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異大陸秘話 『誕生』

 アーシア大陸から海を隔て、遠く離れた西方の某大陸。


 ガランが誕生する一九五二年前。

 その某大陸にあるルシフル王国に、新しいヒト族の王が戴冠した。名をアモスという。

 アモス・ルシフル王はその内に秘めた野心を捨て切れぬ、愚王であった。


 北の隣国との長い戦争でルシフルの民は疲弊し、厭戦(えんせん)の気配が漂う国内を纏めるため、アモス王は禁忌に手を出す。大陸中からエルフの一族を拉致。一族の女子供を人質とし、エルフの至宝、その叡智を強奪する。


 エルフの叡智『神聖伝承(ルーン)』。


 それをエルフ自らに解読、解説させ、『精霊言霊』を発見。アモス王はそれを体系化させ、魔術文法を完成させた。

 神聖文字の組み合わせで精霊を縛り、強引とも言える手法で自然エネルギーを奪取。さらに別の神聖言葉で呪い文を唱なえ、力を発現させる。それが『魔術陣』であり『魔術呪文』であった。それらはヒト族、いや全ての人類が精霊の力を使う『魔術』を生んだ。


 アモス王はそれら魔術を王家で秘匿するため、拉致したエルフ族を全て抹殺。拉致に関わった全ての家臣もこの世から消した。その後、兵らに魔術陣および魔術呪文を一部開放。その魔術を使うことにより、隣国との戦争に勝利。瞬く間に周辺諸国を制圧し、大陸の覇権を握った。

 周辺諸国の民は半ば奴隷と化し、アモス王はあろうことかその民らを『家畜』と呼んだ。


 当然反発が起こり、王家打倒、王位簒奪を狙うものも現れる。しかしこれも秘匿した魔術により敢え無く打ち倒される。魔術に恐れをなした家臣以下、有力貴族及び民らは王家打倒を断念。それどころか、王に付き従う方が旨味があると考える者も少なくなく、その力に心酔するものまで現れ始める。

 王の臣下はそれら欲深い者、心酔する者らで占められ、アモス王の独裁は盤石なものとなった。


 しかし。


 強引に縛った精霊は変質し始める。人の欲深さに染まり、文字通り『魔』となった。獣に取り憑き『魔物』となり、人も獣も見境なく襲い、喰らう。


 アモス王は魔物から自らを守るべく、長く巨大な国防壁を築くことを命じた。兵らは国防壁から魔術を使い、魔物を撃退していく。


 次々に生まれだす魔物。

 次々に魔に堕ちる精霊。

 繰り返される終わりのない戦いの火蓋は切って落とされた。


 この大陸にもうエルフはいない。

 誰も原因を知らぬ、誰も原因がわからぬ無限に続く戦い。この戦いは魔術を知らぬ大陸、世界をも巻き込む。

 そしてついに魔に堕ちるのは精霊だけに留まらなくなる。


 年老いてきたはずのアモス王が変質する。


 魔が増えるたびに全盛期の若々しい身体を取り戻し、さらに強靭な肉体へと変わる。アモス王に心酔する者から順に魔を帯び、追従するように変質、変化していく。魔術を使う兵もまた魔を帯びていく。

 いつしか赤く目が輝き、黒い魔の残滓を纏い、『魔人』へと変わる。もはやヒト族ではなく『魔族』。


 人が魔術を使うたび強くなる魔族。

 生み出される魔物。


 魔王アモスはこうして誕生し、未だ健在である。


 アーシア大陸の人々はこの事実を今も、そしてまだ誰も知らない。

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― 新着の感想 ―
第一章は独りぼっちになってしまったドワーフのガランくんがエルフ族と出会って里に受け入れてもらって、ほのぼのな優しい世界のお話だなぁと思いつつ読んでいました。 が!! 第二章に入ってすごく不穏な始まりに…
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