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遠くて近きルナプレール ~転生獣人と復讐ロードと~  作者: ヘボラヤーナ・キョリンスキー
第二章 迷宮都市の救世主たち ~ドキ!? 転生者だらけの迷宮都市では、奴隷ハーレムも最強チート無双も何でもアリの大運動会!? ~
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2-154.ピクシーのピート(5)「チョーーーーーー騒がしいの」


 

 なんて言うかもう、チョーーーーーー騒がしいの、最近!

 例えばこの間なんか、夜中にまーわいわいぎゃあぎゃあうるさくてさー。何よー、夜更かしはビヨウのテンテキよー、とか部屋のソト見に行ったら、アデアデとか眉チビとか何人もが集まって、例のインキみじめ男を取り押さえてギッタンバッタンしてんの。

 何よ、ケンカー? 止めなさいよねー、夜中にー、とか文句言ってやったんだけど、何かテキトーに追い払われてさ。

 もっと文句言ってやろーかとも思ったけど、眠いしムシしてやったりしたワケ。

 

 そしたら今度は何かあの……疵顔ちゃん? あの子、死んじゃったらしくてさ。まあニンゲンとかってホントウにカンタンに死んじゃうからねー。もうアタシのパタパタでも治らないのよね。何せヒタイの真ん中に穴空いちゃってたもん。

 そんで戻ってきたアホ達もまたなーんかインキみじめ男みたいになっててさー。

 まあニンゲンとかってたいていそうよね。誰かが死ぬとインキ虫になるの。シカタナイわよ。

 

「……疵顔のハコブも居なくなっちゃったのね」

 とか、ぶよぶよ顔のコボルトまでぶつぶつ言い出して、やーねー、って。インキ虫やーねー、ってさ。

「何よー、アンタでもインキ虫になるのー? ぶよぶよ顔のくせに、何なのよー?」

 とか文句言ってやると、

「羽虫の言うことは良く分からないのね。ナップルは使用人の管理が仕事だったから、薬や羽虫の粉で沢山治したのね。疵顔ハコブはナップルが治してあげた中では一番古くから居たのね。猫顔も鼻角男も毛むくじゃらも、犬肉も鉄ウロコも火傷顔もぶくぶくデブも、もうみんな居ないのね。みんなどんどん居なくなるから、ナップルはなかなかシャーイダールに命じられてた仕事が終わらないのよね」

 とか、何だかさらにぶつくさ言うの。

 というかぶよぶよ顔のあだ名付け、センス悪過ぎよね。もうちょっとピートちゃんを見習いなさーい。

 

 それからひげもさとお供の丸っころが、青肌のダークエルフ連れてきたりして何やらモソモソと内緒話。

 まーた何か悪巧みしてるわねー! と、おもしろ半分に盗み聞きしようとしてたら、ごテーネーにケッカイまで作ってんの!

 キィーーーー! ちょっと! この愛らしさ宇宙級のピートちゃんをタイクツ死にさせる気!?

 どーにかして盗み聞きしてやる! とのケツイによって、フダンならゼッタイ入らない岩壁のせっまーいスキマとか通って聞いてやったんだけど、なーんかオウセイがどーの、ギカセイセイミンススギだの、レンポーだのキョーワコキだの、何言ってんのかサッパリ分かんないワケ!

 チョーーーーーー、タイクツ!

 

 ソンナコンナだのやってて、ションボリしてインキ虫だった連中もだんだんゲンキ虫になってきて、まあまあヘイジョーウンコーしだすわけ。

 汚っ娘は相変わらず汚いし、顎とんがりは相変わらずおバカ丸出しだし、ボンヤリ男は毎日マリョクジュンカンの訓練ばっかでつまらないし、細目っ娘は最近どっかに出掛けてばかりね。出掛けてばかり、は、チリポンにひげもさに、丸っころも出掛けてばっか。

 垂れ目っ娘は他の奴らよりか長いことインキ虫してた。インキみじめ男のインキが移ったんだと思われるわ。インキ虫のカンセンリョク、あなどりがたし、よ!

 

 アデアデは眉チビについて回ってコマヅカイみたいな日々で、見てる分には一番オモシロいわね。

 元々あんま面白みのなかった新入りの芋顔くんは、マジメーに剣の練習ばーっかしてて、たまにイタズラしてやってたら、何かだんだんこっちの攻撃かわすの巧くなって来ててちょっとイラつく。マジメっ子ヨニハバカルってヤツね。

 

 変顔丸子ちゃんは、シバラク見ない内にウィスプ引き連れるよーになってて、しかもそれをヒョウイさせる技とか身に付けてんの。チョーウケるんですけど? 火の玉っ娘に名前変更ね。

 

 でもまぁ、何だかんだでオモシロい連中よね。それにアタシの魔法の粉がないとやってけないワケだし、もうしばらくは遊んでやってあげててもいいかな、とか、そう思うワケよ。

 

 

 

 そんなある時、いつもはチョーーーーーー汚ったない汚っ娘ちゃんが、何かチョーーーーーーいい匂いとかさせてるわけ!

 ビックリよ!? 何か肌もツヤツヤピカピカで、髪もサラリのふんわふわ。

 何、ちょっと、どんな魔法!? て、聞いたら、横でニヤついてた細目っ娘が、

「良いでしょー? もー、スティッフィ連れてくの結構大変だったんだけどさ! さっすが、マヌサアルバ会の美容法よ!

 全身マッサージに入浴に垢落としに洗髪に……見てよ! アタシだってこの肌艶!」

 とか、もー普段から細い目を、ぜんぜん見えないくらい細くしてニヤニヤ。

「……はァ、糞だりぃわ。何が式典だよ、面倒臭ぇー!」

 あら、見た目変わっても中身全然変わってないわね。良いわよ、そのズボラっぷり! 好ましいわよ!

 

 顎とんがりとかボンヤリ男とか、チリポンまでも何かチョーーーーーーびっくりしてて、その顔とかもけっこう笑える。

「……マジかよ、これが人間の形をした吸盤粘体(スライムサッカー)と呼ばれたスティッフィかよ……? 」

「アダン、そんな事を言うのは君だけだし、二度と言うな……」

「おいアダン、マーランをガチギレさせるんじゃねえぞ」

 

「まー、しかし確かにこりゃたいしたもんだな。後はボーマで貰った絞り染めに、レイフに貰った魔糸織物と、ドワーフ合金の装身具を巧いこと使えば、一国の姫君にすら見えるぞ」

 ひげもさも何だか上機嫌。やーねー、ウカレポンチキで。

「はぁ~、何が姫君だよ、ばっかくせーわ」

 これを汚っ娘本人が言うんだから、やっぱ面白いわー。

 

 それでも実際、汚っ娘の他の連中も、それぞれおめかし着飾りしてたりするのよね。アデアデや火の玉っ娘ちゃん、眉チビとかもだし、男共もそれぞれに鮮やかな布地のトーガやチェニックにキンキラ装身具。

 んん? と、そこで気付いて、

「何、ちょっと何よ? まさかお祭り!? お祭りなら連れて行きなさいよね!?」

 と、一言。お祭りなのに留守番とか、それ、チョーーーーーー許されんわよ!?

 

「祭りじゃねーよ、式典だっつってんだろ?」

「何よソレ!?」

「えーと……まあ、建国の式典……かな?」

「ケンコク?」

「ああ。この廃墟と瓦礫の王無きクトリアが、新たに共和国としてやり直すための式典だ」

「ま、それにあわせて芸人だの出店だのも増えるから、結局は祭りみてーっちゃ祭りみてーなもんだよな! うっへっへー」

 

 祭りみたいなら、それはもう祭りよ!

 連れてけ連れてけとわーわー言って、「迷子にならないよう必ず誰かと一緒にいろ!」とか言われて、アタシもお出掛けモード。

 てか、迷子とかチョーーー失礼ね! ならないわよ!

 

  

 ま、ひげもさとかが言うには、新しいキョーワセーの国を創るとかでさ。

 その為にセンシュツされたギインたちとかが集まって、何かバーン! とやるんだって。

 何を? ん、何かを!

 ギインって、帝国のゲンロウインとかのアレでしょ? とか思ってたけど、ちょっと違うらしいのね。ま、何でもいいけど。

 

 はじまりはレイちゃんとかアデアデが呼んでるダークエルフが、古代ドワーフが作った魔力溜まり(マナプール)の循環を正すシレンとかいうのをタッセイしたもんで、その古代ドワーフ遺跡のカンリニンだった知性ある魔術工芸品インテリジェンス・アーティファクト……ていうか、“知性ある塔”に「アンタはエラい! 今日から王さま!」とか認定されたかららしーんだけど、やっぱ余所から来た良く知らない奴がトツゼン「オッス! オラ、王さま! 今日からおめーら統治すっぞ! 言うこと聞かねえとぶっとばすかんな!」とか言い出しても誰も認めたりしないじゃん? ま、フツーは?

 そんだから、ひげもさとかチリポンとかと色々ソーダンして、いっそ色んな奴ら巻き込んじゃえ! みたいなノリで始めたらしーの。

 まー、テキトーね、テキトー。

 そんなテキトーなノリのケンコクのシキテンなわけ。

 

 □ □ □

 

 実際、ソトへ出るとまさにお祭り騒ぎね。

 どんちゃんどんちゃん賑やかで、出店もあるし大道芸人もいるし、あとスリや喧嘩する酔っ払いもうじゃうじゃ居るし、変態も居てボコボコにされてるし。

 甘ァ~い果物の香りがするから見てみると、あの変な城塞に住み着いてたゴツゴツ頭の奴が、

「おお、お嬢! いやー、べっぴんになったやないかい! ホンマ見違えたでー!」

 とか、屋台からダミ声で話し掛けてくる。

「でへー、ええやろ? これな、レイちゃんのくれた魔糸織物なんよ! めっちゃ肌触りええねん!」

「ほー、そらええなあ。なんぼくらいで売れるンやろか?」

「ちょっ! あかんて! レイちゃんからのプレゼントなんやから、売りもんちゃうからね!」

「さよかー。もっとぎょうさん作れへんもんかいなー。ま、とりえず南国フルーツ盛り合わせや、持ってきぃ!」

 あら、良い心がけね。うふぅ~ん、感心感心!


 

 大路を進んでいると今度は黒革の上着を着たむさ苦しい連中が来て、

「お、おい、ちょっと待て!?」

 とか、呼び止めてくるの。

「何だよパスクーレ。遅れっちまうだろ?」

 チリポンが嫌そうにそう返すと、

「いや、その、何だ、そこのその……長身で、う、美しい、女性は……?」

「あぁ? 何だよ?」

「……スティッフィだよ。何度か会ってるだろ?」

「へ? あぁ!? スティ……? あ、あの汚……?」

「うっせーな、アタシが着飾ってんのがそんな珍しいかよ、あぁ!?」

「ぐ……スゴく……イイ! も、もっと怒鳴って、罵ってくれ……!!」

「……い、行こう、スティッフィ。何だか分からないけど、け、汚される……!」

 バタバタと早足で逃げていく。あー、ちょっと面白かったのに。

 

 

「おぉ~、みぃ~んな、きれいだねぇ~」

「ええ? やだ、本当! 何それ、どーしたらそんな髪艶出るの!?」

「ふふーん、これねー。マヌサアルバ会の最高級コース! ちょーーーーうスゴかったのよ?」

「マジで!? あー、もう! アタシ等その1ランク下にしちゃったー!」

 顔長ひょろりとそのお仲間たちね。こいつらもなかなか浮かれた格好してるわよ。

「おう、JB」

「おう、グレント。

 てーか、アティックとティエジはどーした?」

「アティックはゲラッジオ達と屋台やってるぜ。ティエジはもう先に行ってる。何せまあ、議員だしな」

「あー、そうか。結局南地区はティエジが議員になったんだっけか」

「しかも狩人ギルド長兼任だからよー。めちゃ忙しくしてっぜ」

「おめーもいつまでも“見習い”やってらんねーな」

「へっ! ざけんな、俺ゃもう一人前だ! フリオから今、吹き矢も習ってるしな」

「ほー。まあフリオが狩人ギルドの指導員になっちまったのは、地下街連中にはちょっと痛かったみてーだがな」

 何かわちゃわちゃしながらさらに進むわ。

 


「うわ、姐さん!?」

 驚いたような声をあげるのは───えーと……誰、こいつ?

「あー? シモン……に、何だテメーら、サボリかー?」

 眉チビが睨みを効かせるその連中は───えーと、何だったけ? 確か前は銀のナントカとかいう店で働いてたけど、そこのヤトイヌシ達がトツゼン居なくなってトホーに暮れてたところを拾って雇ってあげた連中ね。うん、多分。あんまし会わないから知らないけど。

 ボーマとかとの荷物運びやら護衛やらと、あとは今は眉チビが仕切ってる地上でのお店やらで働いてるとかのはず。

「いやいや、店の方は交代制でやってますから! 俺ら今休憩時間で……なァ!?」

「そ、そうですぜ、ブルの姐さん!」

「うっせーなあ、その姐さんっつーのヤメロっつってんだろ?」

「いやいや、それは……」

「やっぱ姐さんは……ねえ?」

「ちっ……もういい、勝手にしろ! あと、あんま飲み過ぎるなよ!?」

「分かってやすって、姐さん!」

 あらまあ。眉チビも子分が増えて楽しそうね。

 

「おお」

「ん? おおぅ、何でぇ何でぇ、こりゃまた噂のシャーイダール一派ご一行様じゃねえか、ええ?

 どうしたいどうしたい、またえらい着飾っちまってよ、ええ? おいおい、聞いてるぜ聞いてるぜ、実際のとこよ?

 今回のクトリア共和国の建国、お前さん方が裏で色々噛んでるっつーじゃねえのよ?

 自分達ゃ表に出ねえで裏から国を牛耳ろうったー、こりゃまたとんでもねェこと狙ってやがんなぁ!」

 何よ、ぬぼーっとしたのと、妙ーにやかましいのが出てきたわね。

「おいミッチ、そういう与太話をそこらで吹くの止めろよな?

 お前が変な噂立てだすと、えれぇ広まるンだからよ」

「おいミッチ! それよかお前、『シャーイダールの探索者で一番の色男はアダンだ』って書くって約束したろ!? 何でまだ書いてねーんだよ!?」

「おいおいおい、人聞きが悪いね、お二人さん。俺ぁ『クトリアの歩き方』にゃあ真実しか書かねえのよ?

 だからよ、な? 新しい評議会と、こう、うめぇこと食事会でも何でも出来るようによ、取り持ってくれよ!」

「お、ガイド本の記事にするんなら、名誉顧問の俺がネタ提供してやるぞ?」

「え? まあ、そうな、それはそれで助かるけどよ……」

「とりあえず式典見に行ってそこでなんとかネタを拾っとけよ」

「ん? おお、いけねえ、いけねえ、もう三の鐘になっちまうか!?」

「……あいつ、雑貨屋よりガイド本作りの方が本職になってねえか、最近?」

「趣味の閾を完全に越えてるよねぇ……」

 

 進むにつれて人の波もどんどん増えてくるわ。

 内城門前の広場に着く頃には、もう人まみれ人だらけで、まあよくこんなほぼほぼハイキョの汚い街にこれだけ人が居たものね、とか思う。

 さっきの黒革服着たむさ苦しい連中のお仲間と、バカでかいドワーフ合金の金ピカゴーレムが人の山を押したりさばいたりと大変そうよ。

 

「おお! JBに、……んん? スティッフィか! みんな居るなあ! ははは! 元気しとるかぁ!?」

「声でけーよ、イシドロ」

「何ィー!? 周りがうるさくてよく聞こえんぞォーーー!?」

「叔父さん、声、大きすぎー!」

「んお? おお、ダミオン! 最近は探索の方はーー、どうだー!?」 

「最近はーーー、そんなにーーー、探索のーーー、仕事はーーー、少ないけどーーー」

「何ィー? 聞こえんぞーーーーー!!」

「おい、ダミオン、いいからあそこまで近付いて話してこい」

「ええ? 広場の真反対ですよ!?」

「うるせえ、いいから行け!」

「はい、はい! 分かりました! もう! 叔父さーーーーん! 今、行くからーーーーー!」

 芋頭くん、追い出されるみたいに人の波の中にマイボツしてったわー。

 

「おお、友よ、これは奇遇ですな! ははは!」

「おお? ああ、サラディーノか。最近なかなか羽振りが良いらしいな」

「ははは、何をご冗談を! 飛ぶ鳥落とす勢いとまで言われる皆様方にはとうてい及びませんよ!」

「マランダが言ってたぜ。あんた今、『牛追い酒場』のサービス係じゃ人気ナンバー1だ、ってよ」

「いやいや、ワタクシ如き卑小なる者は、みなさまのご厚意により生かされているようなものです」

「そういやよ、デレルの奴も『自分こそ真のナンバー1だ!』とか吹いてやがったよな?」

「デレル……デレルねぇ~」

「あいつ、結構口ばっかしだからなァ~」

 デレデレとかってのは、アタシはあんま会ったことないから良く知らないけど、何かやたらと悪口はよく聞くのよね。

 

「あの糞詐欺師野郎がナンバー1なんて、あり得るわけねえでしょうよ」

「んん? 何だ、マルメルスじゃねえか……て、おい、ちょっと待てそこ居るの……」

「……あ、これはどうも、皆さん」

「ち、ちょっと待て、何でマル公がクロエと一緒にこんなとこ居ンだァ!?」

「え? いや、まあ、まあ、休憩時間なんで式典見にこようかって……」

「聞いてンのはそこじゃねェッ!?」

「あー、アダン、知らなかったの?」

「何をッ!?」

「クロエとマルメルス、今一緒に暮らしてンじゃん」

「マジでか!?」

「あ、はい」

「う、ぐぐ……っそー……!」

「オメーにゃ関係ねーだろ」

「せや。器ちっさ過ぎやん」

「ア、アデリアちゃん、そーんなー」

 顎とんがりはやっぱ顎とんがりね。顎が重すぎて頭のバランスおかしいから、アホ過ぎちゃってるのよ。

 

 なーんか、だんだん疲れてきちゃった。

 ていうか人多すぎよ! 

 ぼけーっと前の方見てたら、まあ広場の真ん中辺りとかにステージがいつの間にか出来ていて、そこに何やら何人か登ってアーダコーダ喋ってんのね。

 ふーん、アレがギインねー、って。まあちょっとだけ見てみていたの。

 あいつは顔長にょろりのところのちょろヒゲね。

 んー……あっちのもっと汚っちいボサボサヒゲは知らないなー。

 目つきの悪いふっくらした黒髪の女が居るけど───あー、あのナントカ酒場のボス女ね。マランダとかいうのの母親よ、たしか。

 あのひょろっとして赤い服をぴらびらさせてるのは、劇場の奴よ。

 うすら禿のチビっこおじさんに、白ずくめで仮面をしたやつとかもいる。

 そんで───アハハ、笑えるわー! ちょーむすっくれてる火の玉っ娘もね! 何でギインとかなっちゃってんだか!

 

 あとはメーヨコモンとかいうのに、ひげもさとレイちゃんとかいうダーエル娘と、背の高い色黒の女ね。アタシから見てもけっこうな光属性魔力もってる感じの。 

 

 ま、そんなレンチューが、代わる代わるベラベラほがほが話してるの。

 けど、もうチョー退屈! 何もオモっシロいこと言わないし!

 そんなんで、もう飽きてきたしツマンナイしで、細目っ娘が頭に巻いてる布の中に潜り込んでキューケー。

 何言ってるか良く分かんないしねー。

 

 

 そんで、うとうとしかけていたところ……不意に声をかけられちゃったのね。

 

「おやおや、麗しの眠り姫。さすが、この僕が最も信頼する使い魔なだけあるね」

「むひゃっ!?」

 あー、も、ビックリした! ビックリしちゃって変な声出しちゃったけど、いやいや、そんなことよりね、違うのよ。

「あ……」

 あ、よ。あ。あー、ときて、次は、るー、ね。そしてそこから、じー、と。ね。つまり……、

「主サマ!?」

 そーそー、そーなの。アタシの主サマなのよ、これが!

 

「主サマ、何よもー、いきなりー! ビックリしちゃうでしょー!」

 と、ぷんがぷんがと軽ぅーく拗ねてみたりしてね。

「ああ、ゴメン、ゴメン。ピートがあまりに可愛らしく眠っていたからね」

 あら、もう、本当のことばっか言うんだからー。

 

 アタシは細目っ娘の頭の布からふんわり飛び出して、くるんくるんと跳ねるように踊るように回ってから、主サマのふんわりした帽子にちょこんと乗っかるの。

 いつものように鮮やかで綺麗な赤。アタシの服は柔らかな若葉色だから、そこに座るとちょー目立つ。

 けど主サマの声も存在も、多分今はアタシにしか聞こえてないし見えてない。何てったって主サマは、幻惑魔法もスゴ腕なんだしね。

「さて、それにしてもさすがだね、ピート」

 綺麗に整えてある口髭を軽く撫でるようにしながら、主サマは前の方へとぐるり視線を送る。

「んー? そうお? いつものことよ?」

 何のことを「さすが」と言ってるのかは分からないけど、いつだってピートちゃんは「さすが」なのよ!

「いやいや、たいしたものさ。こんなにも早く───我らが女王の使徒となり得る転生者達を見つけてくれるんだから」

 

 ふふん? そうだっけ? テンセーシャ? そうね、確かそんなシメーを受けてた気がするわ!

 


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