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#279 奇襲に次ぐ奇襲

短めだけど許して_(:3」∠)_(所用があって出掛けなばならないのです

『ヒィーーーハァーーーッ!』

『ぶっこめぇぇぇぇっ!』


 何かヤバい薬でもキメてるのか、宙賊どもが奇声を上げながら突っ込んでくる。小惑星帯から雲霞の如く――とまでは流石に言わないが、かなりの数の宙賊艦が飛び出してきた。


「センサーに引っかからなかったってことは、パワーを完全に落として待ち伏せしていたんでしょうか?」

「じゃない? なんかキメてそうな奇声を発してる割には冷静よね」

「ギリギリ理性を失わないレベルに興奮させて、恐怖を忘れさせてんのかね? えげつないなぁ」


 そうやって使い捨てられる宙賊の命、流石に安すぎないか? 宙賊側にも色々と事情はあるんだろうが、こんな突撃なんてのは自殺も同然だ。ここで鉄砲玉になってる奴らは宙賊団の中でどういう立場の連中なんだろうか。


『コマンダーより各艦へ。セクター3方面から接近中の敵艦に対処せよ。小型、中型艦は大型艦の射線に入らないよう注意せよ』


 セレナ中佐の声が言い終わるかどうかというタイミングでレスタリアスの副砲が火を噴き――実際には砲火ではなく破壊光線の類だが――小惑星帯から湧き出してきた宙賊艦を迎撃し始める。他の大型艦もそれに続いて迎撃を始めた。


「何度見ても凄いですよね、これ」

「これにまともに突っ込むのは御免被るな」


 大型艦の副砲というのは基本的に軍用中型艦の主砲と同じものだ。つまり、何発か直撃すればクリシュナでさえシールドが飽和しかねない威力を持っている代物であり、それが防御の貧弱な宙賊感に振るわれるとどうなるか? というのは想像に難くない。


「んー、やっぱり完全な奇襲になってないと厳しいか」


 宙賊達はチャフやフレアを使って大型艦の攻撃を撹乱しようとしているようだが、焼け石に水だな。確かにチャフやフレアを使えば各種センサーを使った自動照準をある程度撹乱することはできるが、それなら手動で直接照準すればいい。チャフやフレアは便利ではあるが決して万能ではないのだ。


「そうね。ミミ、大型艦が応戦しているのと逆方向にアクティブセンサーを使って。レンジ最大でね」

「へ? わ、わかりました……あれ?」

「やっぱり何か近づいてきてるか。戦闘用意、あと観測データと警告をレスタリアスに送れ」

「あ、アイアイサー!」


 よくある手だ。右手を大きく拳を振りかぶって相手の注意を惹いて、左手の拳や武器、もしくは蹴りで致命打を与える。今回の場合は機雷原と小惑星帯から押し寄せてくる宙賊艦の両方を囮にして忍び寄ってきたわけだな。

 ミミがレスタリアスに通信を入れているのを意識の外で聞きながら、不審な反応があった方向にクリシュナを向けてアクティブセンサーをバンバン照射してやる。


「いるな」

「いるわね」


 極端に温度の低い物体が艦隊へと接近してきている。恐らくは加速後に緊急冷却装置を作動させて機体温度を極端に下げた後、パワーを完全に落として慣性で接近してきているんだろう。前に俺がベレベレム連邦軍に使ったのと同じ手だ。サーマルステルスだな。


「火器管制システムの調整は任せるぞ」

「任されたわ」


 クリシュナが積んでいるセンサーの中には当然サーマルセンサーも存在する。火器管制システムの設定にちょっと細工をしてやればサーマルステルス中の機体をロックオンすることも不可能ではない。


「設定完了、目標ロック。数は十二隻。敵味方識別(IFF)反応なし」

「OK、なら敵だな」


 まだ相手はパワーを落として接近中だ。シールドは勿論展開していないだろうし、耳も目も殆ど塞がったような状態である。恐らくこちらの接近はおろか、ロックオンされていることにすら気づいていまい。


「ヒロ様、セレナ中佐からは自由に迎撃してくださいとのことです」

「了解。仕掛けるぞ」


 そう言うと同時に操縦桿のトリガーを引き絞り、四門の重レーザー砲を発射する。シールドを展開していない小型艦がこの斉射をまともに浴びれば――。


「まず一隻」


 四門の斉射を受けた所属不明の不審船が呆気なく爆発四散する。残り十一隻。


「所属不明艦、ジェネレーター起動しました」

「シールド展開前にできるだけ食うぞ」


 ジェネレーターを起動してすぐにシールドを起動しても、実際にシールドが完全に展開されるまではタイムラグがある。完全に展開しきる前に叩き落とす。


「普通の宙賊艦より固いわね。動きも良い」

「レッドフラッグの実行部隊かもな」


 宙賊艦というのは基本的に民間船を無理矢理戦闘艦に改造した粗悪なものが多いが、赤い旗宙賊団レッドフラッグのような大規模宙賊だんの中核戦力ともなると流石に話が変わってくる。どこから手に入れるのか、型落ちとは言え正規軍が使うような船に乗っていることもあるし、撃破した傭兵の船を鹵獲、修理、改造して使っていることもあったりする。

 なんて話しているうちにもう一隻。慌てて回避機動を取ろうとしたようだが、あえなく散弾砲にずたずたにされて爆発四散した。


「こいつらの船、見覚えがないな」

「帝国系のシップメーカーの船じゃないわね。連邦製かしら」

「ティーナさん達ならわかるかもしれませんね」

「記録しておいてくれ」


 所属不明艦は見覚えのない流線型のフォルムが目立つ艦で、俺もSOLで見かけたことのないタイプの船だった。全機に赤い塗装が施されている。赤いのはなんとなく強そうとか早そうってイメージがあるが、こいつらはどうかね?

 一斉射、耐える。二斉射、カス当たりだがシールド消失。はい、散弾砲で詰みと。


「やっぱこういう時は先手必勝だな」


 何が飛び出してくるかわからない奴を相手にする時に様子見は悪手だな。ガンガン攻撃してこっちのペースで戦闘を進めたほうが良い。わからん殺しされる前にとっとと叩き落とすに限る。


「大型艦を落とす算段がついてる連中よ。気をつけて」

「わかってる」


 まぁ、見た感じ小型艦だ。小型艦が戦艦や重巡洋艦などの特大型、大型艦にダメージを与えられる方法なんてのは限られている。そして、そういった手段の殆どは対小型艦相手には大変に使いづらい。俺だって対艦反応魚雷を小型艦相手のドッグファイトでぶち当てろとか言われると難しい。

 できないとは言わないが。


「味方の増援が来る前に片付けるぞ」


 折角の獲物だ。どうせなら全部頂いてしまうとしよう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] 左舷警戒、右見張れ!ですな。
[良い点] やっぱ、戦ってナンボって感じ~ [一言] 囮役なら攫ってきた連中の頭を弄ればイイカナ~ まぁ、奴隷商人を商っているなら奴隷を扱ってる国が噛んでいるのかなと 対艦反応魚雷を腹に抱いて特攻する…
[一言] 今までいろいろあった分、キャプテンが楽しそうで何よりです。
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