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二重人格パイロット、銀河辺境砂漠型惑星にて  作者: サイリウム


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4/10

4:もう一人のアタシ



「にゃー!!! 放せにゃー!!!」


「うるせぇぞドロ猫。」


「あ、そっちの喋り方になってるにゃ!」



舌打ちをしながら、倉庫。ドレッドを収めるそこへと足を踏み入れる。


『アタシ』の提案から、ドロイドたちには店先ではなく倉庫内にこのドロ猫を叩き込むよう学習させているのだが、コイツが煩いのを忘れていた。確かに店先にこんなクソ煩いネコ吊るしていれば少ない客足が更に遠のくのも理解できるので、その選択は解らねぇでもねぇんだけど……。


そもそもただの盗人だし、適当に締めてどっかに捨てた方ががいいだろ。この星にアイツの言う人権なんぞ欠片も無いんだし。



(……後で『アタシ』からなんか言われそうだし、辞めといてやるか。)



アタシは人と付き合うのが苦手だ。


そのせいか対外的なのは全部あっちがしてくれて、その間アタシはずっと中に引きこもってるんだが……、コイツ。ドロ猫は別だ。小動物みたいで変に警戒しなくていいってのもそうだが、隠す必要がない。


二人で話しているところを見られたって理由もあるが、一番の理由は単にバカだからだ。おつむが弱い上に、過去に起きたことの大半をマルっと忘れてる。今みたいにきっかけがあれば思い出すこともあるが、頓珍漢なことを言う時の方が多い。


情報の信頼性が欠片も期待できない以上、コイツから情報を抜こうとする奴はいないはずだ。


……『アタシ』やドロ猫本人はまだ気が付いていないが、その額に薄っすらと手術痕が残ってる。へんな性癖の奴に捕まって耳と尻尾を付けられた際、頭も弄られたんだろうな。



「なんだかなぁ……。」


「にゃ?」



アイツが生きてたらしい2000年代じゃまだ人権ってやつが機能してたらしいが、この星じゃそんなものは無い。子供一人とっ捕まえて違う星に売っ払ったり、ほっつき歩いてる奴を眠らせて起きたら改造済みとかよくある話だ。


流石に町の中でも特段に治安が悪い地区に出向かねぇとお目に掛かれないらしいが、存在自体はしている。ドロ猫本人は気儘に楽しく生きているようだが、その被害者で間違いない。


普段盗人は『アイツ』がハチの巣にするか、アタシが切り刻んで現住生物の餌にするんだが、コイツは別だ。昔から犬猫が好きだったらしい『アイツ』の意思っていうのもあるが、アタシにも哀れみを感じる心ってのはある。



「はぁ……、別におしゃべりぐらいなら付き合ってやるから静かにしてろ。あと終わったら肉食わせてやる。」


「ほんとにゃ!?」



声がまた大きくなり『やったにゃー! ごはんたべれるにゃー!』とか叫び出してまたうるさくなったドロ猫にため息を付きながら、手元のデバイスで倉庫の機器を動かしていく。



(さーって、アイツも奥に入っちまったし、さっさとアタシはアタシの仕事を終わらせるとしますか!)



アタシたちが操る巨大ロボット、総称ドレッド。


人類が居住地を銀河全体に広げた際、発見した巨大現住生物へ対抗するために生み出され始めた鉄の巨神。最初は害獣退治がメインだったそうだが、次第に作業用や戦争用などのバリエーションが増え、多くのシリーズが生み出されていった。


そんな中の一つがコイツ、『鐵山』だ。



「頑丈さと稼働年数の長さが強みのメーカー。アイツが言うにはおそらくニホンってとこが起源らしい『風防』が作り上げた第十三世代の防塵特化作業機。」



最新が第十五世代な事を考えると型落ちも型落ちだし、そもそもミミズみてぇな害獣討伐に向かないただの作業機。元々ついてたジェネレータの出力もカスだったし、機動性もゴミ。砂漠っていうこの星の立地にぴったりな防塵性能はだけ高かったが、それ以外はクソだった。


中古で稼働年数も結構たってたからってことで各段に安かったが……、当時は失敗したって思ったよな。こんなもんじゃ仕事にならねぇ。


だから全部作り替えたってわけ。



「OSもハードも全部自作! モーションデータはアタシらの動きから取り直して、設計も大本から変更! アイツが持ってた知識から拝借して、骨格設計も変えてある! もちろんジェネレータは引っこ抜いて家の発電機にしてやった!」



人型ロボではあるが、何代も世代を重ねたせいで異様な形が増えてきたのがドレッドだ。この『鐵山』も元は4本腕だったし、最新型のカタログ見てると気持ちわりぃぐらい腕ついてる奴や、もう人型じゃねぇだろってのもある。


だがアタシの動きからモーションデータを取ったのなら、アタシの身体と同じにした方が動かしやすい。正確に言えば人と同じにしてやる必要があった。2対あった腕をばらして1対に集約したせいで太く成ったり、外部装甲や補助ブースターのせいでアタシとは似つかないがっちりした体には成っちまったが……、大本の骨格は全部アタシが大本だ。



「最近付けたホバー用の補助エンジンのせいでちと関節に影響が出てるようだが、そこも改善しちまえば完璧だ! あはーっ! やっぱ高みを目指すってのは面白いよなァ、おい! ドロ猫! お前もそう思うだろ!?」


「……zzzZZZ」


「…………こいつ。」



手ごろな工具でぶん殴ってやろうかマジで。折角説明してやってたのによぉ……。


まぁいい。とにかく今回の戦闘でホバー移動の有用性は証明できたようなもんだ。出力を上げれば真正面から向かって来るミミズの突撃を避けれた。回避性能は証明できたし、上手くやれば射撃も近接も上手くやれるだろう。



(だが、アタシらのコアはまだまだ余裕がある。)



この体に埋め込まれてるコアは、アタシたちの生存にだけ使用される。


しかし元々の出力が高すぎるせいか、途轍もない余剰が存在しているのだ。だからその分をドレッドの稼働や、ホバー移動、戦闘機動などに使ってんだが……。まだまだ余裕がある。ここまで挙げた内容だけで最新型の常温核融合炉が3個くらい空っぽになるエネルギーを使ってるが、欠片もコアに影響は出てねぇ。


確かに使えば使うほどコアに負担をかけてタイムリミットを削ってしまうことにはなるが……、緊急時に惜しんで死んじまったら意味がねぇんだ。余裕があるのなら、それを上手く使う方法を考えるってのが技術者の仕事だろう?



「何せ危険しかねぇからなぁ、この星。」



ミミズみたいな巨大現住生物に、武装車やドレッド使って襲撃掛けてくる賊。


アタシたちの秘密であるコアの情報を抜かれれば、どこぞの企業やこの星の軍とかもなだれ込んでくるだろう。露見しねぇよう注意してはいるが、それが力を蓄えない理由にはならねぇ。


コアの複製に関してはずっと頭に残っているが、アイツが言ってたように思いつかねぇ時は思いつかねぇんだ。今日はこの『鐵山』を新品同然に整備して、次の改造プランを練ることにするか。



「といってもほぼ機体は出来てるようなもんなんだよな~。プランがねぇわけじゃねぇけど、金がかかり過ぎる奴だから『アタシ』に止められる。足回りも軽い調整続ければ昨日みたいに岩に邪魔されるってこともなくなるだろうし……。」



となると、武装とかかねぇ?


アイツ専用の大型ライフルに新しい弾丸付けるもよし、脇の秘密兵器をちょっと改良するのもよし、アタシ用の新しい近接武器を作るのもよしだが……。あ、そうだ。アイツの記憶の中にあったアレ。ちと実験してみようか。


ビームの実体化の成功例とか聞いたことねぇが、過去の奴らが思いついてたってことは未来に生きるアタシが実現できないわけねぇだろ。



「っし! そうと決まれば基礎研究からすっか! おいドロイド……は休憩中か。おいドロ猫! 起きろッ!」


「にゃッ!? にゃんにゃ!?」


「飯食わせてやるから仕事しろ! 手伝え!」



昔の地球じゃ『働かざる者食うべからず』らしいぞ! アイツは優しいからただで餌付けしてくれるだろうが、アタシは違う! メシの分だけ働けドロ猫! まずはそこに立てかけてるドレッド用の武装全部横に避けてスペース確保だ!



「え、何にゃ!? 何するにゃ!?」


「うるせぇ! お前はアタシの指示聞いとけば良いんだよ! おらさっさと働けェ!!!」


「にゃぁぁぁ!!!」






〇ドロ猫

毎日元気に泥棒してる猫っぽい人間。たまにセファの所に遊びに行くが主目的が盗みなので、毎回失敗して吊るされている。しかし住処のある町に帰るとすぐに失敗したことを忘れすぐに何かと盗み(遊び)に戻っている(餌付けされてるせい)。偶に作戦を立てるが、欠片も成功しない。なお今回は滅茶苦茶働かされて、深夜からのお泊りコースになった様子。


しんどいにゃ! 働きたく無いにゃ! 不労所得ほしいにゃ~!!! でもごはんうまういにゃ。おかわり!


ちなみに『私』が元から犬猫が好きだったため、たまにドロ猫の頭に顔を突っ込んで猫吸いしたりしているのだが、ドロ猫としては単なるスキンシップの一つとしか考えていない。『アタシ』としてはちょっと行き過ぎているというか、ドロ猫とふれあってる時の『私』が気持ち悪いというか、アタシたちの身体でそんな行動しないでほしいというか……。





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