18th 途切れたカレンダー
途切れたカレンダー
詩:遍駆 羽御
夕暮れに照らされた病室 無口な空気に晒された二度と訪れぬ空間
僕は君の枯れ枝を握り締めて 必死に祈った
優しい瞳を隠した瞼はもう 見れないのかな 最後にもう一度
カレンダー捲っては楽しい思い出を振り返り 笑う
四月には桜の下で君の作ったお弁当を食べながら花より団子だったね
五月には深緑の眩しさに元気を貰いながら君と歩いた坂道
六月には傘を忘れて君と一緒に雨の中を駆け抜けたあの日が
一秒 一分 一時間 一日でも眩しく 煌めいて
ありふれた石が宝石に変わる瞬間 本当に大切なものを僕は知った
亡くしたが最期 届かない共有する歓び
触れたくて 抱き留めたくて 透明なものなんだねって初めて知った
カレンダー捲っては大好きな時間を味わおう 君と
七月には砂の感触を素足で楽しみ 母なる海の塩味を喰らったね
八月には君の浴衣と花火 どちらが綺麗? なんて議論したね
九月には夏の残り香に感傷を覚えつつ 秋の足音に気持ちは向かって……
気が付けば 君の体温が失われていく
まだ 足りない まだ 足りない
それでも 時計の指針は揺るぎない……
夜に塗りつぶされた病室 死の恐怖を抱く僕を抱く病室の闇
僕は君の痩せた掌を握り締めて 現実と闘って
優しい君の跡を涙で…… 汚さぬようにと ありがとうって
君の耳元に囁いた