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遠くて近きルナプレール ~転生獣人と復讐ロードと~  作者: ヘボラヤーナ・キョリンスキー
第二章 迷宮都市の救世主たち ~ドキ!? 転生者だらけの迷宮都市では、奴隷ハーレムも最強チート無双も何でもアリの大運動会!? ~
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2-21.ダンジョンキーパー、レイフィアス・ケラー(4) 「作戦名、『いのちをだいじに』だ」

※警備室→監視所、他誤字など修正。





 

 【1日目】

 

 闇の森の地下にあった遺跡と転送門。

 僕とガンボンの二人と仔地豚のタカギは、誤ってそれを潜ってしまったことで、どことも知れぬ遺跡へと転送されてしまう。

 直後に壊れてしまった転送門からは引き返すことも出来ず、さらにその奥に進んだ場所で“生きた”状態の魔力溜まり(マナプール)を見つけて支配に成功した。

 けれどもその魔力溜まり(マナプール)は古代の知性ある魔術工芸品インテリジェンスアーティファクトの“生ける石イアン”と関連付けのされた、ダンジョンを制作するための装置の一部だった。

 そんな経緯で僕、ケルアディード郷のダークエルフ、レイフィアス・ケラーは、“生ける石イアン”の承認を受けて、ダンジョンキーパーとなったワケだ、けれど、も。

 

 さて、それでこれからどーしたものか、と。

 

 ひとまず、“生ける石イアン”の助言、叉はチュートリアルに従って幾つかの区画を造ってみる。

 これらを造るのにはこの部屋、“生ける石イアン”言うところのダンジョンハートの机を使う。

 床下からせり上がって現れたこの机は、真ん中前方に魔力溜まり(マナプール)を模した“生ける石イアン”が設置してあり、左右三面に分かれた天板それぞれにパネルがある。

 このパネルは、下がドワーフ合金の磨き上げられた板で、その上にぴったりとガラスのような透明の板がはめ込まれている。

 その隙間に、色の付いた非常に細かい砂の粒子のようなものがあり、魔力を通すことでとれらが動き文字や図を描き出す。

 真ん中のパネルは、このダンジョンの地図や設置物等が表示され、備え付けの筆で書き加えたり指示したりすることで、通路や部屋を増やしたり埋め戻したりということが出来る。

 右側は召喚クリーチャーや使役魔獣、仲間などについて。左側はまだ今のところ何も表示されていないが、敵性魔獣などについて表示されるらしい。

 

 味方の表示では、今のところはガンボン、タカギ、召喚インプ、そして“ダンジョンキーパー”の僕の“ステータス”が表示もされる。

 名前、種族、役割の設定、装備、状態、それと能力値。

 ……いやいや、それどーなのよ。本当にゲームじみてきたな。

 “生ける石イアン”曰わく、それはイアンが鑑定分析した結果を随時更新しつつ表示させているらしい。

 能力値に関しても基本は10段階評価で、例えばガンボンの場合「ちから:8」、つまり「最高ランクから2つ下」。

 僕の場合「ちから:3」で、「最低値よりはマシ」程度。

 10段階なのでぶっちゃけそんなに細かく差が分かるわけでもない。

 

 で、その“生ける石イアン”の鑑定評価による召喚インプのステータスでは「ちから:1」。つまり最低値。

 ちから、はそのまま白兵戦の戦闘力にも直結しているとのことで、たしかに戦闘能力は子犬並の召喚インプの評価としてはごもっとも。

 

「ね、このさ。スキル、てところなんだけど……」

 “生ける石イアン”による評価ステータスの中に、「スキル」という項目がある。

『スキルには二種類ある。基本スキルと付与スキルだ』

「付……与スキル?」

 基本スキル、は、何となく分かる。付与スキル?

『基本スキルは、その者がもともと持っている本質的なスキル、技術系統への評価だ。

 付与スキルは、このダンジョンの支配領域内で魔力により付与、増強される特殊な能力だ』

 基本スキル欄は例えば「射撃」「魔術」「白兵戦闘」「格闘」「隠密」等々の項目があり、数値評価がされている。

 そこから派生する付与スキルの欄に、例えば召喚インプには「偵察」「採掘」「運搬」「区画強化」という能力が付与スキルとして表示されている。

『採掘、は、穴を掘る能力だ。召喚つるはしを持たせて、召喚インプに穴を掘らせる。

 運搬、は、採掘した鉱石や石、土の他、制作した設備などを運ぶ。

 区画強化は、支配下の床、天井、壁を強化する。永続化し強度を増し、同時に供給魔力の増加と魔法の遠隔行使を可能にする』

 

 手順としてはこうだ。

 まず中央パネルの支配領域地図から、穴を掘る場所を指定する。

 すると召喚インプがつるはしをもってそこへ移動。指定された通りの穴を掘る。

 その掘られた場所等で、パネルから選んだ区画の種類を指定する。例えば「ねぐら」や、「家畜小屋」などだ。

 そのあと召喚インプはそれぞれの区画を工事して強化する。

 又、掘った当初はただの土の穴だが、強化をすることでダンジョンの通路、というような外観と強度を得られる。

 この外観に関してもまた自由に選択できるらしい。一見ただの土の自然洞に見えるようなカモフラージュというのも可能だとか。

 

「何か、ダンジョン制作に特化した魔術具のわりには、手順が色々と面倒だねえ」

『そういうものだ、キーパーよ』

 一応まあ、理屈は分かる。

 魔力で何でも自由にできるぞ、というような魔術具を造ろうとすると、消費する魔力や触媒等のコストが増えまくるのだ。

 手順や出来ることを限定的にした方が、ローコストで無駄が無い。

 

 僕は今ここの魔力溜まり(マナプール)を支配していて、そこから魔力を得て僕個人で魔術を使うことも出来る。

 例えば土魔法で穴を掘り、その壁や床を整形して形を整え、強化、永続化させて通路とする……というのを、“生ける石イアン”を通じずに、僕自身の魔術として行う、と。

 けどそんなことをしてたら、通路一本、小部屋一つ造るだけで、魔力溜まり(マナプール)の魔力をかなり使ってしまうだろうし、まして僕自身のみの魔力では到底無理だ。特に永続化はかなりの魔力を使う。

 しかしこの 知性ある魔術工芸品インテリジェンスアーティファクトの“生ける石イアン”を通じての場合、単純に見ても十分の一、いや、二十分の一くらいの魔力消費で同じ事が出来る。

 同様に僕個人で使える魔術を、“生ける石イアン”を通じて行うと、魔力溜まり(マナプール)の魔力は、僕個人の魔力を使って行使するときよりはるかに少ない。

 特に懸案事項であった 【水の生成(クリエイトウォーター)】の行使が、“生ける石イアン”を通じて魔力溜まり(マナプール)の魔力を使うと、かなり楽になる。

 つまり、手順を限定的にすることで、複雑な魔術を効率よく、かつ簡略化して行使できるように造られている、ということなのだ。

 

 その辺の理屈は分かるんだけど、んー……まあ、何かこう、スッとしない部分はある。

 まあ基本的にガチガチの文系タイプである僕としては、ある種の理系的思考を必要とする術式の研究や魔術具の製作、理論に関しては、どうしてもイマイチ分かり難いところはあるんだけどもね。

 

 で、初日はとにかく、“生ける石イアン”の指示に従って通路といくつかの小部屋を作り、「ねぐら」と「家畜小屋」の設置に、少し離れたところをトイレにしたあたりで、疲れ果てて椅子の上で寝落ちした。らしい。

 


【2日目】

 

 精神的肉体的疲労が溜まってたのだろう。だいたい20時間くらい寝こけていたようだ。

 起きたときには毛皮が身体にかけられていた。ガンボンが持ってきたもので、今後も貸してくれるという。

 まあ、天然ミートテックこと脂肪の鎧を身に付けたガンボンと、痩せ型低血圧低体温の僕とでは体感温度はかなり違うハズなので、素直に有り難く借りておこうと思う。そもそも、地下だからけっこう冷えるのよ。

 

 この世界は諸々の環境が地球とすごく似てて、一年は365日だし1日は24時間で、1時間は60分だ。

 ついでに言えば帝国人はラテン系に似てて東方(ギーン)人はゲルマン系やスラブ系に似てるし、それぞれ地政学的にも似た文化、社会を持ってたりもする。なのでそれらのことからこの世界は所謂「地球と全く異なる他の惑星」というよりは「別次元の地球」みたいなものなんじゃないかと思っている。

 エルフやらオークやらが居て、魔法の使える別の地球。

 ただ、地形の違いや月のこととかはよく分からん。

 

 で、ずっと地下にいるので体感的に時間も昼夜も分からないンだけど、そこは“生ける石イアン”がカウントしてるのだと言う。

『開始から32時間経過で、今は夜の9時だ』

「うへぇ! 超夜型生活!」

 二日目ももうじき終わるタイミングだよ。

 

 ガンボンはどーしてたん? と聞くと、今日はほぼほぼボケーッとしてたっぽいんだけど、その成果の一つが鍋の中の料理。

 どんなものかと見てみると、見た目には味噌ダレをつけた蒸し鶏みたいに見える。

「え? これ、どーしたの?」

「家畜小屋、のやつ」

 寝る前にチュートリアルに従って設置しておいた「家畜小屋」という名前の区画は、このダンジョンハートから真正面に伸ばした通路の左右に作った小部屋の一つにある。

 “生ける石イアン”によると従属魔獣の為のエサを生み出す部屋、とのことなんだけど……百聞は一見にしかず。卵形のエアチェアーを操って座ったままそちらへ移動。すると中にいたのはなんとも珍妙不可解なシロモノだった。

 

 まず、黄色にほぼ近い薄緑色で高さは1メートル程度の観葉植物みたいなのが4本生えている。おおよそ1メートル四方を1ブロックとした場合、4ブロック四方の小部屋で、1ブロックに一本、だ。

 その先端に30センチほどの大きさの蕾があり、中にうっすら肌色の物体があるのが見て取れる。

 で、その「実」は何か、というと、足元をよちよち歩いている肉色の物体。

 その見た目を表現するなら、「歩くチキン」。

 首を跳ね血抜きをして、全ての毛を毟り足も落としてから茹でた丸鶏が、よちよちとまさに千鳥足で歩いている。

 

「うえぇぇぇ~……。何これ?」

『従属魔獣のエサである』

 机の上に設置されていた手のひら大の球状の石、“生ける石イアン”は、実際持ち運びできる、傍目には本当にただの丸い石だ。

 完全にB級ホラー映画の絵面をしている「家畜小屋」のそれを、朝起きた仔地豚改め、巨地豚のタカギがもしゃもしゃと食べていたのをガンボンが発見。

 試しに……と食べてみたところ……。

 

「……うん、食べられるね」

「うん」

 ただし、美味しくはない。

 ガンボンがちぎって渡してきたそれは、見た感じ茹でた鶏のささみ肉みたいで食感もソックリ。

 栄養価の面では、“生ける石イアン”曰わく『過不足なく申し分ない』らしいのだが……まーーー味気ない。

 これ、何だろう。感じとしては向こうの世界の前世で食べたことのある「大豆で造ったお肉でないお肉」みたいな味と食感。

 微妙に臭みがあるのも近いかもしれない。

 

 で、もう少しなんとかならないかとひと手間工夫したガンボンが、味噌ダレに漬け込んでみたのが鍋の中のものなのだけど、も。

 

「うん、味噌味だね……」

「うん」

 味噌に漬け込んだことで食べやすくはなってるけど、この肉擬き……魔造チキン? そのものに味が無いので、ただただ味噌の味がしているだけ。

「……味噌おいしいね」

「うん」

 

 何の会話だ。

 

 とりあえず実はかなりおなかも空いてたので、味噌漬け魔造チキンをありがたく頂く。

 ガンボンは何気に不満足だったらしく、魔造チキン料理でのリベンジを考えてるようだった。

 ガンバレ!

 

 あまり完全な夜型生活になるのも何だしなと、少しは時間を調整しつつ作業をしようと思いながら机に着く。

 “生ける石イアン”のチュートリアル的には次は従属魔獣か召喚魔獣で初期戦力の増強を……という流れらしいのだ、が。

 その前に僕としては、ここでの生活環境の改善をしておきたいのだ。

「生き死にに関わる状況で生活環境改善とか、お前それジャングルでも言えんの?」

 と言われてしまうとそれまでなんだけど、とは言え今この時点で即座に生き死にに直結してるわけでもなく、どちらかというとこれは長期戦で状況を打開しなきゃならない場面ではないか、と思う。

 魔力溜まり(マナプール)は支配できた。“生ける石イアン”の力で、僕自身の魔術、魔力に依らずに地下迷宮の制作が出来るため、ここから地上へと道を繋げる、というのも可能になった。

 けどじゃあ、ここから一直線に上に向けて通路をガンガン掘っていけば地上に出れるのか?

 多分、そうはいかない。

 いや、もしかしたらそれで簡単に行けるかもしれない。

 運が良ければ。

 

 今現在現時点で、この場所が地下どのくらいの深さなのかも分からないし、地上がどのような場所、状況なのかも分からない。

 例えば上に向けてガンガン掘りまくったら火山の溶岩溜まりに突っ込んでしまい火の海になる蒸発死エンド、とか、地上に向けて掘り進めて湖の底に穴を開けてしまい溺死エンド、なんてことが無いとは言えない。

 地上に出たら出たで、「凶暴な魔獣の住処に到着ちました食い殺されエンド」とか、「山賊の隠れ家に出ました××エンド」とか、最悪な結果はいくらでも想定できる。

 

 例えこの場所が実際には地下50メートルだとしても、或いは地下5千メートルだとしても、少なくとも体制を整え地上に向かう事の安全性を確認、確保しながら、じっくりと進めて行くべきだろう、と思う。

 ゲームみたいに勢いとノリでやらかして、失敗したらやり直し……というワケにはいかない。

 作戦名、「いのちをだいじに」だ。

 ……あ、いや。考えてみると前世でゲームやってたときにも、どっちかというとガチガチに装備やアイテム固めておいて、最終的にアイテムすげー余る、みたいなプレイスタイルだったよーな気がするな。

 

 何にせよ、と。

 もしかしたら早めに状況を打開出来る可能性もあるかもしれないけど、前提としては長期戦になると考えておくべきだろうと、そう思っている。

 そして長期戦になるのであればこそ、生活環境の向上は重要。

 目標に向かって身の回りのことなどお構いなしで突き進め、というのは、勢いのあるうちは良いだろうけど、いずれポッキリと折れる。

 少なくとも僕はそう。

 精神的身体的なケア無しでサバイバル出来るほど逞しくない。

 ガンボンは出来そうだけどね……。

 

「このねぐら、ってのは、僕等のねぐら……ではないんだよね?」

『魔獣の為のねぐらである……が』

「が?」

『区画の付与効果は、キーパー等が使用しても変わらぬ』

 区画の設定により、 魔力溜まり(マナプール)の魔力を使った効果があるらしい。

 「家畜小屋」で例の魔造チキンが生育されるのと同じように、「ねぐら」に指定された区画では体力回復の補正効果がある。

 「監視所」という区画に指定すると防御に補正がかかるらしいし、「訓練室」という区画で何等かのトレーニングをすると、例の付与スキルというのが増加したりしやすくなるとか。

 どれも 魔力溜まり(マナプール)の魔力による補正だから、このダンジョン、支配領域内でのみのものなのだけどもね。

 

 何にせよ「ねぐら」に区画指定すれば、僕らが使う私室、寝室としても効果は得られる、と言うことのようだ。

 それでは……と、机の前面パネルの地図に指定と書き込みをし、僕用の私室と、ガンボン用の部屋を制作、指定。

 僕のはこの司令塔であるところのダンジョンハートの部屋の裏手、つまりはこの机の後ろ側に通路をT字に延ばし、トイレ、浴室、寝室用の小部屋を並べる。

 ガンボン用にはこのダンジョンハート前面から延ばした通路周りに作っておいた幾つかの小部屋から一つを指定しておく。

 

 で、室内の備品設備等も、パネルから指定したり製図を作ったりして作り出すことも出来るけども、今出来るのはあくまで穴を掘る、土を盛り上げて固める、という召喚インプに出来る作業の延長上に、土魔法でそれらを固め、強化及び永続化させる、という工程でのものなので、フカフカのクッション等は手に入らない。

 それでもまあ、ベッドの形をした何か、で横になれるのは助かる。

 トイレや浴室も、現時点では上下水もきちんと整ってないのでお粗末な状態ながら、精神的には助かるもの。

 いくら何でも、ダンジョンのどこか隅っこで垂れ流し、なんて環境では精神的に辛い。

 今は召喚インプで掘ったり埋めたりが自由に出来るので、トイレとして指定した場所に深めの穴を掘り、定期的に埋めていく、という形でもなんとかなるのだが、いずれは水洗か、せめて浄化槽みたいなものを設置したい。

 浴室……は、 魔力溜まり(マナプール)の魔力を使って水を作り出せば、水魔法の苦手な僕でも湯船一杯に水を溜めることも出来る。ただ…… 魔力溜まり(マナプール)の魔力の無駄使いになるので、あまり多用は出来ないなあ。沸かすのも火属性の魔力の込められた魔晶石を利用するけど、これも有限だし。

 換気や空気の浄化は、拾った魔晶石を利用した風魔法の術具を作って換気扇代わりにしてみた。

 これを造るのにも僕一人の力では初歩的なものが精一杯で、それも「工作室」という区画を造ってから、なので、なかなか「魔法で万事解決!」といかないところなのがもどかしい。

 魔術師、という枠で見たときの僕は、決して高レベルの使い手では無いのだ。

 

 起きるのが超遅かった2日目は、それら含めた生活環境改善と、最後に監視所とそこに常駐させる為の番兵として、召喚インプの次に低コストで召喚出来る白骨兵という魔物を配置して、朝方にガンボンから借りた毛皮にくるまって就寝。

 柔らかいベッドが欲しい……。

 

 

【3日目】

 

 昼過ぎに起きたら、番兵の白骨兵をタカギが粉砕しまくっていた。

 な、何をするだーー! と怒りはしたが、どうだ! と言わんばかりのタカギの得意気フェイスに、もはや何とも言えない。

 ここで召喚した白骨兵は、実際の死体としての骸骨を死霊術で操ったものではなく、「骸骨の姿をしたものを魔力で作り出した魔物」なのだけども、どーもタカギはユリウス率いるゴブリン兵の死霊術師が召喚したアンデッドとしての白骨兵に襲われた経験から、「白骨兵=敵」という認識が出来ているらしく、めっちゃ目の敵にしているようだ。

 うーんむ。

 となると、別の何かを番兵代わりにしないとならんけど、この段階で“行ける石イアン”を通じて召喚出来る魔物の中で、最も番兵向きなのが白骨兵なのよね。

 他に召喚出来るのは、お馴染みの召喚インプ(戦闘力は子犬並)、大蜻蛉(ドラゴンフライ)(でかいトンボ。弱い)、大蜘蛛ジャイアントスパイダー(大型犬くらいの大きさの蜘蛛。他のよりはそこそこ強い)だけども、うーん。

 大蜻蛉(ドラゴンフライ)は偵察向き。大蜘蛛ジャイアントスパイダーは巣を張って待ちかまえるので確かに番兵向きなんだけど、注意書きにある、「空腹時には他の魔物を巣にとらえて餌とすることがある」が気になる。

 で、試しにその二つを召喚してみたら、早速大蜻蛉(ドラゴンフライ)大蜘蛛ジャイアントスパイダーが糸でぐるぐる巻きにして食べていた。食うなよ!

 タカギとガンボンも巣に絡め取られかけていたけど、ガンボンが発火の魔法で巣の糸を焼いて脱出。

 ちょっと使いにくい魔物だなー。

 「監視所」にした区画の一つを大蜘蛛ジャイアントスパイダー専用に指定して、そのすぐ近くに同じく大蜘蛛ジャイアントスパイダー専用の「ねぐら」区画と「家畜小屋」区画を設置したので、これで他の召喚獣やガンボン、タカギを食べようとはしなくなる……と、思いたい。

 

「この、召喚獣とか従属魔獣とかって、どーやって増やすの?」

『召喚獣はダンジョンハートのレベルを上げることで、種類が増えて行くぞ』

 わーお。レベル上げでアンロックの解除? みたいなこと?

『召喚獣は召喚中微量だが魔力溜まり(マナプール)の魔力を常に消費する。

 そのため、ある一定以上の魔力供給を得られている状況になるまで、魔力消費の多い強力な召喚獣は召喚出来ないよう設定されている。

 従属魔獣はこの支配領域に入って来た非敵対状態の魔獣に対して、一定確率で従属化をさせることが出来る。

 従属化させた魔獣は基本的にキーパーの命令をきくが、餌や寝床が足りなくなると反抗したり逃げたりもするので注意せよ。

 また、従属化にも召喚獣程ではないが僅かに魔力を消費し続ける』

 あらま。魔術師における使い魔ほど忠誠心は無いのね。

 言うなれば召喚獣は正規軍で、従属魔獣はフリーの傭兵みたいなものなのかな? 餌の切れ目が縁の切れ目、か。まあそんなもんよね。

 

 せっかく召喚した白骨兵をタカギが粉砕してしまったことや、大蜘蛛がイマイチ信用できないことからか、ガンボンはタカギと共に定期巡回を始めた。

 とは言え今の所明白な危険は無いし、そもそも何処かから敵が現れるよーな可能性も無いから、まー実際無意味なんだけど、ただボケーッとしてるよりかは建設的か。気も紛れるだろうしね。

 

 魔造チキン料理にはさらに一工夫を加えていて、なんと今日は煮込みハンバーグを作っていた。

 家畜小屋の隣の隣に炊事場用の部屋を設置しておいたので、けっこう手間のかかる料理も出来るようになっている。

 戻した塩漬け乾燥肉と魔造チキンをナイフで叩いてミンチにして混ぜ合わせ、さらにその魔造チキンの若葉部分も足したらしい。

 魔造チキンの木は、新芽、葉、茎もそれぞれ食材になるのだそうな。

 新芽は葱に似た辛味が少しあり、葉は肉厚でさほど味はないがそれなりに柔らかくて食べやすく、茎にはシャキシャキした蕗のような歯ごたえがある。

 食材としてはある意味魔造チキンそのものより使い勝手は良いのかもしれない。

 それと、なんというかけっこう不気味でもあるんだけど、この魔造チキン、卵も産む。

 いやほんと、首を跳ねて全ての毛を毟った茹で鶏の見た目をしたモノが、さらには卵らしきモノを産む様子って、マジでホラーよ?

 

 このホラーな食材、何か覚えがあるなー、と思って【再読の書】で調べてみると、たしかに古代ドワーフの遺跡研究本に載っていた。

 地下都市生活の彼等が栄養補助食として大地の魔力をそのまま変換して食材化する植物として開発したものの、味の方がイマイチだったことであまり普及しなかったらしい。

 どうせ食べるなら出来るだけ美味しいものを、というのは、僕らも古代ドワーフも変わらない。

 ガンボン作の魔造チキンハンバーグは、昨日食べた味噌漬けより美味しかった。

 魔造チキン自体には肉汁は無いけど、一緒に練り込んでた魔造チキン樹の若葉からも汁が出てきて、ミンチにした分ハンバーグらしい食感もあったしね。

 

 

 基本的な生活空間が一通り造れたので、少しずつ通路を延ばして区画を広げていく。

 支配領域内は、区画として整備した部分の近くまではパネルの地図に表示されるのだけど、それによりいくつかの箇所には既に空間のある場所があるのが分かる。

 その場所を避けるようにして周りを掘り進め、またその空間を囲む区画はいざという時切り離せるようにしておく。

 不意に何らかの理由でそこと繋がってしまったとき、何が出てくるか分からないからだ。

 

 そのうち一カ所。

 おそらくかなり広い空間があり、音の反響や魔力の反応からして、そこには水が存在しているだろう事が分かった。

 水。

 長期戦として腰を据えてじっくりやる上では、生活用水としても飲み水としても有用だ。

 けれども向こうの空間の水がどんな状態であるのかが分からないことには、迂闊に掘り進むことは出来ない。

 うーんむ。

 とりあえず囲いになる周辺部に出来るだけの対策をしておく。

 

 手紙を書いたり細かい指定作業をしてたらやたらに目が疲れ、肩も凝って来た。

 先日造ったきりでまだ使ってなかった私室のお風呂にゆっくり入ってから、寝ることにする。

 

【4日目】

 

「み、み、みずが! 出た!」

「うわ!? へ、ちょっと何!?」

 朝っぱら、と言っても実際にはお昼前頃に、僕の寝ている寝室へガンボンが慌てふためきやってくる。

「うわ! えと、その、みみずが」

 慌ててベタな言い間違えネタを無自覚にぶっ込んでるけど、そんなことより現状どーいう事か確認しなきゃだ。

「イアン、問題は?」

 枕元に置いておいた拳大の球体へと質問すると、

『支配区域への浸水。ただし現状さほどの問題は無い』

 浸水の可能性があるとしたら例の区画。そして水があると思われている空間に隣接するエリアは、万が一に備えてちょっとした堀のようにしてある。

 つまりこの階層より深めに掘って、そこに水を逃がす構造。さらにはそこから通路の全てに排水溝をつけてあり、トイレや浴室、炊事場のそれらと一緒にして、かなり地下深くの汚水溜めに排水出来るようにしておいてあるので、この支配区域全部を水没させる程の量が一気に流れ込みでもしない限り、なんとか対処は出来る……ハズ。

 

「お、俺、ちょっと見てくる!」

 何か変な慌て方をして、巨地豚タカギに乗っかって走り去るガンボン。いや、いつの間に騎乗用にしたんだよ。

 僕はダンジョンハートの机に着いて、真ん中の地図パネルを開く。

 例の水があると思われる大きな空間を囲む区画の壁に、損傷の警告反応。

 召喚インプを派遣して補修をさせようと右側の味方パネルを開いていると───、

 

 大きな破壊音と、地響き。

 

『キーパーよ、侵入者だ。迎撃の準備をしろ!』

 

 実に渋い声で、“生ける石イアン”が警告を発した。

 


 えー、大変なことが二つ、起こりましたァ~~。

 一つは……一度ほぼ書き上げたこの話を、エディタの操作ミスで、全削除をしてしまった~……ことです。

 もう一つはァ~……、古くなってたHDDレコーダーのDVD読み取りが壊れ、ブランクディスクを認識しなくなってしまい、HDDからDVDにダビング出来なくなってしまったことです。

 あ、あと、今日、誕生日です!


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