2-7.ピクシーのピート「チョーーー暇なんですけど!」
ここんとこアタクシことピートちゃんは、けっこうゴフマンなのですよ?
え? 何故かって?
それはね、チョーーー暇だから!
本当、チョーーー暇なんですけど!
ちょっと前にさ。ちっこい髭もじゃもじゃをアタシの魔法の粉で、パタヘロパタヘロしながら治療して助けてやった、てことあったじゃん?
もうパタパター、って粉撒いて、ヘロヘローって疲れて。
そんでまた、パタパター、の、ヘロヘロー、で。
んで、そいつがさ。
まあ、意識取り戻して何か変なこと言っててさ。
見張り役のチリチリ頭と何故か意気投合してさ。
そんで、そいつは髭剃って髭もじゃもじゃから髭もさもさになってさ。
その後は毎日、何かこの部屋から外に出てって、どっかで何かやっててさ。
んで、戻ってきて湯浴みして寝てさ。
んで、起きたらまたどこか行ってさ。
……て、全然このピートちゃんのこと構ってくれないのよ!?
分かる!? こんなに愛らしくて素敵なピクシーのピートちゃんのことを、基本ほぼガン無視よ!?
チリチリ頭の方も、髭もさもさの方に行ったり、外に行ったりばっかししてて、全然アタシのこと構わなくなるしさ!
どゆこと!?
何か、チョーーー、セキニンシャ出てこい、って感じ!?
なーんて、ぷんがぷんがとフンガイしてたらさ。
来たのよ。セキニンシャ。
つまり、あの変態親玉。
真っ黒黒布でヘンテコ仮面被ってる、サンゾクか何かのヤバンジン親玉!
変態仮面親玉は、定期的にアタシのところにきて魔法の粉を取っていくのよね。
カゴの外から手だけ突っ込んできて、哀れなピートちゃんをこねくりこねくりして、羽根の鱗粉を落とさせようとするの。
別にそんなことしなくたッて落とせるのにさ!
だからアイツはきっと変態なのよ! モテアソビのナグサミモノよ!
「ニシシシシ……」
って、変態笑いしながら、アタシの入れられた籠の置いてある部屋に入ってくる変態親玉。
もう、チョーーー気持ちワルい!
「おまいを手に入れてから、ホントーに良いことばかりなのね」
変態親玉がさも嬉しそうにそんなこと言ってくるの。
そりゃそーよ! ピクシーは幸運の運び手なのよ!
ていうかこの変態親玉、手下が居るときと居ないときで何か態度違うのよね。
ひとりでアタシの鱗粉取りにくるときって、いつもの10倍はバカっぽいの。
何であの手下達がこんなバカっぽいのを怖がってんのか、チョーーー分かんないんだけどさ!
でもね、ちょっと思い出したことがあるの。
主サマが前に言ってたんだけど、ゲンワク系統の魔法に、“イアツ”……? ってーのがあるらしーのよね。
で、それを使われると、チョーーーその術者がコワークなっちゃうんだって!
イアツってーのをムイシキに使えたり、ムジョーケンに使いっぱな奴とか居るらしーし、あとドラゴンやジンローの吠え声とかは、それのチョーーー強い版の“キョーフ”とか“キョーコー”とかいう効果あるらしーのよね。
まあ、誰もが愛さざるを得ないよーなピートちゃんは、そんな魔法使う必要全然無いんだけど?
それ、思い出して、アタシ思ったのね。
メータンテーのピートちゃんは、真実を悟っちゃったのよ。
ははーん、コイツ、“イアツ”使ってんな? って。
知ってる? 真実って常に1つ、らしいのよ?
何かケチ臭いわよね。
もっと沢山くれても良いのに!
けどそれで考えると、アヤシーとこもあんのよね。
コイツがアタシのこと触って来るとき感じるンだけど、コイツ、チョーーー魔力少ないの!
ヨワヨワのヘボヘボよ?
そんな、ジョージ、“イアツ”のゲンワク魔法使える程の魔力なんて、絶対無さそーなの!
うーん、てね。
うーん、なーんか妙だなー、変だなー、おかしいなー……って、チョーーー思うの。
でも、アタシ達ピクシーは、光と風の魔力の恩恵を受けてて、その手の弱めのセイシンソウサのゲンワク魔法とか効かないから、多分そんなんやってんのよ。間違いない!
んでね。
そのときもまた、変態親玉がアタシの身体をこねくりこねくり回してそんなこと言っててさ。
「ニシシシシ。
おまいから出る魔法の粉に、あのドワーフが直す魔法遺物で、これからもじゃんじゃんお金を稼ぐのね」
とか!
アレよ、知ってるのよ。
変態はね、お風呂の中に沢山金貨とか銀貨とかキラキラするもの入れて、その中に裸で入るのが好きなのよね。
そんで、その横に二人、女の人を寝かせるのよ!
やっぱ変態の考えることって、よく分かんない!
そんで、変態親玉が、駕籠の下のところから粉を取り出したりしていると、手下が大騒ぎしながら入ってくるの。
「シャ、ヒャ、ハーイダールはま、たいへぶれふ!」
って!
ビクッ! とかして驚いた変態親玉が、
「狼狽えるな、何事だ!?」
って。
いつも思うけど、話し方だけじゃなくて声とかも変わるから、ちょっと凄いわよね。
「は、はい、ひ、その……ジ、ジョスの野郎が、も、戻ってきて、今回、動かなくなったドワーベンガーディアンを、数体回収して、来たんですが……」
「ふん……それは悪くない成果だが……大騒ぎするようなことでもあるまい」
ドワーベンガーディアンっていうのは、古代ドワーフの造ったゴーレムね。知ってるのよ、アタシ、ハクラク……ハクガ……ガクだから!
フツーのゴーレムと違うのは、本体がドワーフ合金のからくり人形になってるから、動きが凄くスムーズで普通のゴーレムよりかは素早いってこと。でも普通の人間よりちょっと遅いけどね。
「へい、で、ですがそれ、その……何でか分かんねェんですが、狂乱状態で再起動しやして……」
あ、コレも知ってる! あのね、周りの動くものはぜーんぶぶっ壊しちゃう、っていう状態のことなの! ふふん、凄いでしょ?
ここへ来て、変態親玉が、ぴぎゃっ! って驚いて、
「け、警備は、何をしとる!?」
「なんとか、応戦してやすが、その、あっしらじゃとてもかないそうになくて……シャーイダール様の魔術で……」
えー? それ、絶対無理だと思うけどなー?
そう言われて、変態親玉はチョーーー焦ってる。
チョー、チョーー、チョーーー焦ってる。
そりゃそーよねー。アタシも良く知らないけど、ドワーベンガーディアンって、チョーーー強いらしいし。
そもそもドワーフ合金は魔法への抵抗力が強いし、ふつーに鉄より硬いし、この変態親玉じゃどー見ても勝てないもん。
変態親玉はハァハァ言いながらウロウロ狼狽えてて、手下はそれをハラハラして見てるの。
そうしてる間にも扉の向こうからは悲鳴とか怒声とか、わーーーきゃーーー、どかーーーん! みたいな音とか聞こえてきてて、あー、コレでこのサンゾク連中もオシマイね、めでたしめでたしね、とか、思ってたのね。
そしたら、変態親玉は何かをケツイしたみたいに、ばっ! と立ち止まって、
「分かった。しかしドワーベンガーディアン相手には強力な術が必要で、そのための準備に時間がかかる。
お前達はドワーベンガーディアンを食堂におびき寄せて、そこで時間を稼げ。
いいか、我が行くまで、決して逃げ出すのでは無いぞ……!!」
とか、手下に向かって言ってるの。
手下は何かもう縮こまっちゃってさ!
ドワーベンガーディアンも怖いし、変態親玉も怖いし、みたいな顔して、
「は、は、はいっ!!」
って。そんでピューーー! って。走ってったの。
で、アタシもちょっとビックリしたワケ。
「えーーー?
ちょっとアンタ、変態親玉のくせにそんな凄い呪文持ってたの?
チョーーー信じられないンですけどー!?」
って、言ったのね。
そしたら、変態親玉。
アタシの入ったカゴをがしっと持ってね。
「フ、フフフ……。
そんなもん、あるワケ無いのね」
とか笑い出しだの!!
何それちょっと、ゼンゼン意味分かんないし!
「フ、フフ、フ。
おまいさえ居れば、いくらでも再起出来るのね。
ここは捨てるには惜しいが……手下共にドワーベンガーディアンが倒せそうになかったら、隠し通路を抜けて逃げ出すのね……」
とか! 言ってるの!
それ、知ってる!
ステゴマ、って言うんでしょ? たしか。




