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遠くて近きルナプレール ~転生獣人と復讐ロードと~  作者: ヘボラヤーナ・キョリンスキー
第三章 クラス丸ごと異世界転生!? 追放された野獣が進む、復讐の道は怒りのデスロード!
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3-242. J.B.(137)Red Light Lady(赤信号レディ)


 

「やあやあ! 最近どうよ?」

 なんてな調子で軽く手を挙げひらひらと振ってくるのは、襟足までのやや短めの赤毛を後ろに流し、魔獣素材の軽装備に身を固めたやや小柄な女。

 東地区の顔役で、魔獣狩りの魔狩人の元締めで、魔獣闘技場“薔薇の棘”の支配人のリディアだ。

 

「あっち行ったりこっち行ったり大忙しで、椅子の温もる暇もねぇよ」

 肩をすくめてそう返すと、

「またどっかの町で奴隷商でも捕まえてたか?」

 と笑って返される。

「まぁ、似たようなこった」

 規模も何もかんも違いすぎだけどもな。

 

「にしてもよ、魔獣鍛冶師だけで良かったのに、何だかけっこうな大所帯……しかもアンタまで直接出張って来てくれるとは、どんな大事にするつもりだよ」

 ルチアの新しい装備を新調するのに魔獣装備を採用してみよう、と言う話になって、東地区にいるその専門家に依頼する事になったが、どういう気紛れかまずは採寸もかねてこちらへ来る、と返信が来た。

 こっちとしては鍛冶師とその助手、数人の護衛くらいを想定していたら、なんとリーダーのリディアと、10人は越す魔狩人たちが、さらには例の死爪竜にも騎乗しての来訪だ。門番をしていた衛兵、まだ正式に再編されてないから王の守護者ガーディアン・オブ・キングスの連中が目を白黒させている。

 

「まあ、実際のとこ、アタシは別件で用があってね」

「別件?」

「一つは、ティエジと」

 あー、と納得するのは狩人ギルドの長をやってる、東方からの流れ者方術士で、クトリア近郊では凄腕狩人として名の知れた“腕長”トムヨイや、見た目ぽっちゃり小デブな眉毛猫、猫獣人(バルーティ)の狩人アティックらと組んでるチームのティエジの名が出たから。

 去年のセンティドゥ廃城塞での戦いの後にその隠されていた区画が発見され、しかもそこはクトリアを囲む大山脈“巨神の骨”の中の盆地であり、樹木の精霊であるドリュアスの力が溢れる緑豊かな大自然の中。ほぼ不毛の荒野(ウェイストランド)ばかりのクトリア近郊では珍しいその場所は、狩人からすれば獲物の宝庫だ。

 けれどもそこの獲物欲しさで狩人達が殺到してトラブルも起き、何より一気に大量に狩り尽くしてしまいかねない勢いだった。

 それに悩まされていたティエジ他狩人たちへ、「ならばギルドを設立して、協定を作ってはどうだ?」と提案したのがイベンダーのオッサン。

 それでまあ、クトリア共和国建国以降も他の居留地の狩人なんかとも連携し、色々と機能してはいたんだが、その中に東地区の魔狩人たちは入って無かった。

 それは別に、市街地の狩人と東地区の魔狩人たちとが険悪だとか敵対してるとかって話じゃなく、リディアをリーダーとする東地区の魔狩人たちは、ただ単に食料として魔獣狩りをしていたのではなく、基本的には魔獣への防衛の必要性から、魔獣との戦い方を覚える施設として今の地下闘技場“薔薇の棘”を作り、その為に魔獣、魔虫の卵や幼生を集めていた……てのが始まりだからだ。

 東地区にもリディア達とは異なる普通に野生動物を中心に狩りをする狩人たちは住んでるし、そいつらは既に話し合いのもとにティエジ達のクトリア狩人ギルドに加入している。

 だが、目的や成り立ちの異なるリディア達魔狩人は、これは狩人ギルドに入るべきかどうか……という判断がまだ決まって無かった。

 で、まあ、その辺の交渉事が何度か行われている。

 

 なもんで今回もそっちがメインで来たのかと思いきや……。

 

「もう一つは、レイフの用事」

 

 と、また妙な名前が出てくる。

 

「いや、レイフは今、レフレクトルの方へ行ってるぞ? あの辺の魔力汚染の調査とかで、数日は戻って来ないハズだぜ」

 何かの行き違いか、と思ってそう返すと、リディアは少し驚いたかの表情のあとにニヤリ。

「な~る。確かに、言われた通りか」

 と言う。

 何のこっちゃ、と首をかしげるが、リディアはそれには取り合わず、

「ま、また後で会おうか」

 とだけ。

 そのままなし崩し的に俺はイベンダーのオッサン達が待つ作業場へ魔獣鍛冶師と助手たちを案内し、リディアは数人連れで狩人ギルドへ。そして何人かの魔狩人集団は、死爪竜とラクダの番をする数人以外はそのままどこかへと去って行った。

 

 

「それはそうとJB、客だぞ」

「客?」

 クトリア遺跡探査団に併設された作業場へと魔獣鍛冶師たちを連れ戻ってルチアたちと引き合わせると、一段落してからそうオッサンに告げられる。

 様子をみて待っていたらしいその客はと言うと、レイフと同じく闇の森出身のダークエルフで外交官のデュアン。

「なんだよ、客ってデュアンかよ」

「ワーオ、なんだよ、は無いでショー」

「会いすぎてて客感ねぇわ」

「アハハ、いわゆる“マブダチ”ですね」

「いや、そこまでじゃねえって」

 世間一般のダークエルフのイメージからするとかなり人懐っこいデュアンだが、言葉に関してもやたらに人間、クトリア語や帝国語のスラング、庶民の言葉を使いたがる。

 

「そういや、リディアがレイフに用事があるとか言ってたが、何か知ってるか?」

 先ほどの件をそう切り出すと、これまたデュアンはやや驚いたような表情を浮かべて、

「はぁ~、そうですか~」

 と、なんだか間抜けな反応をする。

「なんだなんだ、おい。どいつもこいつも気味悪ぃな」

 顔をしかめてそう言う俺に、

「いやいや、実はわたしの方に、こんな手紙が来てましてね……」

 と、何やら数枚の羊皮紙を見せてくる。

 書かれてるのは確かにレイフの文字。だがその内容は───。

 

「どーゆーこった?」

 

 □ ■ □

 

 下を走るのは死爪竜に跨がったリディア。死爪竜はその巨体の背に大きな鞍を設えているが、それは馬やラクダの鞍と言うよりかは……そうだな、象兵の鞍みたいに数人が乗れる形の大きなもの。数人、と言うか、ひし形に4人分の座席があり、落ちないようベルトで身体を固定出来るようになっているが、今はリディア1人。

 と言うか、四つ脚ではなく後ろ脚二本で疾走する死爪竜は上下にかなり揺れる。こんなのに乗って移動出来るにはかなり丈夫な三半規管とケツが必要だろうが、馴れてるのか何か特殊な補助でもあるのか、リディアは平気な顔でいる。

 併走するラクダ四騎はリディアの配下の魔狩人達。全員お決まりの赤い布を頭か体のどこかに巻いていて、やはり魔獣装備に身を固めてる。

 

 かなりの速度で南下しているその集団の、土埃舞い上げる様を見ながら併走……じゃなく、並列して飛びながら、俺はレイフからの手紙について考える。

 ハッキリ言って、何がなにやら分からない、その内容について。

 

 □ ■ □

 

───デュアンへ

 

 とりあえず、僕が既にレフレクトルへの調査へ赴いている、と言う前提で手紙を書くね。

 ただ、手紙鳩には誤差があり得るので、実際にこれを書いている時間はレフレクトル出発より前の時間。なので、もし早めにこれを受け取っても、封にも書いてあるようにレフレクトルへの調査前には読まないで、また、誰にも手紙を受け取ったことは話さないように、重ね重ね頼みます。

 

 まず、僕はレフレクトル探索二日目の午前中に、事故で行方不明になります。

 予言とかではなく、なっちゃうんです。

 でもそれを防ごうとしないでください。これ、フリとかじゃないよ? 絶対、防ごうとしないでくださいよ?

 

 この事は現時点では他に誰も知りません。僕自身もです。そしてお願いしたいのは、そうなった後の事です。

 既に連絡して、当日にはリディアが魔狩人達を引き連れて来てくれる手はずになっています。多分来てくれると思います。来てくれてたら良いなあ。

 来てくれてても、来てくれてなくても、デュアンはまずこの手紙をJBに見せて、レフレクトルへ行くことをお願いしてください。“シジュメルの翼”を使えば、レフレクトルまでそうかからないはずです。

 そしてJBは、来てくれていたらリディア達と共に、レフレクトルで僕が行方不明になった後、残されたエヴリンド達を助け、また、レフレクトルから野営地まで戻るよう説得してください。

 また、リディア達の助力が得られたならば、彼ら魔狩人達にはレフレクトルでの岩蟹や不死者(アンデッド)を排除するのにも協力してもらうつもりです。

 

 そして一番重要なのは、僕は必ず戻る、と言う事です。ただ、それが具体的にいつになるかが現段階ではハッキリしてません。少なくともレフレクトルでの行方不明後になります。もしかしたら行方不明からそう遅くない頃には戻れてるかもしれません。

 

 その他、諸々の事については別紙にて申し送りしておきます。

 JBやイベンダーにも、別途伝えておかねばならない事もあります。

 いずれにしても、まずはレフレクトルへと急行し、場を収めて下さい。

 

 それでは。

 

   レイフィアス・ケラー

 

 □ ■ □

 

 イベンダーも含め額つきあわせて考えても、何の事やら分からない。だがまあ、とりあえずレフレクトルでやってもらいたい事があるのは確かみてーだし、朝のこの時間から昼前にレフレクトルに着けるのは俺しか居ないだろう。

 いや、死爪竜を騎乗用として連れてきたリディアが居るから、俺とリディアだけ、か。

 そう考えて、早速正門前まで行くと、既に死爪竜へと騎乗して待ち構えてるリディアの姿。

 ラクダの魔狩人達には後を追わせるかたちで、二人揃って全速力だ。

 

「なあ!」

 騎乗したリディアの近くに寄せて、出来るだけ大声でそう話かける。

「なんだぁー?」

「アンタにも、例の手紙鳩とやらが来たのか?」

「いや、普通の手紙だよ! 手紙鳩は事前に送り先の魔力を登録した羊皮紙が必要になるからね! こんな事があるなら、アタシの魔力を注ぎ込んだ羊皮紙を渡しておくんだったよ!」

「そういうもんか! まあ、確かにそうかもな!」

 俺やイベンダーのオッサンの分も、作って何人かに渡した方が良いかもな。てか、俺たちからも送る可能性はあるか?

 

「で、どー思うよ?」

「どう、って?」

「いや、なんつーか……ワケわかんねぇ話じゃねぇか? 行方不明になることを先に予告するみてーな話はよぉ!?」

「そうだねー! でも、事前に報酬も貰ってるしね!」

「報酬?」

「貴重で珍しい魔獣素材……王国領や、さらに北方でしか手に入らないようなものを、たんまりとね!」

 王国領だの北方だの、いつ、どうやって手に入れたんだ?

「だいたい水臭いんだよ! 魔獣退治なら、最初から狩人ギルドの連中じゃなくて、アタシらに依頼しときゃ良いのにな!」

 まあ、確かにそれはそーかもしんねぇが、

「流石に、市街地の狩人ギルドの頭越しでいきなりアンタらに頼んだら、そりゃ角も立つぜ!」

 だから、一番良いのはリディア達東地区の魔狩人もティエジたち狩人ギルドに加入するか、何らかの形で連帯、協力関係を結ぶか、てな話にはなる。

「かもねー!」

 リディアはというと、その辺のことにそう頓着もしてないかに軽く返す。東地区へ会談に行ったときも、俺はレイフと別行動で奴隷商探しなんぞやってたが、その間にリディアと色々あったレイフに言わせると、「かなり“いい性格”をしてる」らしいけどな。

 

 そうこう言ってるウチにひとまずノルドバまで到着。俺はそのまま進めるが、リディアの騎乗する死爪竜は休息と食事、水分補給が必要らしい。

 元々馬とかに比べても、肉食なのもあり食事は頻繁には摂らずに済むらしいが、一度に食べる量はかなりのもので、また空腹が続くと制御し辛くもなると言う。

 事前に数人の魔狩人を先触れとして送り、生肉をと水桶を用意させていて、あの例の見張り塔代わりのデカい地竜の像の足元で、死爪竜が肉と水を貪る様はなかなか良い絵面だが、あんま時間も食ってられない。

 

「同時に着かなきゃいけない道理もねぇし、俺はこのまま先に行くぜ」

「あいよー。まあすぐ追い付くよ」

 あの上下の振動に揺られ、鞍にしがみついているだけでもかなり消耗するとは思うが、なんともけろりとしているのは、やっぱ間違い無く何らかの魔法か何かの効果なんだろう。

 

 先行して進むことしばらく、見えてきたレフレクトル近くのやや小高い丘には見事な野営地が作られている。真ん中には高めの物見の塔が建っているが、ありゃあ例の魔力中継点(マナ・ポータル)とかってのか? にしちゃあ随分デカい。

 

 日除けの屋根付きのそのてっぺん、ちょいとした展望台みてぇな所には三人ほど。1人は“大熊”ヤレッドの下の息子のヤーン。もう1人は南方人(ラハイシュ)の狩人か? 名前は確か……スマン、忘れた。

 そして一番慌ててやがンのは、秘法店組のルーズだ。

 既になにやらトラブってるらしく、ちぃとリディア等を待ってから……てワケにもいかねぇな。

 なもんでまた軽く飛んで監視塔へと降り立つと、やはり慌てたルーズが饒舌に、「あ、いや、なんか、議長? とか、ミカさん、ちょっと、ヤバくて……!」となんやかや。

 要領は得ないがピンチらしい。

 

「俺は上から様子見てくる。お前らは……」

「監視を継続、必要そうなら救援」

 ルーズとは逆に、落ち着いたようなヤーンの声。

 

 さて、再び飛び立って上から見ると、レフレクトルとは別方向、野営地からやや離れた位置には別の集団。何だ? と思って観察すると、魔獣装備に赤い布を巻いた魔狩人達だ。

 俺を見てなのか、武器や盾やらをぶつけながら大声で合図を送ってきて、そのままレフレクトルへと進んで来る。

 こりゃ、リディアの援軍……と見て、良いんだよな?

 

 



 まずはJB編三話。


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