3-173.J.B.(113)The Cave Of Ogre(鬼の洞窟)
いつものように上空を滑空……とはいかない、こっそりこそこその隠密潜入。砦と化した洞窟の内部構造は完全に把握は出来ていないが、例の内通者からもらった地図がある。
大まかな構造からすれば、横穴から入った辺りはほぼ使われていない狭い行き止まりで、そこから狭くて上下し曲がりくねった隙間を進むと、そこそこ広めの資材置き場に出る。
まあ勿論、聞いてた通りの高い位置からそこに出るので、確かにロッククライミングでなきゃ戻れない。
で、そこでまず目に付くのは大量の木材。
切り倒した丸太をしっかりと乾かした後に、皮を剥いて大まかにではあるが四角く同じ用なサイズにしたものや、半分に割ったもの、またより細い木のものなど、長さ、太さ、大きさごとに分けて置かれている。
縄、動物の皮や革紐、布その他の様々な資材もあり、そこからさらに向こうには、どうやら例の地下水路に繋がる広い空間があるようで、湿った冷たい空気と共に、水の流れるドドドドド……、と言う音が聞こえてくる。
「あの地下水路、思ってたより広いな」
聞こえてくる音や、“シジュメルの翼”で察知できる空気の流れからも、恐らくこの地下水路の広さは2、3パーカ(約6から9メートル)以上はありそうだ。それだけあれば、そこそこの中型輸送船でも進めるかもしれねぇ。仮に、10人隊を一部隊から3部隊は乗せられる中型輸送船を……まあ10隻ほど用意出来れば、港側から密かに300人の部隊を送り込める事になる。上手くすりゃ、隠密部隊で密かに内側から城門を開けて、一気に雪崩れ込んで占拠……なんて手も使え無くはねぇか。
まあ、それだけの船を置いておける空間があるかまでは分からんけどな。
俺たち2人は資材置き場の奥で、その影に隠れて様子を伺う。遠目にだが、まだ数人のリカトリジオス兵と、手枷足枷のされた奴隷が数人居る。
「よぉ、まだ時間かかるのか~?」
「いや、もうあっちは動き出してはいるハズだ。ただ……まだ大事になってねぇから、騒ぎがこちらまで来てねぇんだろ」
大事になってない……てのは、まあそれだけここの洞窟内が広いからか、駐留してる部隊の数が想定より多いのか……。
「確か、この砦内のリカトリジオス兵は10人隊が5部隊、50人規模で、奴隷もだいたいその位……てな話だったよな?」
「“ただれ傷”によりゃあな」
クトリアからかなり距離もあり、さらにはあくまで一部権限しか使えねぇ、てな話だから、扱える規模もそんなでもねぇ。それでも、奴らの気を引いてちょっとした混乱を起こすにゃ十分なハズ。
そのまましばらく様子を見ていると、次第に向こう側がばたばたとしだす。
「お、始まったか?」
「……だな」
聞こえてくるのは鋭い叫び声に遠吠え、喧騒、戦いの音。
あちらさんも、全くありえないとは思って居なかっただろうが、とは言え本来警戒してたのはそれじゃない。
そう、ボバーシオ攻略の為の隠し砦が、魔物、魔獣の群れに襲われるってのは、奴らの本来の想定とは違った展開だ。
クトリアの魔力溜まり、その力を伝達し、一部を使える様にする魔力中継点。
それを作り出すためには、核となる術具、ドゥカムも使っていたミニチュア魔力中継点が必要だ。
それを、マーゴはレイフから受け取り建てていた。
建てた後に、本来の魔力溜まりの所有者であるレイフから限定的な管理権の委譲というものを受けることで、魔力溜まりの持つ力を一部使うことができるようになるが、今回はレイフが同行しないので、術具のミニチュア魔力中継点自体に、事前にマーゴへの管理権の一部委譲を組み込んで居る。
魔力中継点は、繋がりのある魔力溜まりから離れれば離れるほど、使える力が減る。しかも、まあ詳しいことはよく分からんが、クトリア四方にある古代ドワーフの魔力溜まりは、それ自体がクトリアを守り、繁栄させるために作られたものなので、クトリアから外ではさらに力が弱くなるんだそうな。
なので、マーゴに渡したミニチュア魔力中継点は、守りの結界と通信、そして召喚に特化させた。
その結果、レイフ曰わく、奴がクトリア領域内で魔力中継点を通じてできることの、まぁ4分の1ぐらいはマーゴにも使えなくはない……ぐらいの性能だそうだ。
具体的には、マーゴが全力を出せば、一度に岩蟹の2、30体ぐらいを呼び出し使役することはできる。
そのマーゴ用魔力中継点を、このリカトリジオス砦にほど近い適切な場所に建てて間に合わせの陣とし、スナフスリー、ボーノの2人を守りに置く。
そいつで表から攻めて、砦の中に混乱を引き起こして、その隙に俺たちは裏口からベニート等を救い出す……てな計画。
ま、奴らがやろうとしてたことをまんまやり返した形か。
「へぇ~~、あれも俺がいない間に起きたクトリアの変化の一つ……ってか?」
「まあな」
「クハハ、ベニートの奴が欲しがってた力に、ベニート自身が助けられる事になるたぁな!」
まあ確かにそれも皮肉じゃあある。
「まあ良い、とりあえず先に進むか。ようやく楽しいパーティーの時間だ」
嬉しそうにひと笑いして、被っていた兜の面を下げる。全体の装飾も怪物じみていて、さらにはなんだか奇妙な文様の書かれたそいつは、その手の魔装具の中では安物ではあるが、【暗視】の術式が付与されているらしい。安物の理由はその効力がそんなに強くはないからで、曰わく、「全くの裸眼よりかはよく見えるぜ?」とのこと。
俺は視界があまり効かない分は、入れ墨魔法と“シジュメルの翼”を使い、空気の流れで周りを読む。俺も今じゃあかなり慣れたもの。むしろ目で見るより遠くのもの確認できることもある。
積み重なった資材に隠れつつ、そろそろと中へと進んでいく。この資材置き場らしき空間の中ほどに来た辺りで、個々に繋がる通路の向こうから、再びバタバタと数人の足音が近づいてきた。
息を殺し、気配を殺す。例の泥を塗りたくっているから、ある程度は犬獣人の鼻もごまかせるだろう。しかも外からの魔獣の襲撃で慌てているときだ。資材置き場の中の気配を丁寧に探ろうとなんかするわけもない。
だが、最後列の一人が資材置き場から外へ出るか出ないかのあたりで、積み重ねられた材木の内、細めの木がまとめて積み重ねられたところの数本が崩れる。別に俺達がぶつかったわけでも何でもねぇ。ただ単に積み重ね方が甘かったのかどうか、自然と崩れただけだ。
しかも、その崩れた細めの材木の山は、俺たちの隠れている大きめの木材の山のすぐ隣。
そこへと音に反応した2人ほどのリカトリジオス兵が、ゆっくりと歩いて近付いて来る。
2人で顔を見合わせ、さらに気配を殺そうと身構える。いや、俺より先行しているデーニスは、例の紐付きピッケルを構え、いつても組み付ける準備。
だが、敵が2人、ってのはちとヤバい。相手が1人なら、 片方が組み付き口を塞ぎ、片方が仕留める……てなやり方もできる。
だが2人なら、組み付きながら口を塞ぎ止めを刺すという一連の流れを、一対一でそれぞれがやらなきゃなんねぇ。しかも、ちょうど良9タイミングを合わせて、だ。でなけりゃすぐに仲間を呼ばれちまう。
その俺の緊張感を見て取ったか、デーニスはニヤリと笑いかけながら、例の小袋から何かを取り出してやや離れた木材の山へと投げつける。
カン、と言う乾いた小さな音。当然のようにそれを聞き取ったリカトリジオス兵達は、警戒しながらそちらへと向かう。
ほどなく近づいたあたりで小さな閃光。起したのはもちろん、先ほどデーニスが投げつけた小さな丸い物体。そこから立ち上るのは……うげぇ、ここからでもすげえ臭うぜ。めちゃくちゃ臭い煙だ。
人間の俺でも顔をしかめるその匂いは、当然鼻の良い犬獣人にゃあたまらねぇ。臭いというより痛みを感じるかのように身体を折り曲げ、苦しんでるところへデーニスは紐付きピッケルを投げつけて、そいつが1人の首をくるり巻き付きガツンと一撃。
そのまま引き寄せて締め上げながら素早くどとめを刺すと、吹き出る血飛沫に鉄臭い匂い。
ピッケルの嘴で喉笛を貫かれた一人はそのまま崩れ落ちるが、急所の外れたもう一人は、匂いと汚れに苦しみながらも腰から山刀を引き抜き身構える。
その残った一人を、デーニスは横に回り込んで蹴り飛ばす。よたつき倒れ込む先は、まさに今、俺のいる場所。
「糞ッ!」
不安定ながらも切っ先の向けられる山刀を左手で払いのけてかわすと、そのまま腕を掴んで引き倒す。そこからまずは鼻面への膝蹴り。数発入れてから首を抱え込んで締め上げ落とした。
「……デーニス、今のわざとだろ?」
「へっ! 俺のいない間のクトリアの変化とやらで、おめーが生ぬるくなっちゃいねえかと思ってよ」
「なるかよ。言っちゃなんだが、かなりの修羅場をくぐったんだぜ?」
実際その通り。むしろクトリアへ来て最初の一年目くらいの方が生ぬるかった。
が、俺のその言葉を聞き流し、デーニスは手にしたピッケルで倒れていたリカトリジオス兵の頭を叩き割る。
「まだ甘いぜ。トドメはきちっと刺しておけ」
血飛沫あげる死体を物陰へと隠しながらそう言う。
「待て……!」
そこでそう俺が小さく叫ぶのは、そのデーニスの背後に別の影を察知したからだ。
デーニスの視界からは完全な死角。そこからの山刀の一撃を防ぎ反撃を食らわすには、俺もデーニスも一手、二手も足りない。
それでも、反応良く背を低くして山刀の軌道を避けるデーニス。
そして、【風の刃根】を撃ち出そうと“シジュメルの翼”へと魔力を通わせる俺。
だがそれらよりも早くそのリカトリジオス兵へと対応したのは、もう一つの別の刃……いや、牙だ。
後ろから組み付き喉笛へと文字通りに牙を突き立て噛み千切るのは、顔の真ん中に腐れただれたような大きな傷跡を持つ、目の周りが黒い小柄な犬獣人だった。
「おおっと、遅かったな、おい」
「それは、おまえ。待ちくたびれた」
デーニスとのやり取りに、聞いていた通りの容貌。コイツが例の内通者、“ただれ傷”なんだろう。
“ただれ傷”は両手両足、さらには首に、手枷足枷に首枷がある。つまりはここでの奴隷。ただしデーニスも言っていたが、犬獣人だからか他の理由でか、比較的自由に動き回れる奴隷のようだ。
「ちょっと待ってろ」
そう言うデーニスが、“ただれ傷”の枷となってる板をそれぞれ地面に押さえ、留め具をピッケルでガツンと壊す。
“ただれ傷”は解き放たれてから首を回して手足を撫でさすり、
「コイツは?」
と、俺をねめつける。
「JB、俺の古馴染みだ。腕は立つし、今外から魔獣で攻めて来てるのもコイツのツレだ。お前の事は話してある。後はベニート達の居場所だな」
再び、今は三体に増えたリカトリジオス兵の死体を隠しつつ、デーニスはそう“ただれ傷”へと聞く。
“ただれ傷”はしばらく俺を睨むようにして見てから、ふん、と鼻息を漏らし話しはじめる。
「ベニート、今は牢に居る。リジオス、ベニートをしばらく飼うつもり。クトリアの事、聞くらしい」
貴族街三大ファミリーのボスと知られたか、そうでなくとも対クトリアに向けての情報源として利用価値があると思われたか。
「よっしゃ。そんじゃあそこまで案内してくれや」
デーニスの言にコクリと頷く“ただれ傷”。
スナフスリーの奴も無口だが、コイツもなかなか寡黙なようだ。まあ、楽しいおしゃべりをしている場合でもねえし、必要最低限の意思疎通ができれば十分か。
間に合わせ程度に死体を隠し、“ただれ傷”の案内で先へと進む。資材置き場から地下水路のある広い空間まではそう遠く無いらしい。その広い空間は作業場兼船着き場だそうで、今も多くの奴隷が働かされて居る。
「奴隷の数はどんくらいだ?」
「だいたい、30」
「へぇ、なかなか居るな」
デーニスが何か考え事をしているようにほくそ笑む。
「全員連れてくのはちと一苦労だな」
「馬鹿言うな。手枷足枷の半病人なんざ連れてけるか」
まあデーニスならそう言うだろう。
「お前、そいつらを逃げるときに囮にしようとか考えてんじゃねぇか?」
「手の一つじゃある……が、それも……まだ足りねぇな」
俺もデーニスも、それぞれに別の所で手を考えあぐねる。
「奴らは舟を既に三艘作ってる。奴隷全員が十分乗って逃げられる」
そこへ、“ただれ傷”がそう入って来る。
これは俺も可能性として考えていた手ではある。ただ、舟の作りに数、奴隷の人数が分からなかったからはっきり決められてなかった。
「リカトリジオス部隊の数は?」
「前より増えた。今は8部隊は居る」
リカトリジオスの基本部隊編成も帝国流なので、一部隊10人からの十人隊。それが8部隊なら約80人。外からの魔獣の攻撃に応戦しているのがその半数だと仮定して、残る40人を奴隷だけで対応するのはかなり難しい。
つまり、やるならその40人前後が揃ってない前提で、俺とデーニスが中心となっての各個撃破が必要になる……か。
「ま、その辺は後回しで考えるか。とりあえず牢へ行くぜ」
船着き場のある広間を迂回する経路からさらに下って狭い場所に。
壁に据え付けられた松明の薄明かりの中、奥からは数人の気配。
“ただれ傷”は右手で俺達を制してから、そのまま下って進むと、ややあってから戻り手招きをする。
招かれた先には1パーカ(約3メートル)四方ぐらいの雑な作りの金属の格子が嵌められた縦穴。なるほど元からあった縦穴部分を利用した形の牢獄ってことか。
で、その縦穴の近くには、喉から血を流しながら倒れ痙攣しもがいているリカトリジオス兵。見張りだったようだが、コッソリ近付き不意をついた“ただれ傷”の一撃でやられたようだ。コイツ、ただの宿無しとは思えねぇ手際の良さだぜ。
「おーい、ベニート、生きてッかー?」
壁の松明を手にとって、光もほとんど届かねぇ竪穴の奥へとかざしながらそう声を投げかけるデーニス。その闇の奥底からは、しばらくしてから唸り声とともに小さく返事が聞こえる。
「……お、遅ぇ……よ、何……やって……た……?」
「はっ! しぶてぇな! まだ生きてやがるぜこのオッサン。
ま、そんだけしゃべれりゃ十分だな」
そう言いながら、牢番のリカトリジオス兵が持っていただろう鍵を使い、鉄格子の檻の扉を開ける。
備え付けてあった縄梯子を投げ込むが、もちろん自力で上がってくるような体力は残ってねぇ。
「灯り、持ってろ」
松明を俺へと手渡し、中を照らすよう促すデーニス。
自然胴そのままの奥底には、倒れ這いつくばってるかのような人の影が1人、2人……いや、3人ほどか。
デーニスがするすると縄梯子を降りると、その倒れた3人のうち1人を肩へと担ぎあげて、再び戻ってくる。
「おい、後の2人は?」
「ありゃ死体だ。死霊術師でもいりゃあ動く死体にして戦わせられるだろうけどな」
「くそ、マジか。遅かったか……」
カーングンスの2人、……確かマクマドゥルとアンダスとかってのはもう手遅れだったか。マーゴの奴にはどう話たもんかな。
そう考えてると、デーニスはまたヘラヘラ笑いながら、
「あんなカビの生えた古い死体と穴の底とは、なかなかの体験だったろ?」
と、ベニートへと話し掛ける。
……ん? と、その言葉に違和感を感じて、
「カビ? 待て、あれはカーングンス連中じゃねぇのか?」
「ああ? 違う違う、そこそこ古い死体だ。オッサンが入られた時にはとっくに死んでたんじゃねーの?」
となると、カーングンスの2人は別の場所か、あるいはとっくの昔に骨も残らず殺されたのか……。
とにかくデーニスを引き上げて、ベニートを床に下ろして一息つかせる。
「ま、とりあえずこれでも飲んでくれ」
「……何だ、そりゃ……?」
「俺の仲間が作った魔法薬だ。そこそこの効き目はあるから、脱出する際の体力回復ぐらいはできるぜ」
俺は薬瓶からの一滴を手の甲に垂らしひと舐めして見せてから、デーニスへと手渡す。デーニスはベニートの体を抱え込むようにして持ち上げると、自分の膝の上に頭を乗せて、まるで我が子にミルクを与える母親みてーにして、ゆっくりと薬を飲ませる。
しばらくすると呼吸も落ち着き、顔の血色も少し良くなったベニートが、
「……生き返ったぜ」
と深く息を吐く。
「……で、コイツは何だ? 新しく雇ったのか?」
早速そう俺を指差して聞いて来るベニートに、デーニスはまた笑いながら、
「ま、俺の古馴染みよ。他にも増援が外に来てるぜ。そんで、兵の半分くれーはあちらで大騒ぎだ」
と、嘘ではないがあいまいな返事。俺としてもここでベニートに詳細を細かく話すのは面倒くせえし、デーニスはデーニスで、ベニートがこの半年やってたことがとんだ無駄足だったってことの種明かしは、まだまだ後に取っておきたいみてーだ。
「さーて、この先の計画だ。
まず、船を作ってるところに行って奴隷どもをそそのかし内部にいるリカトリジオス兵どもをぶちのめす。それから、その船を使って地下水路経由で脱出し、マレイラ海からボバーシオ入り。
どうだ? アンタ的には行けそうか」
“ただれ傷”からの最新内部情報も含めた上で、 ここに来るまで話し合って決めといたプランA。
ベニートはまだ苦しげな顔で思案して、ややあってから
「半々……だな。伸るか反るか、試す価値ありそうだ」
と返す。
「よっしゃ、決まりか。“ただれ傷”、ベニートに肩を貸してやってくれ」
肩を借りつつ立ち上がるベニートを真ん中に、デーニスと俺とが前後を警戒しつつ先へと向かう流れになる、が……。
「いや、ちょっと待て。
マクマドゥル達はその……船付き場? 地下水路の? そこで働かされてる……って事で良いんだよな?」
危うく確認するのを忘れてたぜ。
が、そう聞かれてベニートは、
「……いや、分からん。俺は四、五日は牢の中で、あいつらは連れてこられなかったから殺されたと思ってんだがな……」
全く興味はなさそうにそう吐き捨てる。
それを受け、ベニートに肩を貸していた“ただれ傷”が、やはり興味は無さそうな素っ気なさで回答する。
「そいつらは今、広場で磔だ」
そいつは……なかなか面倒なことになったな。




