ハルル・セリンの誕生
「ウンギャー!ウンギャー!」
病室内には赤ん坊の声は響いた。
新たな命の誕生だ。
「名前は...セリンだ。地の女神セリン様の名からいただこう。」
「そうね...セリン...私の子...ハルル・セリン...」
◇ ◇ ◇
16年後...
「セリン!起きて!」
いつも通り孤児院の幼馴染ゼーリム・メリーが起こしに来た。
「はーい」
だるそうに返事をするセリンに怒ったメリーはセリンの顔をつねった。
「あーいたたたた!わかったわかった!悪かった!起きるから!」
「許す。」
むすっとした表情でメリーは言った。
「早く着替えて!食堂来てね!」
メリーは先に行ってしまった。セリンは16年前、両親を亡くしこのオーテ地方のベル孤児院に入った。
両親の死因は共に戦死だった。そのためセリンは戦争を嫌い、武器を嫌い、平和を愛す青年になった。
「おーいメリー!来たぞ!」
そういうとメリーはいつもにこっとして手招きをする。
面倒くさいがいちいちしないと、メリーはすぐ怒るのでしなければならない。
彼女はいつもセリンといる。幼いころから気が合い仲良しなのだ。
そんなセリンの夢はただ一つ、「ただただのんびりと暮らし生きる」という夢らしい。そんな夢はこの中立国家ラカス王国では、ほぼ確実に実現できるのである。だからセリンの将来の職業というものは農家でありエイルが目指している魔法学校へ行かなくてよし、ヘリーが目指している軍事学校へ行かなくてよしというただただ生きていれば自然とくる職に就くわけである。
そんなある日セリンは王都へ使いに行くよう頼まれた。
なんたって孤児院の院長が重い病にかかったので、秘薬 ラ・ビスという万能薬を買うよう頼まれた。
孤児院内最年長の役目であるので仕方なしに王都へ行くことになった。
馬車が来た。
「気を付けてね!ほんとに私も行かなくていいの?」
心配そうにメリーが言う。
「うん、メリーは待ってって。」
「早く帰ってきてね!」
「おう!」
オーテ地方から王都まで馬車で丸2日かかる。そのため、王都へはセリンは初めて足を運ぶ。
どのくらいかかったか。急に馬車がが止まった。
「おじさん!どうしたの?」
「悪いね~検問だよ~王都には入ったんだけどね~」
検問か...何かあったのか...
そう思ったその時、
「ハルル・セリンというおそらく現在16歳の青年を知っているか?」
国兵がおじさんに聞いた。
(ん?俺か...?)
「あぁ~お客さんどうしますか~?知らないといいますか~?」
おじさんは小声で聞いてきた。
「いや、出ます。」
少し戸惑ったが何もしていないというため決心し、馬車の扉を開き、降りて名を名乗った。
「ぼ、僕がセリン、ハルル・セリンです!ですが、僕は何もしてません!」
「君がハルル・セリンか...わかった。来い。」
「あ...え?」
腕をつかまれ国兵自動車に乗せられる。
「お、おじさーん!」
「お、お客様~!」
こうしてなぜかセリンは国兵に連行された。