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遠くて近きルナプレール ~転生獣人と復讐ロードと~  作者: ヘボラヤーナ・キョリンスキー
第三章 クラス丸ごと異世界転生!? 追放された野獣が進む、復讐の道は怒りのデスロード!
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3-145.マジュヌーン(78)静寂の主 -ソウル コックリさん


 

 一体何の話だ?

 

 “闇の手”の聖域に居た蛙人(ウェラナ)の薬師が作った降霊薬とか言う妙な薬。そいつは、誰かの持ち物や身体の一部にぶっかけて使うと、そいつの生き霊みてーなもんを呼び出して話が出来る。

 それで、監獄島を逃げ出したと思われる、バールシャムの川賊一味の内通者だった河川交易組合の護衛兵のティドの生き霊を呼び出して行方を訊こうとしたが……。

 

 一体何の話だ?

 

 呼び出したティドの生き霊は、俺の問いにはてんで答えず、ただ暗い怖いと泣き言を言い、挙げ句聞いても居ねえのに「裏切っている奴」とやらの話をしだした。

 

「……おい、てめぇ、ティド! 俺はそんな事ァ聞いてねえ!! 一体何の話だ!?」

 実体のない、煙の塊みてーなティドの首根っこをひっ掴もうとしてスカされる。もちろんそれは、そいつが本物のティドじゃあなく、妙な薬から出た煙がティドの形をしているだけだからなワケだが、何にせよ俺はその勢いでつんのめりよろけちまう。そう間抜けによろけつつも、俺はさらにどやしつける。

 

 だが、

「嫌だ……、嫌だ……止めろ、止めてくれ……お、俺は、何も……何も知らねぇんだ……!!」

 と、ティド風の煙は、さらに怯えた泣き言を繰り返すばっかりだ。

 

「……おいカエル野郎、どうにかなんねーのか!? こいつ、まともに会話が成立ねえぞ!?」

 蛙人(ウェラナ)の薬師にそう訊くが、

「グフェッ、ココ、コイツが、マ、マトモじゃ、ないな、らマ、マトモな、返答は、ない……。

 つまり、主様、の、捜してるや、奴は、まま、マトモ、じゃない……」

 ぶくぶくと喉から泡を吹き出してるかのようなぬめった声でそう返す。

 

 ティドはどういう経緯か監獄島は抜け出したが、その結果かその先でか、マトモじゃねえ状態になった……てなトコロか?

 

「……糞ッたれ! 役に立たねぇ野郎だぜ!!」

 腹立ち紛れにそう喚くと、蛙ヅラはプクゥっと頬を膨らませて、

「く、薬、は、や、役に立っ、た」

 と異議を唱える。

「知るか」

「や、役にた、った。ココ、コイツは、どっちにせ、よ、主様の、脅威にな、らない……マトモで、はないし、どこか、暗くて、怖いと、ころに居て、怯えてるるる……無駄、無駄……」

 

 そう言われて、確かにそりゃそうか、とも考え直す。

 ティドの野郎がどうやって逃げてどこにいるか……てなことは分からねえままだが、少なくとも虎視眈々と俺や河川交易組合への復讐を目論んでる……てな感じじゃなさそうだ。

 逃げたはいいが、再起や復讐を考えられる余裕はなく、ただビクビク怯えながら隠れてる。普通に考えりゃそんなとこだろう。

 俺はどこぞの少年探偵やなんかじゃねぇ。謎解きだ何だは、そういうのが得意な奴に任せときゃいい。少なくともティドの野郎は今のところ、俺たちの脅威にはなりそうにねえ。それが分かりゃあ十分っちゃ十分だな。

 

 深く息を吐いて、

「……ま、そうだな。ありがとうよ」

 と蛙ヅラに返すと、奴は再び頬を膨らませてから、グフェッ、グフェッっと笑った。

 

 ▽ ▲ ▽

 

 ティドの一件は「とりあえず覚えておく」棚にしまい込んで、河川交易組合長のキオンには、「どうやって逃げて今どうしてるかは分からないが、少なくともどっか暗い所でビクビクしてるって事だけは分かった」と伝えておく。

 勿論、“闇の手”の事なんざ話せやしないし、どうしてそれが分かったかもはっきりとは言えねぇから、あちらさんとしちゃあ「何も手がかりが掴めなかったから、適当なこと言ってお茶を濁してる」としか思えねぇだろうが、俺からもそれ以上伝えられることはない。

 一応調査という形で受けはしたが、これで依頼達成だなんてとても言えねぇから、報酬はもちろんもらわない。その代わり、もしティド絡みで怪しいことがあったらすぐに連絡をしてくれ、とは言っておく。向こうとしても、そもそもティドが逃げたことを俺たちに隠していた負い目や、ハナから何かしら成果が得られると思っていたわけでもないだろうことから、それ以上の話はなかった。

 

 くだらねー事で時間を取られたとの徒労感はあるが、ただ、ティド……の生き霊が、何故脈絡もなく「裏切り者」なんてな話をしたのかはさっぱり分からねえし、気になるっちゃあ気にはなる。

 まあ、そもそも奴自身が、欲と逆恨みで裏切り者になったクズ野郎だから……てなだけかもしれねぇがな。

 糞ッ……やっぱロクな薬じゃねぇな。もやもやだけが無駄に残りやがったぜ。

 

 バールシャムでの諸々も済ませて再び農場へと戻ると、なんだかちょっとばかし騒がしいことになってやがる。

 何でも、アールマールの密林地帯で山火事が起きて、結構な被害が起きてるらしい。

 

 農場の位置からだと結構な遠目になるんだが、確かにうっすらと煙がたなびいてるのが見える。それも、何本もだ。

 

「おお、マジー、ありゃ結構ヤべーぜ!」

 慌てるカシュ・ケンに小作人達。

 

「確かにヤバそうだが、別にここまで延焼する……ってな勢いでもねーんだろ?」

「や、そりゃそうだがよ。なんか、俺がバナナ酒の原料の仕入れで契約しているバナナ園が、位置的にもヤバそーなんだよなあ」

 一応うちの農場でもバナナの苗を貰って育ててはいるが、正直あんまり出来が良いとは言えない。土地なのか育て方なのかわからないが、まだまだ課題があるし、量も足りてない。

 カシュ・ケン特製の蒸留バナナ酒は一押しの商品だから、品質にはこだわりもある。なのでアールマールの密林地帯への入り口都市、サーフラジルを越えた先にあるバナナ農園と契約し、原料となるバナナを買い付けている。

 でまあ、そのバナナ農園の方角で起きた森林火災だ。確かに不安にゃあなるわな。

 

「こんなところで眺めてても埒があかねーな。

 アスバルに空からでも見てきてもらうか?」

「ええ~? やだよ~、煙いじゃんかよ~」

「高い所からで良いんだよ」

「それにお前、ここのバナナ酒、めっちゃ女に配り回ってんだろ? 原料無くなったら配る分になんか回せなくなんぞ?」

 ナンパに使えるならなんでも使う、とばかりに、酒造りには一切協力しないくせに、倉庫のバナナ酒をコッソリ持ち出しては町で振る舞い酒をしていたアスバルに、それが発覚して以降はキチンと対価を払わせている。

 まあ、アスバルのおかげで結果的に倉庫や畑の防犯設備が充実したのは皮肉な話だ。ダーヴェもカシュ・ケンも、今度は色んな仕掛けの防犯設備を考案し作ってもいる。

 

「うぇえ~、分ぁ~かったよ。そんかし、何本かタダで寄越せよな!」

 渋々ながらも翼を広げて飛び立つアスバル。

「シブチン、アスバル。あいつには出来損ないの失敗酒で十分」

 見送る背中にそう毒付くのを忘れないムーチャだが、

「けどよぉ、実際あいつの無駄に広い交友関係で酒配られるのって、意外と宣伝になってんだよなぁ。本人はそういう形で貢献しようなんて気はさらさらねぇだろうけどな」

 俺達の中じゃあカシュ・ケンとアスバルは、それぞれに交友関係が広いんだが、その分野がちょっと違う。

 

 カシュ・ケンは各都市の職人、商人、生産者との人脈をきっちりと広げてるが、アスバルのはもっと上流階級や遊び人に芸能芸術方面……有り体に言えば金回りのいい消費者層だ。

 以前は場末の酒場や賭場なんかが多かったが、最近じゃあ各地の有力者や商人たちのサロンなんかにもお呼ばれされてるらしい。そこであの見てくれで【魅了の目】まで使ってるもんだから、いつかお偉いさんの奥方の間男かなんかやらかして刺されるんじゃねえかと話してる。

 

「そうだな、俺の方も後で“砂漠の咆哮”の野営地にでも行ってちと情報集めてくるわ」

「助かるぜ、マジー」

「ンフー、ワタシも集めておくだモー!」

 手を挙げてそう言うマハ。

 その横で、妙にむっつり黙って山火事の煙を見上げていた巨漢、犀人(オルヌス)のダーヴェが、

「……柵の、強化を、じでおぐが」

 と言う。

 

「何だ? 何か不安か?」

 と聞くと、

「山が焼げるど、獣が住処を失う。ごっちにまで降りでぐるがもじれない」

 と。

 なるほど、確かにな。

 

「おう、そうだな。他にもこの機会に、色々見直しておいた方が良いかもしんねーなあ!」

 言いつつ、カシュ・ケンは、ダーヴェと二人、片足義足のロノジーやら何人かの小作人達を集めて、午後の作業として補修点検のプランを立てる。

 

「カシュ・ケン! それも良いけどよ、結婚披露宴の方もあるんだから、作業に熱入れすぎて予定ズレ込まさせるなよ!」

「分かってんよ!」

 

 ロジウス・ヴォルタスとの合同でやる披露宴は東海諸島まで行くが、そこまで同行して行けるのはごく少数。なので事前に農園で身内だけのささやかな結婚式……と言うか、単なる宴会を行うことになっている。

 基本の準備はアリオやらフラビオ、リムラ三兄妹にクィ・レン爺さんなんかがやっている。

 ま、俺らがカシュ・ケンの奴をお祝いするワケだから、カシュ・ケン自身は特にやることは無いんだが、雑事にかまけて予定がずれ込んだりしたら本末転倒だからな。

 

 ▽ ▼ ▽

 

 農園に残っても特にやることがなかった俺は、昼前にはマハ等と共に“砂漠の咆哮”のラアルオーム野営地へと行って情報集めをする。

 既に森林火災対策の為の依頼も入って来てるが、まあこりゃ害獣退治やら商隊護衛やらとは勝手が違う。なかなか受けるのも難しい。

 

「んなー? ルチアが居るだナーも?」

 マハが目敏く……いや、鼻敏く匂いを嗅ぎ付け指し示す先には、南方人(ラハイシュ)の女戦士、“漆黒の竜巻”ルチアだ。

「よう。山火事関係の依頼受けるのか?」

 そう聞くと、

「前に護衛を頼まれたサーフラジルの法務官が、妻と愛娘を急ぎラアルオームに避難させたとかで、その護衛を頼まれた」

 とのこと。

「なるほど。サーフラジルまでは行かないのか」

「ああ」

 法務官自身は町を守る為にも逃げ出せないが、同様に避難して来てるサーフラジル住人は少なくないらしい。

 

「私の人選で他にも数人の護衛を雇うよう頼まれてる。お前たちが受けてくれるなら助かるんだが」

 マハ、ムーチャ、俺、と、ルチアからすれば丁度良く実力を知ってる古馴染みが揃っている。その提案はなかなか美味しい話じゃあるな。

 

「法務官、払いは良いか?」

「かなり」

「フフン、ツイてる。マハ、受けろ」

「ンフー? 護衛~? んん~、あんまリ、面白く無さそーだナー」

「受・け・る!!」

 

 たいていの猫獣人(バルーティ)は、期間を決めての護衛任務にはすぐ飽きる。特にそう言う猫獣人(バルーティ)気質の強いマハは露骨に気乗りしてないが、法務官の支払いの良さをアテにしてるムーチャはかなり乗り気だ。

 

「マ~ジュ~? アナタ、どーする~?」

 そうマハに話を振られて思案。

 確かにあのサーフラジルの法務官は金払いが良い。前にルチアの依頼で法務官の娘を助け出したときも、かなりの額が渡された。

 だが、俺としちゃあラアルオームでのんびりと護衛をしてるワケにも行かねぇ。危ない所に首を突っ込みたくは無いが、ここで十分な情報が集まらなきゃ、サーフラジル方面まで出向いて情報収集しなきゃならん。

 

「俺はちと受けられねーが、マハ達には丁度良いンじゃねーか? それに、サーフラジルから来る連中からあっちの話聞くにゃ丁度良い」

 

 或いは、ここでの情報収集はマハ達に任せて、俺は火災が広がりすぎる前にサーフラジルへと出向いておくか……だな。

 

「私としては二人に来てもらえると助かる。なにせ護衛対象は箱入りのお嬢様だ。できれば男よりも女の護衛の方が良い」

 ルチアのその言葉に、渋り気味だったマハも考え直す。

「ンフ~……仕方ないナー。ワタシがお助けしてあげるのだナーモ!」

「待て、まず、報酬と条件!」

 マハのマネージャー役とも言えるムーチャがそう交渉に入る。後は三人におまかせだな。

 

「それじゃ、俺は他を当たって情報を集めてくる。今夜は一旦農場に戻るつもりだが、何かありゃ使いを出すから、夕方前に落ち合えなかったら先に戻っててくれ」

「分かったー!」

「ワタシ達もそのまま護衛任務に入るかもしれない。その時はワタシたちも農場に使いを出す」

 

 俺はそこでマハ達と別れ、別の所へと移動。

 ルチアによるとスナフスリーは今はまたボバーシオ方面で、コッチにゃ来てない。

 見知った顔では、サルフキル、ルゴイ、レイシルド等の反リカトリジオス同盟の連中に、何人かの猛き岩山(ジャバルサフィサ)の勇士と元少年兵達も居た。

 どちらも、当然ならがらアールマール方面の情報は特にない。

 廃都アンディルで知り合った反リカトリジオス同盟の中に、猿獣人(シマシーマ)でクァド族の戦士が居たが、そいつも特に今回の森林火災の事は知らないらしい。

 

「俺もよぉ、気にはなっちゃあ居るンだがよォ~。ただ、俺は地元出る時に、あっちの縁はほとんど切れッちまったンだよなぁ~……。

 ほとんどのクソ連中は、焼け死のうがどうなろうか知ったこっちゃあねーんだが、気になる恩人も居るしなァ~」

 全身はやや薄茶色の体毛だが、頭部の真ん中から背中にかけてが見事な銀毛に覆われたそいつは、名をファーディロンと言う。普段は比較的のんびりした態度なんだが、結構激しやすくキレやすい。長身しなやかな体格で得意な武器は棍。顔の真ん中に大きなバツ字の傷があり、会う度に俺の顔の傷と大きさ比べをしたがる。

 “砂漠の咆哮”に居る猿獣人(シマシーマ)は、半分は訳ありで半分は楽天家のお調子者だ。コイツに関しちゃ、本人は決して口にしないが、訳ありかつお調子者……てなところだろう。

 

「お前等、そんなに気になってんなら火災救援関連の依頼、受けてみるか?」

 “鋼鉄”ハディドがそう振って来るが、正直乗り気はしねぇな。

 

「実際どんな依頼あんのよ?」

 ファーディロンが聞き返すと、

「一番多いのは伐採だ。あちらで指揮官について、指示された場所の木を切り倒しておく。そこから先に火災が広がらないように……ってとこだな。

 こいつは仕事そのものは難しいわけじゃないから、経験の浅い団員にも手当乗せて行かせてる」

 

 なる程、燃え移る木々が無くなれば火災も広がらない。火の最前線に行くわけじゃねぇから、そこまで危険ッてワケでもない、と。

「他は何があるんだ?」

「ルチアも指名で受けたが、避難するお偉方や金持ちの護衛や、財産の警備……だな。

 今のところ街中まで飛び火するってことはなさそうだが、特に荘園別荘なんか持ってる金持ちやお偉方にとっちゃあ、なかなかおっかねえ状況だ」

 まさにルチアに指名依頼した法務官がそれだ。

 家族や自分自身が避難する他にも、 家人が移動し手薄になった所に盗みに入られちゃ困るし、何より町から離れた別荘に溜め込んだ財宝が焼け落ちたら一大事だ。

 だから、結構なお荷物とともに避難してきてる奴もいるし、手薄になる別荘そのものにも警護を増やしたい ……と。


「ま、めぼしいのはそんなもんだ」

「木々が燃え盛ってるところまで行って消火するみてえな、最前線の危ねーヤツはねえのか」

「やりたいのか?」

「なワケねーだろ」

「そもそも出来もしねえだろ。基本的にそういうのは、水魔法を使えるシャブラハディの神官連中の仕事だ」

 

 言われるまで忘れてたが、そういや猿獣人(シマシーマ)の中でもシャブラハディと言う民族の連中はそこそこ魔術が得意な奴らで、アールマールじゃ結構な特権階級。ルチアに指名依頼をした法務官もそのシャブラハディ族。そいつ自身が魔法を使えるかどうかは知らねえが、確かに消防車みてえなごつい機械がないこの世界じゃあ、「魔法で火を消す」ってのは一つの手か。

 と思ってると、

「まあ、放水機を実際に動かすのは、別の連中だろうけどな」

 とハディドに補足される。

 

「放水機?」

 と、オウム返しに聞き返すと、

「俺も現物はよく知らん」

「アシャバジの作った機械だよ。台車に乗ったでけー樽に水が入っててよ。二人がかりでこう ……上についた棒をキコキコやって、ホースの先からぶあ~、ッて水が出ンのさ」

 ファーディロンの身振り手振り交えた説明でなんとなくイメージできなくはないが、実際の構造がどんななのかはよくわからない。何にせよ、水そのものは川や井戸から運ぶか、水源が遠ければ魔術で作り出し、実際の消火活動は主にクァド族の火消し力夫と呼ばれる連中が担当する。町中の火事ではだいたいそう言う体制らしい。

 

「アールマールの密林地帯は、よく火事が起きるのか?」

 そういう消防団みたいな組織が完備されてるとなると、昔の江戸みたいに「火事と喧嘩は江戸の華」ってなぐらい火事が多いのかと思うが、ファーディロンによるとそうでもないらしい。

 

「俺たちクァドやアシャバジなんかは大樹中心の生活だから、火事には敏感だがよ。今回みてーな山火事は、そうしょっちゅうあるもんじゃねーぜ。

 枯れた木材中心のやつと違って、生木をそのまんま利用する大樹街は燃えにくいしな」

 

 との事。

 そう考えると逆に言えば、

「……めったに無い大規模森林火災な分、対応が遅れて後手後手に……てのも……」

「ああ、そりゃ十分あり得る話だぜ~」

 

 どうも、そうそううかうかしてられねーのかもしんねーな。

 さて、どーしたもんか。一旦農場に戻って、人手を集めてから契約してるバナナ農園へ支援を送る……てのも一つの手だ。

 或いは、それが無駄に終わるとしても、ここで何人か雇ってさっさとサーフラジルへと向かっちまうか……、と。

 そう思案してる所、思いも寄らぬ声がしてきた。

 

「あ……てめぇ、ファーディ・ロン!?」

「……てめーこそ、糞金毛野郎じゃねぇか、あぁッ!?」

 

 サーフラジルの人足頭、“銀の腕”の手下の一人。 金毛逆毛、傷だらけの顔をしたクァド族のシャーウ・ロンだ。

 

 

 

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