなもので隠している。
「二人とも可愛いな。いや、綺麗だと言うべきか?」
「可愛いでええで。ほら、ティーナちゃん可愛いって言って?」
「はいはいティーナちゃん可愛いヤッター」
「急にぞんざいになんのやめーや」
「ウィスカも可愛いぞ。まるで妖精みたいだ」
「は、恥ずかしいですね」
「うちをさしおいていい雰囲気になんの禁止や禁止」
ウィスカと俺の間を遮るように立ち塞がってぴょんぴょんと跳ねるティーナの頭をわしゃわしゃと撫でてやる。折角セットしてもらったのにやめてーとか言っているが気にしない。
と、そんなことをしてじゃれついているうちにメイも店の奥から姿を現した。
「お待たせ致しました」
「おぉ……メイも凄いな」
宵闇色とでも表現するべきだろうか? 青みがかった黒い生地の豪奢なドレスである。黒っぽいドレスというと喪服を連想しがちだが、これは紛れもない盛装だ。ドレスの各所にあしらわれたフリルや星のように散りばめられた宝石の装飾が実に美しい。
「メイドには過ぎた衣装かと」
「いや、アリだろう。実にアリだ。買いだね」
「そうですか……ご主人様がそう仰られるなら」
そう言ってメイが目を瞑り、胸元に手を当てる。わずかに口角が上がっているから、微笑んでいるのだろう。注意を凝らしていないとメイの表情の変化に気付くのは難しい。
その後はウィルローズ家のお姉様お嬢様達も次々と現れた。未婚のお嬢様達はともかく、既婚のお姉様達は俺が褒めると角が立ちそうなので勘弁していただきたい。家に帰ってから旦那さんに大いに褒めてもらってくれ。というかこうしていて改めて思うが、エルフって本当に皆美人揃いだな。
「むー……私ももう少し細く」
「駄目だミミ、それ以上は言ってはいけない。もがれるぞ」
「もっ!?」
ミミが変な声を出して怯える。ああ、連れて行かれてしまった……達者でな、ミミ。
実際、エルフの皆さんはまぁ、体質的にそんなに大きくならないみたいだし、うん。何がとは言わないけど。大きいのは良いことだけど、それだけってわけじゃないしね。おっぱいに貴賎なしですよ。
あ、結局言っちまった。
「ふぅ……なんか疲れたわ」
「たまには良いだろ。こういうのが後々良い思い出ってやつになるんだよきっと」
「なにおっさんみたいなこと言ってんのよ。そこまで老け込んでないでしょ?」
「まぁそりゃな。エルマは交じりに行かなくて良いのか?」
「パス。疲れたからね。それより、さっきなんかこそこそしてなかった?」
「別にこそこそしてたわけじゃない。時間が空いたから手を打っただけだ」
「何? あいつら対策で妙案でも思いついたの?」
エルマが俺に身を寄せて小声で聞いてくる。俺はその質問に頷き、答えた。
「真正面から戦うだけの戦力が足りないなら、集めれば良いだけだよなって話でな?」
「集めるって……なるほど。考えてみればそうよね。自分達の力だけでどうにかする必要なんてないものね?」
「そういうこと。そろそろリーフィル星系の封鎖が解かれたことを聞きつけた連中がわんさか来る頃だ。護衛付きでな」
戦力が足りないなら補えば良いってわけだ。正当な報酬を出して。
明日一回目のワクチン接種なので、数日使い物にならなくなる公算が高いです。
次回更新まで少々お待ち下さい_(:3」∠)_(話を聞く限り、遅くとも水曜には復帰できると思います




