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#270 敵を騙すには

遅れました_(:3」∠)_(ゆるして

 二時間後、俺はクリシュナのコックピットで出撃の準備をしていた。


「戦力の招集完了まであと三十六時間ありますよね?」

「そうだな」

「それなのに何で私達は出撃の準備をしているんでしょう?」

「そうだなぁ。ミミ、今自分の居る場所の屋根が落ちてきたり、あるいは今にも火事で燃えそうになっていたらどうする?」

「えっ……ええと、安全な場所に逃げますね?」

「そうだよな、つまりそういうことだよ」


 首を傾げるミミにそう言いながら念の為にクリシュナの自己診断プログラムを走らせておく。うん、結果は良好。弾薬の補給も完璧。流石に手抜かりはないな。


「つまり、リーフィル星系内の宙賊が逃げ出そうとしているということですか?」

「そうだな。遅くともそろそろ行動を始める頃だろうな。だからこその出撃ってわけだ」

「リーフィルプライムコロニーはエルフが多いコロニーだから余所者は活動が難しいコロニーだけど、それでもアウトローの類がいないわけじゃないし宙賊と取引をしているような連中がゼロってわけでもないわ。セレナ中佐――帝国航宙軍が宙賊に対する何らかの行動を起こそうとしていることは宙賊どもも把握しているでしょうね」

「セレナ中佐はそれを逆手に取ってやろうと思っているわけだな。設定した作戦開始時間よりも早く行動して宙賊どもの虚を突こうってところだろ」

「なるほど。でも、引っかかりますかね? あと、戦力は足りるんでしょうか?」

「そこは何か考えているだろう。そもそも、戦力の招集が完了するってあの時間設定からして嘘かもしれんし」


 敵を欺くにはまず味方から、というのは誰の言葉だったか。まぁ、つまりそういうことなのだろう。情報なんてどこから漏れるかわかったものじゃない。だからこそ欺瞞情報を流布して宙賊を嵌めてやろうということなのだろうが、どこまで効果があるものかね? まぁ後は仕上げを御覧じろってところだな。


「ま、今は雇われの身だ。クライアントの命令に従うとしよう……メイ、クリシュナはいつでも出られるぞ」

『承知致しました。こちらは出港手続き中です。出港次第、僚艦と船団を組み、同期航行を開始します』

「任せた」


 メイとの通信を切り、俺はメインパイロットシートに深く身を沈めた。長時間の操艦を想定してのものなのか、クリシュナのメインパイロットシートは実に座り心地が良い。


「結局のところ、実際にドンパチが始まるまでは実質的に今までと同じ、待機さ。気楽に行こう」


 ☆★☆


 と、思っていた頃が俺にもありました。


『セクター3Cに感あり、急行せよ』

「はいはい!」


 とても忙しい。誰だ、実際にドンパチが始まるまで退屈な待機の時間だなんて言ってたやつは。ぶっ飛ばしてやる。

 いや、正直舐めてたよね。

 何故こんなに忙しいのかと言うと、宙賊が入れ食い状態だからだ。セレナ中佐は戦力を招集している間に宙賊どもを全滅させる準備を着々と進めていたらしい。


「軍用の偵察衛星群と対FTLトラップとは、大盤振る舞いね」

「本来他国との戦争に使われるような装備だよなぁ。えげつない」


 セレナ中佐の作戦はこうだ。

 まず軍用の高性能偵察衛星を宙賊基地とハイパーレーン突入口の間にある宙域に散布し、ハイパーレーン突入口へと向かってくる宙賊艦の動きをキャッチする。そしてその宙賊艦をハイパーレーン突入口近くに設置した対FTLトラップ――超強力な拠点防衛用のインターディクターを使って超光速ドライブ状態を強制解除しつつ、超光速ドライブの再起動を阻害。足止めした所に俺のような傭兵や麾下のコルベットや駆逐艦を向かわせて宙賊艦を拿捕、あるいは撃破しているというわけだ。


「目標捕捉、やるぞ」

「いつでも」


 無理矢理超光速ドライブ解除された影響で多軸回転を起こしている宙賊艦に四門の重レーザー砲を向ける。あれだけくるくる回っていると狙って無力化することなんてのは不可能なので、爆発四散するかどうかは乗っている宙賊の運次第だ。


「はい、ファイヤファイヤ」


 容赦なく発せられた緑色の破壊光線がビシビシと宙賊艦のシールドに当たる。お? 意外と硬いな?


『や、やめろォっ!?』

「いや、やめないし」


 何か喚いているが、聞く耳を持つつもりはない。ゆっくり拿捕している暇はないし、降伏したところでクリシュナには捕虜を取る能力もない。脱出ポッドとなるコックピットブロックを収納するカーゴスペースなんて無いからな。

 そもそも、余程のことがない限り宙賊は投降なんてしないからな。捕まったら下手すりゃわけのわからん実験の実験体にされて、死ぬことも出来ずに苦しみ続けることに……なんて結末もあるそうだし。


「目標、ベイルアウトしました」

「おや珍しい。んじゃ脱出ポッドと船体をマークしといてくれ」

「アイアイサー」


 マークしておけば後で戦利品としてコックピットブロックを欠いた宙賊艦と積荷をそのまま鹵獲できる。脱出ポッドの方は放っておけば軍が回収してくれるだろう。貴重な情報源だ。


「セクター3Cクリア」

『了解、セクター7Dに急行されたし』

「了解、セクター7Dへ移動する」


 超光速ドライブを起動し、指定ポイントへの移動を開始する。対FTLトラップの敵味方識別は今の所完璧だ。まぁ、誤って味方の超光速航行を阻害なんてしたら大迷惑も良いところだし、当たり前っちゃ当たり前なんだが。


「対FTLトラップすごいですね、これ。私達も使えないんですか?」

「あー、どうだろう。俺は知らんな」


 SOLステラオンラインにもFTLトラップそのものは存在していたが、実際の運用などに関しては描写されていなかった。なので残念ながら俺も詳細は知らない。


「FTLトラップ艦はれっきとした軍用艦だから、難しいと思うわ。それに普通のインターディクターよりも範囲も威力も遥かに強力だけど、小回りが利かないからあまり傭兵向きではないわね。偵察衛星網とか複数の観測機でも運用しない限り射程を活かせないし」

「だそうだ」

「なるほどー」


 エルマの説明に感心するミミを同じく俺も心のなかでエルマの知識に感心する。やっぱりこういうところでエルマの経験と知識は頼りになるな。SOLのゲーム知識内のことならともかく、ゲーム知識外の事柄に関しては俺も知らないことが多い。


「本当はもっと破壊的な兵器を作るつもりだったらしいわよ。超重力砲だかグラビティブラストだかって名前の」

「エルマさん、それはまずいですよ!」

「? 何がよ?」

「ナンデモナイデース」


 ついつい突っ込んでしまったが、その名前は……いや、まぁインターディクターも元は重力だか質量操作技術から派生した技術らしいし、それを破壊兵器に転用するとなればそんな感じの名前になるのも致し方ないのかもしれない。


「話を戻すけど、結局射程は改善できたけどそうすると威力が減衰しちゃって破壊兵器としては役に立たなかったみたいね。ただ、元の原理が原理だから長射程、広範囲の超光速航行を阻害できるってことでFTLトラップとして運用されるようになったらしいわ」

「「なるほどー」」


 などとエルマの薀蓄を聞いている間に目標のセクターに辿り着いた。超光速ドライブを解除し、またもや多軸回転して大変なことになっている宙賊艦を発見する。


「目標捕捉、撃破するぞ」

「「アイアイサー」」


 さて、この状況を見るにセレナ中佐が立てた作戦は上手くいったようだな。これだけ戦力を減耗できたのであれば、リーフィル星系内の宙賊掃討は上手く行きそうだ。

 あと三十数時間で戦力も集まりきるはずだし、そうしたら本格的な掃討が始まることになるだろう。あとはどこまで敵を捉え続けられるかだな。

そのうちこの宇宙にも重力破壊兵器が開発されるかもしれない( ˘ω˘ )

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― 新着の感想 ―
ヒロの母艦にも電子の妖精の代わりにマシーンのメイドがいますしねぇw
you get burningしちゃうんですねわかります
[良い点] あなーたーのーいちーばーんにーなりたーいー グラビティブラストわろたw
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