#130 試運転(武装編)
おくれました……これもこたつってやつが悪いんだ……!_(:3」∠)_(責任転嫁
「あぁーっ! 撃たれてる! 撃たれてるってぇっ!?」
「だだだ、大丈夫だよお姉ちゃん! この船のシールド出力ならあれくらいのレーザーは――」
「ミサイル! シーカーミサイル来てるー! ミサイルはアカンやろ!?」
「ミ、ミサイルはだめだねっ!」
「賑やかだなぁ」
「こういうのは煩いって言うのよ」
「あはは……私もこんな感じだったんですかね」
☆★☆
小惑星帯に着くとすぐに俺達は別の船を捕捉した。採掘船かな? と思いつつスキャンしてみたらこれが大当たりで、スキャンしてみたら宙賊の船であったのだ。それも中型船を含めた十三隻の宙賊船団である。
「これは運が良いな」
「いやいやいや、運が悪いやろ。いきなり宙賊に出くわすとかどう考えても運が悪いやろ」
ティーナが何か騒いでいるが、無視してスキャンを続けさせる。
「あ、相手は十三隻もいますよ? しかもあの中型艦は火力特化艦のように見えます。流石にあれに手を出すのは危ないんじゃ……」
「大丈夫ですよ。ヒロ様なら問題ありません」
「いや無理やろ。いくらこの船が高性能って言っても、火力特化艦のミサイルを山程ぶちこまれたらヤバいで」
「当たらなければどうということはない」
某赤い彗星の人みたいな台詞を吐きながら武装を展開する。これで四門の重レーザー砲と二門の大型散弾砲がいつでも発射可能な状態になった。臨戦態勢である。
「すぐに戦闘になるわけじゃないって言ったのにぃ!」
「か、覚悟がまだ……ひああぁぁぁぁっ!?」
☆★☆
というわけで今に至る。
武装を展開したクリシュナは敵船団の後方から一気に襲いかかり、まず最後尾に位置していた小型宙賊艦二隻を四門の重レーザー砲の連射で仕留めた。
『な、なんだっ!?』
『襲撃だ! 散開しろ!』
「間に合うものか」
宙賊達が慌てて散開し始めるが、その頃には既にクリシュナが船団に肉薄していた。二門の大型散弾砲が連続で火を噴き、発射された無数の弾丸が散開するために横っ腹を晒した三隻の宙賊艦をまとめて穴だらけにする。
『い、嫌だ……死にたく――』
散弾砲の弾丸が重要区画を破壊したのか、穴だらけになった宙賊艦のうちの一隻が爆発四散した。その爆発に巻き込まれて残り二隻も爆発する。
しかし、宙賊達もただやられてばかりではいない。散会した宙賊達が反転し、こちらに向かってレーザー砲やマルチキャノンで反撃してくる。無論、宙賊の装備している武器などというものはクリシュナからすればショボい威力の豆鉄砲なので多少の被弾は気にするまでもないのだが、その様子はHUD上に表示されている船のホログラフィモデルに反映されて一目瞭然だ。
俺やミミ、それにエルマはそんなものはなんでもないとわかっているのだが、ティーナとウィスカにとってはそうもいかない。
「あぁーっ! 撃たれてる! 撃たれてるってぇっ!?」
「だだだ、大丈夫だよお姉ちゃん! この船のシールド出力ならあれくらいのレーザーは――」
涙目で騒いでいるティーナと比べてウィスカは幾分冷静なようだ。声は震えているようだけど……などと考えていると、コックピットにアラート音が鳴り響いた。
「ミサイル! シーカーミサイル来てるー! ミサイルはアカンやろ!?」
「ミ、ミサイルはだめだねっ!」
「賑やかだなぁ」
ティーナの慌てようも面白いが、冷静にミサイルはだめだねとか言っちゃうウィスカも楽しいな。
とりあえず後ろから迫るシーカーミサイルを振り切るためにフレアをばら撒きながらスラスターを噴かし、直角に近い角度で回避運動を行う。
「ふぎゃっ!?」
「ひゃあっ!?」
慣性制御装置で殺しきれなかった反動が姉妹に襲いかかり、それぞれ個性的な悲鳴を上げる。
「まずは中型艦を潰す?」
「そうすると小型艦が逃げるだろ。先に小型艦を潰して回るさ」
中型艦の火力は脅威と言えば脅威だが、どうやら奴はミサイル艦であるようなのでシーカーミサイルにだけ注意すれば問題ない。フレアはまだまだ残弾があるし、やろうと思えば専用の回避機動で振り切れないこともないからな。
「ヒャッハー! 宇宙のゴミは消毒だー!」
『クソォ! こいつなんなんだよ!? 撃て、撃てェ!』
はっはっは、俺を仕留めたいなら船のグレードを少なくとも正規軍レベルまで上げてくるんだな。
それでもヘボの宙賊野郎に負ける気はしないが。
☆★☆
「……酷い目にあったわ」
「……うぅ」
戦闘終了後、途中から静かになっていた姉妹が我を取り戻したのか再び声を上げ始めた。ティーナはひたすらげんなりしているようだが、ウィスカは顔を赤くして居心地が悪そうにモジモジしている。あれは間違いなく漏らしたな。よかったな、履かせておいてもらって正解だったじゃないか。
「積荷がなかなか良い感じですね……仕事の後だったみたいです」
「精製済みの金属が多いわね。賞金も中々の額よ」
「いくらになったん?」
「賞金だけで11万と2000エネルですね。中型艦に掛けられていた賞金が多かったです」
「11万2000エネル!? え、マジか……?」
「すごいね……それに戦利品の売却益も入るんですよね?」
「そうね。実際に売り払ってみないとわからないけど、精製済みの金属はけっこうな高値で売れるから……まぁ2万エネルは堅いんじゃない?」
「ということは13万2000エネルか……これは普通に働くのは馬鹿らしくなるやろなぁ……」
「私達の給料の何年分かな……?」
彼女達の給料がいくらかは知らないが、まぁ一流のエンジニアならそれなりの給料をもらっているのだろう。
「えっと……うちらの給料が月に大体3700エネルやろ……? 大体35ヶ月分ちょい?」
「およそ三年分だね……」
姉妹がなんだか暗い声でぼそぼそと話し合っている。言っておくけどこっちは命懸けなんだからな。そりゃエンジニアだって事故の可能性がある職なんだろうけど、命の危険度合いが違うんだから一概には比べられないと思うぞ。傭兵が高収入なのは確かだと思うけどな。
「スペース・ドウェルグ社を辞めてクルーになるか? 待遇は応相談だぞ」
「うっ……ひ、惹かれるなぁ」
「そう簡単にはいかないよ、お姉ちゃん。自由移動権を発行してもらうだけで20万エネルくらいかかるんだから……私達の貯金じゃ一人分も出せないよ」
「むー……それはそうやけど」
妹の冷静なツッコミに姉が唇を尖らせる。そうこうしている間に戦利品の回収が終わった。今回も装甲や船体への被弾はゼロ。全てシールドで止めて宙賊船団を全滅。完全勝利である。
「よーし、戦果は十分だな。凱旋だ」
「はい! 帰路を設定しますね」
「今日は戦勝祝いね。美味しいお酒が飲めるところが良いわ」
艦首をブラドプライムコロニーの方へと向け、加速を開始する。とりあえず仕上がりは上々、と言ったところだな。コロニーに着いたらサラにも連絡をしておくとしよう。




