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17.エピローグ

 

 

 「また友達にいじめられたのか?」

 

 亜錬の幼い妹は、ひとり深夜のベランダで涙を手でぬぐった。

 

 「ともだち、なんかじゃないもん」

 

 月明かりに照らされた妹の顔は、涙と鼻水でぐしょぐしょに濡れていた。

 

 「れいな、もうようちえんいきたくない・・・」

 

 亜錬は、妹の横に座った。

 

 「よし、玲奈」

 

 「えっ、なに、」

 

 「お兄ちゃんが、玲奈にまほうをかけてやるよ」

 

 「まほう?」

 

 「つらい時や、悲しい時でも、楽しくなれるまほうだ」

 

 「そんなの、ないもん。お兄ちゃん、ウソついたらお巡りさんにタイホされるもん」

 

 「ウソじゃないよ」

 

 「そんなまほうなんか・・・まほうなんか、ないもん!」

 

 妹は、また声を上げて泣き出した。

 

 

 「この前さ、二人で虫取りに行ったろ?」

 

 涙を拭きながら、妹は頷いた。

 

 「その時のさ、晴れて雲がない空、おぼえてるか?」

 

 カラの虫かごを持った帰り道に、亜錬が指さした空を玲奈は見上げた。

 

 「うん・・・」

 

 「空はすっごく青かったろ?雲が全然なかったろ?」

 

 「うん、あおかった」

 

 「あの空のことを、『カエルラ・カエルム』って言うんだよ」

 

 「かえるら、かえるむ?」

 

 「そう、ときめきのスカイブルーってこと」

 

 「すかいぶるーってなに?」

 

 「真っ青な空の青色だ」

 

 「じゃ、すてきなあおいお空ってこと?」

 

 「そうだよ。玲奈、今空を見上げてごらん。なにが見える?」

 

 「おつきさまと、おほしさま」

 

 「目を閉じて、」

 

 妹は言われるままに、目を閉じた。

 

 「あの空を思い出すんだ。真っ青に晴れた、あのときめきのスカイブルーを」

 

 妹は心の中で、亜錬と見上げた、どこまでも青く澄み渡った空を思い出していた。風が心地よく吹いていたあの空を。

 

 「玲奈、心のなかで言ってみて。カエルラ・カエルムって」

 

  カエルラ・カエルム

  

 次の瞬間、急に風が吹いて玲奈の髪を揺らした。

 驚いて目を開けた妹に見えた景色は、なんと真っ青な空だった。

 

 「おっ、おにいちゃん!見えた!れいなにも見えたよ!」

 

 「よかったな、玲奈」

 

 亜錬の妹は、いつしか笑顔になっていた。

 

 

 「玲奈。お前は大きくなったらケッコンするだろ?」

 

 「うん、れいな、かわいいお嫁さんになるの」

 

 「そしたら北へ行くんだ」

 

 「えっ?きた?どうしてきたなの?」

 

 「北へ行けば行くほど、カエルラ・カエルムのチカラは強くなるんだよ」

 

 「ほんと!うん、わかった。れいな、大きくなってお嫁さんになったら、きたへいく!」

 

 亜錬は、妹の頭を優しくなでた。

 

 「れいな、あしたもがんばってようちえんいく!」

 

 

 

   玲奈

 

   辛くなったら、思いだすんだ

 

   魔法の呪文

 

   カエルラ・カエルム

 

 

 

 

 「到着しました」

 

 コンクリートの塀で囲まれたところに、黒塗りの車は止まった。

 女性は子供と共に、車を降りた。

 

 「ここが、」

 

 「はい、亜錬様がお亡くなりになられた廃工場跡です」

 

 そこには、『政府関係者以外立ち入り禁止』の看板があった。

 白手袋をした男性は、助手席のドアを開け、シートに置いてあった花束を女性に渡した。

 

 「お兄ちゃん、玲奈やっとこれたよ」

 

 白手袋の男はテンキーロックを解除し、中に入れる金属のドアを開けた。

 

 「セシル、おいで」

 

 セシルは玲奈と手をつないだ。

 

 「セシル、あなたがお兄ちゃんの意思を受けぐのよ。あなたは日本を、いえ、世界を救う勇者になるの。いい?」

 

 セシルは、ゆっくりと頷いた。

 

 「では、参りましょうか」

 

 3人は、金属の扉の向こうへと入っていった。

 

 

 

 

 

 『マスターカラノ、シレイヲ、ジュダクシマシタ。1プンゴニ、スリープジョウタイヲ、カイジョシマス』

 

 

 完

 

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