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プロローグ
ここは風の息づかいだけが聞こえる野原に、そっと影を落とす小さな喫茶店。
私はその静寂を守るように佇み、訪れし旅人を迎える白猫。
町の喧騒から切り離されたこの店は、自然の鼓動をそのまま抱きとめる場所。
焙煎した珈琲の香ばしさが、やわらかな風にほどけてゆき、心の安らぎを求める者をそっと誘い寄せる。
――今日はどんな物語が芽吹くのでしょう。
花々は色と香を奏で、川面では魚たちが光を跳ね返し、空を渡る雲は移ろう絵画を描き続ける。
――語ればきっと、心をほどく優しい物語となる予感がいたします。
雪代水を汲み上げて淹れた一杯の珈琲は、澄みきった香りを立ちのぼらせ、静かな時間をそっと包み込む。
心を休める温かな一杯を、あなたの胸へそっと届けましょう。




