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#164 殲滅戦、開始

おくれました!_(:3」∠)_

 補給と簡単なチェックだけ終えた俺達はすぐにブラックロータスから発艦し、その後は傭兵艦が次々にブラックロータスへと着艦しては補給と整備を終えて発艦していくのを見守る。


「被害は軽微ってセレナ少佐が言っていましたけど、結構損傷を負っている艦が多いですよね」


 クリシュナのメインモニターには装甲表面が削れ、一部結晶化している傭兵の船が何隻か映っている。


「小型結晶生命体の突撃を食らったんだろうなぁ。奴ら、射撃攻撃を持っていない代わりに突進攻撃の攻撃力だけは高いから。シールドを二発か三発の突進で割ってくるからかなり危ないんだよ」


 本来小惑星というか超光速ドライブ時にスペースデブリとの衝突から船体を守る役割を果たすシールドというものは物理的な接触に対する耐性がかなり高い。しかし、小型結晶生命体の突撃は容易にシールドを割ってくる。先端が激しく光っているので、何か仕組みがあるんだろうと思うがSOLでは特に解説がなかったので、詳細はわからないんだよな。多分散弾砲の砲弾と同じくシールドを大幅に中和する仕組みがあるんだろうと思うけど。

 ちなみに、散弾砲の砲弾の対シールド性能は距離が開くと急激に減衰する。至近距離以外で撃っても「散弾ではなぁ!」と敵に言われるのがオチだ。


「ヒロ様は避けてましたよね」

「速度はそこそこだけど、奴らは小回りが利かないからな。立ち回り次第でなんとかなる」


 多方向から一斉に突撃されると危ないけどな。まぁ、その時は速やかに包囲網を食い破って囲いの外に出るしかない。もしシールドがダウンした状態で複数回の突進を受けたら船体は保たないだろう。ちなみに、装甲の侵食はSOLのゲーム内処理としては継続ダメージと物理防御力の大幅な低下という形で実装されていた。結晶化した部分は著しく脆くなるという設定だ。

 と、小型結晶生命体の話をしていると広域通信が入ってきた。


『対結晶生命体特別艦隊司令、ギル・フォークスだ』


 広域通信の発信源は艦隊のトップからであった。恐らく、出撃前の訓示のようなものだろう。


『補給と最低限の整備はあと十五分で完了する予定だ。完了後、我々はイェーロム星系のアルファセクターに存在する超大型結晶生命体、仮称マザー・クリスタルの討伐へと向かう』


 メインモニターに戦場を模した広域3Dマップが投影される。


『マザー・クリスタル討伐戦は基本的に遠距離砲撃で全てを済ませる予定だ。敵の数は多いが、シールドに相当する能力は持っておらず基本的に防御力は脆弱である。更に射撃攻撃の射程も短く、帝国航宙軍の戦艦や巡洋艦の放つ長距離砲撃に対応することは不可能だ』


 3Dマップ上に配置された帝国航宙軍艦隊が砲撃で結晶生命体に攻撃し、その勢力を減耗させていく様子が表示される。


『しかしながら敵の数が多く、接近を許す可能性はゼロではない。駆逐艦以下の遠距離砲撃能力を有しない小型艦は、砲撃を潜り抜けてきた敵勢力の迎撃を担当してもらう』

「どう思う?」

「まぁ妥当じゃないか? 少なくとも敵の特性をちゃんと理解して立てた作戦だとは思うよ。敵の数も既に観測して確定しているだろうし、その上で立てたプランなら間違いないだろ」


 軍人が行き当りばったりで戦いをするとは思えない。彼らは戦闘のプロだ。敵の情報を収集し、分析し、勝ち筋を立ててから行動に移る。彼らがそれで勝てると判断している以上は勝てるのだろう。不意の遭遇戦や想定外の要因が無い限りは攻撃側の勝ちは基本的に揺るがないものだ。歌う水晶を艦隊のど真ん中にぶち込まれるとかな。


「ヒロがそう評価するならひとまずは安心ね。次も突っ込むの?」

「状況次第だな。むやみに突っ込んで味方の射線を塞いだりしたらことだし、おとなしく防空戦闘をしていたほうが良いと思う。流石にマザー・クリスタル相手だとクリシュナじゃ火力不足だしな」


 至近距離まで近づく事ができれば対艦反応弾頭魚雷を四発叩き込んでワンチャン無いことも無いが、そんな危険なことをするくらいなら素直に味方の砲撃に任せた方が良い。流石に今回ばかりは出る幕はないだろう。


「次の戦闘はハイパーレーンから出てきた時と違って交戦距離をこっちから選べる。一方的な展開になるんじゃないか?」


 SOLではレイドバトルコンテンツとして常に緊張感のある戦場設定がされていたが、現実世界であるこの世界においてはわざわざリスクのある近接戦をやる必要なんてないからな。アウトレンジから一方的に叩いて終わりだろう。


「じゃあ、次の戦闘は殆ど観戦するだけで終わるってことですか?」

「多分な」


 ☆★☆


 およそ三十分後。艦隊は超光速ドライブ状態を解除し、射撃位置に着いていた。


「うわぁ……大きいですねぇ」

「大きいわね……」

「ちょっとした惑星並みの大きさだよな」


 遥か彼方に見えるマザー・クリスタルを見て各々感想を漏らす。ブラックロータスのセンサーを介して結晶生命体の動きをモニターしているのだが、この距離でもこちらに気づいているのかガーディアンクリスタルや小型結晶生命体が艦隊に向かって動き始めているのが察知できていた。


『各艦攻撃開始!』


 艦隊司令の号令と共に帝国航宙軍艦隊が遠距離砲撃を開始する。何十条もの大口径レーザー砲撃が結晶生命体達に向かって発射され、レーザーを照射された結晶生命体の群れが遥か彼方で激しく発光する様子が見える。ブラックロータスも艦首大口径電磁投射砲を展開し、砲撃を――えっ?


「メイ、この距離から当たるのか?」

『はい。標的の数が多いですから』


 ギャオォォン、とでも表現すれば良いのか、独特の砲撃音を上げながらブラックロータスの艦首大口径電磁投射砲から砲弾が発射された。着弾まで何秒かかるのかはわからないが、メイのことだから無駄なことはしないだろう。


「すごいですね、こんな距離から当たるんですね」

「レーザーならともかく、EMLは普通当たらないからな」


 いくらEMLの弾速が通常のマルチキャノンや実体弾砲に比べて早いとは言っても、光速で着弾するレーザー砲とは比べるまでもない。空気も重力もない宇宙空間では威力の減衰はそうそうするものではないが、弾道を曲げる要因が皆無というわけでもない。小型艦同士が戦うような近距離戦では気にするようなものではないが、このような長距離砲撃では弾道の僅かなズレが着弾地点――地点? とにかく命中する場所を大きく変えてしまうのだ。


「流石は陽電子頭脳を搭載した機械知性ということなんだろうか。こんなの相手に戦争をした昔の帝国はよく滅びなかったな」

「そうですね」

「あー、うん。そうね」


 ミミは素直に俺に同意し、エルマはなんだか含みの有る同意をする。実際には滅びなかったのではなく、滅ぼされなかったというのが正解なのだろうか。正解なのだろうなぁ。

 そんなことを考えている間に帝国航宙軍と一部傭兵艦の容赦のない砲撃が続き、ガーディアンクリスタルがどんどんその数を減らしていく。ただ、小型結晶生命体は砲撃の間をすり抜けて徐々に接近してきているようだ。


「これはガーディアンクリスタルはともかく、小型には抜けられるな」

「前に出る?」

「そうだな、コルベットと駆逐艦を中心に戦線を形成することになるだろうから前に出ておこう」

「メイさんに通信を入れておきますね」


 ミミがメイに連絡を入れるのを聞きながらクリシュナのスラスターを噴かして艦隊の前方に展開する駆逐艦を中心とした迎撃部隊に加わる。


『お、銀剣翼突撃勲章のトップエース様のお出ましだ』

『十分功績は稼いだだろ? 譲ってくれても良いんだぜ?』

「稼げる時に稼げるだけ稼ぐのが傭兵ってもんだろ? 後ろに引っ込んでるのは性に合わないしな」

『後ろに引っ込んでるのが性に合わないってのは納得だな』

『実際何度も敵に突っ込んでるしな。クレイジーにも程があるぜ』

『付き合わされる嬢ちゃん達が可哀想だぜ』

『そんな奴見限って俺のところに来ても良いんだぜ?』

『おい抜け駆けすんな。俺の方が稼いで――』

「人の女に粉かけようとしてんじゃねぇよ。ぶっ殺すぞ」

『『すみませんでした!』』


 軽口は構わないが、それは流石にNGだ。これで何も言わなかったら舐められるだろうしな。


「人の女、ね」

「えへへ」


 二人の反応で咄嗟に大胆な事を言ってしまったことに気づいたが、後の祭りである。


「……」

「自分の言ったことで恥ずかしがってるわ」

「可愛いですね」

「うるさい気が散る。一瞬の油断が命取り」

「まだ敵は遥か彼方よ」


 ぐうの音も出ない反論であった。


 迎撃戦開始まで、あと十二分。

なかなか注文したモンエナが届かなかったりしたけれど、僕は元気です_(:3」∠)_

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― 新着の感想 ―
[気になる点]  宇宙なのに発射音が聞こえたところが気になります。が、ブラックロータスと通信中だったのでブラックロータス艦内の音を通信機がひろったのかもしれませんが?<おお解決。
[一言] 騎士爵なのかプラチナランクになるのかちょっとわかりませんね。正系少なくとも一つ解放しする戦線で活躍して何にも名誉面で無しというのは不自然な気がするのはどう解決するんでしょうね。気軽な傭兵生活…
[気になる点] 主人公のフラグ発言は、エルマかミミが突っ込みを入れる事によって発症してる気がする。 [一言] 作者の顔文字の口が金玉
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