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#138 そうだ、傭兵ギルドに相談しよう。

遅れました!

違うんですよ! 起きたら何故か正午をとっくに回って14時だったんですよ!

俺は悪くねぇ!_(:3」∠)_(圧倒的に悪い

「整備士へのボーナスですか」


 ブラックロータスの広い食堂でどんちゃん騒ぎをしたその翌日。俺はミミを伴ってブラドプライムコロニーの傭兵ギルドへと来ていた。朝まで飲んでいたエルマはまだ寝ており、メイは物見遊山のティーナとウィスカを連れて帝国航宙軍の事務所へと賞金の受け取りに行っている。


「一応慣例的な報酬比率はありますね。今回のケースですと……なるほど、整備士の二人は企業からの出向者なのですね。そして船の資本は船長のヒロ様が100%、と」


 傭兵ギルドの受付嬢――ではなくイケメン職員がタブレット型の端末で俺の船と乗組員のデータを確認しながらホロディスプレイのコンソールで何か作業をしている。二つの画面を見ながら片手ずつで違う画面を操作するとかすげぇな。


「企業からの出向者というのは少々珍しいのでデータが少ないのですが、基本的に出向者への給料は企業から出ていることが多いようで、普通の乗組員のように報酬総額の何%という形でキャプテン側が報酬を払うことはあまりないようですね」

「なるほど」

「ただ、同じ船に乗って命を危険に晒して働いているのに会社からの給料だけでは割に合わないと考える整備士が多いようで、出向を命じられてから三ヶ月以内における整備士の出向元からの離職率はかなり高いようですね」

「それでも100%じゃないのか」


 普通に考えれば月に3500エネル+危険手当で傭兵の船に乗るなんてお断りじゃないかと思うが。少なくとも、俺ならそう考える。


「ええ。離職する前に戦闘で死亡するケースが何件かありまして」

「世知辛い」

「稀なケースのようですけどね。企業も出向させる船には気をつけますので……はい、確認できました。売却益に拘らず一定の額をボーナスとして渡すか、或いは整備士達が関わった船や略奪品の売却益の10%から20%ほどを渡すということが多いようですね」

「……計算がめんどくせぇな」


 どれとどれとどれが整備士姉妹の関わった品で、その売却益がいくらで、その20%が……みたいな計算を毎回しなきゃならんのか。いや、まぁ面倒って言ってもたかが知れてるけどさ。でも面倒なことには変わりねぇな。


「そのように感じる方が多いのか、毎回一定額を渡すというやり方をしている方も多いようです」

「なるほど」


 とりあえず評価額を見てからだな。


「とりあえず、そっちについてはわかった。仲間ともよく相談してみるよ。それで、もう一つ用件があるんだ」

「はい、承ります」

「船のデータを確認してもらったからわかると思うが、新しく母艦を買ったんでな。運び屋の真似事もしようと思ってるんだ。確か傭兵ギルドから商人ギルドにそういう傭兵の斡旋ができたはずだよな?」

「勿論可能です」


 傭兵ギルドと商人ギルドは非常に仲が良い。何故なら、宙賊や宇宙怪獣の跋扈する宇宙での物流は常に危険を伴う。そんな危険から身を守るため、商人は傭兵を雇うのだ。また、傭兵からしても商人というのは良いお客様である。俺は主に宙賊討伐で金を稼いでいるが、商人の護衛で飯を食っている傭兵というのも実に多い。

 俺は戦闘スタイルがどうしてもこう、スタンドプレーじみた感じだからね。単騎駆けしてバンバン攻めるのは得意だが、特定の対象を守るような戦い方は苦手なのだ。出来ないとは言わないけど。


「スキーズブラズニル級の母艦ですか……これはなかなかの積載量ですね」

「積載量は余裕を見て180tくらいかな。俺達の必需品もある程度積む必要があるからな」


 ブラックロータスの輸送量は商人が使うような大型輸送船とは比べるべくもないが、それでも180tというのはなかなかの容量である。三人から五人程度の人員で移動の片手間に運んで得られる利益としては悪くない稼ぎが得られることだろう。


「スペック的に商人ギルドの大型輸送船よりも遥かに快速ですし、今日のようなペースで宙賊を狩り続けていけば安全度も高く評価されるでしょう。もしかしたら急ぎで高価な物資を確実に届けたい、というような需要があるかも知れませんね。それに、内装が随分立派なのでは?」

「それなりに金はかけてるな」

「これなら商品と一緒に移動したい商人も安全に運べるでしょうね。客室の用意もあるようですし、そちらも併せてアピールすれば良い依頼をご紹介できるかと思います」

「あまり横柄なやつだとつい手が滑ってしまうからも知れないから気をつけてくれよ。俺の船には女性が多いからな。事故は起こしたくない」

「そうですね、その辺りには最大限配慮致します」


 イケメン職員が実に良い笑顔でそう答えるが、一瞬だけ物凄い嫉妬オーラが漏れ出したのを俺は見逃さなかった。俺の隣に座っているミミは言うまでもなく美少女だし、きっと彼の手元にあるタブレット型情報端末にはクルーであるエルマや整備士姉妹のプロフィールも表示されているのであろう。

 でもあんたも顔は良いし、傭兵ギルドの職員なら給料も良さそうだしモテるんじゃないのか? と思わなくもないのだが、わざわざ口に出して言うことでも無いので黙っておいた。彼にも色々とあるのだろう。


「もう一週間ほどはブラド星系で慣熟訓練を兼ねた宙賊狩りをするつもりだけど、今回の戦利品さえ売れた後なら出発が早くなっても俺達は一向に構わない。商人ギルドの方には話を回しておいてくれ」

「承知致しました。打診があればすぐにご連絡致します」

「よろしく頼む」


 イケメン職員に礼を言って傭兵ギルドを後にする。傭兵ギルドを出たところで今回は黙って横に座って話を聞いていたミミが口を開いた。


「ついに宙賊狩り以外のお仕事も始まりますね」


 胸元で拳を作り、ふんすと気合を入れている。結構前からミミは訪れたコロニーの特産品や、品薄の物資なんかのことを気にしていたからな。宙賊からの戦利品を売る傍ら、そういったことに注意を向けて色々と調べていたらしい。


「そういうのはミミに任せようかな? エルマはそっち関係には興味が無さそうだし、メイはブラックロータスとティーナ達の面倒を見る仕事があるからな」

「メイさんならそつなくこなしそうですけど……」

「だからって全部メイにおんぶにだっこになるのはよくないだろう。何よりそんなのつまらないじゃないか」


 実際のところ、メイがそのスペックをフルに活用すれば俺やミミ、エルマも含めたブラックロータスやクリシュナに関する全てを最適管理することは可能なんじゃないかと思う。俺達は何も考えず、ただメイの導きに従っていけば良いというような感じにだ。


「そうですね。メイさんにはちょっと悪い気がしますけど、私もそう思います」

「そうだろ。というか、それが行き過ぎて一回この帝国は滅びかけてるわけだしな」


 俺もこの世界に来てそれなりに経っているので、この世界の歴史というやつをほどほどに理解してきている。このグラッカン帝国という銀河帝国は、結構昔に機械知性との戦いで一度滅びかけているのだ。

 俺はその全容をまだ詳しく把握しているわけではないのだが、簡単に言うとその戦争が始まる前のグラッカン帝国というのは機械知性全盛期とも言える時代で、かなり機械知性に頼った社会を築いていたらしい。

 そしてSFのお約束のように軍用の機械知性が叛乱を起こし、大規模な内線に突入。紆余曲折あって機械知性と和解し、それ以来機械知性に頼り切るのはよろしくないという風潮が長く続いているのだという。

 とはいえ、今のグラッカン帝国の実態を見る限りは本当に機械知性に頼り切りの社会構造から脱却できているのかは怪しいと俺は考えている。表向きは機械知性と和解して人間が主体となり、機械知性が影から支えるという社会になっているように見えるのだが、実際には機械知性に支配されているんじゃないかと思えるんだよな。ちょっと確信は無いんだが、単に機械知性側が一歩引いて影になりきっているような感じがする。

 ただ、機械知性側には全く悪意が見えないと言うかなんというか、影から操っているというよりは影から強力に見守られている感が……いやきっと俺の杞憂だろう。もしそうだとしても俺には一切害がないからどうでもいい。


「機械知性との戦争ですね。ところで機械知性との戦争が終結に向かった切欠については都市伝説めいたものも含めて諸説あるんですよ。知ってましたか?」

「そうなのか? 例えばどんなのがあるんだ?」


 歴史についてのよもやま話をしながらミミと一緒にブラックロータスが係留されているドッグへと戻る。ミミの話す都市伝説めいた歴史の転換点の話はなかなか面白かった。でも流石に撃破した戦艦の機械知性をセクサロイドに打ち込んだ一兵卒と、その一兵卒にいいようにされた結果愛と性に目覚めた戦艦の機械知性が戦争終結の切欠になったとかは話を盛りすぎと言うか、あまりに下世話というか、下ネタにポイント振り過ぎだと思うよ。

隙を見て殺してやろうと思っていたのに未知の感覚に支配されてあっさり堕ちちゃうくっころ機械知性_(:3」∠)_

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― 新着の感想 ―
>機械知性側には全く悪意が見えないと言うかなんというか、影から操っているというよりは影から強力に見守られている感が…… 機械知性①「ヒロメイよね」 機械知性②「王道のヒロミミよ」 機械知性③「エミヒ…
そういえばリゾート星の時『双方からの逸脱者(セクサロイド)』が終戦へのターニングポイントと当の機会知性本人が言うてましたな…
あまり横柄なやつだとつい手が滑ってしまうからも知れないから気をつけてくれよ。俺 手が滑ってしまうかも  かな?
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