夏祭りからの帰り道 〜繋いだ手〜
掲載日:2023/08/17
付属の説明書とにらめっこする。
見本の写真を参考に、浴衣と帯をどうにか身に着けた。
髪型を整え、下駄を履き、迎えに来てくれた彼氏と手を繋ぎ、夏祭りへ。
夜空に高く高く打ち上がった花火に、二人して歓声をあげる。
「綺麗だな」
「綺麗だね」
「また来年も、一緒に見ような」
「うん。来年もまた、一緒に見ようね」
ぞろぞろと、人の波に逆らわず、駅へと向かう。
はぐれてしまわないよう、帰りも彼氏と手を繋ぐ。
長時間歩いたからか、両足とも、親指と人差し指の間が痛い。
足を止め、前屈みの体勢で、指と指の間を確認する。
急に、目の前が、カメラのフラッシュをたいたみたいに白く瞬いた。視界を埋め尽くすほどの強い光。
悲鳴、タイヤの摩擦音、クラクション、衝撃、激痛、暗転。
救急車とパトカーのサイレンが聞こえる。
ごった返す人を尻目に、彼氏の手を引き進んでいく。
不思議と足の痛みは消えた。
足が消えたから。
彼氏は、繋いだこの手しか残っていない。
それでも、来年も一緒に花火を見ようと約束したから、繋いだこの手は離さない。




