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遠くて近きルナプレール ~転生獣人と復讐ロードと~  作者: ヘボラヤーナ・キョリンスキー
第二章 迷宮都市の救世主たち ~ドキ!? 転生者だらけの迷宮都市では、奴隷ハーレムも最強チート無双も何でもアリの大運動会!? ~
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2-6.J.B.(4)Money in my Pocke.(ポケットの中のお金稼ぎ)


 クトリアが迷宮都市と呼ばれているのには、ただ地下に迷宮の如き複雑さを持つ古代ドワーフの地下都市遺跡があるからだけじゃあない。

 地表にあるクトリア王朝期の都市そのものが、無計画で乱雑な増築に次ぐ増築で、一部迷宮のように複雑化しているのも理由の一つ。

 で、そん中でも、元々きちんと造られていた辺りは、破損具合もそんなに無くそのままでも住める程度の状態で、シャロンファミリーの酒場『牛追い酒場』も、ヴァンノーニファミリーの『銀の輝き』も、そういった地区にある。

 その次にましなところは、多少の補強、修理で住める状態になっている。ここいらにはそれなりの人脈のある身内同士でグループを作った連中が住み着いてる。

 で、あとはがれきの山みてーなところで、そこは多くは身よりもなく頼るものもなければ、当然金も力も無い連中が住み着いてる。

 

「おうコラ糞ガキ共、てめーら生きてっか?」

 そういう「一応雨風はしのげる程度のがれきの山を元にした小屋らしきもの」の所へと行くと、俺を見たガキどもがわっと群がってくる。

 人気者だなって? 違う違う。こいつらの目当ては俺が持ってくる土産の方だ。

 群がるガキ共を払いのけつつ小屋の中に入り、その奥のボロ布のカーテンを開け、そこからさらに隠し扉を開いて地下へと向かう。

 地下の一室には、そこそこ年長のガキが数人座っている。

「暫くぶりじゃねえかよ」

 見るなりそう毒づいてくるのは、全身包帯まみれで、痩せて歪な体つきのジャンヌだ。

「うるせえな。こっちも色々あンだよ」

「イカれ邪術士にケツを貸すのに忙しいッてか?」

「抜かせ」

 別に喧嘩してるワケじゃあねえぞ。挨拶みてーなもんだ。

 

 こいつらは孤児のグループの一つ。

 それぞれ色んな事情で親を亡くして、他に頼れる身よりもなくなった連中だ。

 ジャンヌをリーダーとするこの集団は、俺がこの街に来たばかりの頃に故合って縁が出来た。

 数ヶ月ほど共に行動して居たりもしたが、その後俺がシャーイダールの元で働けるようになってからはここを離れた。

 その後も、月に2~3回くらいは顔を出して土産なんぞをくれてやってるが、ここんとこ例のオッサン絡みでついぞ顔を出せて居ない。

 

 よくあるフィクションなんぞじゃあ、如何にも可愛らしく素直で純真な子供らに囲まれたりするんだろうが、実際にはそんなことはない。

 どいつもこいつも臭ェし汚ェし、またたいてい不細工な糞ガキばっかりだ。

 何故かと言えば当たり前な話で、そこそこ見た目の良いガキならとっくに大人に連れて行かれているからだ。

 単純に、性的な目的やら何やらで、見た目の良いガキには“需要”がある。

 また直接的な虐待や暴行を求めて無くッても、奴隷や孤児等の「絶対的な力の不均衡を前提に、無力だが見た目の良い相手を精神的、経済的、身体的に依存させ、支配する」というのは、ある種の手合いには麻薬のように魅力的シチュエーションだ。

 いずれにせよ、連れて行かれれば多くは喰うには困らない生活を得られる可能性がある。

 ただしそれが、がれきの山で大ネズミを奪い合う生活に比べて幸せかどうかは、誰にも分からない。

 何にせよ、ここに残ってるのはそういう意味で「大人にとって何の利用価値もない」とされ、完全に見放されたガキ共ばかり。

 因みに包帯を取ったジャンヌが実は美少女だった、なんてことは一切なく、団子鼻で口がデカくて目が小さい、なんつーか、アレ。コアラみてーな面白い顔をしている。

 

「ガキ共によ、調べものしてもらいに来たわ」

 その不細工で汚ェガキ共の中のトップランカーのジャンヌの前に座って、単刀直入にそう切り出す。

「ケッ! てめェが他の用事で来た事あンのかよ?」

「ねェな」

「さっさと用件言え、ボケが」

 繰り返すが、別に喧嘩をしているワケじゃあない。

 

 俺は渡されたリストをジャンヌに見せて、

「こいつらの今の居場所と、弱みや人間関係諸々、分かること全部かき集めてくれ」

 そう言った。

「報酬は?」

 リストを睨みながら聞いてくるジャンヌに、

「お前に銀貨3。ガキ共には大トカゲの串焼き。それとこいつだ」

 袋から取り出すのは樹液の固まり。結構希少な“甘味料”だ。

 本当はこれを更に精製していくと、混じりっ気のない綺麗な砂糖になるが、そんな贅沢なものは屋台では買えない。

 ジャンヌに渡す銀貨3枚に串焼きと甘味を合わせれば、合計銀貨8枚くらいの“投資”になる。

 これで誰からも回収出来なかったら、大赤字になるぜ。

 

 ジャンヌは了承して周りに居た連中にリストを読ませる。それからリストを見た連中が、ささっと素早く部屋を出ていく。

 地下の小部屋には俺とジャンヌだけが残された。

 しばしの沈黙。

 後は連中が情報を持ってくるのを待つしか無く、やや手持ち無沙汰ではある。

 しかしこうなると特にジャンヌと話すことも無いので、ただ退屈な時間だけが過ぎる。


「最近……」

 不意に、ジャンヌがそう話し掛けてくる。

「おう」

「どうなんだよ」

「ああ? ま、悪くねェな。ぼちぼちだよ」

「イカれ邪術士の方はどーなんだよ。

 おめぇみてーなのは、変な儀式の生贄とかにされんじゃねえのか?」

「あー、あいつはそんなんでもねェよ。

 周りで思われてる程無茶苦茶なことしねえしな」

「……随分、信用してンだな」

「ハッ! 馬鹿言え、そんなんじゃねェよ」

「てめェが奴にビビって逃げ出して来ても、もうてめェの寝床は無ェかんな」

「いいよ。俺一人の事なんかどーとでもなるわ」

「アタシの足舐めてお願いしてきたら、匿ってやんねーでもねえぜ」

「抜かせ」

 まあ実際、こいつらの世話をしてやるのならまだしも、今更世話になろうなんてつもりはさらさら無い。

 

「……聞いた話、なんだがよ」

 少しだけ言い淀むような沈黙があり、それから再び話を紡ぐ。

「シャーイダールを狙ってる奴が居るらしいぞ」

「ハァ? おい、そりゃどこ情報だよ?」

「噂だよ、噂」

「あのシャーイダールだぞ? クトリア王朝期からしぶとく生き残っているダークエルフの邪術士の?」

 誰がそんな危ねー相手に喧嘩を売ろうってーんだ?

「……あのな。出所のハッキリしねー、噂でしかねえんだけどな。

 曰く、“今のシャーイダールは偽物だ”ってー話らしいんだよ」

「何だッて?」

「だーかーらー、噂だよ、噂。

 そういう風に言ってる奴が居て、そいつか、それを真に受けた奴が、もしかしたら狙ってるのかもしんねえ……だろ?」

 ううむ、と考える。

 確かに、いつも仮面を被っている事は知られているし、そこからすれば確かに偽物かも知れない、という疑念も分からなくはない。

 だが俺は身近に奴を見ている。

 魔法を使うところも、錬金術で様々な薬を作ってるのも知っている。

 それに何よりもあの威圧感……。

 側にいるだけでケツの穴がキュッと縮むみてえな緊張感。

 あれが偽物の出す空気とは、とうてい思えない。

「はァ……ま、誰だか知らねえが、そんな噂を真に受けて突っ込んで来れば、命が幾つあっても足らねえぞ」

 俺はやれやれ、と言うかのようにして手を振る。

 手を振ると同時に、情報を持ち帰って来た一人が部屋へと素早く入ってきた。

 

 ◆ ◇ ◆


「ヨー、ミスター、お支払いの時間だぜ?

 あんた商業地区じゃ一等地とも言えるこんな所に家を持てるなんてたいしたもんだな。

 嫁さんの親父が、結構な顔役らしいじゃねえのよ。

 けどその親父さんが、アンタの借金の理由が夜のお楽しみで、しかも坊やに後ろのドアをノックしてもらうことだと知ったら……お、悪いね。全額返済終了ですな」

「おいこら、てめェシャロンファミリーのバックが誰か分かっててシラ切ってやがんのか? ああ?」

「てめェ最近孤児のガキ共に色目使ってるらしいな? 何かコトが起きたら、てめェの汚ェ息子チョン切ってケツの穴に突っ込んでやるぞ」

「ああ、知ってるぜサラディーノ、あんた程イカした伊達男はここらにゃあ居ねェさ。

 けど、その評判にちと傷がついちまってるぜ? アイツは借金踏み倒すようなしみったれ野郎だ、ってな。

 おいおい、分かってるよ、俺はよ。アンタはそンなセコい男じゃねえ。けど、世間はそうは思わないんだよなァ」

 

 ガキ共の情報を元に、正確な居場所を特定した後は、それぞれの相手に応じたやり方で8人ほどから回収出来た。

 今の段階で回収金は金貨にして54枚ほど。

 これは大ネズミ肉の串焼きを一万本は買える額だ。

 シャロン金融はえぐゥおまっせー!

 で、その中から2割となれば……金貨11の銀貨2枚。その半分を口止め料に渡して金貨5枚と銀貨6枚。

 これだって大ネズミ肉の串焼きを1000本は買える。いや、買わねェけど!

 もっとマシなもので換算するなら、『牛追い酒場』で、そこそこの飯と酒を10食は頼める。

 まあ、1日の小遣い稼ぎとしちゃあ、全然悪く無い。

 

 で、ラスト。

 一番の大物が残ってる。

 大物、ってのは金額が、ではない。

 地位、権力……というと、それもやや違う。

 まあ社会的地位はあるンだが、一番は……体型かな。

 

 雌牛程の体格をぶるんぶるん揺らしながら、イゾッタ・ディ・カニオ婦人はさめざめと泣いた。

 さめざめと、だぜ? さめざめと。

「返せ……と申されましても、御存知のようにワタクシにはもう何も御座いませんわ。事業は全て破産しましたし、宝飾品も何もかも持っていかれましたもの……」

 と、同情を引くかに泣き出すのだが、残念なことにそのたくましい体格がそれを邪魔している。

 まあ、事前に集めた情報からも、この婦人が既に破産していることは分かっていたし、彼女は王国駐屯軍の仲介で家を売却した後、此処を引き払い転送門で帰国することになっている。

 その売却益も諸々の手続きや王国への支払いでほぼ消える。

 一介の酒場が借金を取り立てるのには、やや無理がある。

 しかもその借金額というのが、たったの金貨4枚。

 いや、勿論俺たち程度の者からすればそこそこの金額だ。

 しかし『牛追い酒場』としては、そうたいした額でもない。

 

 既に売却が決まっている家のテラスで、雌牛のような体格の婦人がさめざめと泣いている絵面は、悲しいと言うより滑稽でもあったが、さてどうしたものか。

 クトリアの家は基本的には日干しレンガに漆喰で造られる。

 その赤茶けた家の色合いに、夕暮れの空気の醸し出す寂寥感が、また見事なまでにその巨大とのコントラストを作っている。

 

「婦人……まあ、事情は聞いてますよ、こっちもね。

 種が無ければ耕したところで収穫はない。そりゃ道理でさあな」

 ここで一旦、言葉を切る。

 しばしの沈黙。

「けどねえ、俺がここで帰ったところで、次の奴が来るだけなんですよ。

 しかもおそらく次は……姪ごさんの所にね」

 ビクリ、と、雌牛の肩が震えた。

 先程までの嘘泣きではなく、本心からの驚愕で。

「め、あ、あの、あの娘は、関係ありませんわ!?」

「いや、そらね。俺だってそう思いますがね。

 けど、ご婦人が姪ごさんの所に身を寄せる以上、次の奴はそこまで行きますよ、ええ。

 そしてそこから、方々の方にも話は伝わるでしょうしね」

 

 ま、“次の奴”なんてのは居ないんだけどな。

 いや、居るかもしれないが、イゾッタ婦人が王都に戻った後に姪の所に身を寄せるつもりであることも、「もうそろそろ事業もうまく畳んで、悠々自適の隠居暮らしをしたいわあ」等と言ってたことも知りはしないだろう。

 事業にしくじった事自体は事実なのだが、その後の破産に関しては半ば計画倒産みたいなもので、恐らくは資産の多くを先に姪の元へと移して居るのだろう。

 全く、ガキ共の情報収集力は侮れんね。

 まあ多くは、「誰からも価値が無いとして見捨てられた汚くて臭い孤児のガキ共」のことなンか、路傍の石以下と見なして注意、警戒して居ないから、という理由でもあるわけだが。


 ここまでビビらせたところで回収する金額など金貨4枚でしかないのが悲しいが、まあ人を騙そうとしたことへのお仕置きだと思えば良いか、と相手の反応を見ていると、やにわに婦人が家の中へ戻ると何かを探し出し、一枚の巻物を持って戻ってきた。

「ワタクシ、今、本当に返せる持ち合わせは御座いませんの。その代わり、こちらのものでは如何ですの? 巧く回収できれば、金貨数百枚から数千枚の価値は御座いますわよ」

 さてそりゃ何ぞ、と見てみると、それは一枚の古地図だった。

 

◆ ◇ ◆

 

 夕方遅く、やや夜の入り口の頃合いに、俺は『牛追い酒場』へと戻ってきた。

「総勢9名分、金貨58枚に、銀貨8、銅貨6。リストと比べて確認してくれ」

 カウンターでじゃらりと硬貨の入った重い袋とリストを渡す。

「へえー、流石、中々やるじゃない。

 イゾッタ婦人からも取り立てて来たの?

 ねえ、JB、ウチの専属にならない?」

「やーめとくよ。たまに、なら良いけどもな」

 時間にしては良い小遣いだが、正直精神的には疲れる。

 それに今回は無かったが、逆上されて襲いかかられる、なんて可能性だって無くは無い。

 マランダにとっちゃあ返り討ちにして殺した後に、身ぐるみ剥いで返済代わりに出来ればそれで良いのだろうが、こちとらそこまでしたくはない。

 

 が、マランダは本気のようで、そこからぐっと顔を寄せ耳元で囁く。

「余所で話さないで、ここだけの話にして欲しいンだけどね。

 ウチで回収屋兼用心棒をやらせてたカストの奴が、回収金と売り上げの一部を持って逃げ出したのよね」

 ふん? そんな奴居たかな? ……ああ、居た居た。胸毛が異常に濃いィ奴、な。

「だから、そいつを捕まえて“回収”して来て欲しいのよね。

 この件には、四割払うわ」

 ふーんむ、それは……魅力的だが、厄介だ。

 この場合の“回収”は、ほぼほぼイコールで“ブッ殺せ”の意味。

 回収金の四割は美味しいが、その為に殺し屋の真似ごとまではしたくない。

 俺は少し考えて、

「あー……そいつを見つけられたら情報を渡しても良いが、何れにせよ今日は無理だぜ?」

「分かってるわよ。まあ、考えといて」

 ひとまずはここまででこの話は終わりにする。

 

 で、俺はブル達の待つテーブル席へと行き、約束の半金を四人に渡す。

 自分達では何もせずに小遣いが手に入るのだから、連中には文句の一つもありはしない。

 取引の方もブルが諸々頑張ったこともあり、なかなか良い額で売れたようだ。

 想定より多めの利益が入ると、シャーイダールは俺たちに小遣いをくれる。まあ臨時のボーナスみたいなもんだ。

 今日一日で俺たち五人はなかなかの稼ぎを得られたことになる。

 

 で、軽く祝杯を上げてから、遅くなりすぎないウチに地下へと戻る。

 さて、問題は懐にある一枚の古地図。

 まだ見つけられていないとされる古代ドワーフ遺跡の地図だと言う眉唾物のそれをもらう代わりに、俺はイゾッタ婦人の借金を肩代わりした。

 なので五人の内俺だけは、実はたいした稼ぎになってない。

 この古地図が、さて果たして金になるや、ならざるや……。

 


 


 現時点のJBハーレム構成要員

 

 ブル…眉毛が太くて目つきの悪いハーフリング。

 グレタ…すぐ人を殺させるお色気アラサー。

 マランダ…そばかす顔のドS。

 ジャンヌ…身体のあちこちが曲がってるコアラ顔の孤児のリーダー。

 イゾッタ夫人…雌牛。

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