第二話
首がもげた人型ロボットの上半身。腐食してゴムが無く、もう押して動かすことすら不可能に見える自動車。形状記憶合金製の人工筋肉が剥き出しとなった、機械工作用の大型アーム。
すべてが残骸に過ぎなかった。ここは、不要になったものが運び込まれる、機械の墓場。
ジャンクの山の間を縫うようにして走る自動車の中から、シオンはその光景を眺めていた。
(墓場にして、母なる海でもある。彼らはここで素材として再生され、また新しい機械に生まれ変わる)
少女の方を運転席に座らせ、少年の方が助手席側。とはいえ、自動運転車なので、二人ともただ座っているだけ。その瞳は両方とも、物憂げにジャンクたちを追っていた。
遠くに眼を遣れば、空高くまで盛り上がった入道雲の下に、摩天楼が立ち並ぶ。傾きかけた陽の光を反射して、一部が星のように輝いていた。夜になれば、天と地が反転したかの如く、地上に銀河が現れる。美しく、それでいて退廃的な光景が、空の下を覆い尽くす。
(あれ、あの車……)
この場所の持ち主が経営する店舗前に、一台の自動車が停まっているのに気付いた。ジャンクではなく、きちんと稼働すると確信出来る、整備の行き届いた外観。知り合いが持っている車種と同じに見える。
少女の身体でパネルを操作して、車の行き先を店舗の方へと変更した。どちらにしろあの店舗に用がある。せっかくだから表から入り、挨拶していこうと思った。
隣に停止すると、駐車されていた車のダッシュボードの上に、猫を模したぬいぐるみが置いてあるのが見えた。デフォルメされたキャラクターだが、既製品ではなく、オリジナルデザインのハンドメイド品。
(やっぱりそうだ)
そう考えながら、少女の背中に繋がる光ファイバーを外した。両方の身体を操作して、それぞれ車から降ろす。すぐに再接続をすると、適度な長さに巻き取ってから、錆の酷い金属製の外壁で出来た店舗の入り口に立った。
自動的にドアがスライドして、中の様子が目に飛び込んでくる。雑多に色々な機械部品が置かれている、見慣れた風景。大抵が競技用傀儡の部品。カウンター奥の鉄格子で守られたスペースには、アサルトライフルや拳銃といった銃器や、高周波サーベルなどが展示されている。
奥で店主と会話していた青年がこちらを向き、満面に笑顔を浮かべつつ手を挙げて声をかけてきた。
「よ、シオン。今日は災難だったな」
「ジン! ここで会うのは久しぶりだね」
やはり、唯一の友人と言っていい、同じ傀儡遣いのジンだった。シオンの感情を読み取って、擬似生体制御用のAIが動作し、少女の方も少年の方も自然と顔が綻ぶ。
「中継見てたの? もう少しライセンス取得条件厳しくして欲しいよね」
少年の口からそう答えると、ジンは大げさに肩を竦めつつ頷く。
「まったくだよな。ああいうのが続くと、ルール改定でつまらねー勝負にされる。安全な高台から遠距離操作とかな。最悪。そんなん、すぐにファイバー切れて、ただのハッキング合戦かAI対決になっちまう」
「それじゃNBRである意味がなくなる。近くにいる人間がリアルタイムに操作して戦うからこそ、迫力のある勝負になるんだ」
「へっ、お前の場合は、美しい勝負な」
近くまで寄ってきたジンは、少女の端正な横顔を眺めながら言った。視線が合うと、ウインクをして返す。少女はぷいっと横を向いてそれを避けた。
「いつも愛想悪過ぎだよ、お前。オレにくらい、可愛い笑顔向けさせたらどうなんだよ」
不満顔で少女の背を睨み付けるジン。しかしすぐに笑顔に戻り、くるりと少年の方を振り返って言う。
「なあ、オレこれから昼飯なんだけどさ、一緒にどう?」
少年は半眼になってジンを見上げつつ、口を尖らせる。
「あのね、試合見てたんでしょ? ボクが何しに来たかわからない? 修理に来たんだけど? 明後日、次の試合なのわかってて、意図的に妨害してる?」
「ひひひひひ、大丈夫大丈夫。明後日はまだオレとは当たらない」
「そういう問題じゃないの。撃たれたのはボク。普通の人間なら今頃病院で手術。早く直さないといけないの」
オイル漏れこそ応急処置したものの、真っ黒に汚れたままの肩を示して少年がまくしたてる。ジンは無邪気な笑顔のままそれに応じた。
「野郎の身体に興味はない。極論、脳みそだけありゃ大会に出られるんだから、そのままでもいいんじゃねーの?」
正論ではあるが暴論でもある。それに対してシオンが文句を言う前に、ジンの視線は少女の方に向いた。両手をわさわさと動かしながら、鼻の下を伸ばしつつ口を開く。
「だが、美少女の身体には興味ある。一回戦で何発か掠ってなかったか? 俺が優しく脱がして、隅々まで調べ――」
バシっと音がして、少女の手によってジンの頬が叩かれる。
「早く帰って! ボクは修理したいの!」
怒りの声のハーモニー。殺意の籠もった視線で、少女と少年が睨み付ける。ジンは大げさに肩を竦めて振り返った。
「ホントお前ら塩対応多いよな……。まあいいや。またくらあ。準々決勝楽しみにしてるぜ。それまでに負けんなよ」
そう言い残してジンはドアの向こうに消えていく。少女と少年両方が、半眼で睨み付けながらその背中を見送った。
「相変わらずじゃのう、お主らは」
濁声に振り返ると、店主の老人、通称ドクが優しげな顔でこちらを見ていた。とはいっても、それを見抜けるのは、多くの時間を共に過ごした者だけ。何しろ顔の上半分は、まるでロボットのような外見だった。
きちんと人の形をした擬似生体の眼球ではない、機械製のアイセンサーが光っている。その上、両腕は人工皮膚で覆っていない、機械剥き出しのままのロボットアーム。子供が見たら、泣いて逃げ出すか、逆に興奮して騒ぎ出しそうな風貌。
「地下から来れば良かったと後悔してるよ。――ね、メンテナンスと修理をお願い」
少年の身体の方で、何カ所か服が破けた少女の腕の部分を見つめながら、シオンは答えた。ドクはカウンターの下をくぐって、こちらにやってきながら問う。
「どっちのじゃ?」
少女と少年両方がむっとした表情に変わり、言葉のハーモニーを奏でる。
「見りゃわかるでしょ、両方の」
「ふむ……もう店仕舞いにするか」
ドクがそう言うと、装甲シャッターが自動的に下りてきて、出入り口を塞ぐ。照明も暗くなり、シオンは視覚デバイスの感度を上げながら、ドクのごつごつとした背中を追った。
奥に進むにつれ、ガラクタにしか見えない、何に使うのかわからない商品が多くなる。ドクが最深部に近付くと、自動的に壁が左右に開いて、プライベートスペースへの入り口となった。
むしろ店内より綺麗な内装の通路を、緩やかに下っていく。しばらく行くとまた壁が自動的に開いて、手術台やロボットアーム、その他各種工作機械や収納棚が並ぶ部屋へと通された。
促されるよりも前に、シオンは先に少女の身体を手術台の上に横たえる。ジャケットは歩きながらもう脱いでいて、損傷した部分までブラウスの腕をまくった。それを見て、ドクが呆れたように口を開く。
「そっちが先か……」
そのドクのアイセンサーを、少女の蒼い瞳が見上げる。
「少しでも不調があると困るのは、こっちだから」
少女の細い喉が動き、外見通りの涼やかな美声を紡ぎ出す。戦闘用と思ってもらえないのも、致し方のない愛らしさだった。
「ま、生命が懸かっとるからのぅ……」
ドクは右腕を取り外しながらそう零した。近くに置いてあった、精密作業用のマイクロアームが多数ついたものに交換する。このためにドクは、敢えて人工皮膚を被せていない。ケーブルや無線を通して機材を操作するよりも、腕自体を取り換えてしまった方が作業に向くという、合理的過ぎる発想。視点の位置的にも、その方が良いのは間違いない。
破損して何カ所か剥がれた人工皮膚の下に、形状記憶合金による人工筋肉が多数這っている。そちらの方の状態も見ながら、ドクが問う。
「強かったのか?」
「一回戦の方は。避けたつもりだったんだけど、予選の映像とは大分反応が違ったんだよね。実力を隠してたのかな。初出場ってことだったけど、あとで調べたら、他所の大会では実績があったみたい。傀儡も変わってたから、スポンサーがついたんじゃないかな」
少年が一緒に覗き込みながらそう答える。ドクは少年の肩口の損傷にちらりと視線を送ってから、マイクロアームで少女の皮膚をつまみ上げた。
「――っ!!」
少女の顔が歪み、悲鳴のようなものが喉から漏れる。続けて半眼になって恨めし気にドクを見上げながら、口を尖らせて言った。
「痛いんだけど?」
ドクは涼しい顔で皮膚をつまみ上げ続けながら反論する。
「痛覚くらい切っておけ。修理頼んだの、お前さんじゃろ」
(それはそうなんだけど、事前に言ってくれればいいのに……)
シオンはその言葉は飲み込み、少女の身体の感覚器官をオフにした。視線が不自然に固定され、焦点が合わない感じの瞳が宙を見つめ続ける。代わりの言葉は少年の方で発した。
「切るとうまく動かせないんだ。完全なフィードバックがないと、精密な動きは無理」
「ふむ……」
破損個所の皮膚をすべてつまみ上げて、見えない部分の損傷も確認し終わると、ドクは少々考える素振りを見せた。しばらくして、再び少年の傷付いた肩に視線を向ける。
「それ、腕は動くか?」
「別に問題ないけど?」
「なら戦えるじゃろ。二度手間になるから、どっちも後にせんか?」
少女が瞬きをし、精気の戻った瞳がドクの方を向いた。少年が眉をひそめつつ短く問う。
「仕事?」
「先程、公安からの使いが来てのぅ。今夜、頼みたい。受けるかどうかは、内容を聞いてから判断してくれ」
ドクが視線を向けると、全面ディスプレイパネルとなっている壁が点灯する。白衣を着た一人の老婆の姿が浮かび上がった。医学博士と書いてある。専門は神経精神学。ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)デバイスの、精神への影響を研究している人物。
「BMIデバイスに関する法整備について話し合う有識者会議が、近く開催される予定じゃ。このババアはワシの旧知の人物でな。現メンバーの一人だ。最近、周囲で妙な現象が確認されてのぅ。光学カメラにもレーダーにも何も映っていないのに、重量センサーだけが反応した」
その意味はシオンにもすぐに理解出来た。間髪を入れずに、少年の口から質問を飛ばす。
「光学迷彩。蜃気楼? それとも隠れ蓑?」
「重量からして蜃気楼。検出された場所も、隠れ蓑搭載機が入れるようなところではない」
(ならば、人型兵器。相手はきっと、闇の傀儡遣い)
傀儡犯罪。人間サイズで扱いやすく、全身擬似生体ベースのボディなら、完全に人に紛れこませることが可能な傀儡。それを悪用した犯罪は、近年増加の一途を辿っていた。特に深刻なのが、今回の件のような暗殺。光学迷彩を使って身を隠し、安全な場所から標的を襲う。
重量センサーやソナーなどの、対光学迷彩用防御策が施されていたとしても、発見されるのは傀儡だけ。離れた場所にいる傀儡遣いは、安全に逃げられる。そして大抵の場合、強行突破や自爆に近い特攻で、標的を確実に葬る。
「この人はもう?」
哀し過ぎる述語は省略して、シオンは訊ねた。少女と少年両方で、真剣な眼差しでドクを見上げる。しかしあっけらかんとした調子で、思いもよらぬ答えが返ってくる。
「何をアホなこと言っておる。死んじまってたら見せても仕方なかろう。守って欲しいから見せておるんじゃ。このババアは意外と切れ者でのぅ。異常に気付いてすぐに引き返したから、まだピンピンしとる。――じゃが、また仕掛けてくる可能性が高い」
「そ、そう。……で、この人が狙われる理由は?」
「完全侵襲式BMIデバイス。会議で特に強く反対しているのが、このババアじゃ」
(なるほど……)
それだけでシオンは事情を理解した。犯人の裏にいるのが誰なのかも。
「ならカルテルの手の者?」
「公安部はそう踏んどる。蜃気楼を使うような組織に依頼するほどの動機を持つ奴は、他におらんらしい」
(カルテルはどうしてそこまで、完全侵襲式BMIデバイスにこだわるんだろう。こんなわかりやすい暗殺をしてまで、実用化したいものなのだろうか?)
シオンが仕事を受けるようになってから、常々疑問に思っていたことだった。しかし、最初に簡単な説明をされた後、それ以上詳しいことは訊けなくなった。ドクが研究していたものが、カルテルに悪用されたのだと知ったから。
ドクは以前、コンピューター上のシミュレーションだけで、合法的に完全侵襲式BMIデバイスの研究をしていたという。しかしそれが、当時ドクのいた企業によって悪用された。裏で非合法の人体実験が行われていた。
気付いたドクが公安にタレこみ、企業は摘発され、研究部門は解体させられた。しかし、既に別の複数の企業に情報が流れ、共同研究が始まっていた。それがカルテル。
かつての自分が蒔いてしまった種を回収しようとしているドクに、罪悪感を煽るような質問は出来ない。個人的な利害も一致していたので、今までは深く聞かずに協力していた。
「なんじゃ、悲痛な顔しおってからに」
少女と少年両方の表情に出ていた。慌てて澄まし顔にして取り繕うシオンだったが、ドクはアイセンサーを暖かみのあるオレンジ色に変えてから優しげに言う。
「子供にそんな気ぃ遣ってもらうほど、ワシは柔じゃない。ずっと聞きたくて我慢してたんじゃろ?」
何も言っていないのに、見透かされていた。少女と少年両方が同時に俯く。
その先は、質問するまでもなく、まさに聞きたかったことをドクは勝手に話し始める。
「現在主に使用されているBMIデバイスの一種、NBデバイス。正式名称はノンインタラクティブ・ブレイン・マシン・インターフェース・デバイスというのは知っとるじゃろ?」
シオンは無言で頷く。少女と少年両方の身体で。
「つまり、一方通行のBMIでしかないということじゃ。脳波を読み取り、電子データ化することは可能じゃが、電子データを脳に直接インプットすることは出来ない。そのためには、脳のどこかに直接電極を繋ぐ必要がある」
NBデバイスが普及した現在では、特に技術に疎い者、気にしない者を除けば、大体誰でも知っているようなことである。インプットが出来ない、不完全な電脳。意識共有や、完全なVR体験などは行えない。
ドクは自分の頭を小突きながら更に続ける。
「NBデバイスではの、部分的侵襲式が採用されている。硬膜下の安全な場所に脳波の計測装置を埋め込み、思考の読み取りをするというものじゃ。脳に直結されているわけではない。人体最後の不可侵領域じゃからの、脳は。それを意図的に傷付ける完全侵襲式は許可されない」
「ボクはどうなの? 完全侵襲式になるんじゃないのかな? 延髄に人工神経が接続されてるはず」
「それはまた別の話じゃ。全身擬似生体は、他に生命を救う方法がない場合にしか許されておらんし、政府の許可制でもある。今話題にしとるのは、機能的にもそれとは別のもの」
「……つまり、全身擬似生体にしないでも使えるもの?」
「そうじゃ。そして、延髄には流れてこない単なる思考も含めて、脳のすべての情報を読み書き出来る、完全版BMIデバイスともいえる」
完全版BMIデバイス。すべての情報で、双方向のやり取りが可能なもの。フルダイブ型のVR体験が誰にでも出来るという夢の世界を、大抵の人間が思い浮かべるだろう。しかし、シオンが想像したのは別のこと。
(つまりは、傀儡との五感共有が出来るということ。傀儡の視界を自分のものとし、自らの身体を動かすのと同等の感覚で操れる。これが意味することは――)
傀儡の戦闘能力の大幅な強化だけではない。視界の通らない遠隔地からの完全制御。まさに暗殺などを行う闇の傀儡遣い向きの技術と言える。
正解をデータ化して用意可能なものについては、深層学習の登場で飛躍的にAIの能力は伸びた。しかし、それが不可能なものについては、未だに人間を超えることが出来ていない。
自然界での状況の把握と最適な行動の選択には、データ化出来る正解はない。密かに侵入しての暗殺など、臨機応変な判断が必要な作戦には、人が直接制御可能な傀儡は不可欠。
「敵はもうそれ使ってるんだよね? 今まで戦った奴は、どれも大したことなかったけど?」
シオンは過去の闇の戦いを思い出しながらドクに訊ねた。競技では禁止されている兵装も使ってくる故、当然大会よりは厳しい戦いだったが、傀儡の動き自体は、特別優れていたように思えない。
「回収されたものは、すべて未完成品。厳密には、調整不足とでもいったところかのぅ。脳の働きは個人差が大きい。NBデバイスでの擬似生体の制御も、うまくこなせるようになるまで、早くて数か月。全身となれば、何年もかかったりするのが普通の話じゃ」
そこのところの感覚は、シオンにはよくわからない。使えてしまったのだ、全身擬似生体になってすぐに。まるで以前から使っていたかのように動かしたことで、ドクがしきりに感心していたのを覚えている。
「傀儡遣い自体の適性も低かったのじゃろ。何しろ使い捨ての鉄砲玉みたいなもんじゃからのぅ。お主のように特別適性の高い奴が使ったらどうなるか、想像してみい」
(あの時のあいつの動き……。確かに大会では見たことのないレベルだった)
シオンの脳裏に、殺されかけた時の光景が思い浮かぶ。きっかけは、闇の傀儡遣い同士の戦いを目撃してしまったこと。殺し合いなんてものではなかった。一方的な嬲り殺し。自分の身体もサイボーグ兵士化し、傀儡とタッグを組む形で圧倒していた。
次に狙われたのは、もちろんシオン。目撃者が生きて帰してもらえるわけがない。どこまでも執拗に追い回され、少しずつ、少しずつ身体を切り刻まれた。泣いても叫んでも許してはくれない。倒錯した快楽に身を震わせ、狂喜に歪んだ仇の顔は、シオンの記憶に深く刻み込まれている。
公安の到着が、ほんの僅かでも遅れていたら。政府の許可もないのに、ドクが全身擬似生体化の処置を進めてくれなかったら。シオンは確実に死んでいた。身体は原型を留めておらず、脳も機能を完全停止する直前だったという。
「それでもボクは負けない」
少女と少年が見つめ合った。冷たく透き通った蒼い瞳と、強い意志を秘めた焦げ茶色の瞳が、互いの想いを絡め合う。そして同時に口を開いた。再びハーモニーを奏でながら。
「ボクたちは強い。この子とならやれる。必ず倒してみせる。スオウを――ボクを殺そうとした、あの男を」
二人の視線が同時にドクに向いた。共に決意を籠めた眼差しで見つめながら口を開く。
「それで、ボクは何をすればいい?」
ドクは不敵に、それでいてどこか優し気に微笑んだ。