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#010 ミミ

四話めェ!_(:3」∠)_(息切れ

 船に着いたらまずはミミの部屋に案内をすることにする。個室は俺の部屋として使っているので、二つある二人部屋のうちどちらかを使ってもらう事になるな。通路を挟んで真向かいにある部屋なので、どっちを選んでも変わらないけど。


「この部屋にします。あの……本当に良いんですか?」

「勿論。荷物を置いたらシャワーでも浴びると良い。そうしたら簡易医療ポッドでバイタルチェックをするから、そのつもりでな」

「そんなものまで……す、すごいですね、この船。一等区画のお家みたいです」

「そうか?」


 俺にはそのへんの常識が欠如しているからなんとも言えないな。その後もランドリーやキッチン、医務室やトレーニングルーム、コックピット、カーゴなどを案内する。一度に案内したほうが効率的だからね。


「コックピットには俺が許可した時以外は入らないようにしてくれ」

「わかりました」

「後は……あー、ミミ用の小型情報端末も入手しないとな」


 連絡を取るのにも情報を収集するのにも端末はあったほうが良い。なんならタブレット型のやつも一緒に買ったほうがいいかもな。


「あの、そんなに高価なものは……」

「必要経費だと思うよ」


 四六時中船での仕事があるわけでもなし。暇潰しにもなるだろうから明日にでも買い与えるとしよう。そう言えば服も最低限しか買ってないって言ってたな? 服とか生活雑貨も追加で買う必要があるか。


「とにかく、疲れてるだろうからまずはシャワーでも浴びてさっぱりしてから休みな。バイタルチェックとか業務の話に関してはそれからゆっくり話そう」

「はい、すみません」

「すみません、じゃなくそこはありがとうにするべきだな。シャワーの使い方とかはわかるよな?」

「はい、大丈夫です。ありがとうございます」

「ならそういうことで。俺はコックピットか自分の部屋にいるから、何かあったらすぐに言ってくれ。お腹が減った時も遠慮せずに言うんだぞ。これから一緒に生活するんだから、遠慮なんてしてたらダメだ」

「わかりました」


 ミミは素直に頷いた。うん、変に遠慮されてお腹を空かされても困っちゃうからな。これで良い。

 シャワーに入るところをまじまじと見ているわけにもいかないので、その場を後にしてコックピットに移動する。ミミの年齢は聞いていないが、ベッタリとひっついて面倒を見なければならない年齢ではないだろう。何歳くらいかな?

 話を聞いた感じだとまだ学生だったようだし、十代半ばってとこだろうか。背は小さいが、育つところは育ってるんだよな……うーん、十七歳前後くらい? 後で聞いてみるか。

 特にやることもないので明日のために第三区画の地理をリサーチしておく。ミミの生活用品や服を買い足さなきゃならないからな。そう言えば、もし病気になったりした時のために薬とかも買っておくべきだろうか? 買っておくべきだな。それに情報端末も買わなきゃならん。回る店が多いな?

 そういうわけで、第三区画にあるそれらの店の場所を評判と合わせてリサーチする。そうすると出るわ出るわ。やれバッタもん掴まされただの、薬の使用期限が切れてただの、箱を開けたら中身が入っていなくてただのスクラップが入ってただの。

 そういう店を除外していくと、第三区画にある『まとも』な店というのは案外少なかった。ちなみに、エルマに案内された食料品店とエルマがミミの服を買っていた店はその数少ない『まとも』な店である。残念宇宙エルフだと思っていたが、実のところそんなことは一切なかったらしい。

 暫くそんな感じで調べごとをしていると、開放していたコックピットの扉からひょこっとミミが顔を覗かせた。おお、シャワーを浴びてさっぱりするとやはりなかなかの美少女じゃないか。でもちょっと薄着じゃない? 艦内は空調が完璧だから寒いってことはないだろうけどさ。


「お腹空いたか?」


 俺の言葉にミミが少し顔を赤くしてコクコクと頷く。


「よしよし、んじゃメシにしようか。こんな感じでちゃんと言ってくれよ」

「はぃ……」


 自分でお腹が空いたと言うのは恥ずかしいよな。わかる。

 そんな恥ずかしがっているミミを引き連れてキッチンへと移動する。キッチンとは言っても調理設備らしい調理設備はなく、基本的には自動調理機械に全て料理を作って貰う形になるので、どちらかと言えば食堂と言ったほうが正しいかもしれない。


「なんでも好きなだけ食うと良いぞ。そういや人造肉を買ってきてあったな。チャレンジしてみるか。ミミもチャレンジしてみないか?」

「してみます」


 自動調理器で人造肉を使ったメニューを選択し、決定する。俺は量多め、ミミは普通の量で頼んだ。程なくして自動調理器が音を鳴らして食事ができたことを伝えてくる。


「これが人造肉……白いけど、結構美味しそうじゃないか?」

「そうですね」


 プレートの上に載っているのは白身魚のように真っ白に近い肉に、何かのソースがかかったものとピラフっぽい何か、ポテトサラダっぽい何かである。多めの量で注文しただけあってなかなかのボリュームだ。


「むっ……これはなかなか」

「美味しいですねっ」


 人造肉は美味しかった。程よい噛みごたえにくどすぎない甘みのある脂。そして添えられているソースも上品な味わいだ。ピラフっぽいものも人造肉を焼いた時に出た脂を使っているらしく、肉の旨味が感じられる。ポテトサラダっぽいもの? 普通にポテトサラダっぽかったよ。


「無理して食べなくても良いんだぞ」

「大丈夫ですっ……」


 ミミの胃袋には普通盛りは少し多すぎたようだ。結構無理して食べていたように思う。次からは少なめで頼むと良いと思うよ。うん。

 食洗機にプレートを突っ込んだところでミミが俺の顔を見上げてきた。なんだろう? と首を傾げる。


「こ、この後はどうするんですか?」

「この後か? うーん、食ってすぐ寝ると太るからな。トレーニングルームで身体を動かそうかな?」


 クリシュナには結構立派なトレーニングルームがある。長い宇宙生活の中で全身の筋肉の衰えが起こらないないようにするためか、設備がかなり充実してるんだよな。俺もこちらの世界に来てからは基本的に船の中に引きこもりがちなので、太ったりしないように一日一度はトレーニングルームで運動をするようにしている。


「ミミは先に休んでも良いぞ? 疲れているだろう」


 今日は色々とありすぎた。俺でさえ疲れている感じがするのだから、ミミはそれ以上だろう。


「いえっ……はい、そうします」


 ミミは否定しかけたが、少し考えて思い直したのか頷いた。うん、素直に休むと良い。おやすみ、と言ってミミと別れて俺はトレーニングルームへと向かう。

 別にボディビルダーを目指すつもりはないので、トレーニングの内容は程々だ。AIのインストラクターに従って黙々と運動メニューをこなしていく。このAIインストラクターは情報端末や自動調理機械のデータを元に俺の運動量や摂取カロリーなどを計算して最適な運動メニューを組んでくれる。

 身体はそれなりに動かすことになるが、しっかりとした目標が見えているだけにやりがいはあるんだよな。

 暫く身体を動かしたらシャワーを浴びることにする。これまでは適当だったが、女の子と同居する以上は身嗜みには気をつけたい。一緒に住んでいて不潔なやつだと思われるのは避けたい。俺の心が死ぬ。

 いつもより少し念入りに身体を洗い、さっぱりしたら就寝の時間である。この世界に来てからというものの、明らかに元の世界よりも健康的な生活を送っている気がするな。規則正しく、栄養バランスの良い食事に適切な運動、十分な睡眠。なんて健康的なんだ。


「んー……はぁ」


 ジャケットとズボンを脱ぎ、下着姿になって大きく伸びをする。今日は本当に色々あったな。食料の買い出しに出かけただけの筈なのにいったいどうしてこうなったのやら。エルマに出会ったことが全ての引き金のような気がするな。あの宇宙エルフ、トラブルを呼び込む体質なんじゃなかろうか? あまり近づかないほうが良いかもしれない。


「あの……」


 そんなことを考えていると、開きっぱなしにしていた扉の陰からミミが顔を覗かせた。何故か顔を真赤にして、緊張した面持ちである。

 いや、失敗したな。ついつい独りだったときの癖で扉を開けっ放しにしてしまっていた。しかも俺、下着姿だぞ。


「どうした? っていうか今俺下着姿なんで、ちょっとまって」

「……」

「ちょ、えぇ!?」


 待ってって言ってるのになんで入ってくるんですかねぇ! しかもなにそのスッケスケのネグリジェ! ちょ、君、ブラとパンツは!? 透けてる! 透けてるって! それはマズいですよ!


「ストップストップストップ! なんで!?」


 思わず両目を手で覆う。でも指の隙間からチラ見しちゃうのは許して欲しい。これも男の性というやつなんです。


「私のお勤めを果たしにきました……」


 ミミは消え入りそうな小さな声でそう言うと、ひたひたとベッドに腰掛けている俺との距離を縮めてくる。彼女が今身につけているのはスケスケのネグリジェ一枚だけで、靴すら履いていないらしい。


「いやその、そういうのはほら、もっとお互いをよく知ってからというか?」

「私にできるのはこれくらいですし……その、ヒロ、さま、なら嫌じゃないです……」


 初めて名前を呼ばれた! いや違うそうじゃない。今はそんなことは問題じゃない。あっ、あー! いけません! お客様! お客様いけません! あー! いけませんいけません!

 動揺している間にミミが俺の隣、つまりベッドの上に腰掛けてぴったりと寄り添い、抱きついてくる。うおおお、柔らかいものが! ミミさんの体格の割に凶悪な大きさのミサイルが! 被弾! 被弾しました! ヤバい。


「その……おくすりも飲みましたから。私、大丈夫です」

「おくすり!? なんの!?」

「避妊と……その、初めてでも痛くないようにって……エルマさんが……この服も」


 あーーーーーーッ! あの駄エルフ! なんてことを! いや、ここはありがとうございますなのか!?


「あ、あの……私じゃダメですか? やっぱりエルマさんみたいに綺麗な人の方が……」

「ダメじゃない。全然ダメじゃないけどね? 本当に俺はそういうつもりじゃなくてだね?」

「でも、私にお返しできるのはこれくらいで……それに、その、怖いので……お願いします」


 怖い? 怖いって何? どういうこと?


「私にできることは何もないですから……だから、打算なんです。そうすれば、お兄さんは私をその……捨てたり……」


 ミミの声がしりすぼみに小さくなっていく。なるほど、何もできないからいつ俺の気が変わって放逐されるかわからないと。だから身体で繋ぎ止めたいと。なるほど。なるほど。

 俺、そんなド外道だと思われてるの? それはそれでキツいんだけど。


「お兄さんは……ヒロさまはそんなことしないと、思うんですけど……安心、させてくれませんか?」

「あー……そういう」


 つまり俺の人格を疑ってるとかそういうことでなく、ミミが安心したいから? いや、でもですね? などと戸惑っていたらピロリン、と直ぐ側に置いてあった情報端末がメッセージの着信音を鳴らした。ビクッとして画面に目を向けると『責任取ってちゃんと抱きなさいよ』と表示されている。

 俺の情報端末にメッセージを送ってくる相手なんて一人しかいない。つまり、全部あの残念宇宙エルフのお膳立てだというわけである。


「お願いします……捨てないで……」


 ミミは俺に抱きついたまま泣きそうな声を出し始めるし……これきっとエルマに今日抱かれなかったらいずれ必ず捨てられるとか吹き込まれてそうだな? あの女……次に会ったらアームロックを極めてやる。絶対にだ。


「わかった」

「……!」

「あー、こういう時なんて言ったら良いのか。状況が普通じゃなさすぎて言葉が出てこないな」


 流石にこういうシチュエーションでどんな気の利いた言葉を言えば良いのかなんてわからない。特殊すぎるわ。とりあえず、俺に抱きついているミミを軽く抱き返して、その背中を安心させるようにポンポンと叩いてやる。


「できるだけ優しくするから」


 俺の言葉にミミは何も言わずコクリと頷き、身体の力を抜いた。

これなんてエロゲ?(´゜ω゜`)(嫉妬

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― 新着の感想 ―
[一言] あんたの作ったエロゲだよщ(゜Д゜щ)
[気になる点] 土地とか以外の物価ってどうなんだろ [一言] まぁうん、こんな世界だしね
[気になる点] エルマも言ってたけどこれから同じような人を見かけるたびに助けまくるのか? とても手が足りるとは思えないが。
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