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俺の初恋はキミだったのか  作者: 椿紅颯


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4/7

嬉しい操作ミス、今日だけで急接近?

『こんばんわ、今お時間大丈夫ですか?』


 スマホの通知音に気づいた俺は手に取り画面を見た。

 通知には丁寧な文面が表示されていた。

 特に意識せず、身近な人物に返す時のように『あいよ』と返信。すると、すぐさま通話がかかって来て瞬間的に着信に応じた。


「あ! 太志くんごめんなさい! 間違って電話掛けちゃったみたいだから切るね!」

「ん、あ、立花さん!? い、いいや、大丈夫だよ。ビックリしたけど、逆に立花さんが良かったらこのままでも大丈夫だよ」

「なら! なら、このままで良い……かな」


 ガサゴソと音が聞こえてきた。寝っ転がっていたのか、遠めだった声が近くなった。


「改めてごめんね、急に電話掛けちゃって」

「大丈夫大丈夫、俺も丁度暇だったし。それより、何か用事があったんだよね?」

「ありがとね。用って言う程のことじゃないんだけど……今日、楽しかったから、それでちょっとお話しできたら……なって……」


 後半になるにつれて小声になっていくのを感じた。

 そして少しの沈黙の後、


「えへへ、なんか私、はしゃいじゃってるなぁ、なんかごめんね」

「あっはははっ」

「えっ、なになに、私何か変なこと言っちゃったかな!」


 焦り出す様子から更に笑いが込み上げて来た。

 立花さんに対する印象が完全に壊れた。

 それにより緊張は解れ、更に笑いが込み上げて来た。


「いやさ、立花さんって普通の女の子なんだなって思ってさ、普段の印象と真逆で、なんだか面白くってさ」

「えー何それっ、私だって普通の女の子だよっ。もー、ちょっとひどいんじゃないの? それに……私の印象てどういうこと?」

「あっはは、ごめんごめん。立花さんってさ、ほら、普段は物静かで、何に対しても真剣に取り組んでて、なんかこう、高嶺の花って感じのイメージだったから、今日だけでイメージがひっくり返ったんだよね」

「な、なにそれ。太志くんって私のこと、そんな風に思ってくれてたんだ……なんだか恥ずかしいよ……それに、褒め過ぎじゃない?」

「いいや、そんなことはないよ。お望みならもっと良い所上げられるけど、続けましょうか?」

「や、やめてよ! あー、本当に私、今日はなんだか気分が昂りっぱなしで、確かにいつもの私じゃなかったかも。でもね、今日は本当に楽しかったんだ。ありがとね」


 それからは、もっと行ってみたいところ、休みの日の過ごし方なんかを話した。

 お互いの情報を交換していくうちに、親密さは増して話が盛り上がっていた。

 このままいつまでも話していたいところだったが、お互いに晩御飯を食べる時間になり、通話を終了する流れになった。


「あ、今の今までなんで気づかったんだろう」

「ん? どうしたの?」

「私、今日が太志くんとほとんど初めて話すのに、名前で呼んでたね……太志くんはちゃんと名字で呼んでくれてたのに」

「ああ、そんなこと全然気にしなくて良いよ。立花さんが良かったらそのまま名前で呼んでくれると嬉しいな」

「え、良いの?! ありがとう。じゃあ、次から私のことも名前で呼んでくれると嬉しい……な。ダメかな?」

「え――いいの?」

「うんっ! こういうのはしっかり平等にいきましょう。それじゃ、また明日ね太志くん。今日は本当にありがとね、おやすみなさい」

「うん、また明日、おやす――」


 俺が最後まで言葉を伝える前に切れてしまった。

 その後すぐに、『ごめんなさい! 切断ボタンに間違って触ってしまいました』の文と頭を下げているスタンプが送られてきた。

 この流れから、スマホを使い慣れてないのを今更ながら察した。



 俺は歩き出した。

 自分の意思で始まったものでは無いが、この気持ちを大切にしていきたいと思った。

 明日の学校が楽しみで仕方がない。

 明日だけじゃない、これから毎日が楽しみだ。

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