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遠くて近きルナプレール ~転生獣人と復讐ロードと~  作者: ヘボラヤーナ・キョリンスキー
第二章 迷宮都市の救世主たち ~ドキ!? 転生者だらけの迷宮都市では、奴隷ハーレムも最強チート無双も何でもアリの大運動会!? ~
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2-15.J.B.(8)Wellcome to the savannah.(サバリパー……サバンナへようこそ!)

※挿絵追加

※細かい描写修正 (アティックの武装を曲刀と弓から、曲刀と投げナイフに変更、等)


挿絵(By みてみん)


【腕長トムヨイとグレント】


 

「おい、穴蔵鼠どもが何で太陽の下に出て来てんだよ?」

 顔を見るなり突っかかって来るのは俺より2つ程年下の南方人(ラハイシュ)のガキ、グレントだ。

 こいつは俺同様犬獣人(リカート)の元奴隷で、共に反乱を起こして逃げ出し、生き残ってこの街までたどり着いた数少ないうちの一人。

 そして戻ってくる途中の仲間割れで別のグループと共に行ったのだが、その殆どが鰐男に殺された。

 グレントが生き残ったのはちょうどそのときここクトリアを拠点にしている狩人の集団が通りかかり助けられたからで、今でもその連中と暮らしている。

 

「ヤレッド、チェンジ」

「はァ!? てめー何だとこら!?」

「うるっせーなァ。こちとらガキのお守りする為に地上に来たワケじゃねェんだよ」

「ガキじゃねえわ! もう16だ糞が!」

「中身の話だ」

 

 グレントと俺のやりとりに、アダンやニキも何事かと寄って来る。

「何? 揉めてンの?」

「おう、何だこのガキ? 俺らに喧嘩売って来てくれちゃってンの?」

 まあ、お世辞にもお上品とは言えないこいつらも関われば、揉め事はより大きくなる。

 あー、糞。仕方ない、ここは俺が穏便に納めるしか無いか……。

 

「お? お前さんが荷運びしてくれんのか?

 俺はイベンダー。

 科学者にして商人、そして探鉱者で運び屋で、砂漠の救世主だ」

「……は?」

 

 ……いやだからオッサン……。

 まあ、いいか。

 

「で、ヤレッド。他は居ないのか?」

「居ない。それに適任だろ?

 グレントはまだ若いが、トムヨイの方は戦力にもなる」

 そうつれなく答えるヤレッドの向こうから、妙にのんびりした声で現れるのは、ひょろ長い体躯で顔もまたひょろ長い男、トムヨイだ。


「おォ~、あんたー、アレかー。シャーシャシャーとかのとこのォ~……」

「シャーイダールだよ!」

 俺の代わりにアダンが突っ込んでくれる。

 

 こいつはグレントを助けた狩人集団の一人、「腕長トムヨイ」の異名を持つ男で、投石と槍投げの名手らしい。

 狩りに行くときは簡素な投げ槍を数本持ち、集団で大物狙いをして仕留めていく。

 鰐男やら大角羊(ビッグホーン)やら水牛やらと、たいていの獲物を投げ槍一本で仕留めてしまう。

 投石の方もたいしたもので、近場の対人戦ならそこらの石で済ませられるとか。

 魔術師や重装歩兵相手は厳しいが、砂漠に近いこのあたりで狩りをするなら、そんな相手に出会うことはほぼ無い。

 なんつうか、もし前世の現代社会に生まれていたら、大リーガーかオリンピックの金メダリストになっていたンじゃないか? とも思える逸話ばかり聞くが、どこまで本当かは俺にも分からねぇ。

 

「グレント~。雇ってくれる人に、失礼なこと言ったらー、だーめだよォ~」

 そう窘めるトムヨイだが、真剣に言ってるようには全く聞こえない。いや、しごく真面目に言ってるらしいンだけどな。

「あー、トムヨイ? あんた“腕長”トムヨイだよな?」

「うーん、そうだよォ~」

 右半分だけ長く伸ばした髪をかきあげながら、“腕長”トムヨイがそう答える。

「俺達……あー、俺はJB。

 俺達が募集してんのは、ただの荷運びだ。

 あんた程の狩りの名人じゃ、むしろ役不足だろ?」

「ウーン。けど、背に腹は代えられないしねー」

 

 ことの次第はこうだ。

 普段、彼等のチームは腕長トムヨイともう一人、猫獣人(バルーティ)のアティックの二人を中心とした数人のチームで狩りをしている。

 アティックは猫獣人(バルーティ)らしく身体能力は俺達人間を上回り、また隠密に優れ、曲刀や投げナイフも得意。

 小物はアティックが狩り、大物は腕長トムヨイが狙い、討ち洩らした相手と戦闘になればアティックの曲刀や他の面子とで囲って仕留める。

 大抵の獣、食べられる魔獣は、一度戦闘状態に入ると興奮して血が全身を巡るため、食材としては格が落ちる。血なまぐさくなるのだそうだ。

 なので出来るだけ一撃で、相手が殺されたことにも気付かぬくらいに仕留めるのが良い。

 後処理が上手ければそれなりになるらしいが、クトリア周辺は基本的にほぼ砂漠と荒野なので、そうそう落ち着いて解体や血抜き処理が出来る環境でもない。クトリア旧王都をぐるり囲むカロド河付近ならば血抜きもし易いが、そこはそこでまた危険もある。

 なので、腕長トムヨイの「大物を一撃で仕留められる投げ槍の腕」というのは実に重宝なのだ。

 

 で、先日の狩りの時、そのアティックが大怪我をした。

 水辺近くで鰐男を狩っていたところ、結構な数の岩蟹に囲まれたそうだ。

 この辺りの河川や湾には、鰐男を初めとして水棲の魔獣が少なくない。

 鰐男、と聞くと獣人の一種と思われがちだが、手足が長くパッと見人間ぽく見えるだけで、単なる鰐の変異した魔獣。

 岩蟹の方は個体によりやや差があるものの、基本は遠目にはただの大岩に見える塊のようで、獲物が近付くと立ち上がって襲いかかってくるでかくて凶暴な蟹。

 前面はやや弱いが、それでも甲羅の硬さはかなりのもので、人間の顔に似た頭部分以外に目立った弱点が無い。

 つまり、投げ槍の名手の腕長トムヨイにとっても、曲刀使いのアティックにとっても、なかなかやりにくい相手だ。

 

 本来、鰐男と岩蟹はそれぞれテリトリーが異なり、この双方と同時にやり合わねばならない状況はめったに無い。

 なんというか悪い偶然が重なったのか、結果アティック含め数人が怪我をして逃げ帰ることになる。

 何より手痛いのは、岩蟹に最も効果的な魔法攻撃の手段がそのときに無かったこと。

 理由は、彼等の集団のリーダーであり、東方人流の魔法を使えるティエジという男が不在だったことによる。

 東方人の方術師であるティジェは、そのとき妻と子が病気で寝込んで居たため、その看病に追われてた。

 つまり、不運の上に不運が重なり、病人を抱えている上さらに怪我人も増えた彼等は、手っ取り早く金を稼ぐ必要に迫られたのだという。

 けれどもティエジ不在でアティックや他の仲間も怪我をしたりその看病で動けない今、トムヨイとグレントだけで大物の狩りに行くのはリスクが大きい。

 他のサポートメンバーは皆グレントより若いか、狩りが得意でない者ばかり。

 なので取りあえず場つなぎとして日銭のもらえる仕事を探しにここに来ていたのだという。

 

「そりゃあ実に丁度良いなあ」

 これらの経緯を総括して、オッサンがそう言った。

「ああ!? てめ、どーゆー意味だ!?」

 グレントがそう突っかかるが、そりゃそうだろう。その言い方じゃあ病気や怪我という不運を良かったと言ってる風に受け取られても仕方ない。特にグレントみたいな単純バカには。

 

「荷運びが必要だと言ったが、アンタらが狩りの専門家ならなおさら好都合。

 報酬は二倍増しにして、ガイドも頼もう」

 オッサンはグレントには取り合わずにしれっとそう言う。

 

「おい、オッサン。何勝手に決めてんだよ?」

「だが必要だろ? 俺達は丁度良い狩り場も、手頃な獲物も知らないし、もとより経験もない。

 地下じゃ凄腕でも、地上じゃひよっこだ」

 俺含めた三人を見回し、やや聞こえよがしにそう言うオッサン。

 言ってることは一々ごもっともだが、何というか「お前が俺達を代表して言うな」感がある。

 

 ニキもアダンも俺と同様、或いはそれ以上にかんに障ったらしい。

「ひよっこ同然も何も、そもそもアンタこそ何なのよ?」

「そーだぜ。テメェなんざ地下に潜ったこともねえ、ただの修理屋じゃねえか!」

 “ハンマー”ガーディアンを倒したいきさつや、それら含めて「シャーイダールが高く評価したから」という嘘の理由から、オッサンは確かに一目は置かれているが、探索班として何度も地下で経験を積んでる二人からすれば、さっきの言い分は聞き捨てならない。

 

 しかしオッサン、今度は俺達三人をぐいと引き寄せつつ小声になり、

「いいか。人を上手く使う心得その1。

 単純で腕のある奴は、まずおだてて使え、だ。

 あいつらが気分良く働いてくれりゃあ、その分俺達が楽になる。

 俺たちの本領はあくまで地下だろ?

 無駄に手の内をさらす必要も無いしな」

 そう言ってニヤリ。……まったく、食えないオッサンだぜ。

 

 ◆ ◇ ◆

 

 結局俺達は、腕長トムヨイとグレントの二人を雇い、荷車を借りて荒野へと向かう。

 クトリアの周りの植生は殆どが荒野か礫砂漠で、所々まばらに茶色の草が生えるサバンナ地帯がある程度。

 道すがらオオトカゲや穴掘りネズミ等の小物を多少仕留めて行くが、本来の目的はそれじゃない。

 まずはトムヨイのガイドで、大物の中でも比較的楽な大角羊の群生地へ行く。

 大角羊はアメリカバイソンにも似た哺乳類で、もこもこの毛皮と、羊の様な曲がった大きな角が特徴だ。

 魔獣……魔力を得て凶暴化し、何らかの魔法的な能力を持つ獣、ではないが、攻撃をされたり、近づき過ぎたりするとその大きな角を利して突進攻撃をしてくる。

 その突進をまともに食らうと、ちょっとしたピックアップトラックに跳ねられたらくらいのダメージを負い、倒れたところにさらに追い討ちにと踏み潰しにかかってくる。

 草食だが、普通にクトリア周辺を旅するならば絶対に近くに寄るべきじゃない危険動物の筆頭だ。

 

 うまくすれば家畜化して飼うことも出来るらしいが、牛とは違って農作業や荷運びに使おうとしても、攻撃されてないときは物凄い怠け者で全く働かない。

 なので家畜としては、食肉、羊毛、毛皮、乳とその加工品目的に利用される。

 家畜化の最大の利点は、植物なら毒でも無ければたいてい食えるというところ。とげの生えたサボテンですら長い舌で上手にからめ取り、ペロリと食べてしまう悪食でもある。

 

「何でも食べるのに、美味しいものも好きでさー。サボテンフルーツが大好物なーんだよねェ~」

 岩陰から数頭の群れを確認するトムヨイ。

 大角羊の群れは基本的に家族単位で、バイソンのような大規模の群れにはならない。多分気性が荒すぎて、大集団に向かないンだろうってな話だ。

 ただし小さな群れが比較的近くに位置してたりはするので、迂闊な真似をすると大集団に追われるハメになる。


「じゃ、まーずは基本の狩りをしよっか~」

 ガイド兼狩りのコーチ、ということで、手本も依頼されたトムヨイの仕切りで狩りの開始。

 トムヨイを中心に半円状にそれぞれが位置取る。トムヨイのサイドには盾を持ったアダン。アダンも痩せてひょろりとした体格だが、トムヨイはその上頭一つ分近く高い。

 群れとの距離は約2アクト(約60m)程。

 トムヨイとグレントが共に投げ槍を投槍器にセットして構え、数歩の助走で一気に投げる。

 投槍器というのは、パッと見には大きな 1ペータ(約30cm弱)程の木製のスプーンみたいな見た目の道具。

 匙のような丸い窪みの部分に槍の石突き部分を引っ掛けて、反対の端を持ち、より勢いを加速させて投げる。

 その威力はかなりのもので、この投槍器で帝国兵の使う投げ槍を放てば、帝国重装歩兵の軽盾をも貫くことがあるらしい。

 

 トムヨイの使うのは帝国兵の投げ槍より質の劣る狩猟用の軽くて簡素な槍。

 投げた槍は寸分違わずに大角羊の肩口から深く突き刺さり、どうと倒れる。グレントのは外れ、地面にサクッと突き立った。

 おお、とどよめくのは俺達。

 いや、のんびりした物腰に反して、噂に違わぬ威力と精度だ。

 

「はいー、ま~だまだ行~くよォ~」

 立て続けに群れへと槍を投げ続ける二人。

 トムヨイの槍は8割りほど、グレントはそれでも半分は命中している。

 3頭程、致命傷にならずこちらへと走って来るが、それはニキのクロスボウやオッサンの例の籠手から発射される魔法の光線等々で、こちらへと来る前に打ち倒された。

 

「大角羊は体も大きいし毛皮が攻撃を緩和させるからな。

 普通に弓矢で攻撃するよりトムヨイの投げ槍の方が効くンだよ」

 グレントがどうだと言わんばかりの顔で言う。

 まあ確かに、あの大角羊のもこもこした毛皮では弓矢の威力も減るだろうし、突き刺さっても一矢で致命傷に……というのは難しそうだ。

 

 大小合計8頭の大角羊を狩り、グレント達に手早く後処理を頼む。

 もう完全にただの荷運びを超えた仕事をやらせているが、その辺りは獲物の半分を彼等に渡すことでオッサンは話を付けている。

 日雇い仕事で小銭を稼ぐつもりだった彼等にとって、この条件は願ったり叶ったりだった。

 

 この時点で獲物の総量は、既に荷車一台分では完全に載せきれないほどになっている。

 そしてトムヨイによると、状態や大きさで変わるものの、大角羊だけでもだいたい一頭につき金貨20~80の売値。

 つまりこの時点で俺達は、トムヨイ達に支払う分を除いても、金貨80~320枚ほどの収入は確保できたことになる。

 ちなみにオッサンの魔法の光線で攻撃したものには焼け焦げが出来てしまっている。その分はやや値段が下がるだろうとのことで、なるべく参加しない方向で狩りを続けることになった。

 

 ちなみに遺跡からの収集物はそのときどきにより変動が大きいが、一回の取引で、低いときは金貨100枚、多いときなら1000枚越えくらいの額になる。

 金貨100枚は俺達全員が最低限度(つまり、大ネズミ肉メイン)の食材で暮らすだけならば半年近くは暮らせる額だ。クトリア金貨は帝国金貨に比べて質も悪く価値が低いからな。

 勿論そんな最低限の生活を送るつもりはないので、実際にはもっと多くかかる。

 地下探索へ行ける体制が整うまでなら、トムヨイ達と共同で狩り仕事をするのも悪くないかもしれない。

 

 が。

「……なあ、オッサン」

 トムヨイ達が後処理をしている間にそう声をかける。

 オッサンは移動中にもサボテンフルーツを始め、色んな植物や虫やらを採集しては肩掛けに背負ったズタ袋に小分けして突っ込んでいた。シャーイダール……じゃなくてナップルの錬金用素材を採集しているつもりなのか、目に付いたものを手当たり次第だ。

「オオウ、何だ?」

「いや、このままだと俺の『シジュメルの翼』のテスト、出来ねーぞ?」

 

 そう、そもそも一番の目的は、実戦を踏まえた『シジュメルの翼』のテストで、狩りはそのついで。

 トムヨイ達に獲物を狩って貰ってはい帰宅、じゃあ意味が無いのだ。

 

 オッサンは一瞬、確かに「ん?」という顔をして、それから、

「あ、ああそうだな。よし、次はお前メインでのやり方を試してみようか」

 ……確実に「あ、忘れてた!」の顔してただろ、今!

 

 ◆ ◇ ◆

 

 やや小高い丘から広い河川を眺める位置に立つ。

 北にある山脈、“巨神の骨”から流れ出るカロド河は、俺たちの住むクトリア旧王都の北で大きく二股に分かれ、東西を挟む形で南下しウェスカトリ湾に至る。

 今居るのはその西側で、この広い河を越えて西へ向かうと荒野、サバンナから砂砂漠へと地形も変わる。

 そして何よりも、俺の生まれ故郷であった村があり、また今ではほぼ犬獣人(リカート)たちの勢力圏でもある。

 まあ勿論、河を渡ったら直ぐに敵地……てなワケではないが、ここを境界線として捉えて置く方が良い。

 

 で、今見ているのがそのカロド河の中洲がある広い場所。中州では鰐男が寝そべって呑気にひなたぼっこをしている。

 因みに鰐“男”というのはあくまで俗称で、本当に雄しか居ない訳じゃ無い。

 鰐男は全体には鰐の頭、胴、尻尾を持つんだが、両手両足は人間のそれに似て長い。

 こいつらの普段はこうやってゴロゴロしているが、獲物を見つけるとその長い四肢で素早く駆け寄ってくる。その辺りの習性もある意味岩蟹に似ている。

 ただ単にでかい草食動物である大角羊と異なり、鰐男も岩蟹も肉食の魔獣。

 岩蟹の甲羅は地属性魔力で強固になってるし、鰐男は口から風属性の衝撃波を吐く。

 

「よし、取りあえずアレで試してみるか?」

 しれっとそう言いやがるが、群れの数は8頭ほど。

 単純に頭数で負けているし、あいつらの尻尾と顎の大きさはそれだけでも脅威だ。

「簡単に言うなよ、オッサン」

 なんとも気楽に言ってくれる。

「そーだぜ。

 あんた自分でも言ってただろ?

 穴蔵鼠は地上じゃ素人なんだからよ。コイツに何が出来るってんだよ?」

 横からそう口を挟むのは当然グレント。

 コイツが脱走後の揉め事からのあれこれを引きずってるのは分かるが、それに一々付き合ってもいられない。

 

「はー? トムヨイはまだしも、ウチのJBがアンタ以下ってことは無いけどね」

「だな。いやいや、というか俺達だってお前以下ってことはぜってーねぇわ」

 その態度に苛ついていただろうニキとアダンがさらに口を挟む。

 売り言葉に買い言葉。不毛な言い合いにトムヨイがまたのんびりと割って入る。

「だーめだってばー。

 グレントー、一々突っかからないのォ~」

 ……トムヨイのこの妙~に間延びした口調は、実にいい具合に緊張感を削いでくれる。

 

「けーどー、何を試したいか分からないけど、鰐男は危険だよォ~。

 口からぶわん! って来るのが、結構意識持ってかれるからねェ~。

 無茶はしちゃダーメだよー」

 実際トムヨイの言うとおり、「口からぶわん!」の衝撃波は厄介だ。

 俺は腕を組んで鰐男の群れを見て、オッサンを見て、ニキとアダン、グレントとトムヨイを見る。


「まァ、やるしかねーな……」

 俺は精神を集中しシジュメルへの祈りを唱えつつ、入れ墨を通して全身に……それから背中に背負った“シジュメルの翼”へと風の魔力を通して行く。

 背負った魔術具の“シジュメルの翼”から短い金属の翼が左右に伸び、そこからさらに魔力の翼が現れ……ふわりとした浮遊感。

 ゆっくりとした上昇の後に、魔力の流れをコントロールし指向性を持たせると、すうっと滑空するように飛んでいく。

 標的は、中洲にたむろする鰐男達だ。

 目標を定め、一気に加速したそのとき───。

 

「いやー! やめてアカンて~~~!!」

 

 イマイチ真剣味のなさそうな悲鳴が遠くから聞こえてきた。




 次回、「JB、大河に死す!」

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