風香への思い
スローペースですが、ぜひどうぞ。
「この風はね、あの桜の木達を通ってきた風なの。だから、桜に囲まれた気分になれるんだよ。」
桜に囲まれる。そんなことを想像しながら思い浮かぶのはいつもこの幼馴染みだ。
「奏多は、ここでどんなことを考えてるの?」
それが言えたらどれだけいいことか。
「そうだね。時々頭に浮かぶ悩みについてかな。」
「えっ、悩み?奏多も悩むんだねぇ。モテモテのクセにー。」
モテモテなんかではない。本当にモテモテであれば、たとえ好きな人がいても、それで悩むことは無いんだ。
自分が本当にモテているのならば、自信を持って風香に告白できるんだと思う。
でも、自分にはできない。だからこうして桜風を浴びながら、いつも風香のことを考えている。
「そんな訳無いじゃないか、モテモテは、1人でこんなところには来ないんだよ。来るなら絶対に女の子と一緒のはずなんだ。」
すると風香は機嫌を悪くしたようだ。
「えーっ!じゃあ私はなんなの!?奏多と一緒にここに来た女の子なんじゃないの!?」
「僕はあくまで1人でここに来た。それで後から風香が来たんでしょ。」
「むーー!!とにかく奏多はモテるの!だからいろんな女の子を見てるといいよ。絶対奏多のことが好きだって人がいるはずだから。」
「そんなことして、もし違ったらどうするんだよ。『何こいつ、自意識過剰?』とかって思われたらモテるどころか嫌われるよ。」
「………だったら、違った時にどうにかなる子にしてみればいいんだよ。『もしかして、僕のことが好きなのかな?』みたいな感じで動きを見てみるの。それで奏多が好きかもと思う行動をしたら、その予測は正しかったってことで。」
ただの自意識過剰に終わる可能性が頭を埋め尽くすんだけど。
「………で、そのどうにかなる子っていうのはどんな子なの?」
すると、風香は突然顔を赤くしてしまった。
「例えばさ、その………けっこう前から仲が良くて、それで………」
けっこう前から仲が良い、か。それなら………。
「音羽さんとか?」
「なんでそうなるの!?」
そりゃあ、目の前の人のことを言えるわけないし。
風香が自分を好きかどうか、わかればいいんだけど、この感じだと、『さっさと女の子と仲良くなって、彼女作ってどっか行け』ってな感じでもとらえられるから、なんかどうしようもないな。
だからピアノが得意な音羽さんにしたんだけど。音羽さんもそこそこ前から仲が良くて、今でもよく話しかけてきてくれるからね。風香みたいに幼馴染みと呼べるほど前ではないけど。
「今日は、もう帰る。これから、奏多の家に持っていく物があるから。家で待ってて。」
風香が居なくなったあと、なんか風香が幼馴染みでなくなったような、そんな幻覚を感じた。風香が幼馴染みじゃなくなるなんてのは嫌だ。幼馴染みでなければ、たぶん僕は風香の隣にはいられないだろうと思ったから。
音羽さんは次出します。次はテスト終わって執筆スピードアップしてからということで。
ちょっとした遊びレベルですが、見ていただけるとありがたいです。