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遠くて近きルナプレール ~転生獣人と復讐ロードと~  作者: ヘボラヤーナ・キョリンスキー
第三章 クラス丸ごと異世界転生!? 追放された野獣が進む、復讐の道は怒りのデスロード!
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3-235.クトリア議会議長、レイフィアス・ケラー(90)「それっぽいこと」


 

 

「え~と、今、もしかして……」

「なあに?」

 いやいや、まて、そうだ。

 今は僕からすれば過去。そして……闇の主討伐戦直後なので、まだギリギリこの時間軸の僕とガンボンは出会っていない。

 けれども……ん、んんん? ああ、そうか!

 そこで僕は今更な事に気付く。

 ガンボンがしていたあの指輪。ガヤン叔母曰く、「三美神の“呪い”で、ガンボンにかけられている“狂犬”ル・シンの人狼化の呪いを抑制する」それは、つまりはエンスヘーデら“3人の魔女”により授けられたものなのだ、と。

 ケルアディード郷に居た当初、ガンボンは前世の記憶が蘇ったばかりで、記憶の混乱もあってその指輪がどんなもので、いつ手に入れたのかすらも本人には分かっていなかった。ではその後は……と言うと、思い出すに改めて指輪の件を話した記憶はない。

 だから、ガンボンがここで……ここで、なのか、別の場所で、なのか、とにかくエンスヘーデたちにより指輪を与えられたのかどうかを思い出したかは聞いてない。

 まあ、エンスヘーデにより与えられた……というのも僕の推測に過ぎないんたけど、何にせよ……彼女らはガンボンのことを知っている。

 僕とガンボンの共通点は何か? と言えば、当然ながら「前世の記憶を持っている」ことだ。

 その希有な共通点……ん~、いや、JBやイベンダー、アルバに“キング”、テレンスと……意外にもそんなに希有でも無かった共通点だけども、その共通点のある2人が“蜘蛛の女王の使徒”であると言う彼女らと関わりを持っている。

 彼女らによれば、僕はいずれ“使徒”となりえる可能性があるという。それは生まれつきの資質や能力を超えた“運命的な何か”らしい。

 そこで……再び思い出す。

 アルバ、“キング”、テレンス等は、同じ飛行機に乗っていて墜落し、神を名乗る老人……“辺土の老人”によりこの世界へと蒔かれた“滅びの種”なのだと言う話。

 しかし、僕やガンボン、JBにイベンダーはその飛行機事故で死んだワケではない。それぞれに全く無関係に死に、無関係にこちらで“前世の記憶”を蘇らせた。

 つまり、“辺土の老人”グィビルフオグにより蒔かれた滅びの種なのではない。

 その事が、僕が“女王の使徒”足りうる条件だとしたら? そしてその条件に当てはまるガンボンやJB、イベンダー達もまた、僕同様に“女王の使徒”足りうる者だとしたら?

 

 混沌のまつろわぬ神々に限らず、そもそも神と呼ばれる存在の多くは直接的にこの世界へと姿を現すことはない。

 存在として実在していること自体は確かだとされてはいるが、彼らはその存在があまりに大きすぎる為に、現世、物質界へとその姿を直接顕現させることが簡単には出来ないのだと言う。

 そのため、その世界に生まれた者達から信者を増やし、またはより強い加護を与えた“司祭”、“神官”、または“使徒”や“代理人”、そして或いはアルバ達のような“種として蒔かれた者達”を通じて、自らの影響力を行使する。

 信者の数、または“”司祭“、“神官”、そして使徒”の持つ力と言うのは、つまりは「神々がその世界へと与えられる影響力を現すバロメーター」であり、また文字通りに「神々の代わりに力を行使する“代理人(アバター)”」なのだ。

 

 僕は元々ダークエルフとして生まれ、三美神を信奉する立場ではある。ただそれはダークエルフに生まれたからそう言う立場だ、と言うだけで、僕という個人に強い信仰心があるワケじゃない。

 だから、“使徒”となりえると言われてもそうそう納得もいかないし、何というか文字通りに他人事のように感じてもいる。けれどももし、この仮説通りに僕がこの世界へと生まれ変わってきたことそれ自体が、そもそも三美神による計画、“使徒”となるべき存在としてならば……話は変わる。

 

 考え込みつつの僕の沈黙に、エンスヘーデは十分以上に待ってから、湧き水で冷やした手をおでこへ当てる。

「ひゃぁっ!?」

「聞いといて黙らなぁ~い」

「ヒャ、は、ハイ、すみません……」

 いやしかし、これはどう解釈すべきか。そして、どう聞くのが良いのか?

 

「───ある程度の“先”のことを、“使徒”である皆さんは読み取る事が出来る……のですよね?」

 改めて、僕はそう聞く。

「ああ、そうだね。ただそれは、いわゆる未来予知とは違う。我らが女王の織り成す運命の糸……それにより作られる織物の模様を見て、推測し読み解き、その片鱗を伺い知れるだけだ」

 その織物に今、描かれている運命の模様……いや。

「……その“運命の模様”とは、三美神の計画……と言うことなのですか?」

 つまりは思惑は何なのか。だが、その問いへの答えは、

「そうとも言えるし、そうではないとも言える」

 と、どうともとれる曖昧なもの。

「───それは、答えになってないですよ……」

 やや強張る僕の声。それにはエンスヘーデが、

「わたし達に出来るのは“読み解く”事だけよ。けどその奥にある真意を推し量るなんて……出来ると思う?」

 と返してくる。

 それは、確かにそうだ。ましてや“使徒”たる存在に対しそれを聞くのは、他の宗教でならば不遜と叱責されるような問い。三美神への信奉の在り方と言うのが、いわゆる一般的な“宗教”とは異なるからそうはならないが、ちょっと攻めすぎた際どいやりとり。

 

「君が……まあ、気にするのも分かるよ。

 “使徒”の候補だと言われて、さらには……本来君は今よりも未来から来ているのだからな。

 だが、そもそも君は“蜘蛛の女王”の本質を見失っている」

 再びそう話を主導するのはヘルヴォラ。

「本質……ですか?」

「そうだ。

 “蜘蛛の女王”の本質は混沌だ。運命の糸を手繰り寄せ操るが、それは精緻で秩序立てられた計画ではなく、常に流動的に変化しながら変わってゆく。我々“使徒”の役割も存在もまた、その中の糸の一つでしかない。

 だから……」

「わたし達はわたし達で、ただ勝手にやりたい事をやるだけ」

 ああ……そうか、そうだった。

 仮に僕が、いずれは“使徒”となり得る存在だとしても、また、ガンボンやJB、イベンダー等も同じように“使徒”足りえる者としてこの世界に呼び寄せられたのだとしても、それらは所詮、“運命の糸”によって紡がれた、巨大なゴブラン織りの絨毯の一本の糸にすぎない。そしてその一見すると緻密で雄大な絨毯のどこかがほつれ、あるいは途切れたとしても、それ自体には意味などないのだ。

 ふぅ、と深く息を吐く。思いがけずに緊張し、やや呼吸が浅くなっていた。

 

「ねぇ、レイフ」

 その呼吸を聞いてか、エンスヘーデはブランデー入りハーブティーのカップから一口、唇を湿らせてから再び話し始める。

「あなたが元々居た時間軸は、今からだいたい10月ほど後……そうだったわね?」

「あー……はい、だいたいそうです」

 闇の主討伐戦、そしてゴブリンロード・ユリウスとの戦いに、転送門からクトリアの試練の迷宮へ。それからザルコディナス三世と戦い、王権を請けてからクトリア共和国建国。短い雨期を経て熱砂の夏。そろそろ一年にはなる頃ではある。

 

「なら……そうね。今、読み取れてるだけの事を軽く話すとね……」

 ちょっと悪戯っぽく微笑んでからエンスヘーデは続ける。

「この秋から冬にかけて、アナタにはとても運命的な出会いの可能性。そこからまるで命がけの冒険のような波乱に発展しちゃうかも?

 また、新たな転機も訪れて、今まで関心はあっても実行に移せなかったことに挑戦する機会が得られるかもしれない。勇気を持って一歩を踏み出せば、人生に大きな広がりが得られるでしょう……」

 フフン、と微笑んでそう言うが……。

「……いやそれ、めっちゃインチキ占い師が言う定型句ですよね?」

「あーら、失礼ねぇ~」

 汎用型の「どうとでもとれる」占い結果丸出しで、しかも小憎らしいことに結構当たってる。

「───それじゃ、もう一つ付け足しておくと……」

 細めた目をさらに細くしながら僕の顔をのぞき込むように低くして、突きつけた指先をくるくる回しながらエンスヘーデは続ける。

「多分そのアナタの元に……もう1人の幻惑の主が訪れることになるわ」

 ───もう1人の……、

「……アイオン師!?」

 魔術師協会の認める“炎の主”アイアン・クロウ。そして、表向きの別の身分として持つ名が、王国の精霊官のアスタス・クロッソ。

 その表向きの名と役職で、クトリア共和国との外交使節団の1人としてやってきた彼とは、既にクトリアで対面してる。けど確かその時には……。

「待って下さい、つまり彼ももしかして……」

「“使徒”の一人」

 既に、僕は“使徒”と会っていた。けれども……だ。

 その時にはそんな話はしていなかった。ただ、僕自身の目指すことや目標の話をされ、その立ち位置を確認するような話になっただけだ。

「もしその時に“使徒”としての話をしていなかったのなら、それはアナタの方にまだそれを受け止めるだけの準備ができていなかったからでしょうね」

 エンスヘーデはそう事も無げに言う。

 だとするなら、

「今の僕には……」

「そうね。少なくとも聞くべき準備は出来ている。“使徒”にはまだなれなくても、“子”としてそれを聞くだけの準備はね」

「こ───」 

「あ、“子”っていうのは、“使徒”である者の庇護下において、“女王の加護”のある程度を受ける事の出来る存在のことね」

 三美神には八人の“使徒”が居て、彼らにはそれぞれ大きな加護があるのだろうけど、その“子”と呼ばれる立場にも、ある程度の加護がある。そして僕がその“子”と言う立場にあるのだとしたら、僕にもまた、既に何らかの加護が与えられているのだろうか?

 今、具体的にどれがどうなのかは分からないが、言われればもしかして……と思える事はけっこうある。

「僕は……既にその、“子”である……と言うことですか?」

「少なくとも……例えば“狂犬”ル・シンの“祝福”の片鱗を授かっている……程度には」

 ル・シンの“祝福”、あるいは“呪い”を受ける者はそう多くは無い。けれどもその信奉者……つまり、ル・シンの“祝福”、“呪い”で人狼化した者を崇める者達と言うのも居て、そう言う者達にもまた、“祝福の片鱗”が齎されると言う。

 それと同じようなもの……と言うことか。

 

「さっきも言ったけど……」

 ヘルヴォラが再びそう話しを繋げる。

「選んだのであろうと、選ばれたのであろうと、そこは重要じゃない。我々“使徒”も、また使徒に連なる“子”であろうと、いずれにせよ我々に“蜘蛛の女王”の紡ぐ運命の糸車が描く広大無辺の織物を全て読み解くことは出来ないし、またそうしようとする必要もないんだ。私達はただ私達に出来る事をするだけ」

 そしてその中には───、

「他の邪神……例えば“辺土の老人”グィビ・ルフオグ等との戦い……とかですか?」

 マヤを除く2人が、それぞれにニュアンスの異なる笑みを浮かべる。

 

「君が今、気にしているのは、“主体性と運命論”のことだろう?」

 その問いへのヘルヴォラの言葉は、まさに僕が捕らわれていた問いを真芯から捉えている。

 神々が直線的に物質界へ影響を与えるのは容易くなく、だからまつろわぬ混沌の神々に限らず、彼らは信徒や信奉者を増やし、それらの力で様々な目的を達成させる。

 言い換えれば代理戦争だ。例えばこの世界の覇権を狙う神々同士が争い合うとするなら、ちょうど僕がクトリアの魔力溜まり(マナプール)を支配するときのダンジョンバトルと同じようなものになる。

 敵キーパーと魔力溜まり(マナプール)を奪い合う為に、従属させ、または召喚した魔獣や魔物同士を戦わせたように。

 元より、テレンス達とも話したように、“辺土の老人”は混沌の神々の中でも唯一、世界そのものの破滅を望んでると言われ、だからこそ他の混沌の神々とも敵対的だ。ましてアルバによれば、“災厄の美妃”の持ち手などを通じるなど様々な形で暗躍してる。その動きには、確かに僕らも直接的な驚異として警戒はしてる。だが、そのこと自体が既に“運命の糸車”により編み上げられたら広大な織物の一部だと言うのか……?

 

「……繰り返すが、神と言う超越的存在の前に、その問いは無意味だ」

 ヘルヴォラはそう話を続ける。そしてさらに、

「それは、あまりにも“神の実在が証明されていない世界”の考え方に引っ張られすぎている」

 と言った。

 

「───それは……」

 

「マヤー!」

「帰ってきたのー?」

 部屋へとばたばたやってくるのは、最初に“魔女の谷”へと来たときにも会った女の子達。ヘンリエッタ、エルマー、マノーラの三人は、それぞれヘルヴォラ、エンスヘーデ、マヤの娘だという。

 

「遊ぼー、マヤ!」

 しばらく谷の外へと行っていたマヤに、そうせがむ3人。マヤはと言うと、それまでの固い表情を少しほころばせて、子供たちに連れられて外へと向かう。

 

 話の流れが一旦途切れ、残された3人……僕、ヘルヴォラ、エンスヘーデはまずは深く呼吸。いや、呼吸を一旦整える必要があったのは僕だけか。

 

「───いずれにしても、ね」

 改めてそう切り出すのはエンスヘーデ。

「分かるべきときが来れば分かるようになるし、それまでは焦ることもないわ」

「───ひとつ、“それっぽい”ことを付け加えるとさ」

 エンスヘーデの言葉に、さらにヘルヴォラが付け加える。

「あまり、“答え”や“結果”に拘泥しない方が良い。

 それを求めることに拘り過ぎると、もっと重要なものを見落としてしまうよ」

 

 確かに、本人も言うとおり、まさに“それっぽいこと”ではあった。

 

 



 ちょいと微調整しつつ、多分今月中にレイフパートの残り数話分を更新再開します。



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