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遠くて近きルナプレール ~転生獣人と復讐ロードと~  作者: ヘボラヤーナ・キョリンスキー
第二章 迷宮都市の救世主たち ~ドキ!? 転生者だらけの迷宮都市では、奴隷ハーレムも最強チート無双も何でもアリの大運動会!? ~
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2-9.J.B.(6)Get up and get down.(立ち上がれ! あ、ゴメンやっぱ伏せて)


 

 魔法による攻撃、というのを受けるのは久しぶりだ。

 俺が潜っていた古代ドワーフ遺跡には、罠や蜘蛛型、犬型などの低級のゴーレムは出てきても、魔法で攻撃してくるものは居なかった。

 久しぶりの魔法攻撃に一瞬意識が止まっちまうが、即座に入れ墨へと魔力を通して守りを固めようとして───いつもと感覚が違うのに気付く。

 そう、さっきマルクレイに背負わされた例の遺物にも、魔力が通っていく感触がした。

 ドワーフ合金は通常、良いものだろうと悪いものだろうと、その表面である程度の魔力を弾いてしまう。となるとこれは全てがドワーフ合金製なのではなく、魔力を通し易いミスリル銀なども使われているのかもしれない……なんてことを考えてるヒマは無かった!

 

 衝撃を受けて身体が後ろに吹き飛ぶ。

 作業場から廊下、そしてそのまま吹き抜けの手擦りに背中を打ちつけて仰け反り、一瞬空中に浮かんだ浮遊感から、勢いのまま自由落下に入る。

 

「おーい、鳥だ! 鳥のイメージ!」

 

 大声でオッサンが叫んだのを聞き、糞てめェ後で絶対ぶん殴る! という決意と共に、脳裏に浮かぶ鳥のイメージ。

 浮かべるのは隼───砂嵐のシジュメル神の姿でもあり御使いでもある神聖なる存在。

 

 吹き抜けから落ちて、階下の床へと叩きつけられることを予想していたハズが───気がつけばゆったりとした風の中に浮かんでいる。

 は?

 目を開けて辺りを見回すと鋭い叫び───。

 

「後ろだ、JB!」

 

 ゴン!

 

 背後から鉄の塊で強かにぶん殴られた感覚に、再び吹っ飛ばされる俺。

 

 今度こそは勢いも止まらず食堂のテーブルに叩きつけられ、バウンドしさらに壁……に、叩きつけられる前に体勢をひねってダメージを軽減。

 同時に羽根を広げて───羽根?


「おおぉうわ!? な、なんじゃあこりゃぁぁあああ!!??」

 

 そこでようやく、自分の有様に気づく。

 

 俺の背中から金属製の短い羽根が生え、さらにはその先に魔力で作られたであろう長い無数の羽が伸びていた。

 いや、厳密には俺の背中から生えているんじゃあない。俺が背負わされた遺物から生えているのだ。

 さらにはその遺物の上からは丁度隼の頭をイメージさせる飾りが伸びて、それが頭部を覆って兜のようになっているし、下の方からはまるでジェットパックのように風が噴出されて、ホバリング状態を維持している。

 つまり、どういう状態か?

 

 空中に浮いているのだ。

 

 再び巨大な金属の塊が俺に突っ込んで来るが、バランスをとって身体をひねり回避。その金属の塊───ドワーベンガーディアンの両手部分に相当する巨大なドワーフ合金製の戦鎚(ハンマー)は、食堂ホールの石の円柱に叩きつけられる。

 

「よーし、良いぞJB!

 次はもっと、空気の流れを意識して、羽根を自分の身体の一部だと思いながら “飛ぶ”イメージを作るんだ!」

 

 上階、吹き抜けホールの手擦りから顔を見せて、オッサンが嬉しそうに指示を出す。

 くっそ、何だよ楽しそうだな!

 

 腹は立つが、オッサンの改修したシロモノだ。今は言うとおりにするしかない。

 俺は隼をイメージしながら、身体を前傾姿勢にする。

 そして左右の手を広げ、それに連動して羽根をも広げると、後方へとジェットを噴射。

 勢いこんでハイスピードのジェット推進に慌てるが、壁にぶつかるより先にバランスを右へと傾け反転する。

 さほど広いとは言えない食堂ホールでは、そんなにスピード出しては飛び回れない。

 俺がイメージの中の鳥の速度を下げていくと、緩やかな滑空状態でドワーベン・ガーディアンの周りをぐるぐると飛び回る。

 

 飛んでる。

 おおう、飛んでるわ、俺!

「マジかよ!? おいおいおい、マ~~ジかよ、これ~~~~!?」

 周りの様子がだんだんはっきり分かる。

 

 真ん中に、俺を追おうとして追いきれずにぐるぐる回り続けるドワーベン・ガーディアン。

 高さ1パーカ(3メートル弱)程度のそれは、上級の下に当たるハンマー・ガーディアンだ。

 食堂ホールは、テーブルや椅子が倒され、柱の陰には何人もの姿。

 一つの陰にはブルが居て、飛び回る俺とドワーベンガーディアンを交互に見ながら驚いた顔をしてる。

 

 蜘蛛型の低級ゴーレムも居た様だが、それらは既に仲間達に粉砕されて、その残骸が散らばっている。

 上階には犠牲者の姿もあったが、この食堂ホールには無い。数人、怪我をしている者は見られるが、それも致命的ではなさそうだ。

 恐らくは柱と倒れたテーブル等を巧く使い、逃げと攪乱に徹して居たんだろうな。

 或いはわざとテーブルを倒して、ハンマー・ガーディアンの動きを阻害する作戦だったか? ブル自身は戦闘能力に乏しいが、その手の立ち回りに関しては知恵が回る。

 

 と、そんなことを考えつつも、次第にこの羽根での飛行に慣れてきた。

 基本は入れ墨に魔力を通してシジュメル神の加護を得るときと変わらない。

 違うのは身体の一部としての新たなパーツ、背中の羽根があることだ。

 

 俺の動きに追い付けず右往左往している“ハンマー”を見て、自由に飛び回る感覚に慣れ始めると、次第に腹の底から別の感覚が沸いてくる。

 これは、そう───最高にハイって奴だ!

 

「イィィ~~~ヤッフゥオ~~~~~!!

 飛んでるぜ、オイ! 俺ァ飛んでるぜェ~~~!?」

「バカ、お前ちゃ……」

 

 ブルの声が終わる前に、俺は食堂ホールの円柱の一つに頭から突っ込んでバランスを崩し、錐揉み状態で落下した。

 

「痛ェエエエェェ~~!!」

 糞痛ェ!!

 ……と、いや?

 そんなに痛くはねェぞ。

 俺は入れ墨に魔力を通すことで身体の回りにシジュメル神の加護として、薄い空気の膜を貼れる。つまり魔力による防壁だ。

 だが俺の魔力はそう多くもないし、この入れ墨による加護もそんなに強力じゃない。

 せいぜい、皮の鎧を着ている程度……の、ハズだ。

 

 ハンマー・ガーディアンの戦鎚が振り下ろされるのを転がって避ける。

 避けてすぐに、再び魔力を羽根に通して飛び上がる。

 

 そうだ、これだ。

 この背中の遺物を一度経由することで、魔力の守りが増幅されているんだ。

 

 考えてみりゃあ、俺程度の魔力でこんな空中浮遊みたいな魔法を使える魔術具を動かせている時点でおかしい。

 この背中の遺物は、さほど多くない魔力でより多くの効果を得られる何らかの仕掛けが施されているんだろう。

 

 さーて、さっきは浮かれてしくじった。

 今度はきちっと、coolに決めるぜ?

 

 とは言うものの、飛び回れて回避能力は上がってるし防御も増してるが、今の俺は攻撃の決め手が無え。

 さてどうする?

 考えてるところの横合いから、魔法の閃光が放たれる。

 

「よーし、JB、次は下にそいつを誘導するぞ」

 例の篭手から魔力の閃光を発射してハンマー・ガーディアンを牽制しつつ、いつの間にか食堂ホールまで降りてきたオッサンが言う。

「オッサン、その変な篭手の魔法で仕留められねーのか!?」

「こいつはまだ調整中だし、そもそもドワーフ合金製ゴーレムは魔法だけで仕留めるのは難しいだろ?」

「くそ、もっともなこと言いやがって!

 で、何だ? 下ァ!?」

「そうだ。例の俺の部屋、だ」

 

 オッサンと、ピクシーの部屋……というかまあ、牢獄?

 成る程、そういうことか。

 

 オッサンは一旦攻撃を止めて柱の陰に隠れる。

 その脇をすり抜けて、今度は俺がハンマー・ガーディアンの注意を引く。

 ぐるぐると回りつつも、奴をホールの一方、さらなる地下階への入り口へと誘導。

 確実にこちらへ気を引けている事を確認し、

「よし、行くぞオッサン!」

 そう声をかけてから階段を飛んで降りる。

 

 あのオッサンの部屋aka.牢獄へと連れ込んで、ピクシーの籠を素早く取ってハンマー・ガーディアンを残し外へ出る。

 それから牢獄の扉、そして落とし格子を使って閉じ込める。

 アジト入り口の鉄扉をぶち壊されてる以上、閉じ込めてもそう長くは保たないだろうが、今生きてる全員が逃げ出すか、シャーイダールが何等かの対処をする時間は作れるだろう。

 ……というか、そういえばシャーイダールは何処にいるンだ?

 

 考えつつ進むと、目の前にはオッサンの部屋。

 入り口には通常のドアと外からのレバー仕掛けのドワーフ合金製の落とし格子の2つがついてて、丁度今はそのどちらも開いている。

 よっしゃ、これなら余裕あるな、と思って背後を確認すると……、

 

 狭い階段をヨタヨタ歩くハンマー・ガーディアン。

 その背後に篭手を構えるオッサン。

 魔力を帯びて輝き出す篭手の先───、

 

「お、ちょまて、オッサ……!?」

 

 ハンマー・ガーディアンの背中を二本の光線が直撃。

 ただでさえ危うげだったハンマー・ガーディアンは完全にバランスを崩して転倒落下、そのままゴロンゴロンと勢い良く転がって───、

「ざっけんなバカやろう!!!」

 高速で飛んで全力回避! 

 

 俺は扉のアーチをくぐって正面の壁に激突。

 速度を上げると共に空気の守りを強くするイメージを高めたこともあり、衝撃のわりにダメージは多くないか。

 しかしそれでもコントロールは失い地面には落下する。

 何か下に柔らかいものがあったおかげもあり、起き上がるのにやや時間がかかったものの、なんとか周りを確認。

 ハンマー・ガーディアンは丁度扉の所に挟まるような形で転がって居て、しかし直ぐにもバランスを取り戻し起きあがりそうだ。

 

 くそ、とにかくはあのピクシーの籠を……と思って居ると、どん、と階上から勢い良く飛び降りてくるオッサン。

「よーし、丁度良いところに落ちたな」

 言いつつ、オッサンは扉の外の、ドワーフ合金製の落とし格子を作動させるレバーを下ろし───、

「……あ」

 その落とし格子の尖った先端が、その下で倒れているハンマー・ガーディアンを、串刺しにした。

 

 やや呆然としてそれを見ている俺。

 とは言えそれだけで完全に作動停止するワケがない。

 未だにもがき立ち上がろうとするハンマー・ガーディアンをオッサンが指し示しつつ、

「おーうい、良いぞ来てくれーい」

 上に向かって叫ぶ。

 応じてぞろぞろと、マルクレイやブル他、まだ動ける仲間達が、手に手にやはりドワーフ合金製の戦鎚、つるはし、斧、メイス等々を持って、

「せーーーの……」

 と、完全に動きが止まるよう、ぶち壊した。

 

 レバー仕掛けを上げて、落とし格子が上がって行く。

「おい、大丈夫か、JB!?」

 残骸を乗り越え走り寄ってくるブルだが、小人故の足の短さもありむしろ危なっかしく見える。

「あー、俺は無事。

 てか……お前らどうだよ」

 何人か既に動けない、大怪我を負っている、死んでるだろう奴らが居たのも確認してるし、どれだけの被害があったのか。

 動ける奴らもそのことを考えて居るのか、喜びや安心の色もあるものの、間をおかずに上へと戻りそれら被害の確認に急いだ。


 オッサンはハンマー・ガーディアンの残骸を弄くり回し、中からパーツを取り出しつつこちらを見て、

「初めてにしちゃあ巧くいったな~」

 と、気楽なもんだ。

「おう、そうだオッサン!

 てめーいきなり魔法ぶっ放ちやがってコノヤロ何しやが……」

「フギィ!!!」

 

 立ち上がろうと力強く床に手をついたところ、俺の身体の下から奇妙な鳴き声がする。

 ……ん?

 そう言えば、何か柔らかいものに乗っかった気が……。

「あーーー!?

 そうだ、ピクシーだ!!!

 無事か、あいつ!? まさか俺が踏んづけちまッたりなんかして無いよな!!??」

「あら、チリチリのくせに、アタシのこと心配してくれてンだ?

 えっへっへー。やっぱアタシってばチョー愛され系よねー?」

 俺の顔の丁度横にふわふわ浮かぶピクシーのご満悦顔に、かなりイラッとしたので取りあえず頭突き。

 

「……っとォ!? あーにすっだよォ、チリチリもんがー!!??」

 何だよもんがーって。

 目の端に、床に転がりひしゃげて壊れた例の籠が見える。うん、俺が壊したな、こりゃ……。

 

 ピクシーが無事でまず一安心、と息を吐くが、となるとこの下にあるものは……?

 見ると、黒いローブに……木の仮面。

 仮面は持ち主の顔から外れて床に転がっており、黒ローブ姿の“誰か”が、俺の下敷きになっているという、こと、は……?


「お、おい、JB……、そ、そいつは……」

 青ざめる俺にそう声をかけるブル。

 皆まで、皆まで言うな、とうなだれるが、周りの反応がちとおかしい。

 恐れ、おののき、畏怖……ではない。

 

「何だ、そいつは……?」

 視線を回すと、そこには毛のない犬だかネズミだかモグラだか、よく分からないよーな顔をした、子供ほどの体格の小さな生き物が居た。

 

 何だ、こいつは……?

 


 



 最高にハイ! 飛びます、飛びます!



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