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10.タイム・レトログレイド・シーケンス

 拓真は、亜錬の顔を見つめた。

 

 「どうした急に。さっきまで、あんなに嫌がってたのに」

 

 「あんた達の覚悟はわかったよ。テストしてないのは問題だけど、俺がこれ以上無理筋言っても、前へ進まないからな」

 

 「やっと、わかってくれたのね!」

 

 「但し、」

 

 「なっ、なによ、」

 

 「俺を全力で守ると約束してくれ。過去に戻って、『お前ひとりで行け』なんてこと、絶対言わないと誓えるか?」

 

 拓真は椅子から立ち上がった。

 それを見て、舞と大祐も慌てて立った。

 

 「亜錬、俺達は何があってもお前を守る。お前が、この国の最後の希望だからな」

 

 「熊本にもう一人いるだろ」

 

 「その子がこのミッションを遂行出来るようになるまで、俺達は何年待てばいいんだ?」

 

 「そうだな、」

 

 亜錬も立ち上がった。

 

 「タイムマシンが途中でおかしくなって、過去に行けずに消えちまうかもよ」

 

 「その時は、それまでだ。それも警察の運命だと思って諦めるよ」

 

 「運命ね、」

 

 「こうしている間にも、俺や舞、そして大祐も消えるかもしれない。これは時間との戦いなんだよ」

 

 「俺は消えないのか?」

 

 「マスターであるお前を、デリーターが消すはずがない。記憶が消されないのも、おそらくお前がマスターだからだろう」

 

 「マスターか・・・心臓貫かれて殺された男は、凄げえ奴だったんだな」

 

 「そうだな。まさに天才プログラマーだ」

 

 「よし、じゃあ行こうか。よろしく頼むぜ」

 

 亜錬は、拓真に向かって手を差し出した。

 二人は、しっかりと握手した。

 

 「こっちへ来てくれ」

 

 拓真は壁に向けて歩き、壁と向き合う位置で止まった。

 そして壁に手を当てると、女性の声の機械音声が流れた。

 

 『エージェント、タドコロタクマを確認しました。暗証コードを発声してください』

 

 「我は願う。この手に炎を、心に風を、大地を踏みしめ、水を纏い、この身に雷を受ける」

 

 『暗証コード並びにスペクトログラムによる声紋を確認しました。扉を開けます』

 

 ドドドドー

 

 凄い音を出して壁が開き、エレベータが出現した。

 

 「さあ、乗ってくれ」

 

 「隠しエレベータか」

 

 「壁も分厚いぞ。戦車の大砲にも耐える厚さだ」

 

 「戦争でもおっぱじめるつもりか?」

 

 「それだけ頑丈ってことさ」

 

 「今の呪文みたいなのが暗証コードなのか?」

 

 「そうだ。俺も良く知らないが、いにしえの究極魔法の呪文らしい」

 

 「ファンタジーおたくが設計したのか、このビル」

 

 「さあな。さ、乗った乗った」

 

 4人は、エレベータに乗り込んだ。

 拓真がスイッチを押すと、エレベータのドアが閉まり、降下を始めた。

 

 「地下に、タイムマシンを隠してるのか」

 

 「隠してるってのもあるが、地上だと様々な物質の影響を受けるのでダメらしい」

 

 「なるほど、」

 

 ほどなくエレベータは減速し、停止した。

 ドアが開くと通路があり、その先には扉があった。

 

 「舞、開けてくれ」

 

 舞は扉のドアノブを握った。また、女性の機械音声が流れた。

 

 『エージェント、アサヒナマイを確認しました。網膜認証を開始します』

 

 ドアにある小窓を舞が見つめた。

 

 『網膜パターンを確認しました。ロックを解除します』

 

 ガチャっと、ロックが外れる音がした。

 舞が扉を開けた。

 

 「亜錬、ここまで来たら、もう戻れないぞ」

 

 「ああ、とっくに覚悟は出来てる」

 

 「そうか。じゃ、行こう」

 

 4人は、部屋の中へ入った。

 わずかな明かりだけある薄暗い部屋には、ピーナッツを立てたよな形のカプセルが4機並んでいた。

 

 「この4機には、過去に戻る日時を予めプリセットしてある。中に入れば扉が閉まり、後はSTARTボタンを押すだけだ」

 

 「過去の世界で待ち合わせはどうするの?」

 

 舞が聞くと、拓真は3人の顔を見て、

 

 「戻る日時は、2022年8月9日午前8時だ。戻ったら、富士見丘市駅の改札を出た所で、午前10時に会おう」

  

 「2時間後ね」

 

 「俺は警察庁の武器保管庫から、拳銃と戦闘で使えそうな物を調達してから行く」

 

 「許可申請無しで入って大丈夫なの?」

 

 「非常事態さ。それに8月9日は、警察庁内部でもバタバタしてるはずだ。隙だらけだよ」

 

 「なるほど、わかったわ」

 

 亜錬は、前方にあるカプセルに近づいた。

 

 「これ、どうやって開けるんだ?」

 

 拓真は、カプセルに横の壁にある正方形の薄いベージュ色を指さした。

 

 「そこに、右手を当ててくれ」

 

 「こうか?」

 

 亜錬が手を当てると、正方形の部分が光った。

 

 「うわ、」

 

 「そのまま、動かすなよ」

 

 機械音声が流れた。

 

 『搭乗員のDNAを採取中。しばらく待ちください』

 

 「どうやって俺のDNAを?」

 

 「小さな針が突き出て、お前の血液を採取してるんだよ」

 

 「針?全然痛くないけど、」

 

 「痛点を避けて、針を刺してるからな」

 

 「へぇー、すげーな」

 

 『DNA採取完了しました。データベースと照合中・・・キタガワアレンにヒットしました。このまま登録しますか?』

 

 「イエス」

 

 『搭乗員は、キタガワアレンに登録しました』

 

 ウィーンというモーター音とともに、透明なカプセルの扉が開いた。

 

 「これは、立ったまま乗るスタイルか」

 

 「そうだ。中に入ると自動的に扉は閉まり、もう開くことは出来ない・・・改めて聞くが、覚悟はいいな?」

 

 「途中で死んだら、警察に化けて出てやるからな」

 

 亜錬は、カプセルの中に入った。

 透明のカプセルの扉が、モーター音と共にゆっくりと閉まる。

 そして、カチャっというロック音がした。

 

 「よし、俺達も乗り込むぞ」

 

 「はい、」

 

 拓真、舞、大祐、そして亜錬の4人は、カプセルに入った。

 立ったままだが、少し後ろに角度がついている。頭の部分にはヘッドレストもあった。

 

 「なんか寝ちまいそうだな」

 

 亜錬がつぶやくと、ピンという電子音と共に、目の前の透明の扉にグリーンの数字が浮かび上がった。

 

  SET 2022-08-09 08:00

 

 そして、その下には、STARTの文字が点滅している。

 

 (これが、セットされた過去の時間か・・・)

 

 亜錬は、グリーンの数字を見つめていた。

 

 (・・・あれは、いつだっけな・・・思い出せ、俺)

 

 亜錬は眉間にシワを寄せながら、あの日の情景を思い出していた。

 視界の右横で、拓真が指を動かしながら口をパクパクさせているが、カプセルの中では拓真の声は聞こえない。

 

 (あっ、あのRPGの発売日、思い出した!)

 

 プリセットされた数字を指で押すと、上部にテンキーが表示された。

 

 (これで変えるのか、よし)

 

 亜錬は、SETの日付を2019-11-26に変えた。

 

 (時間は・・・えっと、何時だっけ・・・あ、そうだ)

 

 そう、あの時亜錬は時計を見ていた。

 そして、時間を17:05と変えた。

 横を向くと、カプセルの扉を叩きながら、拓真が亜錬に向かって必死に叫んでいる。

 

 「悪いな。どうしても、俺はあの時に行かなきゃいけないんだよ」

 

 亜錬は、STARTを押した。

 

 『タイム・レトログレイド・シーケンスが開始されました』

 

 STARTの文字が、ブルーの現在日時に変わった。

 

 (玲奈、待ってろよ・・・兄ちゃんの失敗、必ず取り返すからな・・・お前を絶対に死なせない!)

 

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