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二重人格パイロット、銀河辺境砂漠型惑星にて  作者: サイリウム


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14/16

14:盗聴


「ふぅ、ようやく帰ってくれましたか。」


(だな。……んで?)


「……少し難しい所ですね。どちらにも転ぶと思います。」



軍人さんたちが帰る直前、実はあの軍曹さんに盗聴器を付けさせて頂きました。


彼らの会話を盗み聞きするには通信の傍受が一番手っ取り早いのですが、仮にも相手は軍のドレッド。バレるとちょっと厄介ですし、専用の秘匿回線を使っている可能性がありました。ですので少々原始的な手段に戻りまして、超小型のドローン(『私』謹製)を彼女の服にペタリ。盗聴器としても使えるソレで彼女達の会話内容を少々盗み聞きさせてもらった形になります。


仕事が終われば発覚前に抜け出し、勝手に帰ってきてくれる優れもの。どうやって作っているのか皆目見当もつきませんが……。やっぱ『私』って凄いですよね。



(だろォ?)



とまぁそんなわけで、その会話の大半を入手することが出来ました。


それから理解できるのは、ここにやって来た軍人は2人。先程対面で顔を合わせた軍曹の女性と、ドレッドから顔を出さなかった少尉の男性。その会話内容を聞く限り、こちらの偽装は上手く機能した様に見受けられるのですが……。



「やはりこの少尉が怪しいですね。こちらのことをずっと見続けていましたし、私が砂賊を討伐したことに気が付いているかもしれません。」


(……どうする? 今からでも消しに行くか?)


「流石にまだ早いでしょう。……警戒レベルを引き上げて、もう少し装備を充実させた方がいいかもしれませんね。」



まだ私達は、砂賊が何と繋がっているのか把握できていません。


十中八九『軍』か『商会』。しかし完全に断定できるわけではないのです。


レオネッタを名乗る軍曹の彼女は、おそらく白でしょう。今回私がした“捜査協力”を行ったのは彼女でしたが、そのすべてが軍規内のもの。正直に言って、信じられないレベルで“正しい軍人”をしていたのが彼女でした。


軍人の規律低下はこの星で生きる者ならば皆が知る者。そんななかあれほど馬鹿正直に物事を進めるのは滅多にいない、というか絶滅して久しいでしょう。一瞬そういう偽装を考えましたが……。“普通の軍人”を装うのであれば、もっと“適当”なものになるはずです。



(絶滅種が危惧種に舞い戻った、ってわけか。)


「ですね。ともかく彼女は気にせずとも良いでしょう。問題は籠っていた少尉の方です。」



盗聴器で入手した情報を精査したとしても、彼の真なる所属。 『軍』に属するのか、『商会』に属するのかまでは判断が付きませんでした。


しかしながら“何かの影響下にある”ことは確実です。おそらく今日は単なる偵察。今後より事態が動いて行く、という感じになるでしょうね。


それがあの重装ドレッドを取り返しに来るのか、口封じに消しに来るのか、金色のお菓子を要求しに来るのか。どのような動きを見せるかは解りませんが……。依然として私達に降りかかる“危険”は消えていないでしょう。


今回の相手である“彼方”が完全に警戒を解くまでは……。おそらくあのドレッドをうぱらったとしても、この状況は変わらないでしょうね。



(まじかァ。……うん? でもあの重装の奴さ、手元に置いていいんだよな?)


「えぇ、そう決めましたからね。それに、売り払っても警戒が続くのであれば持っておいた方がお得でしょう?」


(確かに! となると、やっぱドンパチやりあう感じか。)


「最悪、そうなるでしょうね。回避の為に動きますが、覚悟だけはしておいてください。」



相手がどこまで本腰を入れてくるか解りません。


しかし降りかかる火の粉を払うならば、全力で熟すべきです。


迫る来る外敵を全て叩き潰すか、あちらに『私との敵対は不利益しか生まない』ことを理解させる。勿論このまま何事もなくいつも通りの生活が戻ってくる可能性もありますが、何の対策もせずにのうのうと生きれる程に私達は愚かではありません。


武力の強化は勿論、明確な“敵”を判別し、落としどころを探る。


私がすべきことは、その辺りでしょうね。



(っと、んじゃアタシは戦争の準備だな! かァー! 気合入って来たッ! 全員ぶっ壊せる秘密兵器用意すっかッ!)


「……ほどほどに願いますよ?」



貴女が気合入れると途轍もない方向に転がる時がありますから。


さて、私も私で準備を進めておきましょうか。


間に合うかは解りませんが、いつもの業者にドロイドたち持たせる兵器。対ドレッド用の歩兵装備を“騒ぎにならない程度”に注文しておきます。勿論通常弾薬も追加発注。こちらが戦に備えているのをばらしたくはないので最低限度には成りますが、無いよりはマシでしょう。


そして追加で、ドロイドたちに作業命令を。警戒網の拡大の為に、普段よりも大規模にセンサー類を張り巡らせることにします。後は……



「一度町に向かってみてもいいかもしれませんね。普段の生活物資補給に見せかけて、町の情報の入手。『商会』が相手の場合確実に足が付くので、武器を買えないのが少々何点ですが……。」


(まぁその辺りわな。こっちで上手い事出来るか試してみるわ。)


「……新規武装ですか?」



そう聞くと、精神の中で頷く彼女。


先程も言ったように、私達の武器には制限が存在します。実弾を使用しているが故に仕方のないことですが、これが結構ネックなのです。歩兵向きの兵装などであれば比較的簡単に手に入るのですが、ドレッド向けとなると各段に難しくなります。


そして値段の方も、各段に跳ね上がってしまう感じ。本音を言えば数千レベルで保管しておきたいのですが、今のお財布事情を考えると100以上用意しようとなれば即座に破産するというか……。


まぁ20㎝の砲弾みたいなものなので、仕方のないことなんですがね?



(あぁ、やっぱアタシもそれを気にしててな? こっちにはほぼ無限のエネルギーがあるわけだし、それを利用した兵器。ビームなんかが実用化できれば、って思ってる。まぁ間に合うどころか実用化出来るかすら解らんが。)



おぉ、ビーム兵器。


ロマンですねぇ。


……え、ちょっと待ってッ! 今撃ち放題って言った? ほんとに? ほんとに無限に撃てるんですか!? 弾代一切かからないんですか!? マジ? マジ!? タダなの!?!?!?



(お、おう。理論上はな? 威力も今の200㎜弾より上がるぞ。まぁ試作してたのは近接用の奴だし、そもそも大気中じゃ拡散しちまって、まだ形になって無いんだが……。)



「ぜひ! ぜひ射撃武器も作ってください! 必要な物は何でも用意しますから! いくらかかろうが必ず揃えてみせます!」


(……すごいやる気だな。)



そりゃそうでしょう! 金が! お金がかからないんですよ!? わ、私がどれだけ弾薬管理と資金面で頭を悩ませて来たか……!!!


それに、ビーム兵器と聞けばロマンの塊です!


世の子供たちの夢がタダで撃てるようになるんです! 興奮しないわけがありません!


何せビームなんて、少しでもロボット系に関わった人は絶対憧れる超兵器です。殺してでも奪い取る! という奴です。それが手に入るのなら何でも用意して見せますし、金など幾らでも工面してみせます。何せその後の弾代を気にしなくていいのですから! 必要なら私個人の貯蓄をフルオープンする所存です!



(お、おぅ……。まぁともかく追加で色々揃えるもんがあるから、町に買いに行こうぜ。)



そう言う彼女に、全力で首を縦に振ります。


どうやら宇宙空間での戦闘に於いて、ビーム兵器と言うのは既に登場している様なのですが……。それを大気中、私達のいる惑星上で運用できるような仕組みはまだ確立されていないようです。何でもビームを発射したとしても、すぐに大気に邪魔され霧散してしまうとのこと。


そのため町でソレに繋がる品を買いあさったとしても、『戦の準備をしようとしている』と思われる可能性は各段に低いとのこと。とっても素晴らしいですね!



(背後関係の調査もするんだろ? ちょうどいいじゃねぇか。)


「ですね! 流石に今から動くとあのお二人、軍人さんと鉢合わせしてしまうかもしれませんので、明日にしましょう。あぁそうだ、ついでにドロ猫と話し「呼んだにゃ?」……心臓に悪いので真後ろに出現するのはやめてくださいね、本当に。」



いや私の胸に心臓はありませんけど、びっくりするのは確かですから。


それに意識が戦闘に寄っている時だと即座にスイッチが入ってしまって、最悪問答無用で撃ち殺しちゃうので……。ほら見てください私の手。9㎜じゃ“ない”方の銃を握っちゃってるでしょう? 辞めてくださいね、本当に。



「にゃ!? まだ死にたくないにゃッ!?」


「はいはい。ですがちょうどいい時に来てくれました。ドロ猫、今後貴女はどうするつもりですか?」


「にゃ?」



不思議そうに首をかしげる彼女。


……いや貴女。ウチの子じゃないでしょう?


ここで働くつもりならそれ相応の用意はしますが、おすすめは出来ません。ちょっとこの前倒した砂賊のせいで色々面倒ごとに巻き込まれそうですし、最悪襲撃を受けて危ない目に合ってしまうかもしれません。ここにいたいのなら保護しますし守るよう動きますが、万が一と言うこともあります。町にいた方がまだ安全でしょう。


ですので家に帰るとしたら、明日の買い出しついでに送ろうかという話なのですが……。



「……うにゃ?」


「いやなんでここまで話して要領を得てないんです?」


「にゃ? にゃーのお家ってここじゃなかったのにゃ???」


「ど、ドロ猫……ッ!」


(えぇ……。)



貴女そこまで頭がよわよわだったのですかッ!?


も、もういいです。一生ここで面倒見てあげますからね……! とりあえず明日一緒に町に行って、貴女の元のお家を探しましょう。近くを歩いたら何か思い出すでしょうし。そこで荷物とかを回収して、綺麗なおべべを用意して、私の用事を終わらせたら何か食べて帰りましょうね。


ほら外食です。高すぎるのは無理ですが、何でも食べさせてあげますからね……!



「ほんとにゃ! やったにゃー!」


(まーた甘やかしてるよ。気持ちはわからんでもないが……。医療用ナノマシンにでも手を出すか? 色々落ち着いてからだろうが。)


「な!? 『私』! ドロ猫は何か病気なのですか!? 獣医さん、いや普通の医者! いやでも真面な医者ってどこにいるのでしょうか……!?」


「え、にゃって病気!?」


(いやそういうのじゃないから、な? 落ち着こうぜ『アタシ』。ほら町まで行くなら車の用意と連れてく荷物運び用のドロイド用意しなきゃだろ? 他にもやることあるし、集中していこうぜー。)



そ、そうですね。取り乱し申し訳ありません。


気合入れて、頑張っていくことにしましょう。






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