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#196 最新鋭技術

 クリスの屋敷の庭で軽く……軽く? まぁ怪我をしない程度にメイと剣術の練習をして、屋敷内にある訓練場で各種トレーニングを終えた頃にやっと整備士姉妹が起き出してきた。


「ふあぁ……はよーさん」

「ごめんなさい、寝坊してしまって」


 あくびをしているのが姉のティーナ、申し訳無さそうにしているのが妹のウィスカだ。二人の見た目はクリスと同じか、或いはそれ以上に幼く見えるくらいなのだが、実のところ俺とほぼ同年齢タメの大人の女性である。

 何故そんな合法ロリな見た目をしているのかと言うと、彼女達はファンタジー世界でお馴染みのドワーフという種族なのである。このSF世界のドワーフの女性は団子鼻の愛嬌のある顔つきとか女性でも髭が生えているといった感じではなく、見た目は人間の少女と変わらない合法ロリな見た目なのだ。

 ちなみに二人は双子の姉妹で、似非関西弁のようなドワーフ弁で話す赤い髪の合法ロリがティーナ、礼儀正しく真面目な青髪の合法ロリがウィスカだ。二人とも見た目はただの美少女だが、見た目に反して物凄い怪力の持ち主なので不埒な思いを抱いて近づくと多分酷い目に合う。


「気にするな。朝飯どうする? 今食うと外出先での食事を堪能するのが難しくなると思うが」

「よろしければ甘いミルクティーをご用意いたしましょうか?」

「お願いするわ」

「ありがとうございます」


 メイがテキパキと整備士姉妹にお茶の用意をし始める。とりあえず甘いミルクティーで済ませておいて、後から一緒にお昼ごはんを食べようというわけだ。


「買い物なぁ、どこ行く?」

「うーん、服とか?」

「この前ドレスは買いましたよね?」

「そういうのじゃなくて、普通の服よ。帝都なら最新鋭技術エッジテックの素材を使った良い服が色々売ってるし、注文もできるわよ」

「普通の服で良くないか?」


 エッジテックの服とか言われてもピンとこない。ああ、そういや前にエルマとミミ用に耐レーザー素材の下着とか買ったっけ。ああいうのか?


「同じデザインでも最新鋭素材エッジマテリアルの方が着心地が良かったりするし、傭兵向きの素材ってことなら耐レーザー素材とか防刃素材とか、自動で止血や治療をしてくれる医療ナノクロースとか、他にも色々な効果を持った素材があるわよ」

「ふーん……まぁ面白そうだし見に行ってみるか。気に入ったら買えば良い」

最新鋭素材エッジマテリアルの服なんていくらするんや……」

「今ら私達でも買えると思うよ、お姉ちゃん」


 ティーナがドン引きしているが、ウィスカの言う通り今の彼女達ならそれくらいの買い物は余裕でできると思う。なんだかんだでそれなりに二人にもボーナスを支給しているからな。

 彼女達はクリシュナやブラックロータスの正式なクルーというわけではなく、ブラックロータスの製造元であるスペース・ドウェルグ社から出向してきている技術者だ。彼女達がブラックロータスに出向してくる経緯は少々複雑なのだが、まぁ最新ロットの運用調査とスペース・ドウェルグ社からの謝罪の証みたいなものだ。うん、色々あったんだ。


 ☆★☆


「いやー、良い買い物だった」


 一時間後、俺達は最新鋭技術エッジテック製品を販売する店が集まっている帝都のショッピングモールに到着し、買い物を楽しんでいた。


「せやろか?」

「せやで」


 俺の横でティーナが首を傾げているが、俺としては大満足だ。俺が購入したのは最新鋭技術エッジテック満載の個人用防護膜発生装置パーソナルシールドである。細長い350ml缶くらいの大きさの装置で、エネルギーパックを二つ装着することによって出力可変型のシールドを張ることができるものだ。

 最低出力なら不快かつ危険な毒や病原体を持っている可能性がある未開拓惑星の小虫やヒルめいた小動物から長時間身を守ることができるし、出力を上げればレーザーライフル程度の出力のレーザー攻撃を防ぐこともできる。無論、出力を上げれば稼働時間は短くなるが、予備のエネルギーパックを持ち歩いていれば換装も容易だ。


「でもそれ、どんな時に使うん?」

「そりゃ白兵戦の時とか、未開拓惑星に降り立った時とかだろう」

「そんなことあるん?」

「……あるかもしれないじゃないか」


 見上げてくるティーナの視線から目を逸らす。前にも使うかどうかわからない多機能迷彩マントを買ったりしたが、結局身につけることは一度もなく、未開封のままブラックロータスのカーゴスペースの片隅で埃を被って……いや、メイが掃除してくれているから埃は被ってないけど。


「細かいことは気にしてはいけない」

「兄さんにしてみたら屁みたいな出費かもしれんけど、無駄遣いはようないで」

「無駄じゃないから。もしもの時には役に立つから」

「そういうことにしとくわ。ティーナちゃんは優しいからな」

「ティーナチャンヤサシイヤッター!」

「あはは、めっちゃ棒読みやん」


 そう言いつつも楽しそうにティーナが笑う。


「それにしても、あっちに同行しなくてもええの?」

「ティーナの前で言うのもなんだが、女性の買い物は長いからな……特に服とかの買い物は」


 今、俺はティーナと二人でショッピングモールを歩いている。俺とティーナ以外の面々は揃って最新鋭素材エッジマテリアルを使ったブティックなどを行脚している真っ最中である。俺とティーナはそこから抜け出して面白そうなものを探してこうして歩き回っているというわけだ。


「せやなぁ。ウィーもオシャレさんやから、服とか選び始めるとめっちゃ長いねん」

「ティーナは服は買わないのか?」

「ウィーに任せてるから大丈夫やで。うちら、スリーサイズから何からばっちり同じやから」


 そう言ってティーナがビシッと親指を立てながらバチーンと下手なウィンクをキメる。お前それで良いのか。


「そう言う兄さんは服買わんの?」

「俺は後で最新鋭素材エッジマテリアルの話を皆から聞いて、今着てる服と同じデザインで発注するから大丈夫」

「兄さんの部屋のクローゼット、同じような服が何着も並んでそうやな」

「ははは」


 本当にそうなっているので笑って誤魔化しておく。だって楽だし着心地が良いし収納とかが機能的な上に一目で傭兵とわかるから便利なんだよ、この服。

 と、ティーナと二人でいろいろな店を冷やかしていると俺の胸元からコール音が鳴り始めた。ミミ達の買い物が終わったのかな? 思ったよりずいぶん早いな? と考えながら携帯情報端末を取り出し、画面に目を向ける。


「兄さん、顔、顔」


 どうやら無意識にすごい顔をしていたらしい。携帯情報端末に表示されている名前はミミでもエルマでもメイでもなく、セレナ少佐――昇進したから中佐か。セレナ中佐の名前だった。


「はい、こちらヒロ」

『お久しぶりですね、キャプテン・ヒロ。その後大事無く過ごせているかしら?』

「お陰様で。今はダレインワルド伯爵家の帝都屋敷に逗留してますよ。それで、何かありましたか?」

『いきなり本題ですか? 単刀直入なのも悪くないですが、貴方もゴールドスター受勲者のプラチナランカーなのだから、もう少し余裕を持っても良いと思いますよ』

「そいつは失礼、精進します」


 窘めてくるセレナ中佐に素直に謝っておく。


『そうなさい。それで、前に話していた軍用の戦闘ボットの購入に関してなのだけれど』

「ええ、許可が降りましたか?」

『ええ、帝国軍からの許可が下りました。電子証明書をそちらの端末に送っておきますから、都合の良い時に軍用ボットの製造メーカーを訪ねると良いでしょう。証明書を提示すれば問題なく購入できるはずです。あと、私の紹介状も添付しておきます。イーグルダイナミクスはホールズ侯爵家からの出資を受けていますから、紹介状を見せれば便宜を図ってくれるでしょう』

「了解。感謝しますよ、中佐」

『これで結晶戦役の借りは返しましたよ。今度は帝都で私が色々と骨を折った貸しを返してくださいね?』

「へいへい、お手柔らかに頼みますよ」

『ふふっ……それではまた』


 通信が切れる。ふふっ、じゃねぇよこええよ! 一体どんな面倒事を押し付けられることやら……ゲートウェイを使えるようになったから、どこからでも気軽に呼び出されそうで怖いな。まったく。


「午後からもショッピングの予定だったが、予定変更だな」

「戦闘ボットを買いに行くんやな。楽しみやねー」


 新しいメカ――それも最新鋭の軍用戦闘ボットを弄れるようになるのが嬉しいのか、ティーナが物凄くワクテカしている。

 実は俺も楽しみにしている。戦うロボットが嫌いな男の子なんていないからな!

ゴーストオブツシマタノシイヤッター!_(:3」∠)_(なお睡眠時間

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忍者スレイヤー多いヤッター
最新鋭素材エッジマテリアルの服なんていくらするんや……」 「今ら私達でも買えると思うよ、お姉ちゃん」 今ならやなあ
[気になる点] 脱字報告 「今ら私達でも買えると思うよ、お姉ちゃん」 「今“なら”私達でも買えると思うよ、お姉ちゃん」
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