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「観測者の外側」  作者: vastum


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■第2話「先に終わっている」

 人は、結果を見てから原因を考える。


 だから、未来は分からないものだと思っている。


 だが。


 もし原因の時点で、結果が確定していたとしたら。


 その行動に意味はあるのか。



 神代昴は、机の前に立っていた。


 何も動かない。


 何も指示を出さない。


 ただ、考えている。


 この状況。


 違和感の正体。


 そして。


 これまでとの決定的な違い。


「……選択していない」


 小さく呟く。


 いや、違う。


「選択させられているわけでもない」


 そこでもない。


 もっと手前。


 もっと根本。


「結果が、先にある」



 雨宮澪は、再びスマートフォンを手に取った。


 試す。


 あえて雑な投稿。


 狙いも何もない。


 意味のない一文。


 拡散する価値のない内容。


「これならどう?」


 軽く呟く。


 送信。


 数秒。


 反応が出る。


 だが。


「……同じか」


 画面を見つめる。


 広がる。


 止まる。


 落ち着く。


 その流れが。


「綺麗すぎる」


 自然ではない。


 だが、違和感もない。


 完璧に調整された結果。


「意味ないな」


 スマートフォンを閉じる。



 白鷺悠真は、目の前の相手を見ていた。


 会話の流れ。


 言葉の選択。


 反応。


 すべてが読める。


 だが。


「……つまらない」


 小さく呟く。


 読み切れてしまう。


 いや。


 違う。


「もう決まってる」


 だから、読む必要がない。


 誘導する必要もない。


 最初から、そこに行き着く。


「これは」


 微笑む。


「初めてだ」



 黒鉄蓮は、歩いていた。


 人の流れを読む。


 視線を読む。


 動きを読む。


 いつも通り。


 だが。


「……全部同じだな」


 小さく呟く。


 ズレがない。


 誤差がない。


 人間らしさがない。


「これ、逆に不自然だろ」


 だが。


 誰も気づかない。


 なぜなら。


 結果は自然だからだ。



 如月玲は、モニターの前で固まっていた。


「……無理」


 ぽつりと呟く。


 データを解析する。


 何度も。


 何度も。


 だが。


「パターンがない」


 氷室が言う。


「どういうことだ」


「全部が正しい」


 その一言。


 神崎が息を呑む。


「正しい?」


「矛盾がない」


 如月は続ける。


「すべての結果が、合理的」


 堂島が言う。


「それの何が問題なんだ」


「問題しかない」


 如月は即答する。


「人間は、こんなに合理的じゃない」



 鷹宮龍斗は、静かに目を閉じた。


 そして、言う。


「……観測されている」



 神代昴は、ゆっくりと椅子に座った。


 ようやく理解する。


 この状況の意味。


 この敵の構造。


「何もしていない」


 小さく言う。


 そう。


 何もしていない。


 だから。


「全部、成立している」



 時任紗那は、ログを更新しようとしていた。


 だが。


 手が止まる。


「……書けない」


 初めてのことだった。


「分岐がない」


 未来が、枝分かれしていない。


「一つしかない」



 御堂真は、静かに報告を聞いていた。


「すべてが予測通り?」


「はい」


「ズレは?」


「ありません」


 御堂は、わずかに考える。


 そして。


「……それが異常だ」


 小さく呟く。



 街の中。


 天城透は、同じ場所にいた。


 動かない。


 何もしない。


 ただ。


 人を見る。


 通り過ぎる人間。


 会話。


 仕草。


 選択。


 すべてが、視界に入る。


 そして。


 理解する。


「……収束している」


 小さく呟く。


 人は、自由に動いているつもりで。


 同じ結論に辿り着く。


 それが。


 人間だ。



 神代昴は、ゆっくりと立ち上がる。


 そして、初めて言う。


「……勝てないな」


 誰もいない部屋で。


 静かに。


 だが。


 その声に、絶望はない。


 むしろ。


「だから面白い」



 雨宮澪は、笑っていた。


「やばいね、これ」


 楽しそうに。


 だが。


 どこか冷静に。


「全部先に終わってる」



 白鷺悠真は、静かに言う。


「なら」


 目を細める。


「終わっていないものを作るしかない」



 黒鉄蓮は、立ち止まる。


「そういうことか」


 小さく呟く。



 如月玲は、画面を見ながら言う。


「……でもさ」


 ゆっくりと。


「どうやって?」



 誰も答えない。



 なぜなら。



 まだ。



 その方法が、存在していないからだ。



 結果が先にある世界で。


 行動は、意味を持たない。



 だから。



 この戦いは。



 まだ、始まってすらいない。

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